ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【レイジングループ】感想

【男性主人公全年齢】



2015年12月02日発売
KEMCO』※リンク先公式HP
レイジングループ】(Android) ※リンク先wiki
以下感想です。








汝は人狼なりや?
山奥にある村の因習、一筋縄ではいかない曲者揃いの村人達との心理戦の中で行われる「人狼ゲーム」。
ループの中で手に入れた記憶と知識で立ち向かい村の真実を暴き出す!!



『バイク旅行者「房石陽明(ふさいし・はるあき)」は、道に迷い、事故を起こし、山中をさまよう。
 暗い茂みと冷たい沢を越えたところ、彼は見知らぬ若い女に救助され、酒宴に招かれる。
 一夜明け、陽明は自分が「望ましくない場所」にいると気付く。
 隔絶された地理、よそよそしい住人、奇妙な風習、信仰──
 回収されたバイクを修理し、早々に集落を去ろうとする陽明だが、突如発生した夕霧と、住人のパニックに巻き込まれ、機を逸する。

 その夜、彼は「人狼」に襲われ、死亡する。
 しかし―気付けば、バイクで迷っている最初の夜に戻っていた。

 再び休水集落に入った陽明は、怪物との遭遇と死を回避する。
 翌日、集会堂に集まった住人たちは、驚くべき行動に出た。
 曰く、かつてひとが殺めた神の使い「おおかみ」が復活した。
 住人を殺して入れ替わっているおおかみを、合議で選んで「くくる」べし。
 その恐るべき処刑儀礼は、名を「黄泉忌みの宴」といった──
 迷信。狂気。怪物。そして「死に戻り」の不思議──
 霧の中でゆらめく数々の怪異を、暴かねばならない。

 そのためには、死ななければならない。
 致死の選択を、やり直さねばならない。
 “前”よりも、先に進まねばならない。

 そのために、投票に勝って、他人を処刑せねばならない。』
(公式より引用)



この作品は公式の説明である通り、対人戦TRPGに分類される「人狼」のゲームシステムが下地にある作品です。
人狼」は元は海外で考案されたゲームがネット上などで普及し各地で人気になり、元が伝統的ゲームの為、ゲームルールはライセンスフリーであり、様々な所から出されたカードゲーム化した商品やローカルルールがあります。
日本でもとても知名度が高い方のTRPGで、ボードゲーム関係の即売会などでは、
TRPG」「ドイツゲーム」「人狼
と一つのジャンルとなっているほどの人気の対人戦ゲームです。


基本的な物語(ルール)は、


「とある田舎の平和な村で村人が人狼に身体を乗っ取られてしまいます。
 (この際基本的な人狼の数は母数に合わせて変動ですが基本1~3匹)
 人狼は夜になると誰か村人を一人だけ食い殺します。
 人狼は昼には行動出来ないため、昼間に村人は集会をし、人狼を探す会議をします。
 会議の中で人狼を探し、多数決で一人殺す(くくる)のです。
 しかし、人狼は完璧に奪った人間の見た目、所作をするので誰が人狼か検討も付きません。
 ですが、人間も無力ではなく、村の中には人狼に対抗する能力を持つ者も居ます。
・夜、占う相手を決めると朝に決めた相手が人狼か人かを知る事が出来る『占い師』。
・前日に会議でくくられた人間が人狼か人かを知る事が出来る『霊媒師』。
・夜に誰か一人守る相手を決めて、人狼の狙いと守る相手が被ったら一日だけその相手を守る事が出来る『狩人』。
・お互いが村人で人だと認識しあえる二人の『共有者』。
 彼らは特殊な能力で人側を助けられますが、彼らも人と見分けは付かない為に『能力者』だとは本人以外最初は分かりません。
 最初に能力者だと明かせば人狼の標的に、そして人狼が嘘の『能力者』だと最初に明かされてしまえば彼らもとても危ない立場になってしまうのです。
 お互いがお互いを疑う中、有利な能力を上手く利用し、そして先の先を見越しながら会議で発言をしていく。
 人側は人狼を、人狼は人側を全滅して勝利を目指す知略戦の物語」。


それが人狼です。
役職などはローカルルールなどで変わってきますが基本はこんな対人戦ゲームです。


一応の下地のゲームルールを書きましたが、ゲームをプレイする全員が全員「人狼」を知ってるわけでは無い中で、文章での説明だけではややこしそうなルールをゲーム上で上手く説明していたと思います。
良かったのは、上記ルールを一箇所でポンと説明するのではなく必要な時に必要な分の説明をしてくれていたと思う所です。
そしてこの作品の主人公がかなり頭が回るタイプで、何度か会議…本作では「黄泉忌みの宴」が始まると、複雑になりがちな所を上手く噛み砕いて心の中で分かりやすく説明という名の自己補完をしてくれます。
そして大元の対人ゲーム「人狼」を知っていると「なるほど!」と思うとある仕掛けなど、知らない側にもとても丁寧に説明があり、知っている側も驚かされる所がありました。


レイジングループは上記の基本的な「人狼」ルールや役職を独特の言葉で表現しています。
人狼会議』は『黄泉忌みの宴』
『占い師』は『へび』
霊媒師』は『からす』
『狩人』は『くも』
『共有者』は『さる』
人狼』は『おおかみ』
等、基本動物に当てはめられており、そして、
「田舎の平和な村」
ではなく、和風らしい、
「暗い過去や因習、独特の宗教観のある隔離された村」
という舞台設定になっており、上記の動物が村の伝説などと上手く噛み合わさり、日本らしい和風ホラー的な世界観を生み出していました。


この動物達…特に役職の「おおかみ」に関して面白かったのが、基本対人戦ゲームでは、
「狼に食い殺され身体を乗っ取られている」
という設定が多い中で、この作品の「おおかみ」は村人が「おおかみ」という別の生き物に成るわけでは無く、本人は本人のまま、村の因習などが絡み個人の心がどんどん豹変していく所でした。
別の存在に成るわけでなく、人は人のままで心が獣に変わる…
舞台の村全体の狂気的な因習や伝統と絡まり、村人が村人をくくる(殺す)など暗く恐ろしい面が大元のゲームルール自体と上手く融合していました。


もう一つ最近よく見かける「人狼」のルールとは違い特殊だったのは、上記の公式からの引用で分かるようにこの作品がループもの(作中では「死に戻り」と呼ばれる)だったという事です。
これにより、
「○○(キャラ)が△△(役職)だった場合はこういう行動をとる、だから今回はこの人はこの役職だろう…」
のように知識が蓄積される事でゲームをする際の各キャラクターの癖が分かり、繰り返す事に分けられた配役が分かりやすくなっていった所。
そして繰り返す毎に行ってはいけない事、行ったら死に直結する事、村の謎を少しづつ学び、危険を回避していく所。
そして村の謎を解けない限り必ず「黄泉忌みの宴」や「おおかみ」からの攻撃、事故などで死に繰り返す事になる運命。
そのループ(「死に戻り」)自体を解決していく所が面白かったです。


この繰り返す、ループ部分でも普通のプレイではスキップなどで面倒になりがちなのですが、レイジングループはシステム方面も完璧でした。
まず、チャートシステムというのがあり、一日一日どころか場面転換と選択肢で細かく場面が分かれています。
一度行った場面はそのチャートシステムで直ぐにその場面に戻る事が出来るので、選択肢までスキップで飛ばす必要もなく。
その選択肢も場面によっては片方の選択肢に鍵が掛かっており選べず、さらに先で「死に戻り」をして死ぬことで鍵を手に入れないと分岐できない場所がありますが、鍵にもナンバーが1つずつ入っており、この片方の選択肢を開けるためには○番と○番の鍵が必要など。
細かく記載があるので、どこを通ればその選択肢を選べるようになるのかが一目で分かりやすく、選んで直ぐにその選択肢の場所まで行くことが出来るので、ストレスを感じる事なくバッドエンドを選ぶ事が出来ました。
特に鍵が手に入らないバッドエンドでもそのシステムのおかげでサラリとバッドでの違いを回収する事ができ、バッドに行くと「どうしてバッドになったのか?」の「羊」による救済コーナーがあるのですが、その救済コーナーもストレス無くコンプリートする事が出来ました。


最初は初めてプレイするAndroidのゲームという事もあり、操作性や画面の大きさなど不安でしたが、画面の大きさは仕方ないとはいえシステムに関してはパソコンのゲームでもこんなに使いやすいシステムはそんなに無いと思える程でした。
この快適な操作性を感じるだけでもプレイして良かったですし、他のゲームでも快適化して欲しいくらいでした。


色々と良い点を書きましたが思ったこともあり…
まずは声がとても上手では無かった事です。
特に主人公に関しては他のキャラが最後の方では聞くと上達している中で最後まで棒読みだったのが堪えました。
コレはキャラクターボイスは個別で音量を設定できるのでシステムの有能さにも助けられており個別ミュートも可能です。
あとは起承転結の結が個人的にどうも…と思う所があり…
「黄泉忌みの宴」中に何故村から出られないのかの部分とループの原因に関してがどうしても難しい事や特殊な設定のオンパレードで、作中で描かれない部分に集約されているなと感じました。


しかし不満を書きつつも「人狼」ゲーム中の「機知」と「暗黒」の盛り上がりは本当に凄く。
眠るのを我慢して進めてしまうほどの面白さが有り。
そして声はと言いつつもやっぱりキャラクターの造形は魅力的で魅力的で…
進むにつれてキャラの造形が浮き彫りになりどんどん魅力的になり、「人狼」系の心理戦系作品は頭が良い人、勘が良い人がどれだけ揃うかがかなり重要な中、主人公もチャラそうに見えてもルールを自分の中で纏めた上でちゃんと理論的に過程を組み立てていける頭良い人だったので、この手の作品の主人公として好感度が高かったです。
単純に頭が良い人、機転が効く人、知識がある人、第六感が冴え渡る人、何を考えているか分からない人…
などなど、この手のゲームではとても重要な一筋縄ではいかない癖の有るキャラクターが大集合で。
村に集められた問題児達と隔離された村での心理戦、そして和風物らしい村の歴史と真実などなど。
危機感溢れる状況と繊細な心理戦で見事に引き込まれていき、とても楽しかったです。



『システム』
操作性は完璧でした。
基本操作も揃った上で、キャラボイス一人一人変更可。
チャートシステムに、鍵システム。
全クリ後のとあるモードとその☆のアイコン。
痒いところに手が届くとはこの事でした。
ノベルゲームはスキップの速度や、次の選択肢までスキップなどこういうシステムをもっと採用して欲しいです。
演出自体はそんなに…
ただ、瞬きや話しているキャラがメッセージウィンドウに出て分かりやすかったり、村から出られないようにする為もありましたが、オドロオドロしい雰囲気の為に霧などは良かったです。
選択肢は心理戦の時などの選択肢で、
「今この人物を選んだら、この人の配役はコレなので後にこういう事が起こる…」
などの仮定を考えて選択するのが楽しかったです。
ただ、中にはぶっつけ本番、運ゲーの部分もあったので、心理戦の選択肢が楽しかった分、残念でした。
バッドに言っても鍵を手に入れるために必要だったり、元の選択肢に戻るのもチャートを使って軽々なので楽ではありました。
チャートシステムと選択肢を開ける為の鍵システムは勿論ですが、全クリ後のとあるモード最高がでした。
心理戦系のゲームはこういうシステムがあって本領を発揮すると思います。


『音楽』
歌がOP、EDで一曲づつ。
BGMが全22曲。
鑑賞モードあり。
歌は個人的にそうでもないですが、BGMの「鍵を探せ」と「策謀の宴」が好きでした。
SEも森の音、狼の声、自然音など合っていた思います。
声に関しては…本当に残念としか…
ただ途中から段々、
「立ち上げた新人の町とか村の劇団で凄く面白い脚本の舞台やってる」
そんな感じになって棒読み癖になって行きました。
そして進む中で数人の方はどんどん上達していかれて、どんどん聴きやすくなって言ったのは楽しかったです。
ただ、この点数なのは肝心の主人公が…
最後の最後、良いシーンまで中の人の成長的にブレなかったです。
BGMの一部やEDがちょっと予想以上にテンション高かったですが、伝承や色々暗い影を背負った村の雰囲気などは出ていました。


『絵』
独特な絵柄で好き嫌い分かれそうですが、個人的に好みです。
「黄泉忌みの宴」の時のCGなど必要な時に必要なCGがある感じがして良かったです。
村の背景は良いのですが、背景が少なめだと感じ少し残念でした。
「ここで背景があったら良いのに…」
みたいな部分で真っ黒だったりするのでその辺りが気になりました。
立ち絵のポーズは変わらないのですが表情がとても良かった印象でした。
あと老人関係もとても重要ポジションの中、絵柄は独特ですが老若男女とても上手で良かったです。
背景CGは少なめの中、村のCGは充実していたり印象深い場所や印象的なCGが多く、暗く閉ざされた村の雰囲気がありました。


『物語』
途中に矢印が入ったり、一部設定の説明箇所が設定の特殊さもあり独特でした。
本編は読みやすいのですが、オマケが少し特殊で読みにくかった印象を感じました。
コンセプトの「人狼」関係は本当に楽しかったです。
進む中で明かされていく村の真実などはドキドキしながら進めました。
途中まで本当に止まりませんでした。
ただ、一部設定とラストに引っかかった部分があります。
とにかく展開や心理戦の書き方が上手でした。
「黄泉忌みの宴(人狼ゲーム)」
関係の説明や、心理戦時の駆け引きの書き方。
鬼気迫った時の盛り上げ方など本当に盛り上がりました。
本編は結構緊迫した展開が多いのですが、主人公の独白や掛け合通いのテンポが良くて楽しかったです。
パロっぽいネタが一部あり分からないと楽しめない部分もありましたが、パロだけでなく、この作品のキャラ自体が面白い普通の笑いにも取れ。
元ネタを知らなくても笑えるようば二重の笑いが込められている箇所がいくつかあり、その部分は良かったです。
ただ、オマケが少しテンションが凄かった気がしました。
キャラクターは老若男女とにかく濃いです。
そして進むに連れて印象が逆転していくキャラばかりでした。
ジジババが活躍するゲームは個人的に名作です。


『好みのポイント』
システム関係が本当に素晴らしい!
このチャート、鍵、クリア後のとあるモードに触れられただけでも本当に良かったです。
もっとこういう快適なシステムが増える事を願ってます。





以下ネタバレ含めての感想です





上記でシステム方面の素晴らしさは書きましたが、こちらは公式に記載が無いのでネタバレ扱いとして。
チャートシステムもですが、全クリ後に暴露モードがとにかく楽しかったです。
「この時このキャラはこんな事を考えていた」
と心理戦系の作品ではかなり重要な真相をシステムとして入れてきた所は本当に素晴らしい。
この暴露モードでもチャートシステムに☆マークをつける事で、暴露がどの部分に挿入されるかを一目で判断できる仕様で、読んだ暴露モード箇所は☆が★に変わったり。
既読はスキップ、暴露ポイントではスキップが止まる上に、キャラクターの思っている事を暴露している所では普段青のメッセージウィンドウが赤に変わったり。
「とりあえず☆マークが付いている所をチャートシステムで選んでスキップすれば大丈夫」
というサクサクっぷり…本当にシステム方面の快適さには頭が下がります…


基本ルートは、
「黄泉」「機知」「暗黒」そしてラストの「神話」
構成ですが、この流れも本当に良く、
「黄泉」では主人公は未参加で外側から『黄泉忌みの宴』を見る事で『黄泉忌みの宴』のルールをまず把握させ
「機知」では主人公が参加する事で配役の変動があり能力持ちになる事で「どう立ち回れば効率良く能力を使えるか」が重点的に描かれ
「暗黒」では主人公が「おおかみ」側になる事で「どうすれば怪しまれずに村人を全員を殺し「おおかみ」側で勝つ事が出来るか」
と、今までとは全く逆の立場になる展開が他の「人狼」系のゲームにありがちな「ただ人間側で人狼を暴くだけ」で終わらなかった所が好印象でした。


人狼」のゲーム関係でも上記ではネタバレになるためにあえて省いたのですが、『むじな』に驚きました。
『むじな』は対人戦の「人狼」ゲームにおいては『狂人』と呼ばれる役職で、「人狼」を知っていると1周目で『狂人』の役職は無いのかな?と疑問に思っていましたが、まさか童歌と掛け合わせて「口伝えでは忘れられてしまった役職」という立ち位置になっているとは…
この辺りはお見事でしたね…あとはその歌の本当の意味など。
伝奇的に見ても上手に絡められていたなぁという印象です。


ただ、ネタバレ無しでも語った通り声は…まぁ別として、起承転結の結がどうしてもモヤモヤしてしまっています。
「村に閉じ込められている理由が人為的な物だった!?」
という点にはいささか無理があるなぁと思ったり…
必ず夜に寝入ったり、監視カメラ、狂犬病などはかなり難しい言い分には見えました。
「村の因習や呪い」に「狂犬病」などの現実的なものが不釣り合いに感じたのかもしれません。
伝承が村の人間の心に根付いている点は…疑問には思いつつもコレに関しては、
「独特の隔離された村で幼い頃からの教育があった」
という見方なら分からなくもないなという気持ちです。
「羊」や「まきば」などの設定も、
「急に能力物になった!?」
みたいな印象になり、めー子の正体もどうやら同社の別作品との繋がりがあるらしいですが、作品個別でみると急展開を感じました。


あと個人的にはキャラ一人一人が濃いのでもう少し各キャラの過去。
千枝実の旧家での事、春の前宴の時の遭遇時、前宴の時の寛造さんと狼じじい等、それぞれの話をそれぞれ視点で挟めばもっと感情移入出来たろうなという印象です。


しかし伝承関係では村の名前の漢字の成り行きや、
「人が作り上げた神が本来居た神を奪った」
などの部分はとても好みでした。
あと、
「食事を食べたら黄泉の人間に成る」
という古事記系の話や能力系の部分も合わさって、主人公が巻き込まれていた「黄泉忌みの宴」の期間のあの村は現実が半分、黄泉が半分の世界だったのかなぁとも何となく思っています。


と色々書きつつも結局はこのゲームの素晴らしさはシステムとキャラに集約されそうなので、一人一人思い入れが強すぎる村人たち語りしていきます。



以下印象深いキャラ(というか村人全員)と感想。


【房石 陽明】
チャラい主人公に見えて実は知能派の主人公。
この手の作品の主人公としてはとても好みでした…声は別として。
そしてプレイヤーも置いてきぼりを食らうほどの理解力でした。
「○○は○○であるだから今コレをしてはいけない、コレをするべきだ」
などの判断や理由付け、先を予測する力も高く、しかも心の中で、地の文での説明がとても上手で…
ノリやツッコミ、この手の作品としてアホでは直ぐに死んでどうしようもない中、コミュ力、カリスマ性など主人公としてとても好みでした。
ただ一つ気がかりなのが、そのものすごい洞察力や理解力、死体を見ても平然としていた只者じゃない所に「才能」的なの以外あまり理由が無かった所で…
「才能」や「能力」で描かれてましたが、主人公の過去に何らかの事があった的なのを匂わせつつ、美辻との恋愛話と小説家だった事しか描かれなかった事が残念でした。
最終的に千枝実ちゃんと結ばれますが、何というか…ノリ的には美辻とがやっぱり相性良く見えたり…
「能力」的な関わりからまだ縁は切れそうに無いんだろうなと思います。


【芹沢 千枝実】
エンディングからおそらくメインヒロイン。
実は山全体を統治する長者、三車家の娘で、過去の過ちにより勘当させられ休水に追いやられた存在。
そして主人公と同じくループし続ける存在で、主人公以上にループを繰り返し、ループに諦めざるを得なかった。
その境遇はまさにメインヒロインで彼女とラスト共になるのには凄く納得しました。
おそらく彼女が開けた扉は休水に放たれる犬…狂犬病を患った犬を置いていた場所で、そこで噛まれ勘当、そして病を李花子に引き取って貰った…という形でいいのかな?
彼女もインパクトのあるヒロインですが、「神」への信仰への仕方をもう少し説明が欲しかったなぁという印象です。
狂気化は、
「ループする中で色んな精神が摩耗し、諦め殺さざるを得なくなった」
という部分で納得出来るのですが、「神」への信仰、依存が少し納得できず…
おそらく彼女視点での子供の頃からの三車からの教育が描かれていないからかと。
「濃霧」分岐の「酒と涙」の間でもいいのでもう少し彼女視点の三車での暮らし、教育を描いて欲しかったなぁという気持ちです。
ヒロインとしてはエクストラを見ると「神殺し」。
…日本で信仰されなくなった神などを沈められる巫女のような力を持ってる描写があるので、その「能力」関係で今後、色々な旅路を二人で繰り広げていくのだろうなと思っています。


【回末 李花子】
凄まじかった…
色々と凄まじいヒロインでした…
好みが確実に別れるであろうヒロインですが好みです!!
凄まじさもある中で「ほぉう」という可愛らしさもある方。
「黄泉」「機知」「暗黒」そしてラストの「神話」。
全ての裏でまさに蜘蛛の様に糸を引いていたお方でまさにラスボス。
色々ボカされてますが要するにこの村の全員を性的に食ってるお方。
「寝屋の端女」としての力を前提に治療として人々を食い散らかし、蜘蛛を植え付けていった。
蜘蛛関係の能力については正直よく分かってない部分がありますが、要するにループをしていたのは彼女で能力的には、
「寝屋の端女として生きてきた一族の怨念」
みたいな感じでいいのかなと。
狂犬病などの毒を引き取れる部分は本当に能力物じゃないと納得出来かねないので…
「黄泉」では実質の千枝実ルートなのと発狂でよく分かりませんでしたが、「機知」で「寝屋の端女」の真実があり、とても不遇な人生に見えて、「暗黒」での自己犠牲のブレなさ。
そして「神話」で明かされる彼女の本心。
いや…この「寝屋の端女」における役割の彼女の捉え方が周りから見て変動していくのがとても楽しくて楽しくて…
最初はとても役割から不遇に見えつつ、本人も不遇のように振る舞い。
その役割から自己犠牲的な狂気かと思わせておいて実は全てを手に入れようとする蜘蛛。
男性だけ食ってたならただの色魔ですが、この村人全員、女性をもしっかりと食らってた所が彼女をただの色魔にさせていない部分で、男女関係なく愛を与え続けた、自己犠牲は本物の上で与えたものを取り込もうとした。
その全てを与えながらも全てを奪う構図が本当にキャラクターとして魅力的なんですよ…
老若男女問わず愛(という名の性)を与える姿は聖女と魔女の紙一重感というか…
特に暴露モードではその献身っぷりと強欲っぷりを見事に見せつけてくれました。
彼女の敗因は、
「人間の女性として主人公に惹かれてしまった事」
なんだろうなと。
彼女は最後の最後まで「人間の女性」ではなく「寝屋の端女」として居なければ勝てず。
主人公という存在に惹かれ、目をつけ、彼とともに蜘蛛として支配する道を模索するも、主人公のポテンシャルまでは測りきれず、めー子の力もありますが、執着した事で負けてしまう。
下手に執着しなければ勝てていたでしょうに…
性的な狂気性で突き進めば確実に最強でしょうに、女性の部分が入った瞬間にポカ女になる所など個人的に最高です、
「このどんくさい肉体ともおさらば」
的な事言ってるので、あのポカする肉体は本人も煩わしいと思ってるんだろう所も好みです。
清之介さんとの関係も好みで、エクストラを見ると何だかんだ落ち着いてるようで…
いや、エクストラでもまた女を捨てた凄まじい彼女ですが、エクストラにて童歌の失われた本来の意味と「ゆめのつちぐも」の本来の役割、縁結びとしての能力としての蜘蛛として活躍されたので、これからはその能力の方向性で行かれると「女性」としては安定しそうだなと感じました。


【巻島 春】
まさかのヒロイン枠。
色んな意味でネタバレ枠なのでヒロインや大きく好きと言えないもどかしさが。
父と母の死により心の拠り所の為、単純に神を信仰し本来の村の神、「かみさま」の依代として居た少女。
春自身は普通の子なのですが「かみさま」のインパクトが凄いんですよね。
色々万能でエクストラなどで力を貸してくれます。
春ちゃん個人も「普通の女の子」として魅力的で、特に「暗黒」分岐「笑顔」のCGは本当に…
「かみさま」の演技をして主人公を救うために自分が身を投じる所などかなり好きです。
上記2人のヒロインがインパクト系なので春ちゃんはわりとオーソドックスなヒロインな気がします。
例え「かみさま」が居ても、
「自分を正当化せずに、悪い事は悪いと受け止め、悪人の自分を受け入れる」
という普通の女の子だったと思います。
「かみさま」も本来の伝承が語られる事によりちゃんとお社に神として祀られるといいと思います。
ただ、エクストラなどで「かみさま」がかなりハッチャケます。
「人間らしいかみさま」
も可愛らしくて好きですが本編の有り難みや色々と神聖は薄れていった感じもします。


織部 泰長】
「黄泉」での「おおかみ」。
戦略は知略系で、素直にゲームをすると一番勝て無さそうな人です。
ですが、冷静に見えて実は激情家というか…
知略系で、仕切るのも上手ですが窮地に立たされると弱い一面がありました。
面白かったのは暴露モードで「おおかみ」でありながら冷静であり、冷静に見え冷静に考えたまま「おおかみ」の役目を成す所が怖いというか…
その狂気性が休水の人間で、小さい頃からの教育の怖さを感じました。
義次君と同じく母かおりさんからの愛情で劣等感を抱いてますが、冷静な分、既に直接的な愛情は諦め、金銭面で何とかしようとしており、諦めているので冷「母は弟の方が大事なのだから」と見切りを付けられるのが結構タチが悪い所ですね。
エクストラにて最終的に久子さんと一緒になりそうですが、個人的に本編での絡みが殆ど無いため結構違和感ありますね…
無理にカップリング成立しなくても良かったのでは?と少し思います。


【醸田 近望】
第六感の子。
周りからは「奇矯の振る舞い」と言われていて、野生児というか…過程が分からなくても結論だけど導けるという本当に直感タイプ。
直感で誰が「おおかみ」か見分ける事が出来るが、なんとなくでしか分からず、「おおかみ」と言論で結論付ける事は出来ないという所が面白く。
しかも、
「面白ければそれでいい」
為に票をポンポン付けてしまうという何をするか分からない問題児。
リアルで「人狼」ゲームをする際には本当に厄介な存在ですが、それ故に面白いというか。
こういう場を引っ掻き回す、
「何を基準に動いているか分からない」
トリックスター的存在はこのタイプの作品ではとても重要だと思いました。
面白い事が大好きな彼ですが、春にだけは人間らしい感情を向けているのもまた。
エクストラで春と仲良くなっていますが、近望は春でないと人間的な感情は動か無さそうなので彼の人間性のストッパー的にも春と一緒なのには納得です。


【室 匠】
作中での良い人その①。
「おおかみ」役が無かった事もありますが本当に良い人でした。
カリスマ系で人を引っ張っては行きますが、頭の回転は良くなく直ぐに自分の役割を言ってしまう。
理に適っていない相手には容赦しないが一度認めた相手にはしっかりと情に厚い。
曲者しか居ないこの村の中での数少ない良心でした。
かおりさんに対しての感情も、
「この人は、お前たち兄弟が死んだらまともではいられない」
など分かる部分は分かっていて、知略は苦手でも見てる所は見てる人だなぁという印象。
かおりさんの狂行に対して付いていけるのは彼しか居ないと思うので。


織部 かおり】
狂母、鬼母。
息子が死んだ後に「神」や蜘蛛関係なく狂い皆殺しを始めた時には驚きました。
「おおかみ」になった時も「黄泉人の息子を救う為」という大義名分の元で、狂ったように(というか狂ってた)「殺して現世から解き放ちましょう」と正当化してた部分には本当に恐ろしさを感じました。
個人的インパクトは他のヒロインと張っている上で、人によってはこの、
「子供を救う(生死問わず)の為ならば鬼にも悪魔にもなる母」
というのは好きそうな人はヒロインよりも好きそうだなぁと思っています。
息子二人は母の愛を「あいつの方が…」と思っていますが彼女からしたらどちらも大事な息子で、その辺りでの拗れ方がリアルでとても面白かったです。
彼女にとってどっちがどっちではなく、失うとそれはもう「おおかみ」殺そうとする鬼になる。
間違いなく二人の息子の母でした。
さり気なく公式の交流所に居らっしゃるあたり、隠れファン居そうだなぁとか思ってます。


織部 義次】
作中での良い人その②。
匠さんといい彼は癒やしです。
THE・田舎のヤンキー。
お母さんからの愛情関係で兄と拗れてますが、兄の拗れ方と違い素直なので泰長君よりは面倒ではなかったです。
途中で「からす」になりますが、彼の場合は「おおかみ」でも、
「俺がおおかみだ!!」
と名乗りでそうだなと。
歳相応に捻くれてて素直ではないですが、誰よりも家族を大事に思っており、休水の人間ならば絶対に恐ろしいはずの夜に出て「おおかみ」を倒そうとする。
素直で、方向性は間違っていましたが勇気がある子だと思いました。


【馬宮 久子】
色々残念だったなぁという印象。
「黄泉」では死亡組、「機知」では「おおかみ」側の上で外からの来訪者の為に使い捨て、「暗黒」では橋本さんが輝きすぎていて色々出番を奪われていたなぁと。
ただ、橋本さんの死後、橋本さんの意志を引き継ぎ、言っていた事を守った所は格好良かったです。
…と言いつつもその案を出したのは橋本さんなので良くも悪くも橋本さんの引き立て役感が。
しかしエクストラにて個別の話…
きさらぎ駅の話が割り振られたのはキャラを立てるために良かったかなと思いつつ、しかしこちらも出番は「かみさま」と泰長君がメインなので…
やっぱり色々と立ち位置的に残念な人だと思います。
あ、でも一応10近く離れた男の子と結婚できそうで、嫁入り前とか言われてたけど結婚出来るようで良かったです。


【橋本 雄大
ダークホースその①。
「黄泉」「機知」共に死亡組だったので、全員参加での「暗黒」でどう来るかと思いきや、まさかの主人公が「おおかみ」側で彼が主人公と同じタイプの場の引っ張り方をするタイプで。
見た目は全く違うけれども自分と対峙して戦っているかのような頭脳戦の構図はとても面白かったです。
「機知」辺りでかなり出来るタイプを臭わせて居ましたがここまでとは…
主人公が「おおかみ」側だったので知略戦関係では本当にビクビクさせられました。
選択肢の関係でも、
「何を選べば彼を出し抜けるんだ…」
と悩んだり、
「自分が犯人や悪側で圧倒的に頭が良い探偵系のキャラクターが居る」
某漫画のゲームのような感じですが、「人狼」ゲームを下地にしている以上自分が「おおかみ」側の展開は大事で。
頭が良いキャラにどんどん追い詰められていくこのドキドキを味わえたのは正直嬉しかったです。
主人公も頭が良いので、一生懸命抜け道を探すために言葉を選んでいく展開が楽しく、いかに相手に不利な言葉を吐かせるか、相手の矛盾を突く事が出来るか…
という「黄泉忌みの宴」でのぶつかり合いは本当に手に汗握る展開でした!
橋本さん有難う!!


【能里 清之介】
ダークホースその②。
見事にもっていかれました…
最初は印象通り「高慢で嫌な奴」なのですが、実は家の中の人物は皆自分よりも才能に溢れていて、自分は才能ではなく努力で進むことしか出来ず、地方でどうにか落ち着いた中で本家から本来は見捨てられていたはずなのに必要になったら呼び戻される。
そんな風に家から好き放題の扱いを受け捻くれている。
この、
「本当は優しくて繊細で思慮深いけれども、様々な事情で拗れ高慢になった上で、高慢さは自分を守る為の演技で自覚してる」
そういう存在ってズルいんですよ!
そりゃあ色々持って行かれます!!
本当はちゃんと周りを見ていて、判断力はしっかりあって、でもその高慢や態度で色々駄目にしているけれどもそれは本当は自分が駄目だと卑下している中での自分を守る為の仮面で…
進めば進む程、本人の内情や事情が明らかになるほどどんどん魅力的になっていって、しかも初めての相手の李花子の事を忘れられずにずっと慕っている。
「黄泉忌みの宴」でも必ず李花子の味方をし、自分が死ぬことになっても絶対に守り続けて…
色々印象がガラリと変わったのは彼でした。
エクストラでも李花子と一緒に暮らしているようで。
李花子はヒロインではありますが、清之介と一緒に成るのが正解だとは思っています。
なんとなく結婚はしなさそうな中で、ボンクラ×ラスボスとして、医者と縁結び、りかこ様と下僕として仲良く暮らして下さい!!


【山脇 多恵】
信仰者。
神様を崇拝している以外には特には無いのですが、「おおかみ」としての暴露モードの内心の焦りは中々に楽しかったです。
あとは知識人として過去の伝承を教えてくれたり…
実は中の人の演技力が一番高いと思ったのは多恵さんでした。
他の方はブレがあったり最初はイマイチな中で最初から最後まで凄く上手でした。
吊るされる際の久子さんへの断末魔、本当に印象に残ってます…怖かったです。


【狼じじい】
ダークホースその③。
本当の「狂人(サイコパス)」
過去の大量殺人鬼であり「黄泉忌みの宴」を内部から見張る存在。
人狼」ゲームにおける立ち位置での「狂人」かと思いきやマジもんのサイコパスとは。
頭のおかしいお爺さんで、「おおかみ」の味方や敵関係なく場を狂わせる系…を演じている方。
前の「黄泉忌みの宴」にて「おおかみ」として居たけれども監視者のため生き残っていたり、彼の真相は村の最後のまさに鍵でした。
めー子と李花子さんのエピソードであの草の仕掛けをしたのはめー子だと分かりますが、めー子よくやった。
作中の数々の「おおかみ」以外の殺人を犯しているのが彼なので、綺麗に彼だけ最後に散ったのには納得しています、因果応報。
「おーかみがくるぞー」
しか基本言いませんが、本性バージョンの時を聞くと彼も中の人がお上手で。
…ってかなんで老人組こんなに上手なんですか!?
若者組が結構アレなのでジジババの演技力方面でかなりジジババの印象度は高くなってます。


【巻島 寛造】
カリスマ系、最初に場を必ず引っ張るのが彼で、それ故に引っ張らない場合は何か「能力」持ちであるという。
結構心理戦ゲームにおいては最初は分かりませんが後から振り返ると分かりやすさが目立ちました。
そしてとにかく「おおかみ」に対しての憎悪が半端無かった。
そりゃ前回で自分の子供が死んでるので当然ですね…
「黄泉忌みの宴」を知っているが故に非常になっていますが孫の春には甘いのが彼の弱点で、春を思っての行為が自分の足元を掬い、その春が実は「おおかみ」。
その甘さと厳格さで「冷静になれない」と判断され票を入れられた時には結構辛かったです。
寛造さんと狼じじいの前宴時の逸話は色々と気になるので、各視点での前宴の物語など見てみたいです


【めー子】
「まきば」から逃げてきた娘。
彼女は同社の別作品との繋がりがあるみたいですね。
「能力」関係や裏設定に関してはよく分からないが本音ですが。
人狼」ゲームとして見るととても面白い立ち位置だったと思います。
「むじな」役になりますが、彼女は年齢が低すぎる為に相手を騙すという発想にならず、素のままで「むじな」の役を突き進む辺り中々に曲者でした。
心理戦ゲームにおいて、
「騙す事を知らない、素のままで居る」
存在に足を引っ張られたり、素のままだからこそ最後に可能性が残ったり。
近望や狼じじいといい、こういう存在が居るから盛り上がる所がとても面白かったです。


【美佐峰 美辻】
おそらくはめー子と同郷の存在。
夢を操る事が出来る一族…というか研究機関的なのの出身?
「まきば」「教会」「能力」など設定関係での広大さがあり、そのあたりが少し作品単品として見ると引っかかりますが、コンビニ店員としての彼女の「あったわ」や、暴露モードにおける主人公との心の中でのツッコミ合いはとても好きです。



色々書きましたがとにかくキャラ語りがしたくて仕方がない作品でした。
「村の因習」などの伝奇的な要素、「人狼」ゲームをモチーフにしつつ、その中で進むにつれてどんどん明らかに、形造られていくキャラクターの造形。
どのキャラクターも書いている量は差がありつつも、
「これは好みでの分量で本当は全員濃いです!」
と胸を張って言える、考えれば考えるほどまだまだ語りたい事が出てきて、絶対に捨て駒や要らないキャラは居ない!!と断言できるその濃さ。


このキャラクター達からしたらたまったものではないかもですが、別の配役での「黄泉忌みの宴」の知略戦を見たい!そう思えるほど楽しかったです。
本当に今後、配役変更版の「黄泉忌みの宴」やスピンオフエピソードが配信されましたら、村の謎は無くなったけれど別課金でも読みたいと思えるほどの作品でした!!