ひっそりと群生

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【孤独に効く百合】感想

【百合全年齢】



2011年06月19日発売
夜のひつじ』様 ※リンク先公式HP(18禁)
孤独に効く百合】(PC) ※リンク先DLsite.com
以下感想です。








抱きつき、触れあい、キスをする。
そんな二人の関係は美しく……百合とは良いものだ、とただひたすらに二人の関係を愛しく感じた。



『初対面はキスだった―。

 高校一年、初夏。紺野芙紗(こんのふさ)は自由気ままな引きこもり少女・セリと出会う。

 生真面目な芙紗はセリに翻弄されつつも、いつしか心をひらいていく。

 抱き合って指を絡めて見つめ合って。

 二人の少女は好きな人と触れ合う心地良さを知った。お互いをもっと深く知りたいと思った。』
(公式より引用)



夜のひつじさん作品はけっこう触れては来ていましたが、処女作に触れるのは初めてでした。
夜のひつじさんPC作品唯一の全年齢(アプリ系ではもう一作有り)。
「孤独な二人が出会い、寄り添うように生きる」夜のひつじ作品で固定でヒロインが居るイチャラブ系の物語の原点というか…そういう空気を感じました。
一目惚れでも良いじゃない、女同士でも良いじゃない、ただ、そこに、孤独を分かち合える存在が居て分かち合いたいと思った。
そんなシンプルだけど、真っ直ぐで温かい気持ちを感じました。
プレイ時間は2時間ほど、選択肢は無し。
百合入門としても最適なゲームだと思います。


『システム、演出』
吉里吉里製。
流石の使いやすさです。
メッセージスピードから何から完璧に揃っていて快適でした。
今現在の夜のひつじ作品の基盤になっているシステムなのだと思いました。
ただ、全画面文章表示の問題で改行せず続けて次のページまで文章が続いたのは若干読みづらかったです。


『音楽』
最初の作品からオリジナルとは恐れ入ります。
ピアノで彩られた数々の曲は本当に夜のひつじ作品に凄く合っています。


『絵』
淡い色彩と雰囲気で描かれる可愛らしい芙紗とセリがたまらないです。
表情パターンも多く、欲しい時に欲しいCGが入り大満足でした。
立ち絵も妥協無く、メイド服までしっかり完備!
キャラが着替えた描写があると着替えてる立ち絵が欲しいタイプなのでそういう細やかな部分がしっかりと描かれてて大変嬉しかったです。


『物語』
最近の夜のひつじ作品に触れてる身としては三人称視点を珍しく感じました。
他作品では主人公目線だったので凄く新鮮でした。
文章はあいも変わらず、流石の夜のひつじ様。
読みやすくスッと入ってくる文章に、細やかに伝わってくる情景と優しく伝わってくる心情が本当に素敵です。
処女作からこのクオリティの文章なのか…と唸らされました。
読んでてどこにも頭を捻る部分がない、まさに日本語さえ読めればほぼ全ての人類が読めるような分かりやすくクセの無い文章で。
読解力が少ない私でもサクサクと止まる事無く読める為、本当に凄いなと思います。
ずっと文章を書いて頂きたいです。


『好みのポイント』
特に大きな物事はおこらないけれども数日間の芙紗とセリの関係が丁寧に丁寧に描かれます。
大きな起伏がないと物語を楽しいとあまり思えないタイプなのですが、夜のひつじ作品は大きな起伏が無くてもあまりの情景と二人関係の美しさ、そして上記で書いた文章の匠さにズイズイと引き込まれて行きます。
それこそいつか必ずゲームとしては終わりを迎えると分かっていても、ずっと二人の姿を見ていたい程に。
芙紗とセリ、二人があの後どうなるのか…はおそらく読み手に委ねられると思いますが、二人のその後を見たくなるくらいに引き込まれるお話でした。
ただ一点、物語では完璧な導入だと思いつつも好みとズレた部分があるとするなら、この作品が一目惚れから始まっている所。
個人的にジワジワと好意を構築していく関係が好きなので、二人の関係が一目惚れから始まった所だけは好みの部分じゃなかったなーとは思いました。





以下ネタバレ含めての感想です





この物語にネタバレも何も無く。
ただひたすらに二人の世界を堪能する物語だとは思っているのですが、一応項目として設けているのでラストに関してだけ。
ラスト、正直二者択一だとは思ってました。
セリが共に学校に行くようになるか、芙紗もセリと共にあの部屋で閉ざされた世界で生きるようになるか。
どっちかなーとは思う中で前者が選ばれて少しホッとしたような、ちょっと悲しかったようなそんな複雑な心境でした。
いや、正直、学校に共に行くEDの方がそりゃハッピーだし、光のエンディングだと思います。
この物語の作風だとコッチだなーと納得する自分も居ます。
でも、闇ひつじさんを見ていると、「二人の世界に閉じこもる」EDも見たかった気持ちがあるんですよね(笑)
世界から完全に分かたれて二人あの部屋で―――。
選択肢の無い物語なので光のED一直線なのですが、もし選択肢があればそういうEDもあったのかなー?と少し思います。
闇ひつじ好きとしては見たかったです。


あとは…最後の最後まで芙紗とセリの孤独の原因がしっかりと描かれなのがとても好きでした。
なんとなくは察する事が出来ます。
芙紗は妹が病弱で親に構ってもらえない、セリは親が忙しくお手伝いさんをあてがわれ放置されている。
この部分を察するだけで二人の両親が出てくる事は無く、回想などで親とのイザコザが描かれる事は全く無かったです。
読者はただ察するだけ。
これが…かなり好きです、夜のひつじさんはそういう「絶対に描かず雰囲気で読者が察するように描く」事がめちゃくちゃお上手だと痛感しました。
本当に必要最低限、彼女達は孤独を背負っていて、そこに親が絡んでいる。
でも、その親がどんな人物かは物語には関係ないと割り切っているような、そういう完全に「二人の世界」を描こうとする姿勢が最高に好きで好きで好きで(以下エンドレス)。
その後の夜のひつじ作品でもあえて描かれない事が多いのですが、そういう所が本当に好きなので、イチャラブ系は「二人の世界」や「閉じた世界」を貫いて欲しいです!!


芙紗とセリ、二人の学校生活はどんな物になるんでしょう…
その後は完全に私達に委ねられましたが、仲良く、孤独を埋め会い、百合百合しく共に生活して欲しいな―と思います!