ひっそりと群生

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【親愛なる孤独と苦悩へ】感想

感想を書くのは久しぶりです。
でも、正直この作品は批評空間などではなく自分のスペースで感想を書きたかったので。
自分のどこかホームを作って、書きたいな~という気持ちが前からあり、どうにかこうにか、どっこいしょと作ってみました。
現在、あちらで書いた感想をブログに移そうと検討しつつ、今作の感想をブログで失礼したいと思います。



【親愛なる孤独と苦悩へ】感想





『内田姫紗希、那古龍輔、都宮海、
 現代を生きる、その大学生の若者たちは悩んでいた。

 夢、目標、就職、人間関係、親、
 そして、性格、思考、自分自身……。
 彼らは今と未来が掴めなかった。

 「カウンセラー」とウェブ検索を掛けたインターネットの果て、

 39ページ目。

 この上なく簡素なホームページでありながら、強気な宣伝文を構え、
 何故か無料の不思議なカウンセラー、
 まこちゃんこと、橘真琴との出会い。
 彼らの心はどう変化し、どの道を選び、進むのか?

 それぞれの最後を見届けよう。』
(公式より引用)


サークル【楽想目】様


心の奥底に悩みを抱えた3人が、カウンセリングによって自分の心と向き合い、悩みを解決していくオムニバス方式の物語。


公式からカウンセリングとあるように、とにかく自分の内面と向き合う物語。
単に物語として見たら正直、話の流れがかなり単調、色々と予測はしやすいです。
そして始終キャラクターが自分の心理と向き合うので暗い…内面的とも思われがちになると思います。
ジェットコースター式に大きく物語が動く訳ではなく、ただひたすらに自分の内面へ深く深く潜っていく物語。


登場キャラ全員が、「自分には悩みがある」と自覚して、カウンセリングを依頼する物語なので、登場人物の心境や状況は明るくはありません。
魂や内部に深く潜ると、作中でも語られるように、凄くスピリチュアル系にもなっていて、そういう部分では凄く人を選びそうだとも感じたりしました。

合わない人からは「なんだこれだけか」「そんなに深く考えなくても…」という風になる事もあると思います。
あとは「こんな目にあって、この人をよく許す気持ちになれるなぁ」とも感じたり。
多くの人に合いそうに見えつつ、万人受けしそうに見えつつも、人を選ぶとも感じました。
そんなに深く思わなかった人や上記の様に、この登場人物達の悩みに対し「それだけ」と感じた人は、この作品での「悩んでる人」の対象ではなく、この作品を向けてる層では無いのだと思ったり。

心理系や人間の内面系の話に付き物の「合う人には合うけれども合わない人にはとことん合わない」そんな作品にも見えました(あと真琴の事なども、人によっては陳腐に見えてしまい、合わない人には合わないとも感じました…)。
ただ、合わない人は合わないかもしれませんが、本当に悩みがあり、この作品の「悩んでる人」の対象とピッタリと合う人へは凄い解決策にもなるとも思います。
各々の悩み、その悩みへの向き合い方、解決の道標を懇切丁寧に教え、提供しています。
この作品がピッタリと合う「悩んでる人」を探すのは凄く難しいけれども、物凄く大勢の人というよりもそんな「本当に悩み、解決策を見つけたい人」にこそ見て欲しい物語だと思いました。


そして、凄く個人的な話になり、ネット上で語るのもどうかと思う話になりますが、私は後半に登場する作中のとある人物側の人間でした。
どうしてここまでこういう境遇の人を描けるのだろう、と思うくらいにその人物の境遇と凄く重なりました。

その人物の境遇と重なってしまい、もう、これは、この話は、取り返しの付かない間違いをして大きなものを失ってしまった人への救いにも見えました。
あまりにも境遇が近く、似通っており、「勝手にこういう境遇の人間を描いて…」という思いよりも「この境遇を題材にし、救いの道を下さり有難う」でした。

他のプレイされた方と違う受け取り方をしているかもしれませんが、少なくとも私は少し救われました。


音楽も印象深く。
歌唱曲は挿入歌、ED曲、どちらもこの作品の事をそのまま素直に歌詞に乗せて歌われていて、特に挿入歌は場面も相まってとても素敵で良い曲だと思いました。




現在、「おすすめ同人紹介」様の「楽想目」様のページにて無料公開されています。



人間関係において「嫌われたくない」「自分が悪い」など考えた事のある人。
「何が悪かったのだろう」「どうしてこんな空気になるのだろう」と悩んだ事のある人。
どうすればそれを上手く、良くして行けるか?を真剣に思ってる人。
そんな風に悩んだ事のある人に是非、手にとって頂きたいですし、この作品の「観念」などの解決方法が最も適切な方の元に届いて欲しいです。





以下ネタバレ含めての感想です


前作、REVIVAL RESETが主人公の芯の性格は最後まであまり変わらず、「主人公の成長物語」には個人的にあまり感じなかった所から見ると、今作は物凄く「成長物語」でした。
確実に全員、自分の内面に向き合い、改善し、良い方へと向かって行こうとする…とても分かりやすい「成長物語」です。
ただ、前作がかなり「動」の物語で、主人公の身の回りでドタバタが巻き起こったのに対し、今作は「静」で、内面へ深く、深く向き合って行きます。


『内田姫紗希編』
最初の物語らしく
「人生に行き詰まって、自分が何で悩んでるのか、どうして悩んでいるのかが分からない人に対して、抜け口や解決策の道標を教える物語」
に感じました。
観念のお話も、「間違っても良い」「嫌われても良い」そう思う為に自分の心と向き合っていくのは面白かったです。
人によってはこの方法で糸口が見えると思います。
ただ、自分にまこちゃんのスタイルが合うかと言われたら…正直分かりません。
まこちゃん、かなりグイグイ来るタイプですし、、姫紗希さん、まだお姉ちゃんともいつか出会える可能性が残ってて、様々な可能性がある状態での結論なので。
修正完全に不可能になってたわけじゃないのがポイントだとは思いました。

お父さんの一件も正直に言いますと、「姫紗希さんは、よく許した」という気持ちです。
この作品、「後に引きずらずに許す」が結構根底にあるのですが、姫紗希さんの場合はかなりそれが顕著です。
お父さんからあんな扱いを受けてて許せる、それも彼女が辿り着いた答えですが、自分だったら許せないと感じてしまいそうで。
それも「お姉さんとはまだ会える可能性がある」からこその許しでもありそうだなとも感じたり。

物語の序盤の位置づけとしては、「恨みを引きずる」ではなく、「許し」が根底にある事を最初に伝える位置づけで良かったと思います。
カウンセリングの方法といい、「許し」といい、「この序盤が合わない場合は、今後も合わない」というのを教える位置づけで良かったです。


『那古龍輔編』
成りたい事。
プロゲーマーが、世間の職業では普通ではない評価を受けていて、自分の中であり得ないと蓋をしている事に対し、成りたい物に胸を張る様になると同時に、何故それに成りたいのかと向き合い、自分の為に成りたいのか、自分の為以外に成りたい意味があるのかと向き合う話でした。
夢への諦め方というか、自分の為でなく深層心理では他の理由があって、本質が違っていたらそれだけに囚われる事は無く、また別のアプローチも見つかる、みたいな。
前回が悩み自体を知る、悩みへの解決策の道標なら、今回は、その道標は他に沢山ある、だから他を選んでも良いんだよ~という感じでした。

格ゲーよく分かりませんが、終盤の格闘ゲームシーンは凄くかっこよかったです。
おそらく元ネタはプロの格闘ゲーマー、ウメハラさんのスーパープレイだと思いますが、そんなスーパープレイと同じようにして大逆転をキメる那古君、カッコ良かったです。
自分でも自覚してない程の妹思いだったり、自分に正直だったり…キャラクターの中では一番那古君が好きです。


『都宮海編』
夢を目指してるのが二人で、その内の片方が欠けそうになった時。
自分は続けたいと思ってるけど、相手は続けたくないと思ってる…自己に向き合うだけでなく、他が入ってきた場合の対処方…みたいな感じでしょうか…
自分と向き合うとはまた違うから、難しいですね。
3人の話を見てきましたが、一番話が好みだったのは都宮編です。
真相が分かった時には「なるほど」でした。それはそうなるよね…みたいな納得感が。
都宮君の物語と言いつつ、朽木君の葛藤の方がかなり物語の中心だったなぁと…
才能の差、お互いの妥協などの話の見せ方が好きなので、その辺りの朽木君の葛藤が本当に好きでした。

ただ、次の真琴編へ続く理由からか、若干都宮君が姫紗希さん、那古の二人よりも扱いが優遇されていると感じたり。
彼が一番長く続いたカウンセリングの受講者なので、納得は出来ますけれど。
若干優遇に納得が出来ない部分もあったので、「一番長い」という部分を含めて、彼の中学時代の最初のカウンセリングを見てみたい気持ちもありました。



『橘真琴編』
辛く、暗く、ドン底の物語。
3話3者、今の所綺麗に終わっていたのでもっと「本当にどうにも出来ない時の対処法」を見たいという気持ちになっていた中でこの話でした。
「どうにも出来ない」とは違うかもしれませんが、最も重く、この現状にどう対処すれば幸福になれるのかのビジョンが全く見えない話でした。
親からの扱われ方があまりにも酷い…兄妹間で露骨に扱われ方が違い、更にはイジメの描写が本当にリアルで…
特に、高校時代のイジメの描写、最初は普通に友人から始まったのに、いつの間にか序列がついており、そこからジワジワとイジメに発展していく描写。
自分の暗かった性格が原因なのか、それとも単に理由もなくただ他の人達の目に止まっただけだったからか、何が本当の原因なのかが分からず、いつの間にかイジメの標的になっている…
あの辺りが本当に現実味が有りすぎて…
親からの蔑まれ方もですが、兄妹間での露骨な差別など、一度でもそういう流れからのイジメを受けた事がある人、親からの扱いを受けた事がある人は頭を抱えたくなる程の現実感があり、本当にただ、ひたすらに辛く重苦しかったです。

ただ、本当に辛い真琴の真相の物語ですが、この真琴編に関しては私は少し救われました、有難う御座います。としか言えません。
物語全体が「許し」で固められているように、この物語もまた「許し」でした。
この物語の中で「誰が一番自分と近いか?」と聞かれれば、私はお兄さん、真澄さんに近いです。
その境遇故に、上記で書いた通り、「取り返しの付かない間違いをして大きなものを失ってしまった人」への救いにも見えました。
真琴からお兄さんへ、恨みではなく「許し」が描かれていただけで、とても勝手な捉え方かもしれませんが物凄く救われました。

最後の、今まで救われた人達が一同に会してくれる部分も…分かりやすい展開といえばそれまでですが、物凄く素敵で…
真琴は…まこちゃんはこれだけの人を救ってきた、死の道を選んでしまったけれども、その道を選んだからこそ始めたカウンセリングで救われた人も居る。
実際の人生では死は確かに終わりです、そこで終わってしまいます。
けれどもこの作品は世間では許されない死すらも許しとして描かれていて…
正直、凄いと思いました、「逃げても良い」「嫌われても良い」「死んでも良い」…ここまで普通は否定されそうな事の全て肯定する作品も中々に無いと思います。

「自殺はいけない事だ」と世間一般では言われますが、本当に身近な人間がそのような結末を迎えた場合、「これが、相手の選んだ道だったんだ」と少なくとも私は思うと思います。
そういう一般的には否定されそうな思いをこの物語は全て肯定してくれました。
「それが選ぶべき最善の道だった」と「何で死んだのか?」と否定せず、肯定してくれました。
世の中では否定に否定を重ねられる中、私はその肯定に、傍から見ればとても都合の良い解釈だと思われるかもしれませんが、とても救われました。

そして、お兄さんも含め、真琴の家族ですが、正直、この家族は世間的に見れば批難される家族だと思います。
一番家族で立場の弱くなりがちな年下の真琴をないがしろにした結果、真琴に死を選ばせた…この作品での父母、お兄さんは真琴から責められるべき立場です。
それでも、この作品では、真琴は兄を責めませんでした。責めず、許しを与えました。
その許しを見て、物凄く救われた気持ちになりました。
真琴のお兄さんは一生、真琴の死を引きずって生きて行くとは思いますが、それでも真琴からは許されました。
残された側は自分を絶対に責めます、それでも、そんな中でお兄さんは真琴から許された。
端から見ればとても都合の良い描写かもしれないですが、その許した描写に「少なくとも私は自分の人生の中で少しでも救われた所がある」と思いました。

魂は有る。とてもスピリチュアルですが、想っている限り生き続ける、その人の思想は在り続けると、私も全肯定は難しいですが、少しはその「魂」の在り処を信じてみたいと思いました。
残された人も許されてるという道を描いて下さり、有難う御座いました。



この作品には何も否定しない「許し」が詰まってました。
それこそ、普通は否定されがちな負の感情からそして死まで、何もかもを全肯定し、許していました。
人付き合いや人生で悩んでいる方で、確実にこの作品に出てくる「観念」で自分と向き合い、大きく視野を変える事が出来る人、絶対に居ると思います。
大勢に広めたいとは中々に言える題材の話では無いですが、深く深く、自分の心理と自分自身と向き合い、原因の原因の原因は何か?どうすれば良いのか?を真剣に考えたい方、自分と真剣に向き合いたい方に是非プレイして頂きたい作品だと感じました。