ひっそりと群生

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【Minstrel -壊レタ人ギョウ-】感想

【男性主人公全年齢】



2010年08月14日発売
』様 ※リンク先公式HP
Minstrel -壊レタ人ギョウ-】(PC) ※リンク先DLsite.com
以下感想です。








物語の中では確かに人形が一番苦労し不幸であった、しかし人間自体もきっと、正しく人になるのは難しい。
そんな『未完』の物語―――。



『不幸の中心にあるのは、いつだって"人形"だ。

 そこは、人形支配の街
 そこは、首切りと裏切りの街
 辿りついたのは不和と孤児院と果ての王都

 少年と少女は旅をする。
 存在するはずのない愛を求め、
 お伽噺のような夢を追う。

 「僕は、夢を叶えたいんです」

 ただ純粋に、ただ無垢に、ただ、ただ――

 旅人が目にするいくつもの喜劇悲劇復讐劇は、
 人間の弱さと醜さを露呈させる。
 何が正しくて、何が間違っているのか。
 復讐の連鎖はどこまでも惨劇を呼ぶ。

 不幸の中心にあるモノは、
 いつだって"人形"だった。

 そして、旅は終わる。全てが、終わる。』
(公式より引用)



ルクルさん作品に触れるの初でした!
「Minstrel -壊レタ人ギョウ-」
タイトルだけは様々な所でお見かけしてました、名作だと。
ルクルさんのお話も気になっていたので、ドキドキしながらプレイ開始。


陰鬱なだけれどもどこか清々しいような独特な世界観の中、誰かの語りから始まり、少女と少年の旅が始まりました。
人の心を持たない少年と、唯我独尊の少女が旅をする物語。


人間の愚かさや、人形の悲劇、人と人形を上手く対比させていく描き方は本当にお上手だと感じました。



『システム、演出』
吉里吉里製。
コンフィグはデフォルト、古き良き同人やフリゲ時代を思い出しました。
発売日が2010年…今の時代って進化したんだなぁと、なんとなく。
挙動や画面の動きなどは結構時代を感じ、懐かしさがありました。
吹き出しシステムも面白く、言葉が文字として空中に出て留まる事で、台詞が増えていく絵面に言葉そのものが意志を持っているような感覚でした。
吟遊詩人というタイトルには凄くふさわしい見せ方で、見てて楽しかったです。
ただ、若干、履歴が見辛いのが残念。
履歴では台詞部分には「」が付いてて欲しかったと思うのと、台詞が増えるにつれ、どの言葉にどの言葉が返ってきたのかが分からなくなったのが残念。
吹き出しの色を…例えばロマなら栗色、リーベなら水色などで分けていて居たら誰の言葉なのか、どの言葉にどの言葉が帰ってきたのか見やすかったかも…とは思いました。
でも、吹き出しが残ったまま、地の文が進むのは、その言葉の力自体は吹き出しが消えるまで、その場で残り続けている感じがして凄く良かったです。
(でもたまに吹き出しに気を取られて下に出てくる地の文を見逃してしまいそうになるのが難点かな)


『音楽』
BGMの使い方…というか切り方が上手な印象でした。
盛り上がって背筋を凍らせる時にスッと音が鳴り止む演出は素晴らしかったです。
スッと消えて盛り上がって、また鳴り出すという聞かせ方が上手かった。
ただ、雨や風の音の音量設定がSEじゃなく、ボイスで設定しなければいけない所は戸惑いました。
音量が下がらないと迷ってました。


『絵』
CGは全9枚。
一話につき一枚くらい。
必要な時に必要な分という感じでした。
イラストはとても好みで世界観に合ったイラスト。
ただ、立ち絵で若干表情が少なく、動きなどの差分が無いのが残念。
もう少し表情と動きがあったら、もっと楽しかっただろうなという気持ちです。
背景はCG背景で、統一感がありました。


『物語』
話の区切りも話数で区切られている上、更にact.でも分かれているので、ゆっくりゆっくり区切りながら読むのに最高の構成でした。
とにかく伝えたい事をガンガン伝えてくる作品。
人形、人間、それぞれで出来ることや出来ないこと、もどかしさや、悲劇や滑稽さ、様々な感情をダイレクトに伝えてきます。
まるで、昔の演劇を見ているようで楽しかったです。
ただ、ラストが…物語として見た時にどうも気になりました。
ですが、そこも色々と思う所はあるので、以下のネタバレの時に。


『好みのポイント』
最後が引っかかると思いつつも、「何故あのラストだったのか」をずっと考えています。
あのラストにモヤモヤもしていますが、囚われている分、きっととても好きなのでしょう。
そう思うしか出来ないほど、ラストについて考えました。





以下ネタバレ含めての感想です





以下感想はリアルタイムで章が終わる毎に書いた物です。
前半で色々と漏らしてても、最後に手のひら返しをクルクルーとするのでご了承下さい。


『一章 人形支配の町』
ノーセンの町。

最初のジャブ、世界観説明。
人形というのがどういう存在かの説明でもありました。
ただ、物語としては…うーん…
いや、物語が悪い訳ではないのです、話の展開は最初としては分かりやすく入りやすいです。

個人的に、うーん…だったのはリーベ達の行動。
なんでしょう、リーベが正し過ぎて…いや、正しいというよりも一般的な正しさを人に押し付け過ぎてというか。
その正しさが納得できる事が今後描かれたら印象変わるかもですが、一章ではリーベってポンコツに見えるんですよ。
自分達の旅、自分達の生き様は否定されたら怒るけれども、この街の生き様は否定する。
「私達の旅を邪魔させない!」と言っておきながら、周りに旅の邪魔をさせたのは自らが敵を作り招いた結果である。
敵の裏をかいたつもりで逃げてあっさりと捕まる。
見てて自己中心的でポンコツな上でただ正しい事だけを語っていたので凄くモヤりました。

そもそも、正味な話、町の人の幸福と旅人である彼らって関係ないですよね…な気持ち。
旅人って自分達が定住しない限り、旅先の価値観を変えたり、勝手に幸福をもぎ取ったらダメというか。
旅人は住人ではないのだから、その場所に定住のしている人間の生活を自分が害を与えられた場合以外は乱しては行けない。
…私、これをキ◯の旅で学びました。
実際にその通りだと思います。
勝手にやってきて、住民の生活をかき乱し、自分達の正論を叩きつけ、責任も取らずに勝手に去っていく。
彼らがやった事ってコレなんですよ。
リーベがこの町の状況を、あの人形の使い方を絶対に許せない程の価値観。
それに、そういう正しさを貫き通せるほどリーベが清廉潔白な生き方だったり、ブレることの無い信念が今後描かれるなら良いですが、そうじゃないと正直受け入れるのは辛いです。

私は弱い側の人間なので、絶望を背負って生き続ける人生と幸福だけれど近い内に終わりを迎える人生、どちらを選ぶ?と聞かれたら後者を選びます。
なので、先生の事を悪いとは言えませんでした。
リーベさんは「他人を殺しても良い理由にはならない」とは言っていました。
そこは確かにそうです、ガイエル先生に唯一非があるとするのならば、幸福と引き換えに、住民に確認無く、ジワジワと人形へ至るリミットを付けた事だけだと思います。
それ以外にはなんら非があるようには見えず…別に法外な値段をふっかけたとか、人形の主人の特権を利用して自分だけが独裁しているとかも無かったですし…
(最後は特権で命令して住人を操りましたが、そこは住人達にもリーベ達は反感を買っていたので、操って無くても敵に回ったのでは?という気持ち)
それに、見ているとここの住人はもし確認を取っていたとしても皆了承したのではないかなと思います。
本人が了承した事ならば問題無いのでは…?
確認を怠った所は悪だけれど。
むしろ生の方が地獄で、近い内に必ず死が訪れるけれど幸福にはなる人間に対して、地獄の中を生きろって…
そっちの方が傲慢な気がするんですよね。
各々の人生は各々の物であるから、「地獄でも生きろ」と言ってるリーベの方が他人の人生を勝手に自分の物差しで測ってる側に見えました。
誰も不幸じゃなかった場所に勝手に現れて幸福を引っ掻き回してただ去っていくだけの人に見えてしまって…だからモヤモヤしました。

今後、彼女がこういう価値観になった経緯や人形をこんな風に使ってはいけないと思っている決意や確固たる信念が描かかれて欲しいです。
…というか描かれないとモヤモヤしたまま困ります。

ただ、途中で、物語(ノーセンの町の現状)が面白くないと思ったから作者(ガイエル)に、物語に歯向かった。
とあるのでリーベがした事はそういう事だとは思うのですが…
でも、物語が面白くないからといって、原作の物語そのものを改変したら駄目でしょう…
それはもう二次創作になるので…作者が描いた物語をそのまま自分のものにするのはお門違いかなと思いました。

リーベに対してはそういう気持ちですが、ロマに対しては、彼の正体が早速明らかになったという感じ。
まだ謎はありそうですが、早い正体発覚です。

ボイスと普通に友情を築いて欲しかったですか…最終的にボイスが人形になってしまったら難しいのでしょうね。
あぁ、そういう意味では、
「ボイスの人形化が無ければ、もしかしたらロマと友人になっていたかもしれない未来」
の可能性を潰してしまったガイエル先生は悪にもなるの…かな。
ただ、ボイスの腕への執着、腕が無かった場合の取り乱し方を見ていると、腕が無いままでは彼は多分、今を生きてすら無かったのかもしれないとも思い。
腕がある事でボイスとロマは出会えたとも取る事も出来ますね。

思うのは、「ボイスの腕は無かった方と偽物でもあった方、どちらが正しかったのか」はボイス自身が決める事なので、やっぱりリーベ達が勝手に正しさを押し付ける事ではないとは思います。
私は個人的に、別に、「人は前を向いて正しく生きなきゃいけない」なんて思ってなくて、誰にも迷惑をかけなければ、好きな所を向いて各々の幸福があれば良いのでは?の価値観の人間なので、一話やっぱり主人公側にうーん…でした。

ですがロマの欠落している部分や彼が人間に成れるのか?というのは気になりますし、タイトルにもなっているミストラルという人物も気になるので続けていこうとは思います。


『幕間 記憶と記録の未知標』
ロンドとの出会い。
どうやらロマとリーベの出会いには空白があるみたいですね。
嵐の夜に出会って、それから……が抜けている。
その空白部分が重要で語られていくのを楽しみにしています。

しかし、一章の感想でも書きましたが、リーベはロマに何らかの隠し事をしていて清廉潔白では無いんですね…
その部分が、「そういう部分があるのに、他人には正しさを通すのか…」な気持ちになり微妙な気持ちにはなりました。


『二章 首切りと裏切りの街』
キリキリの町。

正直、好みでした、凄く、好みでした!!
クレスとモニカとアデルの三角関係は素晴らしい…
アデル×モニカ
クレス×モニカ
人形×人間のカプも最高に惹かれるのですが、兄×妹の構図も良く。
どちらのカプも禁忌的なのが尚良し。
モニカが最後にクレスを男性として好きだったんだろうな、と察する所とかはゾクリとしました。
そしてあっさり、友人であるアデルに虐殺を命じる辺り、彼女の脆さと、クレスへの想いの狂気を感じました。
モニカはどこかに行ってしまいますが…今後登場するのでしょうか…気になります。

人形としてのアデルの葛藤が凄く良く描かれていて。
命令を遂行しないといけない気持ちや感情を知ってしまった気持ちがとても本筋の「ロマが心を知る」事に絡まってきて面白かったです。

アデルを壊すと決めたロマも、ロマに自分の破壊を頼みながらもロマを嫉妬していたアデルも、その中での二人の戦いも良く。
ロマは本当はアデルを壊したくなかったという気持ちに気付いた時などが徐々に人間が垣間見えて好きでした。

今回はリーベの「壊すと決めたからには壊しなさい」「壊したくなかったら、最初から相手に希望を与えるような事を言うんじゃない」というのには凄く賛同です。
アデルの壊される願いは最後の希望だったはず。
自分の持っていないもの、誰かが側に居てくれる、羨ましいと感じる程の存在のロマが「壊してあげる」と言った時の希望と「なんで自分は壊れないと救われなくて、同じ人形のロマばかりが…」という絶望が同時に巻き起こったのだろうなと思うと、その希望だけを諦めるというのは相手を地獄に叩き落とすことと同義だと思います。
ロマは、ロマがアデルを壊すと言った時点で壊さなければいけなかったんだなと。

ただ、今回のリーベの台詞、
「正しさなんてどこにも存在しない
 選択に答えを強要できるほど、
 私は優れた人間ではないの」
には、うん…
おま…そのリーベの中の正しさを貫き、ノーセンの町の選択を強要をする事で町をああしたのでは…
という気持ちにはなりました。
「正しさなんてどこにも存在しない」と言うけれども、「ノーセンの町は間違っている!」と明確に自分の中の間違いを言い行動する所。
どうも矛盾が…いや、この台詞は「誰かが悩んでいる時の選択を私が強要出来ない」という意味かもですが…うーん…リーベの「正しさ」って何だ??
リーベが抱える矛盾にも何かあるのかと予測しながら進みます。


『三章 果ての王都と不和の孤児院』
孤児院ミュール。

モニカやロンド、グリウスやライムントなど、他の章で出てきたキャラが勢揃いしました。
ミストラルやリーベの真相などは色々と予想してた所と当たって嬉しかったです。

孤児院の子供、ハイケンスもまたロマを揺さぶったキャラの一人で。
人間になりたい人形と人形になりたい人間の対比が良かったと思います。

ハインケスとアルマの関係はもう…もう…カプ厨狙い撃ち。
「嫌い」で認識し合う関係、アルマの「嫌い」はもう、ハインケスにとって呪いですよ…
死んだ人を愛し続けるのと同じくらいの呪いです。
だからこそ、真実は事故だけれども殺人にしなければいけない呪い。
その呪いにより生まれるユッタとの溝。
もう亡くなっているキャラですが、アルマの呪いがあまりにも濃く、アルマとハインケスの関係がもの凄く心に刻まれ、好きでした。

そして、モニカ。
亡くなっておらず、居なくなったとあったので、どこかで出るとは思いましたが、まさか次の章で出てくるとは。
しっかりと着実に復讐を果たしていく姿には天晴。
兄を失った事で壊れた少女、友人のアデルを使い町を襲った奴らを皆殺しにし、その友人を忘れた上に、諸悪の根源の領主を殺しても尚、レジスタンスに、ロンドに復讐する姿。
正直、今まで見た人物の中で一番好きです。
キャラが立ちすぎ、大好き。
ロンドに狙いを定めた辺りで嫌な予感がしていましたが、一番悪いタイミングで復讐を果たす所がまさに狂女。
それ以降の、モニカが狙われたからこそ、覚醒するロマの腕…アデルの想いにもう…全てを撃ち抜かれました。
腕だけになった人形と狂女の友情、愛情、恋情とか最高すぎでしょう、1億点。
正直モニカにポイント注ぎ込みたい気持ちです。
ただ、ロマが王都に行った時期に領主を殺したのは、タイミングが良すぎにも感じました(笑)

ロンドも、重い過去があり…表現は規制に引っかからない程度の易しい表現ですが、辛い…
その中で得た恋により突き進み、そして戦った姿がもう格好いい。
好きな女を守るために、絶対に勝てないような敵に立ち向かう姿が騎士のようで。
ロンド、貴方は間違いなく漢だったよ。

だからこそ、なんていうか…リーベがやっぱり弱い。
今の所ヒロインとして弱いんですよ。
お姫様であるのは理解、ソナタである事も理解。
でも、それだけ。
態度が大きい(これは王族だから仕方ないけれども)、聡明と書かれているけれどもそんなに利発な行動をしない女性なイメージで。
真相が分かった事で、今までのリーベの行動で納得したのはノーセンの町でガイエル先生が住民を操った事に怒った事は若干納得。
王族だからこそ、頂点に立つような人物(王)が自分の都合で住民(民)を操ってはいけない、町が誰かに操られるのは王族として許せないと思ったのかなと思ったり。
でも、だからといって、勝手に喧嘩腰に他人の享受している幸福を否定してブチ壊して良いわけじゃないので…やっぱりどうも身勝手な所が多い印象。
ロンドのように叶わない想いなのにソナタを想い続けソナタの為に勝てないような人形を相手にするくらい強いわけでもなく、モニカのように闇だけれども強い意志があり復讐を果たしていくわけでもなく、アルマのように最後の最後まで強い「嫌い」をいう気持ちを持ってハインケスに刻み付けて散っていく訳でもなく、戦えず、でも自分の正義だけは通して、戦いで困ったらロマ頼り、そして殺しを認めない。
いや、お姫様だから分からなくもないけど、流石に他人任せ過ぎますよ…
最終的にロマが解決してくれて、リーベが力強く行動を起こした事が今の所見当たらないので、非戦闘ヒロインな上で態度だけ大きく聡明と書かれて聡明には見えない所が好きになれない所と、他キャラの濃さが入り混じってヒロインとしてはまだ薄い印象を受けています。

ヒロインの印象が弱ければ、ロマがリーベを慕う気持ちもそんなに付いて行く事が出来ず。
ロマがリーベが好きで沢山の戦いをして、沢山の気持ちに気付いていきますが、なんかどうも私の感情の方が置いて行かれてる気持ちです。
ロマの気持ちを理解して、一緒に熱くなれない…まるで私が人形のようだ…
基本、男女、男男、女女、どの組み合わせでも、カプやコンビが居たら萌える私のカプ厨センサーがこんなにも反応しない二人は逆に珍しいです。
残ってる謎が気になるので進めますが、最終章でよっぽどの何らかの要素がリーベに無いと、ちょっとこのまま二人を見て盛り上がるのはキツイです…というのが三章までの素直な気持ち。
二人が好きな人には申し訳ないですが…

あと、三章で思った事は、ロマは正直、他の人形と違って、感情を理解は出来なかったけど、自我を持っていた時点で人間だったのではないか?とも思い。
正直、人間でも感情を、良し悪しを理解できてない人間なんてごまんといます。
そう考えるとロマは、自分で考える事が出来ていた時点で肉体や命令などの人形としての部分以外は既に人間だった気もします。

まぁちょっと思ったのは、王都にて、いくらグリウスが去った後とはいえ、ユッタの「人形さん」呼びは流石に軽率では…?
隠すなら最後まで隠そう!という気持ちになりました。


『終章 壊レタ人ギョウ』
全ての真相が明かされる。

この真相も実は予想していた部分と当たっていました。
しかし、当たっていたからこそ、一章で感じていたモヤモヤは大分解消されました。
リーベの真相により、
「王族としてのノーセンの町の現状を許せない気持ち」
「人形としての人を人形に変えるという事を許せない気持ち」
この二つがある事で、ガイエル先生の行動を許せなかったのですね、納得。
ただの旅人であれば過ぎた行為ですが、王女で人形なら一章がああなったのも傲慢ではありますが、立場上仕方ない。
「正し過ぎる」
事も、完璧な人形であるが故の判断なら、それはもう、彼女の生まれた意味なのだから。

終章になる事で、ロマが一度消えエメリヒになり、ノーセンの町の人のようになる構図は良かった。
あの町の人達の立場が今度はロマになる、ノーセンでやった事がどれだけ町の人を傷付けたかを感じるシーンで、持っていたモヤモヤがジワジワと拭われて行きました。
リーベの真相、リーベの死により、今までの町を回るシーンでも、酒場の主人やクローバーなど、結局彼らの行った事が正しいとは言えなかったという結論はもの凄く好きです。
リーベが今までロマに頼り過ぎて居たと自覚するシーンも好きです。
守られ系ヒロインに見えていた為、自分の悪かった部分を反省した姿には凄く胸を打たれました。
彼らの行動にモヤモヤがあった分、正しいだけの旅では無かった所が描かれ良かったです、満足です。

ユッタの母性が天元突破。
本当にどこまでもお母さんで…良い所を持っていったなという気持ち。
ロンドも、どこまでも漢で、主人公を力ずくでも励ます兄ちゃんキャラで最高でした。

リーベのヒロイン力が薄いと感じていましたが、薄いのは間違いではなく。
人形と人形の旅で、結ばれる事はなく、永遠の別れの最後を迎えた辺りで、彼らの旅路は世界から見たら確かに薄いけれども、彼ら二人からしたら重要な旅であり、大事な物語だった所に、薄味だけれども丁寧で、伝えたい事は大きく、品のある味を噛み締めてました(なんだこの食べ物のような感想…)。

残念なのは、レジスタンスとグリウスの戦いが描かれなかった所。
確かにロマの旅には重要じゃないけど、情勢的には重要なのでは?
最初の語り部がロマで、ヒルデガルドに語りかけていた所は良いのですが、その、「リーベを殺された事で、元であるヒルデガルドを知りたくなり、彼女の元まで会いに行く」道中くらいは描いても良いのではないかと…
会いに行く中でレジスタンスと協力したり、グリウスと対峙したりとかあったかもしれないのに描かれないのが悲しい。
というかグリウスを倒す…まではいかなくても、リーベの仇くらいは取って欲しかった…
モニカがあれだけ人間としての感情で復讐を強くやり遂げていたから余計に。
人間の感情を手に入れた以上、グリウスに怒りを抱くと思うのですが、その怒りの部分がカットされてて。
好きな人を殺されてただ泣き寝入りするだけになってた感じがして、悲しいです。
あと、ラスボスを放置してる感じがしたのが若干モヤる(RPG病)。

最後、ヒルデガルドが一瞬でもリーベの記憶を持っていた(思い出した?)事により、リーベは完全に消えたわけではない…という描き方で。
今は違うけれども、いつかはハッピーに至るハッピー寄りなエンドを迎え、ヒルデガルドとロマが共に有り続ける…
というEDですが、正直、ヒルデガルドの隣に居るべきなのはロンドだと感じて悲しかった所もあります。
たった一人の女性の為に、あそこまで戦ったロンド、リーベはロマのものだけど、ヒルデガルドはロンドのものだろ!!とカプ厨の私の心が暴れていました。


物語としては良かったのですが、旅物にしては話が短すぎるのが悲しい所。
リーベが城を抜け出した時の話、ロマとリーベが出会ってから、ノーセンの町以外に行った時の話、そしてレジスタンスとグリウスの戦いの話。
「僕の物語には関係ない」かもしれませんが、やっぱり読みたいとなるのが読み手の気持ち。
もう少し長編でも良かったなとは思いました。


でも、短い中でも、主題ははっきりしていて。


人形とは何か。
人間とは何か。
人間の中にも人形と同じように命令でしか動けない者も、善悪が分からない者も居る。
人形が意志を持った時点でその差は肉体以外には本当は無く。
自分の意志でどこまで行動できるか、どこまで自分を貫き通せるか、愛と夢を持つ事で、人間も人形も初めて人になる。


そういう物語に感じました。


あと、好きなキャラは、ロンドとアルマ(立ち絵も無いけど私の中で強すぎた)とモニカです!!
ロマはクレスがモニカに渡すはずだったクローバーのペンダントを埋めずにモニカに渡すべき…





Minstrel、プレイ後一日経って、ふと思った事



Minstrelがどうしてラスボス戦が描かれなかったのか、自分なりに考えてみました。
以下、空白補完妄想力とかが入った個人的な感想。


このゲームのタイトルは、
『Minstrel -壊レタ人ギョウ-』
不完全なリーベとロマの物語。
不完全な存在の物語だからこそ、物語も不完全なのかな?とも思いました。
完璧ではなく、語られない部分がある。
「不完全な二人を描いた不完全な物語」
そう考えるとある意味では凄く美しいのかもしれないと感じたり。


あと
『Minstrel -壊レタ人ギョウ-』
とは、
『Minstrel(ロマ)』がヒルデガルドに語る『壊レタ人ギョウ(の物語)』
の事なので、この物語は「人形が壊れる」までの物語なんですよ、タイトル通り。
ロマが人間を手に入れ、人形として「壊れる」まで。
リーベが人形として「壊れる」まで。
だからこそ、そのタイトルにそぐわない部分は省かれたのかなと思われます。
だってそれ以外はタイトルとは違うから。
もし、「人間」として感じる怒りを振るい、ラスボスに立ち向かうロマの姿があったとしても、もうそれは「人形」ではなく。
だから、描かれなかった。
そういう事なのかな?などと思ってみたり。


そう考えると、物語を必要最低限しか語らなかった吟遊詩人のロマに、人間の感情を手に入れてもリーベを失った事で、心の一部分…恋や愛(リーベ)の部分は人形のままになってしまったようにも感じました。
大事な人が死ぬという事は心の一部が死ぬ…人形になってしまう事だとも思うから…


それでも、「人間になって語る必要のないはず」の最後のエピローグが語られたのは、エピローグの中で吟遊詩人となり愛の部分を失っていた、愛の部分が人形となっていたロマが、ヒルデガルドの中にリーベを感じ、リーベの存在を知る事で、愛(リーベ)を知る、信じて、今度こそしっかりと愛を知る人間になれたのかな?とも感じました。
だからこそ、物語はもう語る必要はなく、フェードアウトしていく…
「壊レタ人ギョウ」は、もう、存在せず、ハッピーエンドなのだから…
など。


ロマの内面的に、

リーベを失った、怒りでラスボスと戦う(「怒り」があるのでここは人間なので省かれる)

ラスボスが居なくなった事で、復讐を果たし「怒り」が無くなり、「愛」を失う(この辺りから「人形」)

ヒルデガルドに出会う(「愛」を失っているので「人形」)

エピローグでリーベの存在を感じる(「愛」を感じ、信じ、「人間」に)

エンディング(「人間」になったのでフェードアウト)


みたいな感じ?
エンディング後のロマはリーベの愛を信じ、全ての心が「人間」であって欲しいなと願います。

まぁ…妄想乙!と言われたらそれまでですが…
そんな感じでプレイ後に考えていました。


そして、後にパッケージ裏を見せて頂く機会があったのですが、


『それは、どこまでも
 幸せを求め続ける未完の物語

 一章 人形支配の街
 「わたしはそれが正しい選択だと信じているわ」
 心の強さは平等に存在しえない。願うだけならば、弱者にも可能だ。
 医師・ガイエル・カーソンの治める街は、活気と笑顔に満ちていた。
 そこに、二人の旅人が訪れたことで――全ては、変貌する。
 二人の下した決断は、果たして本当に正しかったのだろうか。
 これは、正解の存在しない問題だ――

 二章 首切りと裏切りの街
 「僕は、壊すこと以外で誰かを救うことが出来ないんですね」
 大罪によって破滅を迎えた街に訪れた旅人は、とあるモノと遭遇する・
 それはまるで写し鏡――左右反対の自分であった。
 響く悲鳴、燃える家屋、血飛沫は物語を鮮やかに彩り、
 そして惨劇という形で収束した。
 壮絶なる記録は、果たして覗き見た旅人にどのような影響を与えるか。
 終わった街の、終わった場所で、終わった物語は再び脈動する――

 三章 不和の孤児院と果ての王都
 「あなたの旅は、次で終わる」
 巡り巡る復讐の連鎖は途切れることはない。
 忍び寄る旅の終息に複雑な感情を抱きながら、少年は王都へ向かう。
 隣に少女はいなくなって。そこで狂気を垣間見て。
 自分が何を求めているのかをようやく知ることが出来て。
 孤児院では、かつてない地獄が始まろうとしていた――

 終章 壊レタ人ギョウ
 「僕は、とても幸せだったんですよ」
 ――そして、人形は壊れてしまった。』
(パッケージ裏引用)


と書いてあるんですよ!
この「未完」の一文、凄く重要だと思います…
裏の文章をDLサイトで書いてあればなと凄く思いました。
この物語が、狙ってあのラストだったのか、狙わずにあのラストだったのかで大きく印象は変わると思います。


「未完」の物語。
過去の有名な作品には沢山存在します。
未完であったり、尻切れとんぼだったり…
きっと『Minstrel』もそれを…過去の未完だったりラストが切れていたりする作品を目指していたのではないでしょうか?
作品の雰囲気や流れが、なんとなくですが、昔の西洋の戯曲を思い浮かべます(私もそんなに見てはいないのですがイメージで)。
ロマの心境や、「昔の戯曲」を題材にしたのではないか?と想像したり。
そう考えると、凄く納得したのです。
今は入手困難なパッケージ裏にしか書いてないのが本当に…残念です。


あと、私はキャラクターの人間性に惹かれるタイプの…いわゆるキャラ厨というタイプなのですが、前半でロマとリーベに惹かれなかった理由が分かりました。
そりゃ惹かれないはずですよ…だって彼らは「人形」なのだから。
一番心を惹かれたのが、彼らがお互いに「壊れ」別れるシーンだったので、今考えたら、あぁ、なるほどな、と。
そう考えると、それに気付いた時に、「人形」の描き方が上手だったのだろうなと思いました。



でも、読み手として最後の「空白の部分」を読みたかった気持ちは間違いはないので、そこは読みたかったと素直な気持ちを書いておきます。