ひっそりと群生

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【環状線センセーション】感想

【三人称全年齢】



2015年08月16日発売
月面晩餐会』様 ※リンク先公式HP
環状線センセーション】(PC) ※リンク先BOOTH
以下感想です。








理屈なんかどうでもいい!環状線を全力疾走!!



『キーワードは〈環状線

 「このままレールを走ってたら、全部秋山の思い通りだぞ!」
 思い出せ、と見知らぬ少年が告げる。

 悠真、小夜子、恵、そして、仮想人格プログラム「繭」。
 四人の運命は、彼女の定める配役に従って、繰り返される。「俺」は追いつかなくちゃいけない――彼女を止めるために。』
(公式より引用)


元の作品が小説らしく、縦書きで構成されています。
選択肢はありません。


話で区切られていて、話毎に主人公交代の群像劇系でどんどん彼らの繋がりが見えてくるタイプです。
主役格の4人の子供時代から学生の現代までが話毎に徐々に語られていきます。


ゲームではなく小説を意識しているような見せ方でした。
起動後、目次の項目で即物語のページ数が把握でき、最初から最後までの長さを把握できます。
文字速度などの変更は出来ず、ページ単位で区切られページ毎に一気に文字が表示され、履歴も前の文章だけが戻るのではなく、ページを戻すように音楽も演出も何もかも一ページ前に戻ります。


正直、物語として見ると起承転結でだいぶ転と結に思う所があります。
思わせぶりにした挙句に解決するかと言えばそうではなく…
キャラも「コイツ何者なんだよ!?」みたいなキャラが数人居たり。
絵も個別で見れば上手ではなくヘニャっとしていて見分けは中々につきづらいです。


しかし、この物語ではこの絵柄で良いと言える味がありました。
絵自体ではそうでもない中で演出というか…見せ方が本当に上手いです。
起動した瞬間にそのスタイリッシュさに惹かれました。
絵はそうでもない中で、画面の見せ方や切り替えが一々格好いいのです。
小説の挿絵、絵本の絵を意識したような使い方、選択する度、ページ送る度に小説を捲るような演出、そして独特な文章の疾走感。
正直この文章が好みで好みで…


個人的に文章が好みすぎて文章だけで魅せてくれました。
BGMの選曲も良く、全曲盛り上がりどころでかかるような曲を取り揃えており。
その疾走感のある文章と疾走感のある音楽でグイグイ先を読ませていきます。
話がどうこうよりも作品から放たれる独自の疾走感で引っ張っていくタイプでした。


独特のツッコミ不在の流れるようなノンストップな文章。
常に盛り上がり所でかかるようなBGMの選曲。
そして絵は上手くは無いけどコレじゃないとこの作品はダメな感じのある絵。
そして一々スタイリッシュなシーンの切り替えで場面場面の見せ方がとても楽しかったです。



『システム、演出』
操作性は特に問題はないです。
ですが、この一ページに一気に文字を表示するのは小説を意識していて好きですが、ゲームとして見ると読みにくいとも思われそうだなと。
あと後半の背景が小麦畑になるシーンが有るのですが、その背景が黄色っぽい中で白い文字は読みにくいとは感じました。
演出は小説をよむようにページを捲る演出やカットインなどとても良かったです。
起動時のスタイリッシュさと一話のトンネルのカットインだけでも引き込まれました。
システムで、履歴がただ前の文字が出るのではなく、本のページを戻るように、背景も音楽も演出も何もかも一ページ前に戻るのは本を読んでるようで好きでした。


『音楽』
BGMはフリー素材ですが選曲が良すぎます。
一曲一曲本当に好みです。
SEは雨や電車など良かったです。
BGMがたまに「ここでこの曲!?」みたいな箇所も地味にありましたが、どの曲も全て盛り上がりどころのような曲で全体から疾走感を感じました。


『絵』
単品でみると、ヘニャっとしていて女性が女性に見えなかったり見分け的に辛かった部分がありました。
ですが、上手くは無い中、無理に萌えなどで媚びてない感じは好みです。
背景は写真が数枚。
カットインなどでの見せ方は上手ですが、背景としては少なめでした。
統一感のある雰囲気は無いのですが、ヘニャっとした絵の中ででも感じられる独特の明るい雰囲気の時と暗い雰囲気の時のギャップ好きです。


『物語』
一気に表示されるので表示的に読みにくさはあるかと思います。
あと、疾走感は凄いですが、独特な方なので、合う合わないはあるかと思います。
構成は何かが解決するとかは特に無いです。
SF的な要素がありますが、
「分かるよな?分かるね!よし、次!!」
みたいにSF的な説明が専門用語で雪崩のように説明される上に、よくよく考えると大分矛盾があります。
ただ、この疾走感の有る文章が好みなのとBGMの選曲も相まって、スタイリッシュな起動画面から最後まで一気で読んでしまいました。
そのスタイリッシュさと独特の空気、ツッコミの不在感がもう…
三話の小夜子は色々ヤバかったです。
キャラクターは、
「お前誰やねん!?」
と思うキャラが…トイレの男、お前だよ!!


『好みのポイント』
疾走感のある独特の文章。
格好良すぎる選曲の数々。
三話のツッコミ不在の展開。
所々の一文が好みでした。





以下ネタバレ含めての感想です





あとがきで語られる、
「わかるようでわからん」
まさにコレに付きます。


SF要素が一応説明されますが、時間軸系で考えるととんでもない矛盾があるんですよね…
説明も全く分からず、
「理由なんて必要ねぇ!さぁ、このノリに付いて来い!!」
と言わんばかりの説明になってない説明で…
トイレのヘッドホンの男も分からず仕舞い。
意味深な事を告げて謎の男ポジションを維持したまま二度と表れず消えていきました。


恵の兄の「俺」は何者だったのか、環状線の別次元から入ってきた存在なら何故恵に兄妹としての記憶があるのか


環状線の流れが繰り広げられていたなら始まりは何処だったのか、悠真と繭が入れ替わり立ち代りしていたとしてもその場合才人は二人居る事になり…
例えば世界の軸が入れ替わっていたとして、どこで入れ替わりが起きたのか?
などなどSF的に考えればかなりの矛盾がありました。


ただ、その「付いて来い!!なノリ」だけは本物で、意味が分からない中でもグイグイ押されるように読み進めていました。


フリーの五話まで入っている普及版からプレイしたのですが、気がついたら製品版を購入しており…
「この疾走感を最後まで見届けたい!買ってまで読みたい!!」
と思うほどの魅力がこの作品…というか疾走感のある文章に詰まっていました。


特に何度も上げますが三話の「越後製菓の陰謀」はそのツッコミ不在感は凄く。
小夜子の天才、けれどもアホの凄まじさは面白かったです。


そして疾走感もですが所々の表現が一個一個好みで、
特に六話の、

「彼女は処女を失うよりも早く人を殺した。」

という一文に才人の一話の子供の頃などから見えた天才としての死生観が合わさり。
彼女の悠真へ向けていた思いや大切さ、彼女が普通に恋愛出来たのはきっと悠真だけしか居らず、その普通の道を断たれた姿が一文だけで説明されている所がなんとなく好みで…


悠真と才人の関係性について色々説明不足感はありましたが、この一文だけできっととても大切な関係だったんだろうなと思った所がありました。


話としては矛盾どころか意味が分からない箇所が多くありながらも、文章と音楽、そして演出全てから、
「理由なんていい!とにかく駆け抜けろ!!疾走しろ!!」
そんな雰囲気が伝わり、全力疾走したような読後感になる話でした。