ひっそりと群生

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【朝焼けのブルー】感想

【群像劇全年齢】



2012年09月24日配信(朝焼けのブルー)
2015年07月26日配信(朝焼けのブルーⅡ - Pianissimo episode -)
2016年02月06日配信(朝焼けのブルーⅢ - Mezzo piano episode -)
2017年01月24日配信(朝焼けのブルーⅣ - Mezzo forte episode -)
2019年06月15日配信(朝焼けのブルーⅤ - Fortissimo episode -)
君の音。』様 ※リンク先公式HP
朝焼けのブルー(シリーズ)】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








5人それぞれを中心に描かれる、5つの大切なものと大切な場所の物語。



『「そんなに苦しかったら、いつでも死んでいいんだよ」海小屋での少女と青年の物語。
 「そんなに苦しかったら、いつでも死んでいいんだよ」
 私はその言葉を聞くたびに、胸がきゅっと音を立てるような気がした。
 いつも苦しい私に、その言葉をかける彼は、
 ほんとに穏やかな顔をしていた。
 内心、死にたい気持ちはいつもあったが、
 その言葉を聞くと、悔しくて、バカみたいで、死ぬことが出来なかった。』
(無印あらすじ)(公式より引用)


※こちらは無印~Ⅴの全編プレイ後の感想になります。


2012年から制作されていらっしゃり、完結されたとの事だったので一気にプレイさせて頂きました。


無印は精神的な病から生き辛さを感じている少女チヅと加藤という青年の交流。
Ⅱは周りとのズレを感じている少年、祐と加藤との交流。
Ⅲは祐のクラスメイトで本好きな図書委員の少女、槇の戻らない過去と今。
Ⅳは槇と同じ図書委員の少年、青葉の後悔と決心。
Ⅴは加藤の過去と、そして彼の決断。
彼らの通して約1年間、それぞれが加藤と…そして海を中心に描かれます。


一つ一つの物語は短いのですが、とにかく情景や心理描写が細やかで細やかで…
その上で登場人物達が皆、自分の独自の世界や価値観を持ち世間との生きにくさを感じている中でも根は優しいので自分が傷付いてばかりで…一言で表せば全てが「繊細」な作品でした。
繊細な心でままならない世界を何とか生きようとしていて。
自分の大切な場所や大切な人を大事にしようと一生懸命に生きて居て。
世間との折り合いの付け無さに悩み苦しんでいる所に同じように…もしかしたら自分以上に繊細な加藤と出会い、彼との交流で癒やされ、生きやすさと居場所を見出していく。
失って、もう絶対に戻らないものへの後悔や、加藤を中心に祐、槇、青葉の三人に強い絆が芽生えていく姿があまりにも素敵で。
いつか還るあたたかな海に包まれているような、隅から隅までどこを取っても繊細な雰囲気が素晴らしい作品でした。



『システム、演出』
無印はLiveMaker製、それ以降は吉里吉里製となります。
無印はLiveMakerの基本機能は有り。
それ以降はⅢ以外ではメッセージスピードの変更は出来ませんでした。
Ⅱで出来ず、Ⅲで出来て、それ以降は出来なかったので、おそらくスピード変更が出来ない仕様なのだと思います。
変更出来れば嬉しいと思いましたが、それぞれ約30~1時間くらいで読める物語なのでそんなに苦には感じませんでした。
むしろこの作品の作風として、5つに小分けにされている事を考えるとは有りかもとも感じました。
でも、履歴は全画面表示ではなく若干見辛かったです。


『音楽』
元々が音楽を作っていらっしゃる方の作品という事でピアノ曲の数の豊富さに驚きました。
どの章(?)もシーン毎に音楽が変わり、おそらく同じ曲を多様などはされていないと思います…凄いこだわりです。
特に盛り上がるシーンでは歌唱曲になりグイッと感情を引き上げて行きました。
無印には音楽鑑賞モードが無く残念でしたがⅡ以降には付いていたので嬉しかったです。
ただ、Ⅱはカーソルを合わせ選択するとピアノ音がSEになっている為、若干視聴の際には気になりました。
Ⅲ以降は気になる所無く音楽をしっかりと堪能出来ます。


『絵』
CGや立ち絵は無し。
背景は写真。
Ⅲにのみ登場人物紹介で若干の絵がありますが、全員顔を描かれていないのが逆に好きでした。
描写が細かいので印象を決定付けるイラストなどは無く、想像で登場人物達の顔を思い浮かべる事が出来て良かったと思います。
背景は海と海に向かう標識のある道の背景がとても印象深かったです。
Ⅴのラストムービーは旅立ちの電車をしっかりと演出してとても切なくも心地よかったです。


『物語』
上記でも書きましたが「繊細」以上にこの物語を表す言葉を持ち合わせておらず自分の語彙力の無さが歯がゆいです。
特に大きな事件が起こる!という物語では無く、登場人物達が本当にただ一生懸命に日常を大事に抱きかかえて離さないように懸命に生きるのですが…それが本当に健気で…
自分の大切なものを失いたくない…けれども時と場合が揃えば失ってしまう時もあって、取り戻せない物もある。
譲りたくない…けれども世の中に受け付けてもらえない価値観もある。
手放したくない…でも、自分が引く事が最善である。
本当に皆良い人で、だから傷付いて、でも良い人だから分かり合えて癒やし合える。
けれど、停滞もしていられない。
そんな遠くから見れば時が止まっているような、けれども彼らの中では大きく動いていた一年でした。


『好みのポイント』
登場人物達の言語化出来ないような大切さが伝わる素晴らしい文章でした。
特に、祐、槇、青葉の三人の関係が大好きで大好きで…
欲を言えば三人が海の家で過ごす姿をもっと見たかったですし、彼らのその後の関係が壊れる事無く愛情、友情…言語化出来なくても良いので、なんらかの情深き関係で共に居続けて欲しいと願います。





以下ネタバレ含めての感想です





とてもゆったりとした時間を過ごせたと思う反面、個人的に二点ほど気になった所もありました。
加藤さんと月人君の関係は描かれなかったなと思う所が一点です。
Ⅳから月人君が登場しましたが、彼の事は全く描かれずに終わったので何らかの形で続編的に描かれるのか気になりました。
あとは個人的な感情の問題ですが、Ⅴでいきなり性的な要素が絡んだのがとても悲しかったのが一点です。
加藤さんの過去で彼の抱えている苦悩でそこが加藤さんにとって大事なのは分かるのですが、Ⅳまで本当に祐、槇、青葉の関係がお互いを大事にし合って「好き」や「大切」という気持ちはあっても男女という性別の要素は一切感じなかったのが本当に好きで好きで…
「性」の要素が無くてとても好きだな~と思ってた中であの過去だったので、なんかこう…自分の中の世界観が崩れ去ったというか…現実の生々しい面を見ちゃったなぁという気持ちになってしまいました。
これは完全に私が受けた印象なので何一つ問題では無く、この作品が「現実のままならなさ」を描いているのも分かるので、加藤さんの過去こそが「現実」の生々しい面を突き付けているというのも分かります。
なので私の好みの問題でした。


加藤さんが中心ですが、やっぱり、祐、槇、青葉の三人の神聖な雰囲気がたまりません。
Ⅲの槇のズレていってしまっていつの間にか後戻り出来なくなってしまった関係や、Ⅳの青葉の槇への気持ちの向け方が本当に美しくて。
祐の槇が大切だけれど、祐の方こそ槇への気持ちは恋ではないというのが伝わって…屋上で槇と青葉の仲介役になった時に、祐の愛はアガペーなんだと気付き、三人がとてつもなく綺麗に見えて…あぁ、本当に良いなぁと思いました。


月人君の件などでアナザーストーリーなどがあるのでしょうか?
もしも加藤さんのその後や加藤さんの居ないあの海辺を見られる時が来るのならば…怖いもの見たさな気持ちも有りますが、見てみたいです。