ひっそりと群生

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【虚ろ町ののばら】感想

【ツクール系全年齢】



2018年10月02日配信
Paper Moon』様 ※リンク先公式HP
虚ろ町ののばら】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








まるで、世界の美しさを凝縮したようなグラフィックと世界観と、そして心理、精神的にも悪のない何もかもが美しい物語。



『その日、のばらはバス停へ急いでいた。
 大好きなおばあちゃんの家に行くために。
 幸い、バスはまだ来ていないらしい。
 ベンチに腰を掛け、目を閉じる。
 半ば眠りに落ちかけた耳に、バスの走行音が届く。
 寝ぼけている間に、自分でバスに乗り込んだのだろうか。
 瞼をこすりながら周囲を見回すと、
 そこには異様な光景が広がっていた。
 朽ち果て錆が浮いた車内、乗客はおろか運転手の姿も無い。
 異様な光景に怯えつつ、のばらはゆっくりと歩きだした。
 こんな所にはいられない。
 今日はどうしても、
 おばあちゃんの家に行かなくてはならないのだから。』
(公式より引用)



ゲームの内容自体は昨今のフリーホラーゲームで見かけるオーソドックスなタイプ。
戦闘無し、謎解き中心、少女が主人公、途中で男性の味方キャラが出てくる、元の世界に帰るのが目的というもの。
話も大どんでん返し!!などは無く、最初から最後まで美しい物語に心を浄化されました。
ある意味では物語は予想通りを地で行く中、とにかくそのグラフィックの美しさに脱帽。
ジャンルでは「ホラー」という括りらしいのですが、私は全くホラーには感じず…
「怖い物」や「怖い内容」もありますが、それ以上に「美しさに触れる物」だと感じました。
それくらい本作を彩る為に作られた全ての「美」が本作をただのホラーゲームの印象にはさせない一因で…
いやぁ…「美」って凄いですね、個人の印象のジャンルすらも塗り替えます。
勿論、「ホラー」の要素も含むので、苦手な人は苦手だと思います。
苦手な方でも楽しめるホラーゲーム…は難しいかもしれませんが、是非この世界の美しさを様々な人に堪能して頂きたいです。



『システム、演出』
シンプルに探索ゲー。
善悪(?)で分かれる青い蝶と赤い蝶のシステムが世界観に合っていて良かったです。
演出は舞う青い羽(?)や青い光が綺麗で綺麗で。
タイトル画面にもなっていますが、後半の湖の上を歩くシーンの素晴らしさは一見の価値有り。
ウユニ塩湖に行きたくなります。
キャラクター切り替えも楽しかったです。
ただ、もう少し、切り替えた時の反応が変わったり、切り替えることで出来る事と出来ない事やイベントが多いと良いな~と思いました。
想定時間を考えれば丁度いいのですが、ゲーム的な意味で。


『音楽』
世界観に合った選曲でした。
基本はフリー素材、どれも違和感なく良い選曲です。
いくつかオリジナル曲があるみたいで。
「来な処鎮め歌」「青薔薇に寄す」「薔薇の守人」「虚ろ町の蝶」
はおそらくオリジナル。
「来な処鎮め歌」は歌も入っているのとイベントもあり、かなり印象に残る歌でした。


『絵』
美しい、あまりにも美しすぎて、「美しい」という言葉が霞みそうになります。
キャラクター、建物、小物のドット絵も何もかもがこだわり抜かれ、そしてウィンドウメッセージの枠組みや各デザインもしっかりと計算され尽くされた美しさ。
要所要所で入るグラフィックも青を基調とした淡い色彩で不思議な世界を彷徨う物語に相応しい儚さで…世界観のブレが全く感じませんでした。
作中の雰囲気は進むに従い和洋折衷なのですが、この和洋折衷でありながら他では見ない独特な世界観は間違いなく視覚で感じる物でした。
その細やかなグラフィックに世界の隅々まで回るのが楽しくて楽しくて…
この世界を観光する、自由に歩き回るだけでも相当楽しいと思います。
他では味わえないグラフィックの美しさ、その美しさから溢れ出る独特な世界観に、新しい美しさを求める方には是非プレイして頂きたいです。


『物語』
悪意も無く、悪人も居らず、あるのはただ美しい心を持った人々のお話。
あ、でも主人公達が任意で救済できる3人の人生はかなり闇があったかも。
焼けた家に、毒親を持つ少女、線路の母…かなり親の都合で子供が振り回されているのでその辺りには闇と悪意を感じました。
しかし、主人公側は基本悪人は居らず。
メイン人物の悪の描写は「盗み」くらいかなぁ…でもあれも盗まれた側はそんなに根に持っては居ないのと、持っていたから出会えた事を思うと必要な事なのでしょう。
とにかく最初から最後まで優しい、人の優しさに触れる物語でした。


『好みのポイント』
物語、グラフィック、音楽、どれも超一流。
本当に素晴らしい作品でした。
特に十夜君とラストの某方は最高ですね…どちらの存在もどちらのEDも大変良く…カプ厨は大歓喜だと思います!!
一つ、難点を上げるとしたら、とにかく周回が大変な事!
ツクール系の宿命なのですが、一度読んだ文字などは飛ばせず…エンターを押しっぱなしで台詞を進められますがスピードは遅いです。
4つのED分岐も分岐はかなり後半からの分岐なのと、それまでに必要なフラグは後半の色々な現実の場所が折り重なったダンジョン(?)に行く直前に決まるので、そのダンジョン(?)でのイベントは分岐が決まっていても必ず見ないといけなくて…
攻略見ずにでも良いのですが、その場合はかなりED回収に時間がかかるであろう事、なので攻略サイト様を見てからが推奨なのと、攻略サイト様の言っている場所でセーブしないとかなり大変になります。





以下ネタバレ含めての感想です





話は本当にシンプルにとても良いお話でした。
誰も悪い人が居らず…まぁ救済対象の3人のキャラクターの親がかなり大変だったり、あとはのばらのお父さんも小学生に家政婦も付けずにたった一人で置いて出張はどうなのよ?という気がしたので、作中のお婆ちゃん以外の一部の人間の大人には色々と思う所がありましたが基本は良い人ばかりで。
同級生も髪の色や瞳の色を珍しがったりして好奇心はありましたが悪意は無く(まぁその悪意がない好奇心が逆に辛い時もあるとは思いますが…)、いじめや、あからさまな差別をしている…などはなく、のばらが心を開けば、世界も開けてくる…という希望が持てる世界で大変明るく良かったです。
清い心を持つのばらが自分が犯した唯一つの悪行に苦しみ懺悔し、そして自分の弱さを乗り越え新しい道を世界を開く。
優しい世界の中で優しい世界に包まれる為に頑張って行動して行くお話だったと思います。


お話としてはそんな温かい物語でしたが、とにかく、十夜と虚ろ様の関係が素晴らしい!
昔会っていて、自分の人生を変えた幼馴染の少女と、一度神を助け縁を結んだ少女。
ED4→ED2→ED3→ED1
の順番でクリアしましたが、ED4は素直に「良かった!!」と拍手喝采したEDで、のばらと十夜の今後がとても楽しみで、そして虚ろ様の言葉を信じるならば二人はこれからもずっと仲良く一緒に居るのだろうという事が感じ取れる王道のED。
ED2は十夜だけ帰還しのばらの父が泣き崩れるEDで、わりと父に対して同情よりも「これが放っておいた結果だぞ…」という気持ちになりました。
ED1はホラーテイストなED、おそらくBADの位置付けで顔のないのばらには背筋が凍る物を感じました。
そして…ED3、実は一番滾ったのはこのEDでした。
高い位置から見下ろしていたような虚ろ様、しかし実は昔縁を結んでいて…
神様である虚ろ様が唯一贔屓をするのがのばらなんですね…これは…ズルいです…
いつもは飄々としていて色々と俯瞰し平等を貫いているような人の真剣な、そして贔屓してしまう姿は悶えないはず無いです!!
唯一の縁を持つ寂しい寂しい少女を永遠に側に置く虚ろ様。
「のばら」の名を失い新たな名を得た「碧」。
虚ろ町に残る存在になり、虚ろ様の側に居る事になった碧…歪な関係だけれども、もう永遠に現世に悩む事はない碧と虚ろ様の二人の永遠の時間を考えると胸が苦しくなります。
どこか呆けていて…それこそ虚ろな眼であの世界の衣装を着る碧のグラフィックがとにかく現実からかけ離れていて美しかったです。


ED3にのみ「おまけシナリオ」が用意されていたり…地味に優遇されていますね。
十夜に孫が居て、十夜はあの後普通に結婚した事が描かれている所が切なくも時の流れと現実を感じて好きでした。
十夜、老人verにグラフィックが無いのは良心でしょうか…しかし、イケオジであろう十夜も見たかったです…
人生の最期にのばらに…碧に再び出会えて後悔を全て吐露した十夜はきっと、幸せだったのでしょう。
「虚ろ町に留まる」というED内容である意味では「虚ろ町ののばら」だったと思っています。
正史はED4だと思われますが、ED3、かなり好きです!!


最後に、様々な「実績」があるのですが、「トイレが気になる」が攻略サイトで後の方で書かれており調べ逃していたので、「トイレが気になる」の実績の為に4つのED見た後にもう一度プレイしましたw
まさかトイレの為に再び世界を回る事になるとは…
とても…苦労しましたw


最後に。
靴下はしっかりと回収し、ノルマは達成しました!!w