ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【朝の光が待てなくて】感想

【女性主人公18禁】



2004年12月30日発売
此花』様 ※リンク先公式HP(18禁)
朝の光が待てなくて】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








暗い、とにかく暗い世界。
誰も救ってくれない袋小路の世界の中、たった一つの拠り所に身を預けた姉弟の近親相姦物語。



『クラスメイトにイジメられる毎日。
 積もりゆくストレスと壊れそうな心。
 高校生の阿部美香は、人の温もりと安らぎを求め、弟の孝助と肌を重ね合わせた。
 最初に求めてきたのは孝助だった。
 弟も美香と同じように学校で虐待を受けていた。
 両親は仕事で滅多に帰らない。
 家にいるのは、いつも美香と孝助だけ。
 誰からも咎められる事なく、二人は性の快楽に溺れた。
 いつか訪れる平穏な日々を夢見つつ。
 だが現実は、悪化し続ける一方だった。
 そして美香自身、近親相姦という背徳感に悩み続けていた。』
(公式より引用)



公式のあらすじを見れば分かる通り、とにかく暗い、陰鬱な展開と雰囲気が常に続きます。
主人公、美香の視点で描かれるのですが、彼女がまぁネガティブネガティブ。
海外の純文学や古いドイツの歌など、同じ世代の流行りからは若干外れた物を好み、どんどん内に引きこもっていく内向的な性格から周りとは合わず、常に下を向いて生きているが弟に対しては少し強気の内弁慶。
そういうネガティブさの上、彼女の頭の中では趣味の文学をもじった思考がグルグルと渦巻いています。
古い悲劇物語ような雰囲気の思考がずっと続く為、独特な暗さを生み出しつつ、彼女の思考が合わない人にはとにかく合わない世界を作っていました。


「この性格だとイジメられるだろ…」
とも感じるくらいのネガティブさ…
ですが、イジメは圧倒的に虐める側が悪いと思うのと、周りのクラスメイトも、教師も、そして親すらも本当に糞で腐りきった世界で…
「この思考にならない人は余程精神力が強い」
と感じてしまうくらいには周りが本当にドクズで。
袋小路の世界の中で、ネガティブになりながらも必死に生にしがみつく姿が描かれていました。


操作性は2004年のNScripter製。
文字スピードなど速にしてもそんなに速くなく、マウスロールでの操作は不可能です。
文字も細かく途切れるタイプなので若干指が疲れましたが、年代を考えると仕方ないかなと。


絵は個人的には好み。
ただ、主人公の美香が典型的なメガネっ娘
キャラ萌え系のタイプではないので、気にしない方は気にしないと思いますが、見た目的な意味ではかなり言われるタイプの見た目はしているとは思います。
エロシーンも常に眼鏡着用なので…


悲しみ、辛み、苦しみ、悩み、背徳感で構成されているような作品。
好きな人とダメな人で圧倒的に差が出そうですが、この世界観、雰囲気を最初から最後まで描いた事。
そして中途半端になりがちな近親相姦の背徳感の部分を丁寧に描いていた部分はとても好きでした。



『システム、演出』
2004年、NScripterクオリティ。
ひぐらし」くらいの操作性。
でも欲しい基本システムはありました。
特に強い演出は無く…
ただ、「弟死亡END」の病院で見る祭りの夢は好きです。
鬱に鬱に進みますが、一部に希望を見い出せばそれ相応のEDに行ける感じに見えました。
境遇的に難しくても希望を抱いたら行ける感じは好きです。
EDに到達する度にEDが開放されていきますので、初回は行けるEDが限られています。


『音楽』
BGMは基本ドイツの曲のアレンジ…なのかな?
個人的に単品で印象深い曲は無かったです。
SEは殴りつける音とか痛そうでした。
作中で美香が好きというのも相まって、BGMが良い雰囲気を出してました。
印象深い曲は無いですが、陰鬱な雰囲気は感じました。


『絵』
一枚絵はエロさは無いですが雰囲気が好きです。
背景は基本写真背景ですが、教室の背景が凝ってて好きでした。
立ち絵は表情がとにかく暗い。
イジメっ子の笑顔がニヤッとイヤらしい。
雰囲気は暗い…絵からも感じる暗さ。
キャラの表情がとにかく明るくなく、イジメっ子の表情も笑っているけれども負の雰囲気丸出し。
雰囲気が良かったと思います。


『物語』
美香の視点的な意味で独特(というか陰鬱で、ネガティブ)なので、人を選びますが、読みやすくはありました。
構成は初回に絶対に「弟死亡END」を見ないといけないのは中々に好きです。
死んだ事でようやく見える親の対応も含めて。
雰囲気さえ合えばサクサク進みます。
お酒を飲んだ時のお酒で明るくなるけれどもどことなく虚無を感じる所。
野球観戦の明るく見える中での空虚さ。
笑い所は無いですが、独特の暗さが癖になります。
キャラクターは「好き」というキャラははっきり言って居ませんが、二人共良い感じに孤独感とそれを埋めようとする感じが出ていました。
個別で好きというよりも「この姉弟の依存感」が好きという感じです。


『好みのポイント』
雰囲気ゲーとしてこのドス暗い雰囲気、あと細かかった背徳感が好きなのと、単純に姉×弟ゲー好きで、ネガティブな感じの初体験描写が好みでした。





以下ネタバレ含めての感想です





ネタバレも特に無く…本当に上記のまま、最初から最後まで陰鬱な流れが続くのですが、この暗い暗い姉と弟の近親相姦の部分が好みでした。


同級生の子で話しかけてくれる子が居ますが、彼女も通常のイジメ部分では見て見ぬふりをしている所を考えたり。
教師も本音が聞ける部分で本当に糞で、親もクズ。
いや、こんな世界に居たら縋るのそりゃ同じ不幸を持つ近い人物だけになっちゃうのも分かります。
姉には弟しか、弟には姉しか縋る道が無い…
世界は広いけれども彼女達姉弟の世界は閉鎖されていて、その世界の中で男女で肉体関係を持つ…
わりと自然な流れに感じました。


2年前の過去でお互いの初体験がしっかりと描かれている所もとても良く。
初体験同士のぎこちなさが凄くリアルで良かったです。
正直この肉体関係になった経緯をちゃんと描いてて安心しました。
描いてなかったら残念ポイントだったので…


最初に到達するEDは固定で「弟死亡END」だったのですがコレがまた…
弟が死ぬ事でようやく父と母に目を向けてもらえるってのが親のクズさを加速させていて。
だからこそ弟が居ないのと親のクズっぷりで、もう頼るもの縋るものが無い世界で弟に対しての罪悪感を背負い、罪悪感を背負ったからこそ虐めている相手に向かってでも生きなければいけない姿を描いていて…
孝助君結構好きで可哀想だとは思いつつ、個人で立ち向かう精神的な強さではこのEDが一番なんじゃないかなと思います。


「肉体関係に溺れるED」では初回で親のクズっぷりを見た上で引き離されるのでよりクソさが最高潮に…
親に対してだいたいコイツらのせいと思うので余計本当に救えないなと思います。


「弟死亡END」後に他EDが解放されますが、諸々BADなEDが並ぶ中で、3つほど救いが見えるEDがあります。
最終解放のEDが「南の島ED」という所に希望を持ちたいなぁと。


色々と思いましたが、美香と孝助はとても視野が狭い、狭い世界に居ると思います。
でも、それも仕方ないとも思える境遇…
陰鬱な世界で、救ってくれる相手が居ない故に、狭い世界しか視野を持たない、持つことが出来ない二人。


もう正直、こちら側から見たら、姉弟である事を気にせず、就職までこぎつけて、別の場所で姉と弟だけで暮せば良いのでは?と。
折角美香頭良いのだから…
あと、美香はとにかく「姉弟で…」と背徳感を感じていますが、孝助の方はあんまり感じていないような気がします。
姉に母を求め女を求め、全てを求めているのと、彼の台詞から純粋に本当に美香を一人の人間として愛しているようにも見えて。
親愛、恋愛、何もかも含めて姉が好きなんだなと思います。
自分をそこまで愛してくれているのなら美香が弟など気にしない時が来ればいいなと、孝助の、
「好きな人が出来るまで姉さんを好きで居させて」
という台詞を聞くと余計に思いました。
…というか考助君、美香以上に好きな人絶対出来ないと思うからもう親から離れられるようになったら二人で暮せば良いじゃん…


「南の島ED」が最終解放なのを含めて…
クソみたいな世界かもしれないけれども。
朝の光が待てなくてここまで来てしまったかもしれないけれども。
それでも、世界は広い。
是非二人には生きて、朝の光をちゃんと二人で見てほしいと思いました。



そういえばパッケージになってるイラスト…あれ弟のカツアゲを目撃してる時のCGなんですね…
もっと色々パッケージに出来そうだったり、書き下ろせたりしそうな中、あえてあのその後場合によっては胸糞になる場面をパッケージにする所に中々に製作者の暗い雰囲気へのこだわりを感じました。