ひっそりと群生

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【臨界天のアズラーイール】感想

【男性主人公全年齢】



2019年08月15日配信
→Quantize_』様 ※リンク先公式HP
臨界天のアズラーイール】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








キミと共に生きていく…



『想田理人は4月から大手建設会社に勤務することになった新社会人。
 希望していた設計課とは異なる配属先となったが、そこで先輩社員の長島麗美と出会い、次第に惹かれていく。
 やりがいのある仕事、優しい両親、最高の友人……。
 全てが理想的な世界で、ある日を境に彼はおぞましい悪夢を見始める。
 悪夢を見る頻度は月日が流れる毎に増え続け……彼の日常を浸食していく。』
(公式より引用)



プレイ時間は記載通り約6時間くらいだったと思います。
選択肢は一箇所のみ。


あらすじである通り、「悪夢が現実に侵食してくる」という物語なのですが、とにかく悪夢以外の平和な日常の描写が丁寧で日常がとても大切に大切に描かれていました。
麗美と出会い、慣れない業務の中、上司の麗美に沢山助けて貰い時には主人公が助け、二人三脚で仕事を進めていきどんどん距離を縮めていく過程が細やかで。
麗美との日々が輝かしくて素晴らしくて。
だからこそ年を重ねる毎に見る回数が増え、現実に侵食して来る悪夢が恐ろしく。
とても素晴らしい生活だからこそ、この平和な日々を壊さないで欲しいとひたすらに願うほどでした。


そして明かされてくる悪夢の真実…
もう止めてくれ、この平和な世界をそのままにしていてくれ…と本気で願う程に突き付けてくるのは残酷な真実。
何が正しいかを決めるのは選択肢がある以上プレイヤー次第だとは思いますが、「肯定」も「否定」も、どちらもきっと素晴らしい世界であると、そう思っています。



『システム、演出』
ティラノ製品。
基本性能は有り。
履歴を開いてクリックで戻れなかったのが若干不便でした。
選択肢が一箇所ありますが、その後の展開が片方に比重を置きすぎかな~とは思いました。


『音楽』
素晴らしい。
全曲オリジナルらしいのですが、本当にどれも素晴らしい曲ばかりでした。
特にタイトル画面で流れる「lilium」は今年プレイしたゲームのオリジナルBGMで間違いなく上位に来ます。
サントラがもし発売される時が来たら必ず買います!


『絵』
立ち絵のポーズ差分はありませんでしたが表情差分は多く、表情変化が楽しかったです。
麗美の仕事のオンオフの洋服差分は最高でした。
後半に出てくるとあるキャラの表情も見ていて可愛らしく、初登場時が恐ろしげだったのもありギャップが最高でした。


『物語』
文章は読みやすく、必要な描写で構成されていてダレる事無くサクサクと読む事が出来ました。
麗美との日々が新入社員で緊張や不安はある中でも楽しくて穏やかで…
世界は優しくて…ずっとこんな日々が続けば良いのにと本当に思いました。


『好みのポイント』
一番好きだったのはやっぱり音楽でした。
タイトル画面の「lilium」を筆頭に全曲良すぎます。
特にピアノ中心の「麗美」「(ネタバレなので伏せますが後半登場のヒロイン名タイトル)」「repentance」「まだ見ぬ世界へ」は本当に良く。
今年、良BGM作品は無いか?と聞かれたら間違いなく本作を上げます。
曲の使い所も違和感無く…物語では比重に少し思う所があるのですが本作のBGMに出会えただけで大満足です。





以下ネタバレ含めての感想です





さて、ネタバレになるのでこちらに書きますが…
上記で書いた通り麗美との交流がとても丁寧で、彼女が居る世界の方が「理想世界」だと分かっていても彼女の世界を選ばずにはいられませんでした。
公式紹介の画像に居る少女、沙百合が居る世界が「現実世界」で麗美が居る世界が「理想世界」なのですが、「現実世界」の描写が少なすぎると感じたり。
麗美と出会い、近づき、恋をし、付き合い、また近づき、結婚し、子供を生む…までの流れ、描写があまりにも綺麗過ぎて。
途中途中で「現実世界」の夢が挟まりますが、その中で出てくる沙百合との思い出が少なすぎるんですよ…
いや、彼女との思い出は孤児院での少しの時間のみなので仕方ないのですが、「彼女の事が大切だ!会いたい!!」という気持ちよりも「麗美の方が大切だ、彼女の居る世界を選ぶ」となる気持ちの方が強く。
後半選択肢が出ますがプレイヤーとしてどう考えても即「否定」を選びたくなるくらいには描写の比重に差がありました。
この手の選択肢は気持ちが同じ比重になるようにしてないとちょっとどうかな…と思う所があります。
理想の世界なのだから「理想世界」の方に気持ちが傾くのは当たり前と言われたら確かにそうかもですが…それだと沙百合がメインヒロインとした時に「絶対に会わないと!!」と思えないのはヒロインとしてどうなのかなーと。
「現実世界」に帰った後も沙百合との思い出を少しづつ思い出しますが麗美を超えられるか?と言われたら正直微妙で。
下手したら初対面の死神の貫禄からどんどん人間味を見せてくれるアズの方が魅力的で。
最後に沙百合を助ける時の火事や建物が「理想世界」とリンクしている部分や非常階段の伏線などは面白かったのですが、そこでもアズが大活躍して死神の規則を破ってでも助けてくれて最高のサブキャラしてますし、火事の中、「理想世界」の麗美に真実を打ち明けても麗美はしっかりと送り出してくれる上に非常階段のヒントもくれるという…
麗美が!あんまりにも!良い女過ぎます!!
沙百合、幼少期の主人公を助けたといえば助けましたがそれ以外だと一緒に居たくらいで…そしてラストに助けられるくらいで…
麗美とアズに比べると魅力が少な過ぎて。
麗美>アズ>>>>>沙百合くらいの魅力になっていました。


「肯定」と「否定」の選択肢後、「肯定」ルートだと「現実世界」に帰り物語が続くのに対して「否定」だと一瞬で終わる事と、「肯定」だとEDロールが流れる事から正史は「現実世界」なのだとは思いますが…
もう少し、せめて麗美と同等か、もしくはそれ以上の魅力が沙百合に無いとダブルヒロイン物のメインヒロインとしては心もとないと思いました。
ダブルヒロインは魅力がイコールでバランスが取れているから成り立つ物だとは思うので。


まぁヒロインの比重に色々と思う所はありましたが、主人公の理人君はとても好みの主人公でした。
麗美への気遣いや麗美への告白の仕方、「理想世界」の方もですが、「現実世界」でも数々の拷問に耐え抜いたり施設を抜け出す為の機転が効いたり。
「たった少しの交流だったけれど大事になったたった一人の人の為に全力で足掻き前に突き進む」系の主人公が好きなので大変好みでした。
若干「現実世界」帰還後に周りの人間が手を貸してくれる確立が上がったなと思ったり、一度裏切られたのに人を信用して目的を話過ぎて迂闊だなと思うところはありましたが、そういう部分も人が良い主人公だと思ったり、そういう部分を抜かせば真っ直ぐな主人公で前向きな物語に合った主人公だとは思いました。


最後に、自分は二者択一ならば「否定」派で「理想世界」の方を理人君には生きて欲しいです。
この場合本当に生き抜けるか微妙なのとアズは敵に回るでしょうが…
作品のコンセプトはきっと「現実を生きる」なのだとは思います。
それでも、自分は、入社から築き上げてきた麗美との関係描写がとても美しく、どうしても失いたくない物だと思いました。