ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【[Rensa]】感想

【男性向け15禁】



2008年07月19日発売
荒磯の巌』様 ※リンク先公式HP
【[ Rensa ]】(PC)(15禁) ※リンク先DLsite.com(15禁)
以下感想です。








ややこしいと思いつつ、理解出来ないとは言えない。
面倒臭いと思いつつ、否定が出来ない。
そんな彼女達との「れんあいノベル」。



『かわり映えのしない平穏の中で、ささやかな出会いとつながりが生まれる。
 つながりの結末は奇跡か偶然か……
 短い初夏がはじまる。』
(公式より引用)



何の取り柄もない主人公「夏目有生」はいつものように友人のバスケ部レギュラー「小道朝」と学校の秀才「香川直人」とつるんでいた。
小道の友人の「実原ゆき」が香川の事を好きという事で彼女の恋を応援する事になり、彼らの連鎖していく関係が始まる。


この作品、正直、絵、BGM、演出面、上質だとは言えません。
正直その部分だけ言ってしまえば色々と思う部分の方が大きいです。
ただ、文章や感情表現、話の流れがその悪い部分を相殺するくらいに凄かったです。


あらすじや、初めの方だけではそんなに面白さを感じず、初めの方は絵と音楽がアレな一昔前のギャルゲーという印象だったというのが素直な気持ちでした。
ですが、共通ルートの後半、そして個別ルートに入り物語は一変しました。
いえ、一変ではなく共通ルートで徐々に拗れていたのに後半になりようやく気付かされたというか…
特に変わった事が起こるわけでもなく、当たり前の日常を過ごしてきたはずが振り返ったらとんでもない所まで来ていました。
どこもおかしい所はなく、どこも間違っていなかった…なのにいつの間にか自分達の関係や立ち位置が揺らぎ始めていた…
その辺りが妙に現実的で、妙に怖くて…


見た目、音楽、展開などで、万人受けは絶対にしないでしょう。
特に絵柄的にもこの時代で見た目の華やかさだけなら絶対に流行る事は無いと思います。
ですが、そういう所は気にせず、どこまでも面倒な人間関係を見たい方、どこまでも現実的な拗れ方を見たい方。
都合の良い奇跡は起こるかもしれないけど、そんな現実は真実には無い…そういう部分を物語に求めている方。
そのような方には是非オススメします。
作中の彼らは持ち前の面倒臭さで全力で満たしてくれる事かと思われます。



『システム、演出』
LiveMaker基本操作は揃ってます。
文章の読みやすさもあり読むだけならストレスはないと思います。
スキップが早めなのでメインルートだけなら問題なく回収できます。
(エンディング数が多いのでコンプ派には辛いと思いますが…)
演出なのかバグなのか不明ですが、穂摘の見せ場なのに必殺技名が隠れてたのは面白かったです。
選択肢は最初はそうでも無いですが、後半重要度が高いです。
エンディング回収時に垣間見えましたが主人公、夏目が堕ちる闇の選択肢と主人公らしく持ち上げる光の選択肢のメリハリが効いていて…
「現実的に考えたらここは折れる」のような選択肢を選ぶとどんどん拗れに拗れてズンドコへ。
「いや、主人公なんだ!頑張れよ!!」のような選択肢を選ぶとフィクションめいた都合の良いエンディングへ。
その部分は物語を選択している感が伝わり好きでした。
選択肢分岐は凄く多いです。
その選択肢での沢山の分岐が面白いのですが、同時に回収に関しては面倒でした。


『音楽』
他のフリゲでも聞いたことがない曲ばかりでした。
オリジナルでしょうか…
特に曲として突き抜けた曲は無かったですが、BGMとしては場面は損ねていませんでした。
SEは痛いシーンのボコボコ感好きです。
BGMが良い曲かは別として、どんどん慣らされて聞いてると、
「あぁ、Rensaだなぁ…」
とはなったので雰囲気には合ってはいたのだと思います。


『絵』
一枚絵が上手い…とは中々に言えないですが、所々で好みだと思う絵がありました。
穂摘のお風呂シーンと沢田の妹との手を繋いだシーンは好きで。
背景はおそらく全部オリジナル。
立ち絵も、こちらも上手いかは別として、欲しい時に欲しい表情がありました。
特に負の感情の方は場面も相まって中々に強烈です(特に小道)
雰囲気が全体的に統一感がありました。


『物語』
とにかく完結で読みやすかったです。
一瞬画面に写っただけで状況を把握できてサクサク進める文章でした。
文章によるストレスは全く無く、描写も分かりやすく凄く読みやすかったです。
そして、構成…というか人の気持ちの流れが本当に凄かったです。
「ここでコレが起こった」→「だからこう考えてこうなる」
というような流れが本当に矛盾がなくて…
でも、最初の位置と現在居る位置を見ると「どうしてこうなった…」と頭を抱えるくらいに拗れており…
「今正しいと思う事が後に正しいとは限らない」
という部分が上手く描かれていました。
気がついたらもうどう修正をかければ元に戻るのか分からない所まで拗れてました。
1ルート中々に切りどころが見つからなかったので引きこまれていたと思います。
笑いの部分では若干スベる所もありましたが、負の人間の描き方が上手く面白かったです。
ここまで人間らしいキャラも中々に居ないと思います。
キャラクターも、ムカついたりイラつくような思考のキャラが多いですが、
「なんでそういう行動をとれるんだよ!?」
というキャラは居ても、
「なんでそんな事考えるんだよ!?」
となるキャラは居ませんでした。
好きか嫌いかと言えば正直関わりたくはないですが、でも、その関わりたく無い部分に他人事とは思えず…
(色んな意味で)いい性格している奴らばかりです。


『好みのポイント』
本当にこの作品極端でした。
絵、音楽、演出方面ではあまり良かったとは言えないです。個性はありますが。
けれども読み易い文章、各キャラの心の動き、そしてそれによって引き起こされる話の流れが本当に秀逸で。
色々と引っかかる所はかなりあるけれども、それを巻き返すほどに話が読みやすく面白かった!
そんな作品だったので凄く満足しました。
確実に人を選びますし、好きな人はとても少数だとは思いますが、この手の、
「人間とは、面倒臭い」
のような作品が好きな人にはたまらないかと…
正直、ノベルゲームプレイ初期の頃にプレイしてたらかなり影響されたと思いますので、ある意味今プレイして良かったです。





以下ネタバレ含めての感想です





人は一度でも寄り掛かれる先を見つけてしまうと、途端に脆くなる生き物である。


この作品の登場人物は皆、依存型です。
登場時は一人の足で立っていましたが、物語が『れんあい』に向けて加速するにつれてどんどんダメな頭角を現して行きます。
寄りかかる先を見つけ、楽を知ってしまったが故に、ズルズルと自分の依存先を他の何を犠牲にしても…時には依存先そのものを攻撃してでも守りぬこうとします。
「この人が必要なんだ!」と思いつつ「その人の気持ちそのもの」には興味がなく自分をとことん優先し尽くす…そんな人達の物語でした。


とんでもないと思いつつ、でも同時に依存が完全に悪だとは言えません、人は生きる中で何かしらどこかに寄りかかっては生きているものだと思うからです。
では何故彼らがここまで駄目なのか…
それは彼らが依存してしまうとその依存に気付かず、周りが見えないからです。
依存していても悪い事ではないというのは、その依存を自覚し、理解しているからこそ悪いものではなくなると思います。
理解しているから、依存している人や物を労る、寄りかかっては居るけれども、踏み込んでは行けない先も判断出来るのだと思います。


彼らにはその依存への自覚が無いのです、彼ら自信、自分の気持ちが見えていないのです。
彼ら…特に問題のある小道、実原、香川の3人ですが、小道と香川は周りからの熱い支持や今までが完璧過ぎたが故におそらく欠点に気付かず、実原は家庭環境が劣悪で自分の気持ちを押し殺して来ました。
皆、自分の気持ちに気づく機会を様々な事情から失ってきた奴らばかりなのです。
端的に行ってしまえば彼らとても『子供』なのです。
高校生だからという『子供』ではなく年に見合っていない『子供』。
そんな彼らが『れんあい』をする…よく考えるとこの時点でもう嫌な予感しかしません。
そんな子供な彼らが自分の気持ちを自覚できずに『れんあい』に振り回されていく…
自分の居場所を守るために今まで善性で接してきた相手を簡単に突き落としていきます。


最低だと思います、ドクズだと思います、プレイ中何度もリアルに腹が立ちました…
でも腹が立ちつつそこが彼らの本当の性格で「悪」の部分だとは思えませんでした。
彼らが「友達」として接してきた部分もまた彼らの本質だと思うのです。
ここまで極端ではないとしても、友達に対して煩わしいと思ってしまう気持ちはあると思うからです。


Rensaはこの善悪がキッチリ分かれているわけではない、
「自分に余裕が有る時は周りのどんな事でも笑顔で許せる。けれども、一度余裕が無くなると人はどんな物でも敵にしか見えなくなる。
 しかし本性が悪という訳ではなく、そのどちらも本質。ただその時に、余裕が有ったか無かったかだけ」
という人である以上どちらも備わっている性質を上手く描いていたなぁと感じました。


そう、彼らは今まで築いてきた3人の中に1人、外から今まで無かった恋愛要素が入ってきてしまい急な出来事、自分の居場所の変化と自分の居場所の喪失感に余裕を失ってしまっただけ。
そして、その余裕の許容範囲が狭いほどにまだ子供であった。
子供であったが故に漢字の『恋愛』ではなく平仮名の『れんあい』で、『れんあい』に振り回されその依存性も加わりどんどん今の立ち位置を奪われ余裕を失い皆が性悪の方に傾いていってしまう物語。
そんな物語だと感じました。


上記で『子供』だと書きましたが、こういう『余裕』には年齢がアテになりません。
どこからが大人かなどラインがない以上、当然のように20を超えたからと言って皆が皆精神的な大人では無いと思います。
かくいう自分もそういう人間の一人です。
小道はとても面倒くさい怒り方をすると思いつつも、余裕が失われた際に彼女のような怒り方をした事がないと言えず、彼女の気持ちが理解出来ないとは言えないです。
(流石に物理攻撃的な面では無いですが)
この線引が個人によって違う以上、誰もが『れんあい』によって引っ掻き回されます。
ニュースやワイドショー…果ては身近な噂話、下手をしたら自分の身の回りでこのようにグズグズに拗れていく人も居ないとは言い切れません。
このRensaの拗れ方がとてもフィクションに見えなかったのはその、
「たとえ大人でも自分の気持ちに自覚できなかったり余裕が無ければ簡単に『恋愛』は『れんあい』になり拗れていく」
という部分があるからだと思います。


そもそも…『恋愛』なんて無く、皆本当は『子供』で、皆いつ自分の立ち位置も、友情も何もかも崩れていくか分からない『れんあい』をしているだけかもしれません…
この物語は『れんあい』がトリガーでしたが、いつ、どこで、何らかの要素が加わり、周りが余裕を無くし、自分の居場所を失うか分からない…世の中はそういう事で溢れています。
拗れに拗れたた自分の道を振り返った時、「あそこでアレが無ければ」という部分が多すぎて、どうしてここまで拗れたのかもう分からない…そん事が多々あります。
Rensaはそんな、「もう何処で間違ったのか分からない…そもそもその時は間違いでは無かった」という拗れに拗れた現実的な人間関係を魅せる、そんな作品でした。



『各キャラとそのルート感想』


【夏目有生】

主人公。
とても平凡で突飛つした才能などは無いですが本当に良い奴です。
おそらくプレイした人からはとても好感が高く、同時に周りがドクズな奴らばかりなので、
「何でこんな奴らと一緒に居るんだ!お前みたいな良い奴には他に良い人間が沢山居るから放っておけ!!」
となると思います。
彼のそういう行動が余計良い奴の部分を際立たせ、同時に苛つかせる要素でもあります。
この作品、主人公の周り…特にメインルートを担う、小道、実原、香川の3人は本当にロクでもないです。
そのロクでもない中に居て、彼らを救おうとする行動を取っているからこそ、夏目は良いキャラに見えます。
ですが同時にそこが彼のダメな依存部分です。
他の3人が『恋』への依存なら、この夏目は『友』への依存をしているように見えます。
夏目は周りがパーフェクト過ぎて自分を卑下しています。
「こんな凄い奴らが俺の友達なんて!」
と、他がドクズな行動を取り、夏目の方が人間的に立派なのに自信が無く、友達から離れられません。
夏目は『友』に依存し卑下する事で今の安定の関係を築いた人間です、そこから見ると彼は他と違い、
「依存で関係を構築させており、初めから依存しているキャラクター」
となります、なので夏目が『友』を失ったら(夏目の立ち位置が)破滅するのも当たり前だと…
『れんあい』する事で夏目は依存先の『友』を失い破滅し、他キャラは『恋』を手に入れて破滅していく…
でも同時に今までの味方が敵に変わった状況だからこそ、こんな逆境が訪れたからこそ、夏目が本当の力を発揮していきます。
夏目が『れんあい』の渦中に巻き込まれる事は、結果、自分の強さを知り自己肯定していく事と同義でもあると思います 。
「友のままで居続ける=夏目が自分を卑下し続けて関係を継続させる物語」
そこを考えるとこのRensaは『友』に依存していた夏目が「れんあい」により自己肯定し、成長する物語である。
そんな風に感じました。


【小道朝】

クイーンオブ面倒くさい。
本当は香川の事が好きで夏目に近付き、実原は自分の引き立て役として側に居た…
基本、香川や自分の認めている人間以外は下に見ており、夏目も下に見ている故に友情面でも恋愛面でも所有物扱いしている。
そして真実はボカしつつも彼女自身ルートで香川とのNTRが発生する。
この時点で既に男性向け作品のヒロインではない性質です、少女漫画でも、
「主人公のお友達の女に子が実は…」
ならありますが、主人公には持ってこないキャラでしょう…
そんな子が男性向け作品のヒロインなのです、とんでもないです。
そういう性格にもある上で、当然の如くややこしい思考回路をしています。
色々とありますが、彼女の面倒臭さって、
「友人の時には凄く良い奴で気が合っていたのに、恋愛になると一気に女がむき出しになる所」と「怒った時の現実感」
だと思っています。
前者は現実ではあるあるなのですが中々にフィクションでお目にかかれないキャラだと思います、特にギャルゲーでは。
何故かというと、ギャルゲーって既に最初に接している時点で女なんですよ…
「可愛い女の子を攻略する」という前提なので、「女の子」である事が当たり前にあります。
しかしこの小道、恋愛感情に発展するまでは全くもって女っ毛がありません、皆無です。
口調も、見せてる性格も殆ど男友達と言っても間違いないです。
そんな彼女が恋愛感情を持った瞬間に一気に嫉妬や独占欲、そしてヒステリックさという女らしい部分を全てぶつけてくる…
そりゃもう面倒です、今まで見えてなかったややこしい部分が見える分余計に、
「俺が好きになった、今まで見てた小道ってなんだったの!?」
となります。


そして後者ですが、彼女、怒った時に全てを相手の責任にします。
「お前がしっかり見てなかったから」「お前がアレをしたから」
と、何もかもを主人公や周りの責任に転嫁するのです。
「誰かのせいに押し付ける」
は頭に血が登った時にしてしまう行動だと思いますが、それに加えて彼女はその押し付ける責任部分に、
「相手がどうしても自分では否定出来ない、相手自身も悪いと思っている事柄」
を引き合いに出して転嫁するのです。
「お前のせいだ、お前が○○だからこうなったんだ!!」
と…○○の部分には夏目の様々な後悔が入ります。
「あの行動が間違ってた」「あれをしなければ良かった」
そんな今になって引き合いに出されても困る上に、後悔している自分の悪い点を彼女は相手の責任として押し付けてくるのです…
「誰かを怒る時には自分を棚に上げないと怒れない」
と聞いたことがありますが、ここまで棚に上げて上げて上げて、責任を押し付け、その上自分の非は見ない。
そんなリアルな怒り方をするヒロインギャルゲーで初めてみましたしかもメインで。
その上で彼女はその「責任逃れ」を最後の最後まで自覚せず改善せず。
周りのゴタゴタで彼女の性格自体にはお咎めは無く、夏目のおかげで物事が進みエンディングへ…
彼女のエンディング後凄くモヤモヤしてたのですが、この事実に気付いた時に、なんてエンディングだろう…と思いました。


そんな普通だったらフィクションでは排除されるだろう嫌われる要素の「面倒くささ」をしっかりと持ち、その「面倒くささ」で行動するヒロイン…
そんな彼女と結ばれるエンディングが正史でifがある…
好きか嫌いかは別としてしっかりと記憶に刻まれたヒロインとなりました。


【実原ゆき】

流され系ヒロイン。
とにかく彼女、コロコロコロコロと流されていきます。
最初に香川に惚れており、付き合い、そこからの分岐という中々にギャルゲーで見ない構成の彼女。
彼女には最初から最後まで自分というものがありませんでした。
今時に憧れてはいるけれども、ただ、流れる水に流されるままに流されているだけ…
とてもどこにでも居そうな子です。
しかし、このルートに関しては小道が完全に当て馬で可哀想だとも思ってます。
小道と付き合いつつ、気持ちは実原が好きで、香川との心の距離に耐えかねた実原の誘惑に流される…
完全に流され者同士のルートで、気持ちは分からなくもないですが、行動に移した辺り夏目もクズかったです。

香川には気持ちが全くなく、夏目は自分を好いていてくれると分かると否や、夏目を誘惑しにかかり、友人の彼氏(一応)と関係を持っても「自分と居てくれて嬉しい」と小道の事を全く考えずに言い張る彼女には恐怖を感じました。
家庭環境のせいで愛に飢えていたという部分があって納得しかけますが、
「両親の浮気で家庭崩壊し、愛に飢えている」→「自分は友人の彼氏の本当の気持ちを知り、奪ってその愛で満たされる」
この「両親とある意味で同じ事をしているのに全く罪悪感が無い」部分に自分の平穏の為ならば無自覚に人を傷つけられる姿が垣間見えて…蛙の子は蛙…
Rensaは問題児ばかりですが素で友人にも一番したくないタイプなのは彼女でした。
このルートに関しては結構本気で例え同情で近い存在だから惹かれたのかもしれないですが、
「夏目…彼女の何処に惚れた…?」
となりました。


あと、よくよく考えたら、その蛙の子は蛙の部分は無自覚なのと、流され系な所は改善していないですよね…
いつ、どこで、また自分の平穏の為に誰かを蹴落とし、誰かを利用するか分からない部分がある子だと思います。


【沢田真由】

女神。
いや、彼女も多分他の作品に出てれば凄くマイナスイメージヒロインだったと思うんですよ…
真面目で融通が効かな過ぎて、そのせいであれよあれよと標的になった上で自分では改善出来ない上に依存系。
他ルートでは地に足の着いたしっかり者の委員長なのに、自分のルートでは夏目に捨てられると自害するエンドもある。
確実に他ゲーだと地雷ヒロインで、嫌われてる事でしょう…ただ、このRensa、他が酷かった!酷すぎた!!
他のヒロインが酷いので相対的に彼女がとてもまともに見えます。
その上で依存してしまうのにもまた納得してしまうというか…
ジワジワとイジメが広がっていく状況、そして標的が夏目に変わっていくゆっくりと侵食されていく流れ。
夏目の行動と同時に虐めている側が沢田→夏目へと標的を変え動く流れが上手く、この状況だったら夏目に依存してしまうのも仕方ないと納得しました。
そして何よりも彼女は他キャラでは見られないブレない善の部分。
「妹を持った優しい姉」
が最初から最後まで一貫して描かれていた部分がまともに見える部分だと思います。
同時に一番まともですが、リアリティ的なインパクトでは他に劣っていたとも思います。
まぁ実際に居たら仲良くしたいのは沢田委員長一択ですが。


【楠穂摘】

ほづ師匠。
他ルートでは頼もしいのに、自身のルートではRensa安定の『れんあい』したら面倒くさいキャラになりました。
彼女の場合は『れんあい』で面倒くさいというよりも、その実直さ、負けず嫌いさで拗れていくので他のヒロインとまた気色が違います。
闘いでの自分の目標であった男性に再会、負けた事により自分の不甲斐なさを痛感し、
「主人公と遊び、怠け、鍛錬を怠っていた事が敗北の原因だ」
という形に結びつけます。
彼女もまたある種の責任転嫁ですが、彼女の場合は鍛錬を怠った理由もまた真実である為に否定出来ませんでした。
それにより、
「鍛錬を邪魔する夏目の存在は邪魔である」
という構図になり、楠流の本来の理念である「大切な人(この場合は夏目)を守る事」よりも「強さ」が優先され、そして「その大切な人のせいで強く成れずに敵とみなしてしまう」。
その本末転倒になっていく姿は「れんあい」とは別の拗れ方で…
主軸とは違い、メインルートから考えると蛇足にも見えますが、拗れていく過程の描き方は本当に凄いと思いました。


このルート地味にヒヤヒヤしたのが「伊吹一葉」の存在。
彼女が強さを求める最初の理由で、彼女が子供の頃から追い求めていた存在。
そんな大きな存在と再会し、負け、彼女は再び一葉の後ろ姿を追い求める…
コレ地味に焦りました…
だっては一葉さんは、ある意味今の彼女を構成したと言っても過言ではない存在です。
そんな存在に再び目を向ける…そんなのある意味勝ち目無いじゃないですか!
一葉さんが穂摘に全く女性として興味が無かったから良かったようなものの…
これで女性として認識していたらおそらくはそれこそまた「れんあい」での拗れた話が展開されていたと考えると…
良かったような、見たかったような複雑な心境になりつつも、普通に良いお兄さんで良かったです。
(穂摘のルートは完全にエンディング回収出来てないのでルートによっては分かりませんが…)


ラストで何となく仄めかされましたが、おそらく一葉さんの彼女さんが奇跡の使い手…という事で良いのでしょうか?
まぁこの作品、奇跡はおまけ、彼女の気まぐれで、現実感溢れる道が真実という構成なのが余計にリアルなのですが…


【香川直人】

「クズのくせに、ゴミのくせに、無能なくせにィ!」
この台詞をそっくりそのままお釣りを付けて返してあげたい…
彼の問題点、それはおそらく親密的な相手などへの感情の欠落にあると思います。
育てられ方か、天才故に持って生まれてしまったものかは分かりませんが、彼は本当に天才型です。
彼にとって感情<効率なのです。
自分の効率の良い方法を即取捨選択、計算出来、それに乗って行動しています。
でも、同時にそこに感情が入ると一気にポンコツと化してしまうのです。
感情が入った他人の行動や状況には全く対応出来ません、理解が出来ないのです。
学問方面は天才ではあるけれども、人間関係においては本当にアホを体現したようなキャラでした。


SSで分かりましたが、彼は嫌味なく、何故自分に好意が向けられるのか理解していません。
本当に効率のみで生きて来たような地の文があります。
彼はメインルート後、夏目の強さに惹かれ、自分の身近な人には救いの手を差し伸べようとしています。
しかし「もし、実原が本当に万引きをしていた際に彼女へ救いの手を差し伸べたか?」。
これに関しては絶対にNOです、彼は彼女が万引きをしていなかったから一緒にいるのです。
この現状がある以上、彼はやはり「自分の人生において負になる部分は簡単に切り捨てる」そんな男です。
夏目に惹かれた部分もおそらくは「夏目の強さは自分の人生において役に立つ」そう判断した上で夏目を目指しただけだと思います。
そう、彼は何処までも自分主体で生きていくでしょう。
彼の生き方が少し周りを見るようになっただけで、彼の価値観は全く変わっていないと思います。


もし、また身近な人物が万引きなど「社会的、自分にとっての都合の悪い悪事」を働いた際には夏目のように「一度親身になる」事を彼がするのか…
そして今度はその悪事が真実だとしたら…彼がどのような行動を取るか想像出来る辺りに天才ゆえの容赦の無さを感じます。


【西川清美】

まぁイジメっ子ですが、SS読んで、
「実は気付かずに夏目が好きで仲良くなった沢田をイジメた」
という分かりやすい子です。
この真相がなくても結構、性格的な分かりやすさがありました。
夏目に対してのツンデレ感といか…虐めるのは最低だけれども根は素直。
「自己中心的で我儘」ではあるけど、それはハッキリと見て分かる範囲。
見て分かるなら回避する事は出来る、問題なのは表向きでは見えない面倒臭さ、というのを体現するかのような存在でした。
分かりやすく記号や一言で片付けられるキャラというのは分かりやすい故に面倒ではないです。
一言では説明出来ない現実的な面倒臭さを持っている…
そんな女性陣がヒロインのRensaで西川さんは限りなくフィクションに近い位置に居た存在だと思います。



で、最後に。
この物語、「夏目の成長物語」と書きましたが、メインルートの香川、実原、小道は基本根本から成長していないんですよね…
プレイ後に地味にモヤモヤが残ったのですが、何でだろうと思ったのですが、
「結局、自分の欠点には向き合い治してはいない」
という部分に気づき「あ…」となりました。
香川は「計算し、優先順位を付け、効率が悪いと切り捨てる生き方」を捨てないでしょう。
実原は「流される所は流され、自分の平穏の為なら身近な人間の感情は無邪気に踏み躙る」でしょう。
小道は「自分の依存性と非を相手の責任に転嫁する悪癖は自覚していない」ままにエンディングを迎えます。
上記で、
「Rensaは『友』に依存していた夏目が「れんあい」により自己肯定し、成長する物語」
と書きましたが、コレは基本夏目だけの成長物語なんです。
非を認めはしたけれども、自分の負の部分に自覚していない。


夏目は自己肯定して成長し、もう『友』でも『恋愛』でも全く問題ない。
では…他のキャラは?他のキャラは自分に自信を持ち、自分の気持ちを理解して成長したのか?
メインルート後のある小道ですが、自覚しないまま「れんあい」しても大丈夫なのか?


そう考えた上でメインエンディングが小道とのエンディングを迎えた上で小道とのifがある所を見ると…
ifがどうなるか…凄く楽しみです。