ひっそりと群生

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【ソラヒカルウミ】感想

【BL15禁】



2019年09月27日配信
Monochrome Cat』様 ※リンク先公式HP
ソラヒカルウミ】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








空は地平線で夕焼けの海と交わる。
二人に…幸あれ。



『北欧と中欧の狭間にある海岸線沿いの共和国。
 留学早々ネガティブな反応を受け、『異国人』であることの洗礼を受けた孤独な大学生ソラと、この国で知らない人はいないだろう有名一族の御曹司アベル
 不意に出会った二人の身分も生活スタイルも金銭観もまったく異なる、波乱に満ちた大学生活の始まりだった。』
(公式より引用)



こちら、サークル様の前作「ホシナガルソラ」の姉妹編という位置付けらしいのですが、「ホシナガルソラ」未プレイでしたが全く問題なく楽しめました。
選択肢は一箇所ありますがほぼ一本道シナリオ、選択肢の場所には「なるほど…」と唸りました。


久しぶりにBLをプレイさせて頂いたのですが…良かった、本当に素晴らしかったです。
圧倒的知名度を誇る御曹司を全く知らない超絶平民で異国人の主人公のソラと超上流階級貴族のアベルが偶然の出会いを果たした結果、その生活水準の違いや価値観の違い、そして性格の違いなどをどんどんすり合わせて行き唯一無二の関係になっていく姿。
友人の唯一無二の関係からどんどん離れがたいくなっていき、特別な存在になっていく。
それでも立場の違う彼らには様々な困難が待ち構えていて…
と、もう、とにかくキュンキュンする要素がてんこ盛りでした。


既に固定でカップリングを指定されていると有り難いタイプの自分からしたら選択肢で悩むなどの要素もなくストンと物語が真っ直ぐに響いて来て。
ソラもアベルもどちらも見ていて嫌味が無く、根っこは凄く良い子だというのが伝わり素直に二人を全力で応援したくなり。
見ていてもどかしくもドキドキが止まらない二人の距離に始終ニヤニヤが止まりませんでした。
カプゲーとしても最高ですが、物語としてもかなり高クオリティで。
ソラもアベルもしっかりとした信念や価値観を持っていて、アベルにもしっかりとした貴族のバックボーンがあるからこその物語で、物語とキャラの魅力的な性格、そして最高なカプ要素にトリプルコンボを食らった気持ちでした。


あまりにもの素敵さに胸が鷲掴みにされて、この感想を書いている時も余韻が収まらず…
自分の腐女子心もまだ捨てたもんじゃ無いな…と思いましたが、この物語は多分根本的に物語そのものが面白いタイプなので、「BLはどうしても地雷!男が絡むのは絶対に無理!!」となるタイプの方以外には是非オススメしたい作品でした。
主人公受けなので、そちらも地雷じゃない腐女子の方、「話さえ面白ければBLもそこそこイケる」というタイプの方、絶対にオススメです!
主人公受けが地雷じゃないオリジナルBLを読める全国の腐女子に読んで欲しいと思うほどの逸品でした。



『システム、演出』
ティラノ製。
基本が揃っているのに加えてカスタマイズがとにかく美しかったです。
ティラノ基準の右下の歯車ボタンが星マークに変えてあったり、メッセージウィンドウから履歴まで細部までこだわり抜かれていて、UIの方面でもこの作品に出てくる神話のような雰囲気があり、全てが世界観に合っていました。
車のシーンなどで立ち絵が出ないシーンなどはメッセージウィンドウに顔が表示されたり、細やかな気遣いが本当にプレイしていて有り難かったです。


『音楽』
ピアノ曲を基準にした選曲で、とても良かったです。
繊細なピアノ曲が上流階級のキャラが多々登場する今作にピッタリとマッチしていました。


『絵』
絵はBLらしいといえばらしいですが、UI含めて何もかも細かすぎて脱帽でした。
キャラの服装が場所によって変わるの当たり前、季節ごとに変わるの当たり前、少しの要素で変化すると立ち絵にも影響するの当たり前で…CGも欲しい時に必ず表示されて、見ていて違和感があったり絵によるマイナス要素は全く無かったです。
背景も一部写真背景ですが、部屋の内装などはおそらくオリジナル。
特に重要になるアベルの部屋の窓の装飾も美しく、広いアベルの部屋をベッドの上、別角度から見た背景も用意されていて、一つの部屋を別角度から見るイラスト背景をあまり見かけないのでビックリしました。
ラストもまさかのアニメーションで…いや、本当に、絵に関してはプラス要素ばかりでした。


『物語』
文章は分かりやすく読みやすく。
たまに誤字がありましたが、それ以外は分かりやすい表現でスッと入ってきます。
ソラやアベルの性格や価値観に独自のものがあるのですが、表現に癖が無いので彼らの主張がダイレクトに伝わり彼らの性格が手に取るように分かりました。
分かった上で彼らは毒が無く、素直で良い子達だという事が分かるので…もう、こんなカプ応援しないわけないじゃないですか!!
そして、上記でも書きましたが、御曹司×平民の作品として欲しい要素、見たい要素は全て詰め込まれていました。
物語としては直球ドストレートの御曹司×平民作品で、「この要素が欲しいなー」と思った時には「ヘイ!お待ち!!」と言わんばかりに欲しい物が食卓に並びました。
1シーン1シーン欲しいイベント…美味しい食材がふんだんに並び、その美味しさを分かっている料理人が一番美味しい時…物語で確実に盛り上がる場面に1シーン1シーン組み込んで調理して行く…そんなの美味しい料理が出来ない訳がない!!と。
作り上げる物も主題や伝えたい事はハッキリとしていて、「血の繋がりや境遇は関係なく家族になれる」「どんな場所に生まれても自分の人生を生きる事は出来る」など御曹司…貴族のしがらみがあるからこその昔から様々な物語で見る普遍的な主題をしっかりと描ききっていたと思いました。


『好みのポイント』
ソラもアベルもどちらも男性というよりも人間として惹かれる要素が大きいのですが、とにかくソラの考え方、価値観が美しかった。
真っ直ぐというか…絶対に折れないというか…自分の信念は貫き通す。
一言でいうと「気高い」そんな主人公で。
確かに見た目や生まれは平凡で普通の少年ですが楽な方に流される事は絶対に無く、幼い頃に見た石を忘れられずにほぼ自力で留学したった一つの夢の為に一人で異国の地に足を踏み入れた所からもソラの性格が伝わるのですがある種の孤高さと気高さを持っていて。
孤高さと気高さを持つ中で、それでも「一人と孤独は違う」という部分も知っているから他人の大切さも知っていて。
他人と話していても気を使って良い方向に進むように曖昧な話し方は一切せず、単刀直入に真っ直ぐに自分の気持ちや主張を伝えた後に、他人の大切さを知っているからこそ無自覚に、けれども相手の一番欲しい言葉を伝える事が出来る…そんな主人公としては見ていてスッキリとするパーフェクトな主人公で…見ていて清々しかったです。
あぁ…アベルが惚れるのも仕方ない…と納得したので、自分もソラの気高さに惚れてしまった一人だと思いました。
アベルと対峙するのは分が悪いですが、きっと同じ大学に居たらその人間性に惚れていたと思います。





以下ネタバレ含めての感想です





わりと時間置いて冷静になって書いていると思っているのですが、未だに「好き…」としか言えないの助けてほしいです。
おそらく自分はカプ厨と呼ばれるものなのですが、2020年に入ってカプ物で大当たりを引きました。
アベルの母への罪悪感と父への反感から「全てのものと平等に接する」という生き方をしてきたアベルアベルの前に現れた異国人で平民…どころか貧乏寄りのソラ。
ソラに優しくする事が出来れば「平等に接する」生き方貫けると思いそういう下心もある中でソラに接していくアベル
けれどもソラはあまりにも気高くその内面にどんどん惹かれ、「平等に接する」事が出来なくなっていく…
もうね…全ての要素が美しい、素敵、最高で…
出会いのソラのアベルに対する印象「夕焼けの海」という言葉を2周目に見るだけでアベルの過去を知っていてアベルの心境を思うと、もうこの時点でアベルはソラに救われて居たんだな…と強く思いました。


私は相互救済の関係に凄く弱いのですが、例え裏があっても物理的に援助したり心理的に側に居てソラに「アベルが居たから孤独じゃなく一人だ、一人なら孤独じゃない」とソラの孤独を救っていたアベル、その真っ直ぐな気高さで一番欲しい時に欲しい言葉を与え、アベルの過去の境遇を知った上で何のしがらみも無いからこそどんな時もアベルの味方で居続けたソラ…互いが互いに救済し合う関係と全ての出来事や言葉が綿密に過去に関わっていたり静かに過去を救っている構成にスタンディングオベーションでした。
アベルが子供っぽく嫉妬するイベントや、「一人で生きていける」と思っていたのにどんどんアベルの存在が大きくなっていた事に気付くソラなどなど…「恋愛物で見たい要素TOP10」の要素ほぼ全部詰まってると思います。


ソラの居た国やアベルの居る国が明確に語られてないのもとても良く(おそらくモチーフは日本とイギリスだとは思いますが)。
あえて語られないファンタジーの異国として独自の階級や独自の神話があり、現実とは切り離された神聖な雰囲気が凄く素敵でした。
ソラが目指している石に関わる神話もただこの世界観を作り上げるだけじゃなく、神話がアベルの過去と綿密に関わり神話と比較される事で余計にこの国でアベルを苦しめているのが痛々しく…
世界観を形作る美しい要素であると同時に誰かの人生を苦しめる要素として機能している所が凄い絶妙な配置だなと思いました。
そしてその神話の最後がまたアベルを救うというのも…美しい。
そもそもアベルの目指していた「平等に接する」…それは神の愛でありアガペーで、実はそのアガペーはソラの方が持っていて無償の愛で聖母のような包容力でアベルを包み込んでくれたという構図もまた美しいです。


基本、毒親は苦手なのですが、今作の親は自分のした事をちゃんと悔いて物語開始の時点でちゃんと子供に対して贖罪しようとしているタイプだったのでアベルの父と義母には特に苦い思いをする事は無く(一番アレなのは本当の母親ですが狂ってしまっていたり亡くなってもいるので特に責めようもなく…)。
家族は皆アベルの事を大切に思っていたけれどもアベル自身が自分の母と赤毛を嫌悪していた事で出来ていた溝で。
それを気付かせたのがソラだったという事に収まったのが解決策として凄く綺麗でした。


R15のシーンも、物語の進行上必要なシーンで、下手にドエロにならず雰囲気を崩さずに良い配置だったと思います。
ただ、物語としては物凄く綺麗な見せ方で必要なエロでエロくなりすぎない絶妙な表現だったと思いつつ、ソラとアベルのカプがあまりにも最高に最高だった故に物足りなさも感じてしまい…
物語の美しさを求める自分は「丁度いいバランス!最高!!」となる中でカプに萌えてしまった自分は「もっとドエロい表現見たかった!!!」とも嘆いています…腐女子の自分、落ち着いて…
後日談でドエロの方向とか来たら絶対にプレイします!!


語れば語るほど褒めの要素しかなくて、余韻も素晴らしく何を語っても「最高」としか言えないのがもどかしいのですが、一点難点…ではないですが気になる要素があるとするなら、前作の「ホシナガルソラ」がおそらくこの「ソラヒカルウミ」の分岐から分かれる物語という事です。
「ソラヒカルウミ」のメインルートでアベルの一件や覚悟を知ってしまうと、「ホシナガルソラ」見れない気がして…
おそらく後半に出てくるルティシオが「ホシナガルソラ」での攻略キャラ(というか固定カプゲーなので攻略では無い)だと思うのですが、先に「ソラヒカルウミ」をプレイしてしまうと前日譚になる故にアベルの影がどうしてもチラつきそうでチラつきそうで…
「ソラヒカルウミ」先にプレイして言うのもなんですが、プレイ順誤ったかな…と少し後悔してます。


最後、母親が亡くなった海を眺めるという構図も満点。
この構図でアベルが母の死を乗り越えたのが伝わりますし、アベルを「夕焼けの海」と言ったソラの例えが最後の夕焼けの海に反映されていると同時に、地平線で空と海が交わる所がソラとアベルにはもう障害は何一つ無い事が示唆されていて…
百点満点の話の構成に更に構図の美しさが加点されていました。


何を書いても褒めしか出てこないくらいに満足した本作。
あまりにも好き過ぎて「ホシナガルソラ」でソラがアベル以外とくっつくのは地雷になりそうなのが唯一の欠点な気はしますが、今作の出来が凄かったのでいつか前作の「ホシナガルソラ」にも触れないととは思いました。
本当に…本当に素晴らしかったので、是非後日談(R18系)が欲しいです!!