ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【サイケデリック・ウーファー-Coloration-】感想

【ツクール系全年齢】



2018年11月16日配信
東堂 前夜』様 ※リンク先公式HP
サイケデリック・ウーファー-Coloration-】(PC) ※リンクBOOTH
以下感想です。
必然的に『ゼーメンシュ-Aftermath-』『実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-』(※リンク先感想)のネタバレもしています。








殺人鬼が殺人鬼のまま、愛と仲間を得る。
才華蓋世の生き様を見よ!



『才華蓋世(さいか がいせい)。
 20代後半。男性。人形会社の若社長。
 ドールと瞳をこよなく愛するサイコキラー

 数多の世界を移動できるワールドトラベラーたちが、
 とある眠り病を解明すべく集まった組織【ヘーメラー】。
 訳あってその一員となった才華は、
 初の任務で【カシノ世界】の調査を希望する。

 吐き気がするほどリスキーで、
 眼が眩むほど美しい、
 ドールアイを奪うために―――』
(公式より引用)



オススメをして頂きプレイしました。
プレイ時間は5時間15分くらい。
ゲームとして単品であり「前作品をプレイしていなくても楽しめる内容になっていると思いますので、あまり気にせずどんどんプレイしてくださればと思います。」とリードミーにはありますが、「ゼーメンシュ-Aftermath-」「実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-」クリア後にプレイしないと数々の展開で困惑する可能性があるので「ゼーメンシュ-Aftermath-」「実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-」の順にクリア後推奨です。


物語はサイコキラーである才華が初任務でカジノ世界に行く所から始まります。
前作からプレイ済みだと「まさかのコイツが主人公」枠で最初はとても驚きました。
「実に花なり捜査部よ」の時点で大層ヤバイお方でしたが、今作でもそのヤバさがブレる事は無く。
とにかく人間の瞳にだけ執着し、人間の瞳の為だけに行動していく才華の姿は恐ろしくも芯がブレず格好良いものがあり。
まさしくアンチヒーローというかダークヒーローというか。
とにかく犯罪者で人殺しでありながら自の美学や自分の欲望の為に世界を救う側の方に立ち、そして自分の目的を達成する過程で世界を救っていく姿はフィクション物の悪人主人公として凄まじく惹かれる物がありました。
言動も紳士的で、けれどどこか溢れ出る危うさはまさに思い描かれるサイコパスで。
それでも、それだけに留まらず作中で彼が様々な自己の中の本質に気付く所や、新たな人物と出会う事で得ていく人間関係はサイコパスでありながらも人間的で。
"才華蓋世"という男の魅力がとことん描かれた物語でした。



『システム、演出』
ツクール製、戦闘は無し。
前作同様マウスでの操作が可能でした。
今作はカジノというのもあり、所々でミニゲームが挿入されます。
どれもそんなに難しくはなく、初心者向けで良かったです。
ただ若干初心者向け過ぎるなとは思ったり…難易度調整とかあったら楽しそうだなと思いました。
最初にある「仲間外れ探しゲーム」みたいなのはボードゲームとかでも大好きなので、もっと楽しみたかったです。


『音楽』
今作ではオルゴールよりかはストリングス系の音楽が中心だったと思います。
どれも才華の気品に合っていましたが、所々でオルゴールが流れて連続した世界感なのだなと感じました。
オルゴールはどれも本当に綺麗で良かったです。


『絵』
「ゼーメンシュ」「実に花なり捜査部よ」からだけでなく、「ヘーメラー」に来た事で新キャラがドッと増えました。
絵柄は安定の美しさで、基本華やかなキャラばかりなので見ていて綺麗でした。
ドット絵と合わせて見ると楽しく、今回はモーションのような物も追加されてドット絵が豊富になっていました。
ただ、モーションは作中で使用する事は無いので、ゲームの中でのイベントなどでモーションを使えたら良かったのにとは思いました。


『物語』
「ゼーメンシュ」「実に花なり捜査部よ」と続けてきましたが…
話は個人的に一番好みだったかもしれません。
「ゼーメンシュ」が世界観、「実に花なり捜査部よ」がキャラの集結だとしたら今作は「固定化した世界観と集結したキャラを使って面白い事をする」という話の方向性の為、キャラがとにかく生き生きとしていた印象。
今作だけでは正直???となると思いますが連続して続けると今までを知っているからこそドキリとするような内容や会話があったり。
そういうのは連作物のお楽しみだと思っています。
そしてとにかく今作の"才華蓋世"がとても魅力的で…
サイコキラーというだけでズルい要素なのに、彼の生き様や執着が綺麗に描かれていて、キャラの掘り下げがとても良かったです。
「長編・ガッツリSF・流血・グロ有り」のジャンルの為、血生臭くはありますが、今作は前作、全前作に比べてハッピーエンド寄りなのと、最後のあのタイトル回収が良すぎました。


『好みのポイント』
後半、才華がとある想いに気付く所や、新キャラである如月や霖雨、そしてヘーメラが才華を受け入れるシーンなどが最高でした。
ヘーメラという組織の都合上、貴方は殺人鬼のままで良い、サイコキラーでも良い、それを受け入れる…という一連の流れがとても珍しく。
今まであまり「殺人鬼」という存在を受け入れる方向でこんなにポジティブに進む作品をあまり見かけた事が無かったので新鮮でした。
通常では受け容れられるはずがないけれど、このヘーメラという組織の在り方が特殊故にポジティブに受け容れられ、そして才華自信も変わっていく…サイコキラーの成長物という珍しい展開を見れて楽しかったです。





以下ネタバレ含めての感想です





上記で書きましたが"才華蓋世"という男の生き様が本当に最高でした。
才華が瞳にしか執着しないように見えてその根源である恋人の薄明と同じ存在であるカシノ世界での薄命に出会い、連れ去り…けれども彼女は自分の好きな薄明ではないと気付く瞬間。
確かに自分は赤い瞳を求めていたし初対面では薄明の瞳に惚れたけれど、薄明と過ごす内に薄明そのものを好きになっていたのだと。
推理世界の薄明で無いと自分が好きな薄明ではない…薄命の瞳ではダメで、薄明の瞳が開かないと意味がないと気付く流れはサイコキラーの彼が覗かせる人間性であり、そして同時に彼の狂っている根幹でもあり、人間性とサイコの両立がとても良く。
「誰も誰かの代わりになる事は出来ない」というコンセプトはとても好みなので見ていてテンションが上りました。
"ショーを盛り上げる"という部分も、カシノ世界での蓋世を身近に感じ近しい行動を取りながら、想いは引き継ぐけれどもカシノ世界での蓋世とは違う想いでカシノ世界を守ろうとする所など。
そしてサイコキラーのままヘーメラに受け容れられ、仲間が出来ていく姿はやってる事はとてもえげつないけれどもとても明るくポジティブで…独特の空気を生み出しとても面白い作風になっていくなと思いました。


ただ…やっぱり「アイ病」に関しては未だに「なんなんだろう?」ととても思います。
それぞれの世界中で流行ってるという設定ですが海外圏の二文字で収まらない特殊な発音は「アイ病」ではどうなるんだろう?と思ったり。
登場人物が今の所全員漢字表記なのが気になったり。
「アイ病」自体に今後何か付属して意味付けがされていないとちょっと気になり続けてしまうなーと個人的には思っています。
ただ、この「それぞれ独自の規律が定まった小さな世界」が沢山あり、そこに規律とは関係ない世界の人間が行く…という作品構成はある意味でキ◯の旅に近いなと思ってるので、モト◯ドが喋る事を不思議に思ってはいけないように、「アイ病」は"そういうもの"という認識で居ないといけないのかなーとは少し思っています。


あとは、面白い作風ではあるのですが、ヘーメラがどうしても「正義の組織」として描かれているのが若干腑に落ちないというか…
確かに各世界の眠り病を救っている以上、ヒュプノス狩りよりかは「正義の組織」なのだとは思うのですが、それでも人殺しには変わらず…作中でそういう部分が地味に語られますが、ヘーメラがポジティブな人々が多い為に、「人殺しが容認されてしまっている」という部分には違和感を覚えてしまい…
ヘーメラの組織員が「自分が間違いなく正しい事をしている」と自信がある所に違和感というか。
正義と悪の理論に近いかもですが、今まで欺人や絢爛や才華がヘーメラ側だったのでヘーメラは圧倒的「正義の組織」として描かれてきましたが…そういう「正義は完全にコチラ側にある!」みたいな描かれ方をするとちょっと逆に何かあるのでは…と勘ぐってしまい。
なので、今後どこかでヒュプノス狩りとヘーメラの「正義とは何か?」みたいなのが描かれると良いなー…というか見たいなーとは思ってます。


そんな感じで、とても好きな所と今のままではちょっと気になる部分がある…というのが正直な気持ちです。
でも、キャラクターの内面を描いたり、キャラクターを掘り下げたり…話の構成やキャラの魅せ方、ラストの終わり方はこのシリーズの中で今の所一番好きだったりします。
世界観の好みでは…ちょっと「ゼーメンシュ」超えは出来てないですが…あの世界観は本当に美し過ぎる…掴みは抜群でした。
このシリーズを「愛病世界シリーズ」と公式様が銘打っていらっしゃいますが、残りは今の所「愛病世界-象牙の塔-」になりました。
ただ、こちらはシェアなのでちょっとまた後にプレイしたいと思います。


「アイ病」とは本当に何なのか、そういえば結城は今作では後半に名前しか出てこなかったなと思ったり。
絢爛の母は何故死ぬ事になったのか、モコはどうなったのか、ウーファーは何故存在するのか。
豪傑と欺人の関係は何なのか(しかし進めば進むほど欺人が超絶万能人で勝ちフラグ持ちになってくる…)。
まだまだ謎は多いですが、その謎に翻弄されながら、いつか綺麗に収束する事を楽しみにしています!