ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【Lagrima】感想

【女性向け全年齢】



2005年12月30日発売
Enoichian』様 ※リンク先公式HP
【Lagrima】(PC)
以下感想です。








広そうに見えつつ手が届く範囲の人間関係で纏まる「きみとぼくとのちいさなせかい」のような世界観。
それでも軸は「その小さな世界から大地に捧ぐ大地讃頌」の様な話でした。



『全ての命は、大地の想いで育まれる。
 あの海でさえ、その底には大地を抱いているものを。

 その島には、巨大な一本の樹があった。
 精霊が宿るというその巨大な樹は『聖譚樹』と呼ばれ、島を護っているという。
 精霊の加護を得るために、100年に一度聖譚樹の前で行われる儀式『ミゼレーレの儀』
 精霊神殿の奥深くで育てられた「レイソン」の称号を持つ巫子は、十六の歳になると、その儀式を行う為にラクリモーサ樹海を越え、聖譚樹の元へ旅立つならわしであった。
 当代のレイソンの巫子、キリエもまた、十六の歳を目前にしていた。
 しかし、神殿と諸侯の権力の対立から、儀式の妨害を目論んだ諸侯軍にキリエは拉致されてしまう。

 キリエを取り戻そうとする神殿武官の少年、カノン。
 レイソンの巫子の誘拐を目論む盗賊の一員、クレド
 偽りと痛みをまなざしに宿し暗躍する青年、レイキエム。

 様々な者達の思惑が入り乱れる中、キリエは唯一人のレイソンの巫子として、己が義務を果たすために聖譚樹を目指す。
 大切なものを護る為に。
 精霊の加護を失っては、人は生きていけないのだと信じて───……
 
 きみのたったひとつの、ねがいは、こんなにもせつなく
 はたされないやくそくさえ、いまもむねにあざやかで
 
 「信じてくれますか。貴方は……」』
(公式より引用)



最初に、とにかく雰囲気ゲー、ずっと世界観ゲーです。
なので、雰囲気にノり切れない場合はその時点でアウトだと思われます。
淡い世界観と淡い絵柄、そして神秘的な雰囲気の物語の乗り切れないとまず楽しいとは感じにくいです。


その点で言うなら世界観や雰囲気はとにかく好みでした。
世界観、絵柄、音楽…この作品を取り巻く雰囲気はもうハッキリと好みと言えるような淡さで…
最初から最後まで大地の大切さを描き、大地に感謝を捧げ続け、人間関係も重要ですが、それ以上に彼らが立つ世界を中心に描き、地の文が無いので説明が欲しいと思う人も居そうだと思いつつ、個人的にそこも世界観の構築にもなってて楽しく、基本的に主人公と相方の「君と僕」で世界が構築されてるので、二人の世界系が好きな人にはたまらなかったです。


見せ方も、色々と真相が明かされていくシーンや、その後の背景が森から荒野、そして最後に青い花畑に変わっていくシーン、そこから続くエンディングなどは展開も合わさり本当に溜息が出る程幻想的な雰囲気を出していました。


ですが、個人的な好みでは凄く好みでしたが、好み以外の部分で見ると引っかかる箇所もありました。


まず、CGには若干色無しが多いと感じたり。
わざとなのかもしれませんが、淡い色で誤魔化してるように感じた部分もありました。
あと、CGになると若干キャラの見分けが付きにくかったり…
ホワッとした絵柄は好みなのですが、わざと色を無くしているとは言えないくらいに色無しやボカした色で誤魔化していると感じた箇所もあり、好みでも少し手抜き感を感じた箇所が多かったです。


あとは文章も、物事がサクサク進むのは良いのですが、若干イベントだけで構成されてる感じも。
間にもう少し穏やかな日常会話や、お互いを分かり合うような会話が欲しかったなぁと。
イベント、はいイベント、みたいに進むので、キャラ同士が惹かれ合う部分が急だったり。
その上で地の文が無いので、凄い高速感がありました。


そういう細かい部分では気になった事が多いですが、それでも良雰囲気作品ではあると思います。
サクサク進む物語、淡い雰囲気、世界再生の旅、幻想的な音楽、そして、各ルートによって明かされていく様々な謎。
その手の雰囲気系作品が好きだったので本当にプレイしていて楽しかったです。



『システム、演出』
吉里吉里製。
操作に問題はないのですが、コンフィグのボタンが若干小さいと感じました。
クリックしにくかったです。
ゲーム中に特に突出した演出はないですが、EDに歌詞の二番が来るのはズルいですよ。
OPの一番とEDの二番、プレイして初めて意味を持つ歌詞など大好きなので凄く盛り上がりました。
ED数が多いので重要に見えつつも、基本一部ED固定なのと、ある程度決まった順序でのプレイ推奨があるとは思ったのであまり選択肢の重要性は感じませんでした。


『音楽』
BGMは歌含めて一曲一曲クオリティが高いと感じました。
BGMの雰囲気は、もう、満点。
サントラ所有していますが、
「Lagrima-きみがいる世界-」
は、OPで一番、EDで二番が流れた上で、フルの歌詞の意味がしっかりとゲームと繋がっていて本当に名曲です。


『絵』
オリジナル。
たまに誰が誰だか分からない時があったり、色など淡いですが、淡すぎる部分などが多かったです。
背景もオリジナル。
若干淡白な印象を受けましたが、写真加工が多い中、オリジナルでちゃんとファンタジー要素があり良かったです。
立ち絵は淡い絵柄で、どのキャラも儚い印象を受け、とても世界観に合っていました。
背景や立ち絵の雰囲気は凄く良いです、CG方面で少し手抜き感を感じました。


『物語』
読みにくさは無く。
ただ、地の文が無くほぼ会話のみの為に、時折状況が分からない場面がいくつかありました。
リスペクトだとは思いますが、もう少し説明が欲しいと思ったり、展開が早すぎると感じた箇所が多かったです。
構成はシナリオロックが掛かっているかは分かりませんが、ある程度流れに順番があるとは感じました。
カノン→クレド→レイキエムor魔女
で行かないと、全ての謎が綺麗に散りばめられたり回収されたりしないと思います。
ですが、この順序で行くと、とても綺麗な流れだとは感じました。
雰囲気さえ合えば引き込まれますが、合わない場合は最後まで合わないタイプだと思います。
イベントイベントと続くので、あまり日常パートがなく、掛け合いで笑う事は少なかったです。
もう少し日常パートがあっても良かったなぁとは思います。
キャラクターはレイキエムが立ち位置といい、行動原理といい凄く好きです。
…というかエンディングから見てもほぼレイキエムゲー。


『好みのポイント』
この世界観、雰囲気、そしてレイキエムEDのエンディングの入り方が素晴らしかったです。
EDで二番が流れる所など、本当に好みでした。





以下ネタバレ含めての感想です





正直言ってしまえばカノンとクレドが立ち位置的には薄い位置に居るなぁという印象。
クレドはEDによってはキリエとレイキエムの最後を看取った的な描写があるのや、クレドのルートでは結構な謎が明かされるのでそんなに薄みは感じませんが、カノンは立ち位置的にどうしても、
「この世界はキリエか世界のどちらかを選ばないといけない」
という…気付く人は即気付きそうですが、そういう世界の構造を「知らない」位置の人間で、その世界を救うためにキリエが旅立つという、ある意味お約束のEDを見せる為に居る存在で、初回ED以外は結構お役御免になってしまう。


どうあがいても過去の事柄から、キリエ、レイキエム、魔女、この3人が主軸になっている以上、キリエか、レイキエムか、魔女の誰か1人が消える事が世界の存続の条件な以上、残りの二人のルート以外でのお役御免感は仕方ないなぁと思いつつやっぱり残念だとは思いました。


あと、過去話などでの3人の関係がコロコロと入れ替わるのと、物語もサクサクと早く進むので若干早すぎて分かりにくさを感じたりもしました。


それでも、登場人物の重要度に差は出来つつも最後まで自分達の足を乗せる大地に感謝を忘れない温かい話だったと思います。


それにしても、実は女の子で、術をかけられていて男になっている…
確かに製作者様方が「BL…ではない…」と言葉を濁されたのも分かります。
BLではない、けれども乙女ゲーでもない…ボーイズゲーム。


キリエは正直、設定的に女の子でも良かったのではないか?とも思ったりもしましたが、リスペクト元と同じように目指した先がBL(ボーイズラブ)ではなくBF(ボーイズフレンド)だと思ったら、何となくキリエの性別の困難さも有りかなと思ったり。
女の子でも良かったのでは?という気持ちが強いですが、あの性別の不安定さがとても魅力的な所でもあるとは感じました。



以下、その…どうしても頭を過るリスペクト元だと感じた作品「花帰葬」と対比して思った事を。
花帰葬のネタバレも少し含みます。










発売時期と世界観と、そして構成が「花帰葬」を彷彿とさせ、どうしても「ただ似てしまった」とは言い難い感があるのと、それでも、大きな違いもあるとも感じたので何となく思った事を。
花帰葬クリアしたのが10年くらい前なので若干の食い違いはあるかもですが記憶を辿りつつ。


この「淡い世界観」と「地の文の無い文章」そして「どのEDでも必ず誰かが犠牲になる構成」この時点でかなり影響は受けているだろうなと思いつつ。
それでもLagrimaは花帰葬よりも「世界」に目を向けているなぁと感じました。


花帰葬は正直、「世界」よりも「人物」に焦点を絞っていたと思います。
箱庭の世界で、「必ず死ななければ成らない存在」と「殺さなければいけない存在」。
そんな「クソみたいな世界なんか要らない、何とか大事な人を生かす道を探そう」としたのが花帰葬
それに反し、「こんな世界だけれども、光り輝く物はある、世界は素晴らしい」としたのがLagrimaだと思いました。
花帰葬が、
「神に見捨てられた朽ちるしか無い世界」
なのに対し、Lagrimaは一言感想でも書きましたが、
「まだ神の居る讃頌される大地の有る世界」
だと。
なので世界に目を向けた分、人物が薄くなってしまったのかなぁと。
しかし、その人物よりも世界に目を向けた分、Lagrimaは世界への、大地への想いが大きいです。


現代に向けた環境破壊的なテーマも扱っており、花帰葬よりも少しリアルの問題に食い込んだ物語だと感じました。
花帰葬があくまでもファンタジーで、
「きみとぼくとのちいさなせかい、世界なんかどうでも良いから自分の大事な人を守りたい」
な感じだったのに対しLagrimaは、
「きみとぼくとのちいさなせかい…でもそこから見える人の奢りと歴史、そして最後に捧げる大地讃頌
だと、ファンタジーで有りながらも本質は現実に沿った物語だと感じていたり…


完全に好みの問題ですが、この最後まで大地に目を向けていた部分、実はかなり好みでした。
「世界と大事な存在が秤にかけられた場合どっちを取る?」系の作品の場合、「大事な存在」派なのですが、「大事な存在」を選んだとして「二人で生きれる世界が残っている」のも前提だと思っているので、最後の最後まで自分達が足を下ろす大地に目を向け、大地に感謝を捧げて「世界」を見ていた所は凄く温かみがあり…


花帰葬もとても好みの作品でしたが、Lagrimaの評価がある様々な場所でよく一緒に花帰葬の名前を見かけました。
花帰葬よりは…」と書かれている所が若干多かったのですが、個人的にはそんな風には感じず。
どちらも素敵な世界観の中で、花帰葬は個人的にメインキャラ以外の人間の冷たさと雪の世界観の冷たさ、最後のメインEDでは春を迎えますが、大きな世界観で見るなら雪の冷たさ、その中で感じる暖かさ…青白い色の中に一つある桃色の花を連想する世界観、雰囲気で「人物」を中心に扱ったのに対し。
Lagrimaは人は確かに冷たい…けれどもあまりその冷たさを感じさせず、常に柔く全体的に温かい世界…
常に黄緑色の温かい、最後には全てが緑に包まれ、常に巨木に優しく守られている、そんな世界観、雰囲気で「世界」を中心に扱い、そんな風に常に「世界」を大事に扱い最初から最後まで一貫して「大地に感謝をする」温かい世界観がとても好きでした。