ひっそりと群生

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【サイコロジック・ラブコメディ】感想

【男性向け18禁】



20015年08月16日発売
initial』様 ※リンク先公式HP(18禁)
サイコロジック・ラブコメディ】(PC)(18禁) ※リンク先FANZA(18禁)
以下感想です。








精神、論理、愛…譲れない正義を貫き、しあわせなせかいを目指す喜劇。



『君がしあわせから外れたとき、僕たちはループする。

 ここではないどこか、今ではないいつか。 記憶を失った状態で目覚めた少年、平柏陽希。
 同じ境遇の少女・ユイカと出会い、彼らはある秘密を共有することになる。
 直後、再び意識を失う2人。

 目覚めた先は、数日前に戻った世界だった。 高い壁に囲まれた学園地区、
 特殊な能力を持つ少年少女、
 陽希とユイカに課せられる義務。
 次々に起こる状況に困惑しながらも、学園生活へ順応していく。

 しばらくの後、彼らは行動を開始する。
 秘密を共有する協力者として。

 そして、陽希の”しあわせ”と世界のループが直結していることを知る。

 彼らはなぜ記憶を失ってしまったのか、
 世界はなぜループしているのか、
 そしてーーしあわせはどこにあるのか。』
(公式より引用)


上記の公式紹介であるように、この作品はループ物です。
特殊な力「スクラッチ」を持つ「カナリア」と呼ばれる存在。
その能力者を管理する地区と「スクラッチ」を制御できるようにするための学園。
主人公「平柏陽希」の幸せを巡る3人のヒロインとの物語、そして世界の真相。
背景や雰囲気などとても無機質で、展開は重みを感じます。


物を作り出したり、人の行動を制限出来たりする「スクラッチ」とは何なのか?
欲望や愛情とは何か?
ループするこの世界の真相は…?


「ループ」「特殊能力」「研究の為の都市」
そういう設定が好きなので楽しかったです。


同時にSF的な重厚感による入りにくさを萌え系の絵柄で温かみを加え、カバーしているとも思います。
なので、同時に可愛い絵柄の方に惹かれた方にはあまり合わないかと思われるキツイ部分がありました。
絵柄でご購入を検討されている方は公式の色合いを見て判断された方がいいと思います。


あとは、主人公の「幸福」をメインに起きつつも彼の心情が分かりにくく、主人公がそんなに印象深く無かったです。
彼の心理描写がもっと欲しかったという気持ちもありました。


構成…というよりも章選択が独特で、
「エピソード選択」
PRESENTとして46の章に小分けになっています。
PRESENT 01から順に進むのが把握としては分かりやすいですが、どの場所からでも自分で選択し入る事が出来ます。


ループする世界の中、彼女達が何の為に行動し、何を願い、何を想い、幸福が何処にあるのかをそんな探す物語。


世界の真相も重要ですが、個人的にはヒロインの深月の在り方、生き様に深く考えさせられました。
彼女の価値観と、生き方、在り方を見れただけで、かなり満足でした。



『システム、演出』
コンフィグは一通り揃っています。
ただ、セーブが分かりづらかったです。
かなり小分けの章選択なのでセーブがそんなに必要は無かったのですが、右下のSUSPENDでセーブして終了なので実質セーブ出来るのは一箇所です。
セーブして終了→起動すると前回の箇所から開始が出来ます。
演出の印象は特に無かったですが、ヒロイン達がズームしたりは好きでした。
選択肢は一部分ですが、とある選択の方法が面白かったです。
スタート選択後に即現れるエピソード選択には独自性を感じました。
ただ、独自性を感じるのと同時に把握までが大変でした。
PRESENT 1から普通に始めたのですが、公式サイトでシステム等の説明も無いので、どこから始めて良いか分からずに戸惑う人も多そうです。


『音楽』
歌唱曲OPEDで2曲。
BGM23曲。
オリジナル。
音楽鑑賞モード有り。
歌はそんなにインパクトが少なかったです。
BGMの「踏み込んだ数秒後」が好きでした。
あと、緊迫感のある曲は凄く印象深かったです。
SEは頻繁に銃撃音が入るのですが、こう…袋を破裂させたような、「ぱんぱん」みたいなのが気になりました。
ボイスは、声の有るキャラ3人共声自体は合っているのですがユイカが…
「さしすせそ」と「たちつてと」の発音があまり良くなく、口内の音が入っており聞きづらかったです。
空と深月が良かったのとユイカが最終ルートなだけに気になりました。
日常は普通ですが、緊迫感の有るシーンは音楽も相まって雰囲気が出ていました。


『絵』
一枚絵は差分込み28枚。
鑑賞モード有り。
エロシーン回想モード有り。
同人では高水準です。
塗りなども丁寧だったと思います。
背景は積み木みたいな感じというか、人間味のない無機質な感じ結構好きです。
ただ、
「可愛い部屋」
の描写であまり可愛いとは思えませんでした。
立ち絵は綺麗ですが、空の腰の角度が妙に気になりました。
特にラストの方で。
萌系の絵柄と作風のギャップは好きでした。
ただ、同時にSF的な雰囲気は少し薄めだったと思います。


『物語』
特に難しい表現もなく読みやすかったです。
話が細かく分かれているので、スパスパ切れる感じは読みやすくて好きでした。
真実が繋がっていく過程、真相が明らかになる所は好きです。
ですがエピソード選択を自由に選択出来て、話を飛び飛びで進められるので、そういうプレイでは把握が大変な部分もあります。
あと、最後の繋ぎがユイカ編なのですが、繋げる重要な箇所で繋がりに欠けてた印象がありました。
上記でも読みやすさには挙げましたがサクサク切れる分、ずっと続けてた方が物語に没入出来る人には合わないのかもしれないとも感じ、盛り上がる箇所で次のPRESENTに進んだりするので、その度に現実に引き戻される感じはありました。
ギャグ的な笑いは普通。
ですが、深月の価値観、行動理念などが面白かった為に、独自性の面白さがありました。
深月は好きなのですが、同時に好きだった分、空…はまだいいですがユイカがかなり霞んだ気がします。
深月→ユイカと進んだので余計に…
あとは主人公、陽希ですね。
彼の「幸せ」を巡りつつ、彼自身の「幸せ」がイマイチ分からなかった所も感じました。


『好みのポイント』
深月。
とにかく深月の話と彼女のキャラクター。
彼女の生き様、価値観、在り方がとても良いキャラしてました。
難しいでしょうが、もっと掘り下げて欲しい…個人的にもっと見たいくらいに好きです。





以下ネタバレ含めての感想です





ループ物としては個人的に結構難しく、最終ルートのユイカ先生の説明も上手いような、そうでもないような…
という感じで、ループの仕組み、能力の説明力に関しては大分低い気がしました。
終わり方も、
「卵が先か鶏が先か」
みたいな部分で色々謎や考察点が残ります。


PRESENT 01~46までありますが、右側の小数点付きの数字、あれは、

「世界の時間と、時が戻った人間の時間は違う」

と作中で言われている所とOPのムービーから、

「主人公の時間」

で良いのでしょうか…?
一応全部を纏めると。


01 00000000.00000.00.00.00
02 00000000.00000.32.56.28

03 00002911.00028.11.25.91 目覚め、空出会い

04 00004201.00028.54.31.76 深月、出会い
05 00004561.00178.01.22.18 ユイカ2度目の出会い

06 00007927.00001.24.09.54 学園
07 00007102.00149.40.01.27
08 00007802.00502.11.28.33

09 00008001.00002.39.18.79 実習
10 00008328.00001.03.41.83
11 00008328.00003.43.24.64 事件発生
12 00008389.00228.14.51.37
13 00008411.00228.39.38.18
14 00008505.00028.03.42.87
15 00008802.00149.40.01.27

16 00010924.00091.35.24.01 空ルート
17 00010992.00019.42.19.38
18 00010998.00059.52.32.91

19 00012001.00061.02.43.11

20 00016211.00028.18.09.48 空、散歩

21 00150980.00002.37.51.71 合宿開始

22 00192023.00001.01.32.05 殺人鬼決着
23 00192034.00002.38.40.31
24 00192035.00028.53.49.42
25 00192035.00592.10.54.83
26 00192035.09831.44.29.41
27 00192035.09891.21.18.71
28 00192035.13034.54.38.37
29 00192035.79029.30.11.29 空END

30 00892039.00020.42.49.88 深月ルート
31 00892039.00121.10.38.19
32 00892045.00012.04.39.21
33 00892045.00018.42.14.74
34 00892085.00047.58.38.82
35 00892093.00013.39.02.58

36 00952521.00174.50.34.66 ユイカ消失
37 00980293.00001.49.15.81
38 00980292.00085.06.02.79

39 05020609.00000.58.03.52 深月END

40 07469124.00030.02.18.43 ユイカルート
41 07469124.00035.28.51.82
42 07469124.00063.31.26.77
43 07469124.00143.53.42.01
44 07469124.00144.28.28.62
45 07469124.00152.19.52.79

46 ________.00000.00.00.00 ユイカEND
(※手打ちなので間違いが有る可能性大)


これから考えるとPRESENT 46がラストでもあり、ある種の始まりで、ユイカ先生との会話から進み、永海の拷問、そして開放に進んだ先で陽希が死亡し、ユイカがループさせる。
そして始まりに戻る…みたいな構図で良いのでしょうか?
それともPRESENT 46の後には更に先があり…その後の皆の幸福は補完系とも取れます。


どちらが正解でも、そして他に正解があったとしても解釈系、考察系ではありますね。

「沢山のループを繰り返した結果、幸福を掴み取る!!」

系ではなく、

「沢山のループを繰り返しても尚、先は見えず、始まりに戻るor更に先に進む」

ような終わり方で…地味にモヤっとした所がありました。
個人的には「幸福」が先にあって欲しいですが、右側の小数点付きの数字がもし、

「主人公の時間」

でPRESENT 46がはじまりなら、永遠に見えない幸せを探す物語だったり。


もしそれが本当で…本人達には「幸福」を探す途方も無い悲劇でも、
「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ。」
と、有名な喜劇俳優の言葉でもあるように、

「サイコでロジックでラブなコメディ」

もう一つの精神、魂であるユイカとの。
異端な自己法則、論理を持つ深月との。
服従愛でしか愛を肯定出来ない空との。


永遠に答えの出ない「幸福」を探す喜劇。
そういう風にも見えなくはないかな…と思っています。



『各キャラ感想』


【平柏 陽希】

「主人公」として、彼の「幸福」を中心に回ってるはずなのですが…正直なんというか印象が薄かったです。

「正義」や「周りの女性の幸福」に執着しているのは分かります。
おそらく「正義」に拘っているからこそ、各ルートで彼女達自身が「幸福」だと思っても、彼自身の「正義」に反するから「幸福」に成れないんだとは思っています。
これはきっと陽希が「正義」への拘りを捨てられない物語だと何となくそう思います。
彼がステージ6のカナリアの部分もおそらく、

「絶対に折れない正義」

があるからかなと。
折れない「正義」はそれはそれで素晴らしいですが、度を越し過ぎると立派な「狂気」になるので。
そういう彼自身の事柄…記憶を無くす前の彼に関しての掘り下げ、「正義」へのもう少し明確な拘りを描いて欲しかったです。

ループ現象の解明の時に驚きのインパクトが少なかった原因は、彼を中心に回っているはずなのに彼が薄めに感じた所で、

「これだけの意志があるなら全員救わないとな!」

となりにくい所かなと感じています。
まぁエンディングがエンディングなのでそう熱くなり過ぎたら逆にキッチリとした救いが無い分更に救いが無くなりそうですが。

彼自身の「正義」への執着。
「正義」に執着しながらもあまり熱くは見えない冷めた部分。
そしておそらく元の彼の冷徹さ=あのエンディングとも考えています。


【海汐 空】

わんわんお!
おそらく最初の世界での彼女の家庭や性格が、陽希が創り出した学園世界での彼女と根本的には同じなんですよね?
彼女のルートでは愛の記憶しかなくて、最後あんな事になりましたが、最初の世界での彼女の主人公への在り方を見ると彼女の本質的な望みにも見えなくもなく、
「自分を人間ではなく物として使って欲しい」
という従属愛を無限ループの中で手に入れて、ある意味幸せなんじゃないかと。

深月ルートではまぁ…酷い目に合うわけですが、陵辱といえど実は地味に酷くはないと思っていたり。
何故なら深月が願った事でそれを肯定した陽希が居た上での結果だからです。
最終的に後悔に耐えられず深月をレイプしますが、

「陽希が肯定した結果」

なら空は正直納得するのではないかなと思ってます。
彼女の愛が「服従愛」な以上、シーンは悲惨ですが、彼女の本質を想像して、

「ご主人(陽希)が望んだ(肯定した)上での陵辱」

なら問題ないかなぁとか思えてきます。


【平柏 深月】
今作でのマイベストキャラです。
単にツンデレ、生意気妹系だと思っていたのですが、見事に外れました。
兄や周囲に興味を持っていないのではなく、持たないように努力をしていた子。
一生懸命「普通」で居ようと努力していた子だったなんて、

「興味を持ってしまったら全部を手に入れないと納得出来ない」
「全部を手に入れると言うことは興味を持ったものそのものを消して、自分だけが覚えている状態にする事」

の価値観、行動理念は本当に惹かれるものがあり、

「自分とは別であるから惹かれ、個別で存在するからこそ絶対に手に入れる事は出来ない」
「手に入れるとは自分以外には触れられない、見えない、記憶に無い状態にする事、最終的には同一に、自分だけが知る状態に成る事」

こういう考えの深みがとても好みなので彼女の話が一番面白かったです。
記憶喪失以前の陽希に自分の異端さを打ち明け、受け入れて貰い、自分だけの世界を手に入れた彼女。
しかし今度は記憶を失った陽希に外に連れ出されてしまう。

「興味を持ってしまったら全てを壊してしまうから…兄から与えられた自分の世界に篭もり一生懸命生きていた少女が
 今度は自分の世界を与えてくれた兄から外に興味を持つように促され興味を持ち壊れていく
 壊れた結果、兄だけに興味を持ち全てを消し去り、今度は兄を閉じ込める」
 
今までの閉じ込もっていた深月と今度は自分が閉じ込められる陽希の相反する構図。

「世界の方を消し、唯一と決めた大事なもの(兄)だけ閉じ込める」

という方法も、今までの、

「世界の方から消し、自分の記憶にだけ残し自分だけの物にする」

という価値観と逆の方向を行きながらも同じ道を辿っている…むしろ悪化した所も中々に好きでした。
性格や生き様も

「興味の無い物にはとことん興味が無く無慈悲であり」
「興味の有る物には自分だけの物にする為消し尽くす」

空の陵辱シーンが個人的に彼女が最も歪んでいる所が見れたシーンで彼女が一番輝いてたシーンだとも思います。
空に興味が無ければおそらくあんな事にはならず。
空が「大好き」で「興味があった」から見たかったんだと思うと…歪みっぷりが凄まじいです。
人間的な倫理観では、
「この小娘…」
となりますが、倫理的に間違ってるけれど本能に逆らえない。
倫理観とは正反対の人が理解できない本能を行動の再優先にしている。
心理的に人と人でないものの間にいて、本能で動いた後に罪悪感で苦しむ。
「普通と異常の間で人間として苦しむ」
ようなキャラ好きが好きなので最後の主人公から終わりを貰える所といいとても好みでした。

彼女の生き様や話が好みだった分、他が霞んだもの事実です。
特にこのルートだけは主人公が自分の「正義」から目を逸らしてでも深月の行動論理を受け入れたので。
(良い方向には全く行きませんでしたが…)
最終ルートにのめり込めなかったのもここで一気に好みな話、展開、見せ方が来てしまったせいだと思っています。
声優さんに関しても最終ルートの永海の時の演技といい…話、キャラクター性、演技含めて全て好みです。

空ルートの合宿前の連続殺人事件の犯人が彼女なのは察していました。
でも、どうして殺人をしたのかが分かってませんでしたがこういう理由だとは。
殺した人達には興味があり好きで、合宿は楽しみにしていたのだろうと考えると…彼女の論理は切ないです。

あと、PRESENT 38と39の間の時間の飛び具合を考えると「ひぃ!?」となりました。


【平柏 ユイカ
ループ現象については難しくてぶっちゃけ分かってない所があります。
でも彼女は陽希から分かれたもう一つの精神、魂で、「幸福」を探し求める事が義務なんですよね?
じゃあ「幸福」が見つかった後って彼女はどうなるのよ?と。
イカがユイカである限り、主人公とは別の存在で時間を戻せる。

「陽希を幸福にする」
「陽希の幸福を探す」

そんな存在である限り、陽希には「幸福」は訪れないのかもしれないとも感じました。
精神、魂が別で、行動理念が別だからこそ「幸福」を見つけてはいけないと…
見つけてしまったら「幸福にする事」や「幸福を探す事」が出来なくなる故に無意識でも「幸福」に辿り着けなくしてるのかなぁと。
陽希の為に死ぬことは厭わなくても、陽希を「幸福」にはし続けないといけないのかもしれない。
そこを考えた時に、

「だからこそ主人公の「幸福」は見つからない」

のかなぁと思ったり。
そう考えるとこれはユイカの能力を中心に回る立派な喜劇だなと思いました。



彼女達の物語はプレイヤーや陽希から見て「幸福」だとはとても思えません。
ですが、


空は記憶が書き換えられてでも陽希に従属する事が出来た。
深月は理性で抑えられない行動論理を終わらせて貰えた。
イカは陽希を「幸福」にするという役割を続けていられる。


彼女達は「幸福」かもしれない。
しかし例え彼女達が「幸福」でも陽希が納得しない限り…彼女達が陽希の「正義」に反する限り陽希は「幸福」ではない。
「幸福」でない限りループし続ける。
自分自身の「幸福」は何処にあるのか。
周りから見れば「誰か一人が折れれば変わるかもしれないのに」と感じるこの物語。
それでもこれからもずっと長いループの中、彼は探し続けるのかも。


自分の譲れない精神。
自分の譲れない論理。
自分の譲れない愛。
…そして自分の譲れない正義。


絶対に妥協しない彼らが織りなす喜劇は続くのかもしれません。