ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ】感想

【男性主人公全年齢】



2011年08月22日発売(一章)
2013年05月01日発売(二章)
2014年05月14日発売(三章)
2014年11月02日発売(四章)
2015年06月07日発売(最終章)
2015年06月07日発売(Extra)
人工くらげ』様 ※リンク先公式HP
アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ】(PC) ※リンク先DL可能ページ
以下感想です。








究極のノベルゲームとは…?



『無数の世界、無数の自分を犠牲にして、
 僕は究極のノベルゲームを作る』
(公式より引用)


※こちらは1~5章+EXの全編プレイ後の感想になります


とある大学のアニメ、漫画系統のサークルに所属する主人公の山賀、4回生で同人作家の野之原、理系博士の機見。
彼ら3人は昔サークルで毎年行われ、今は途絶えた、
「火の七日間」
という。
「7日間連続でサークルメンバーの家に泊まり込みアニメ鑑賞を行いながら飲めや歌え(?)やのお祭り騒ぎ」
を山賀の「やってみたい」という気まぐれで始める。
7日間ただアニメを見るだけでいいのか…と思い創作の話をした際に、野々原に流されるままノベルゲーム制作を始める事に。
「部活動もの」「東方二次創作」「SF(すこしふしぎ)」
3つのジャンルから作りたい作品を選び、「完成」を目指す。
ノベルゲームゲーム制作を決意し、一旦着替えなどで家に戻った際、家のポストに青い封筒が投函される。
封筒を開けると彼の前に浮世離れしたブカブカの洋服、青い瞳の「妖精」の少女が現れた。
彼女が言うには山賀は、
「アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ
という即売会イベントに「当選」したというらしいが…


公式の引用の部分で分かる方は察すると思いますが本作はSF物です。
ただし、SF物として見るとかなり思ってたのと違った印象を受けました。
「急速な盛り上がり」
「大きく動く展開」
「ブレない構成や主軸」
などが好きな人には結構思うものがあるかと思われます。


あと、「東方二次創作」とあるように作中にシューティングゲームの東方の話が盛り込まれています。
知らなくても何とかなる範囲かと思われますが、知らないと若干置いてけぼりをくらう感じがするのと、
「オリジナルの主人公が居る話」
で、一応それも、
オリキャラがいる時点で覚悟を決めないと…」
みたいな会話があるのでスパイスにはなっていますが好きだからこそ色々思う所がある方も居るかもしれません。


それでも、これもまた作中で言われる同人ならではの「尖っている」部分にも見えたり。
特にノベルゲームの見せ方、
「漫画やアニメではどんなモブでも必ず絵が入るけど、ノベルゲームはモブに絵が必要無く、絵がないだけでモブだと分かる」
「二次創作で視点がいきなり変わって創作オリキャラが主人公になるのは良くも悪くも同人的で尖ってる」
「文章では誰が誰だか分からなくても立ち絵が出来ると一気に分かりやすくなるノベルゲーム的な感じ」
の部分などには、普段から読んでて何となくでは感じつつも、言われてみると「そうだなぁ」となる部分が多々ありました。


意図的なのか、章によってツールが違ったり。
作者ご自身が色々試したかったからかは分かりませんが、この仕様も、
「ゲーム作りの際のツールや仕様をどうするか選んでる時の主人公の葛藤の表れ」
のようにも見えなくもなく。
「ゲームを作る話」
としてみるとツールや仕様が毎章バラバラなのも色々感じた部分があります。


そんな感じで普段、流してては気付かないような事、
「当たり前に居た、有ると思ってた場所から少しづつだけど皆動いて別を目指す」
みたいな雰囲気。
ゆっくりだけど確実に動いて気付いたら別々の道に行ってる。
大きな動きは確かに少ないですが、小さな動きの中、振り返ると全く違う場所に居た。
どの動きも小さいけれど、確実に動いてはいる、同じ場所には居られない。
そういう感じのとても細やかな描写が好きな方には多分たまらないと思ったり。
見逃してしまいそうな小さな事にでも目を向ける様な描写はとても好きでした。



『システム、演出』
1章 NScripter
2章 LiveMaker
3章 LiveMaker
EX  LiveMaker
4章 AIRNovel
5章 AIRNovel
で別々のツール仕様です。
1章は文字のスピード変更が出来なかった所に苛々を感じたり。
5章では終わり方が終わり方だったので分岐が有るのか悩み、探す際にスキップが遅いのが気になりました。
あと5章での作中作品の文字表示がガタガタで見づらかったです。
パッチも無さそうなので履歴で補完しましたが、主軸となる部分だとも思うので雰囲気的に辛かったです。
演出は3章の見せ方はとても好きでした。
ただ、通常の文字が読みにくいと感じました。
キャラの顔を見せるためだとは思いますが、あそこまで文字表示にするなら全面文字表示でいいのでは?と。
作中作品との見せ方の違いかもしれませんがどうも気になりました。
本編にリアルな感じを見せたいのなら本編を全画面文字表示で、作中作品は文字ウィンドウをそれぞれでデザインを変える。
もしくは、キャラの顔を見せたいのなら本編と作中作品どちらも文字ウィンドウでウィンドウデザインを変えるでいいのでは?という気がしました。
選択肢としては1章にのみ。
重要に見えますが…色々見た際に「ゲーム的な分岐点」的な重要性は低かった気がします。
ツールが毎回変わるのが面白かったです。
深読みすると違いも面白く感じますが、4章からインストール仕様になったりで使う分では面倒だった気がしました。


『音楽』
BGMは素材曲で少なめ、無音が多いです。
雰囲気としての無音は良いですがBGMで見ると少なかったです。
何度か本当に音が出てないのか確認しました。
逆にSEは自然音の多様的に良かったと思います。
蝉の声、ガヤの声などでSEの方に拘りを感じました。
BGMが少ないのが雰囲気に合う系の作品ではありました。
あと、盛り上がり箇所のBGMは良かったです。


『絵』
背景は写真加工のみですが、使い方が上手な気はしました。
背景での「これは現実」「これは作中作品」などはかなり分かりやすかったです。
立ち絵はポーズが一人一枚で表情差分は少ないです。
作中作品との絵柄の違いは好きでしたが、絵としてみると少ない印象。
あ、でも妖精さんの鋭利な目つきは好きです。
あと作中作品のオセロ部の山崎さんは見た目好みです。
その表情が少ないというのが逆に現実感があり、雰囲気はあったと思います。
まぁあと色々と見ると細かったり。


『物語』
情景描写はいいのですが、心理描写がどうも…
こう…ガッツリよりもボヤッとした心理描写でした。
個人的にガッツリが好きなので感情移入しにくかったです。
あと()の注釈が異様に多かった気がしました。
そして構成は結構ブレを感じました。
雰囲気に引き込まれないと多分、
「で、本題は?」
みたいになるかと思います。
その雰囲気への引き込みは個人的には1、2はそうでもなく。
むしろオタ会話でダレるのですが、3章から一気に引き込まれました。
ただ、3章で引き込まれたので、最後は引き込まれた箇所と違う展開で下がっていった気がします。
オタ系の会話は面白さが分かれるというか、元ネタを知らないとクスリと来ない系だと思われます。
途中の戦隊物系(だと思われる)のの比較は結構好きですが…良くも悪くもネタが20代後半、30代前半の方に偏っていました。
確かに現実の作品を引き合いに出したら、
「○○は○○で良かった、魅力的だった、だから○○みたいな表現が好き」
という部分に納得感は出るのですが、同時に知らない作品とただ冷めるかと。
世代に合わない人には「知らない」or「作品名は知ってるけど…そんなに印象ない」の二択だろうなとも感じました。
現実の作品ではなく作中作のアニメでの…オリジナル作中作品でのオタ会話の方が入りやすいのと作中作品をもっと知れたのでは?という印象でした。
作中に出てくるオリジナルアニメがどんな物かも結局よく分かりませんでしたので。
ただ、構成や展開はガタツキつつも独自性はあったと思います。
良くも悪くも野々原ゲーな気がします。
機見さんの方に靡くと多分色々思う所が…
でも、機見さんのプレイベートをわざわざ友人には言わない所は個人的にリアルさを感じました。


『好みの部分で思った所』
3章の盛り上がりが好みなのと、一部分好みだった雰囲気がありました。
最後が大分思ってたのと違いましたが、3章は本当に好みだったので。
あと基本現代系の作品で雰囲気で惹かれる事は無いのですが、ゆっくりと街を歩く感じ、作中作品や主人公の故郷から感じたノスタルジックな、
「子供の頃の思い出」「大人になっても忘れてはいなかった物」
の様な雰囲気が好きでした。





【以下ネタバレ含めての感想です】





…で
「究極のノベルゲームとはなんだったのか?」
という気持ちが先に来ました。

途中で、
「同人とは良くも悪くも尖ってる」
みたいな言葉がありますが、まさにその通りの作風。
で、そういう言葉がある分、深読みはするのですが、同時にズルいですよね。
その言葉がある以上、
「コレは同人的に尖ってるんだ」
みたいな所で解決出来てしまうのがなんとも。


まぁそういう主題を含めて、尖ってました。
構成は流れとして見ると、


「お、並行世界でゲーム作るのか?」

「世界が交わるのか!?」

「危機回避など盛り上がってきた!!」

「あれ?元の世界にあっさり戻った…」

「何か恋愛っぽい…」

「え!お前の作品が出来ればいいの!?イベント開催しないの!!?」

「並行世界のゲームは結局描かれないのか…」

「結婚した…」

「で、究極のゲームは…?」


みたいな感じで、究極のゲームから遠ざかった感じが凄かったです。
「それぞれの世界の主人公がそれぞれで意見を出しあい究極のゲームを作る」
という作品として見るとコレジャナイ…となり、
「平行世界を渡り歩き危機などを回避するSF」
という作品として見るとコレジャナイ…となり、
「じゃあ恋愛物!」
として見ると恋愛なのに野々原のみで機見さんルートは無い上に機見さんはお嫁に行くコレジャナイ…となる印象。


じゃあコレは何のゲームだったのか、
「同人的にやりたい事をぶっこんだ」
はまず前提として、あと、
「ゲームを作る話」
として見るとこれがゲームである以上どんな気になる部分も、
「尖った事がしたかった」
という本編の言葉で片付くのでそれは抜きとして。


恋愛物でみるなら、
「山賀と野々原の…関係は同じでも距離は少しづつ違う二人を描いた物」
であり、SF物で見るなら、
「世界が違えば同じような関係でも全く違う在り方、アプローチの方法になる事を描いた物」
であり、究極のゲームで見るならば、
「究極のゲームとは子供の頃の作品を完成させる事」
である、つまり、
「作品を完成させ、発表の場で出す」
という事なのかなと思います。


ネタバレ無しでも書いた通りノベルゲームの表現方法で言われてから「おお」と気付いた部分。
オタ系の会話はネタを知らないと面白くはないと思いつつも、機見さんへの「東方」の説明の仕方といい、作品を知らない人への説明はリアルで良いなと感じたりしました。



『各キャラ感想』


【山賀 真人】
主人公としての印象は薄かったです。
ただ「子供の頃の作品を完成させる」の部分で、
「何かをちゃんと完成させる」
所、パラ子がイベントは不必要といった際の、
「それでも作品発表の場は設けたい」
という主張をする所でみるとけっこう凄いとは感じました。

でもバス関係も時刻表関係で交渉したりしてますが気持ちは分かるけど交渉しても難しい物は難しいだろうと感じたり。
あと、各世界での野々原との関係での小さな違いに距離での対応の違いを感じたりしました。
近ければ近いほど自分の作業が進んでないのに棚上げしてるなぁと感じたり。
「完成」
への信念以外はかなり普通の人という感じです。
でも、普通の人がしっかりと作品を「完成」させるのが主題だったらこれで正解な主人公な気もします。

あと、4章の『東方二次創作』の世界での野々原との朝チュン
パラ子を押し倒した時に直接的ではないエロさが何となく感じました。
オタで「こんな僕を見てくれるのは野々原しかいない」みたいなモテない表現ありつつもリア充してやがりましたね。


【野々原 茜】
恋愛方面では彼女のみなので彼女を好きになれないと辛いです。
嫌いではないですが、魅力的かと言われると少し違います。
彼女自身の魅力というより、

『SFの世界』では商業を受けつつ冬コミを申し込まない均衡の取れた作業配分を選び、山賀も無理をしない程度に作業をお願いしている所
『東方二次創作世界』では商業の依頼を黙って優先、山賀も自分の作業が先にお願いしていたのだから優先して欲しいと言う所
『オセロ部の世界』では商業を受けつつも先に依頼した山賀を完全に優先、山賀も商業を応援していて、想いに無自覚な分お互いを優先している所

という二人の関係は同じでも踏み込む深さの違いみたいな比較は面白かったです。
距離が近い分相手の領域に踏み込む先が深くなってるのがまた…
最終的に『SFの世界』では結婚するみたいですが…他の2世界でのその後も気になりました。


【機見 恵】
わいわいする盛り上がり所や、二人を見守る系担当。
どの世界でも今まで名前すらも出なかった男性と結婚する所に、
「攻略出来ない魅力」
みたいなのがある気がしました。
世界が多数ある系の作品なので折角なら彼女と結ばれる世界も見たかったです。
あと30歳と判明した際に見た目が見た目なので驚きました。
大学系の年齢の基準が分からないのですが理系博士と考えるとたしかにそのくらいなのでしょうか…?
えらい若作りだと思います。


【妖精(パラ子)】
要は彼女は、
「子供の頃の未完作品のキャラクター」
で、自分の作品を完成させて貰える世界を探していたと。
作品完成後も、
「世界が複数あるなら自由に飛び回れる」
だったり。
選択肢が1章で出ますが分岐は既に1章前からあったり。
SF的に見るなら結構ガバガバ設定なですね。
完成できる世界を見つけたらイベント中止にしたりかなり適当な子ですが、物語が完成された世界が数多にあるみたいなので、消えず自由に飛び回っている事でしょう。



様々な作品が出まわる中、連作であればあるほど完成作は少ないです。
特に同人の分野では未完作品がゴマンとあります。
それでも色々なブレ、構成での破綻をありながらも完成され、配布されている本作は、
「完成された究極のゲーム」
であり、物語も、
「子供の頃の未完の作品を作り上げた山賀の物語」
「未完の作品を完成させる物語」
として、
「完成」
の一点と見せ方においては「究極」にも見える…そんな気がします。


…それでも他に完成されている作品から見ると揺れがあるのも事実。
特に3章の、
「お!こういう風に世界を入れ替わりながら作品を完成、危機を回避するのか!?」
という気持ちで盛り上がった身からするなら、その後の展開は正に、
「思ってたのと違った」
と思う所があり。
「究極のゲームを作る」
という「ゲームを作る」の部分で引っ張った上で作中作品がしっかりと最後まで描かれなかった所。
山賀の即売会も数々の山賀が出揃うえらくシュールな図だけで、その上でアッサリ終わった所。
ここまで平行世界を描いたのに最終章は±0の世界しか描かれなかった所。
この辺りに個人的な期待が外れたという意味での残念が凄くありました。