ひっそりと群生

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【夜空をねがう少女】感想

【女性主人公全年齢】



2009年12月30日発売
空と雲と風』様 ※リンク先公式ブログ
夜空をねがう少女】(PC) ※リンク先DLsite.com
以下感想です。








見届けた。
彼女の贖罪を確かに見届け、そして彼女の結末を決めた。



『雨と風が視界を塞ぐ嵐の晩。
 ただ一人、あてもなく歩く少女がいた。
 何故こんな所を歩いているのか?自分は何者か?
 記憶を全て失った彼女に刻まれていたのは、左腕の傷だけ。
 嵐の中、雨風を防ぐ為に目に入った豪邸を訪ねる少女。
 記憶を取り戻すまで、その家に滞在させてもらうことになるが……。

 選択肢ではなく、シナリオを紡ぐ事によって贖罪の結末を決めていく「贖罪ノベル」です。

 この作品はあくまで贖罪をテーマにしているものであり、謎解きや感動をプレーヤーに提示するものではありません。
 あなたが出来るのは、ただ最後まで処刑を見届ける事。
 その結果何が残るのか、あなた自身の目でご確認ください。』
(公式より引用)



最初はとにかく?のオンパレードでした。
何も覚えていない主人公が屋敷を訪れ、様々な出来事を見ていくことになります。
暗い雰囲気と、明るそうに見えても演技なのが見え見えの従者達。
そんな屋敷の中で8日間ひたすらに振り回され、そして唐突に終りを迎えます。


その出来事の選択も、選択肢で選ぶというよりも、約5×5のマスに配置された○のアイコンに物語が一つづつ入っており。
選択出来るアイコン…物語を読める数は主人公が滞在可能期間が8日間なので一周で8個のみ。
前に何の物語を選択したか、今が何日目の滞在かで次に選択できる物語が決まっていく形になっています。


選択後の出来事も、とにかく断片的な話で屋敷の中だけではなく、屋敷の侍従達の物語や、全く関係の無さそうな場所の話まで様々な出来事を見ていく事になります。


最初は手探りで何が起こっているのか全く分からないまま終わると思います。
周回プレイ前提で、一周目に特定のEDに行く事の方が少ないです。
その上で特定のルールに気付かず、一旦詰むとずっと迷い続けると思うので、緊張感が大事な内容で結構この詰む部分は痛手な気もしました。


システム的な難しさを含め、更に作風も「贖罪ノベル」とあるように、倫理と宗教、どちらの意味でも罪と罰を題材にしており、偏った価値観と尖りがあり、とにかく人を選びに選びます。


けれども、だからこそ言いたかったと思う事、主題はしっかりとしていて…
濃厚で話もシステムも尖っており人を選ぶ作品ではありますが、罪とは何か?贖罪とはどうすればいいのか?そういう問い掛けがあり。
とにかく周りの意味深な行動や謎で翻弄される系統の作品ですが、その系統の作品が好きなので楽しめました。



『システム、演出』
Nscripter製。
一度読んだ話しはスキップできるのは良いのですが、文章速度の変更が出来ない為、クリックかマウスロールをかなり使う事になります。
あと、履歴のボタンなどはなく、マウスロールのみでの履歴表示なのは辛かったです。
変わった演出はなく普通…
たまに視点が入れ替わりますが、メッセージウィンドウの色が変わったりと、分かりやすくて良かったです。
選択肢が重要性というよりも選択順が凄く重要です。
重要というか一個間違うと即「処刑」に行くのが多いのでヒヤヒヤしてました。
なので、物語の選択方法は面白い試みでした。
ただ「選ぶ順番により印象が変わる」とありましたが、そんなに印象は変わらないんですよね…
もう少し本当に選択した順番によってキャラの立ち位置や物語の側面などなど、大きくガラリと変わると面白いなぁと思いました(それはそれで凄く難しそうですが…)。


『音楽』
BGMは数曲オリジナル…かな?
一曲一曲は普通ですが雰囲気がありました。
クラッシックは素材のようですが印象深かったです。
個人的に挿入歌で星名優子さんが参加されていたのには驚きました…
そしてBGMの雰囲気が暗い…とにかく暗い…
最後の最後で疑心暗鬼の時にかかる魔王とか好きです…


『絵』
欲しい時に欲しい絵はありました
CGだけで見ると幸せそうな絵が多いのが何とも…
背景は館の雰囲気…不気味で好きです。
でもアナザーの方が訳の分からない不気味さを感じました。
立ち絵は同人では普通に良かったです。
梓さんの微妙な表情変化が良い!
でも、エリさん本人は好きだけど、ミニスカメイドだけは許さないよ!!
萌え系統の絵柄なのに常にどこか常に薄暗く…
明るい絵柄なのに何故か不気味という雰囲気が出ていたと思います。


『物語』
文章は普通に読みやすかったです。
表示も横に表示で珍しいタイプですが、世界観に合っていたと思います。
構成はやっぱり、
「物語選択の順番によって印象が大きく変わる」
の部分をもう少し重要にして欲しかったな~と思ったり。
最後に全てが収束される系ですが、一個一個の物語をかなり断片的にしてグイグイ謎に引き込んでいったのは良かったと思います。
謎で翻弄されるのが大好きであれば引き込まれていきます。
ただ、本当に最後でしか全てが解決しないので、早く解決しないとモヤモヤするタイプには向かないです。
独自性は強いです。
よくこの年代でこのテーマを使ったなぁと…
キャラクターは全て結衣に集約され、バイオレットなど謎が残ったりするのでキャラが強めではないですが、絶対にどのルートでも「友情」に対してブレの無いエリや、最後の最後で生きがいを見つけ人生の全てをかけて結衣を守るために戦い続ける梓さんなど、女性陣がとにかく濃い印象がありました。


『好みのポイント』
彼女の選んだ最後…
私はアナザーの方だと思ってしまいましたが、とても人間的で、好きです。





以下ネタバレ含めての感想です





キャラ個別で語ることは特に無いのですが、やっぱりEDや展開には思う所が。


正直、この作品主人公を特別視しすぎてるんですよね。
物語の主人公だから当たり前なのですが…
主人公の母殺しから始まった罪への逃避と新しい罪の蓄積。
それにより受ける神の使者からの贖罪。
彼女の為に巻き込まれる他の罪を犯した人物たち。
ハッキリと「主人公の罪は特別」となっていて…


その辺りが尖っている、人を選ぶ部分だと思います。
この部分に関しては正直好ましくないです。
宗教観、倫理観で確かに罪は有るけれども、罪の重さなんて図れるものではないとは思うので…
殺人が重罪なのは分かりますが、親だから、姉だからや他人だからで重さが変わるとは思えないので…
その個人個人でかなり思想が分かれる部分を重点に置いているので、確実に合わない人には合いません。
「世の中にはもっととんでもない人も居るのに、何故主人公だけ他の人を巻き込み神の使者から特別待遇があるのか?」
となったら大分辛いです。
私もこの部分では若干合いませんでした。


ただ、この世界が主人公が作り上げた魂の牢獄だったと判明したら少しは納得でした。
(アナザー部分でもあるので、侍従の方々はおそらく本当に存在して死後連れて来られたのでその部分での特別待遇感はありますが)
彼女が罪から逃れる為に、人格を新たに創り出し逃避し、でも根底には罪を許せず。
父を殺した日からずっと精神世界で自分が罪を知れるその日まで館の循環を続けていた。
彼女の心象世界なら他の人が巻き込まれる以外は凄く納得しました。


断片的で最初は確実に置いて行かれる構成。
お屋敷の謎と真相、情報でしか得られない虚構と真実。
主人公の状況などなど。
一個一個の題材がそれ一つで物語を作れるほど濃厚で、実はいくつか頭を過ぎった作品があり。
でも過ぎった作品が全てこの作品以降の作品だったんですよね。
正直驚きました、こんなに濃厚な題材ばかり集めた作品が2009年の作品だという事に。
今だからこそ、この題材ありそう…となるのをもう数年前にされてて…時代が早すぎます。


結衣の最後についても彼女は世間的に見て一般からは一生後ろ指をさされ、マスコミからは一生美味しいネタになる程の罪を犯しました。
彼女の精神が壊れたままだったら耐えられたでしょう。
だって人の精神を持ち合わせていない場合の彼女は罪を罪だと知らないのだから。
しかし、彼女は取り戻してしまいます。
人としての精神を取り戻し、取り戻したからこそ罪を自覚してしまうのです。
そして彼女は死を選びました。
許せるか許せないかと言ったなら正直死を迎え逃げた事に関しては許せないです。
でも…仕方ないとも思ってしまいました。
その罪があまりにも重すぎて人の精神では一生背負うには耐えられないと思ったから。


過ちをどんなに償おうとも、大きくなりすぎた罪は、世間から見た「罪」だけ残ります、確実に一生付き纏います。
わりと普通の人間だったら背負えないと思います…
結衣の最後に腹立つけど、人間としては分かりがありました。
自分の心の中で折り合いを付けても、もうどうしようもない状況だと思うから。


そして、名前は上げませんが本当に全くの別の作品で同じように人間では一生償えない程の罪を背負い、人の法の中で生きて罪を背負う決断をした主人公が居ました。
私はその主人公を見て凄いと思いました、許す許さないという言葉が吹っ飛ぶほどに凄いと感じました。
しかし…同時にその主人公の事は理解はできませんでした、何故そこまで背負えるのかと。


結衣の決断は酷い…最低だ…と思いつつ人としては納得出来、分かり、理解出来ました 。
しかしその主人公は凄い…立派だ…と思いつつも人としては悟ってしまっており、理解はきっと出来ないと思いました。
人の領域であるから最低だけれど共感が出来、人の領域を外れたから立派だけど共感は出来ないのだなぁと…


その気持ちが過ぎった時に、
「あぁ、結衣はようやく人間の精神を手に入れ、人として終りを迎えたのだなぁ」
と、そう思いました。


最後の一文に、
「憤りを感じずにはいられない。」
とありますが、その感情を出しても良いのは彼女に被害を加えられた人達だけだと思うのです。
怒りを感じつつも、腹を立てつつも、彼女から被害受けていない世間が怒り罪を罪と形作る…
彼女からは何も被害を受けていない世間の評価が彼女の罪を形作る。
きっと、彼女が犯した罪以外に世間からの噂や嘘だけで形作られた嘘の罪もあるでしょう。


【贖罪】
「善行を積んだり金品を出したりするなどの実際の行動によって、自分の犯した罪や過失を償うこと。
 罪滅ぼし。」
キリスト教用語。
 神の子キリストが十字架にかかって犠牲の死を遂げることによって、人類の罪を償い、救いをもたらしたという教義。
 キリスト教とその教義の中心。罪のあがない。」


本当の罪も、嘘の罪も全て背負い、夜空にねがい旅立ったのだと思います…


と、最終ルートからそう思いましたが、実は最初に、


「貴方の好きな所で止めて良い」


とあるんですよね…


「この作品はあくまで贖罪をテーマにしているものであり、謎解きや感動をプレーヤーに提示するものではありません。
 あなたが出来るのは、ただ最後まで処刑を見届ける事」


なので結衣の罪をどこで許すか、彼女の罪に対し、どこが贖罪かを決めるのはプレイヤー(おそらく無関係な世間からの評)次第になっています。
システム的に最終ルートまで行ってしまうのが人間の性ですが、正直アナザーの「絵本」などまだよく分かっていない所などありますが、個人的にはアナザーの…ゲームで辿り着ける最後のEDが私の中の幕引きでした。
彼女がどこまでいけば犯した罪を贖えるのかはきっとプレイしたプレイヤー各々で正解があるのでしょう…


そういえば館の方が何度も殺されたので怖くはあるのですが、アナザーの方が得体の知れない不気味さを感じていたり。
現実だけれども、現実だからこそ異質な感じ…自分だけでしょうか…