ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【はざまたそがれ】感想

【三人称全年齢】



2020年02月16日配信
『夜行小十具』様
はざまたそがれ】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








文章、システム、絵柄、全てがレトロに作られながらも根底には近代的な要素があり独特な世界観が形成されていました。
回顧的怪異譚(と、そして少しの科学的虚像物語)。



『レトロな電子小説』
(公式より引用)



主人公、狭間陽子は親友の華子の死をきっかけに自分が普通ではない世界に居た事に気付く。
学校外の人間は全員同じ顔の男性と女性で構成された町。
自分が住んでいた町と同じ町並みのはずなのに所々にある入ることが出来ない謎の黒い建物。
寝なくても食べなくても生きていく事が出来、怪我などが早く治る状況。
そして、学校内の人間はその事に気付かず幸せそうに過ごす世界。
陽子はこの異質な世界の原因を突き止める為に自分と同じ様に世界の異変に気付いた人間を探していく。


プレイ時間は9時間くらい。
公式の紹介がシンプルに「レトロな電子小説」とあるようにゲームの隅々からレトロな空気が漂っていました。
色々と現代から見たら不備なシステムですが、そこもまさに昔のノベルゲームらしく。
絵、音楽、システム、UI全てから"レトロ"に対するこだわりをひしひしと感じました。
物語もキャラクターも大変良く、少年少女達が怪異に巻き込まれていく姿は懐かしの怪異系作品を見ているかのようで。
ホラーな雰囲気や後半にはほんの少しのグロや性的描写を含みますが、そういう部分もまたどこか懐かしく。
ボーイミーツガール系の怪異物+ファミコン時代のノベルゲームが大好きな人からしたらたまらない作品だと思います。
是非、昔ながらのレトロなノベルゲームが好きな多くの方々に届いて欲しい作品でした。



『システム、演出』
Nscripter製。
「選択肢・バックログ機能・スキップ機能・どこでもセーブ機能はありません。(セーブは一話ごとに自動で行います)」
とあるように、Nscripter製でありながら履歴、文字表示速度変更、セーブ機能がありません。
読む際も、右下にある本のアイコンをクリックしないと進まない仕様になっています。
ですが、一話約10分内くらいで終わるので全くそれが苦にならなかった所と、そういう拘りもまた昔のゲーム感が徹底されていて、使いづらさが逆に素晴らしかったです。
一点個人的引っかかった所があるとするなら、画面の構成が状況描写の文章と台詞の文章の場所の位置が違う為、クリックしていくとたまにどちらかを見落としそうになった所です(そして履歴が無いので見落とした際に少し困りました)。
ただ、この画面構成も昔懐かしい見栄えをされていて世界観の構築に一役買っていたので決して問題があるUIではありませんでした。
「一部の漢字や言葉は辞書機能でサポート(但し初見時のみ)。」とあるように所々で難しめの単語の解説が読めたのも懐かしの機能っぽくて素敵でした。
スキップ機能は無いのですが、一応Nscripter固有の機能としてCtrlキーで文章を瞬間表示出来るので、Ctrlキーと左クリックで高速で進む事は出来ます。



『音楽』
ピコピコ音最高!
ファミコン時代の3和音っぽさがたまりませんでした!!
クリア後に音楽鑑賞モードが無かったのが残念ですが…昔のゲームもそういうのあまり無かったなーと徹底されたシステムを受け入れます。


『絵』
ドットで描かれたような(というかドット絵?)絵で雰囲気がとにかく最高でした。
絵の種類は本当に豊富で…所々枚数が多くアニメーションしていたのには驚きました。
昭和の雰囲気が強く、全員どこか野暮ったさがあった所が最高で。
キャラクターが台詞を言う際に顔グラフィックが出るのですが、その顔グラと一枚絵の顔が若干違う部分も「昔のゲームあるある」で良かったです…CGは綺麗だけれど顔グラは何故かもさっとしてるとか…あったなぁ…


『物語』
一話一話の区切りが細かいのですが、毎話必ず盛り上がりポイントが設けられていてダレる事は無く、次話への引きが驚くほど上手かったです。
文字も、「飛んだ」や「跳ねた」などの描写がある際に文字自体が飛び跳ねたりしていて見ていて面白い演出でした。
「英語・片仮名を一切使用していません。」とあるように、英語系の単語が全く仕様されていないのが徹底されていました。
バスとか…他にも色々とよくカタカナ無しでこの言葉を使われたなぁと思う箇所が沢山あります。
そういうレトロをとことん貫きながらも下地の設定などは若干SFが入っており…怪異的でありながらもSF的で凄く不思議な物語でした。


『好みのポイント』
陽子を中心にこの世界の異変に気付いた「覚醒者」が集うのですが、その覚醒者達が皆見事に個性的で個性的で。
個性的な彼らの性格や掛け合いがとにかく面白く、彼らが突拍子も無い行動を取る度に笑ってしまいました。
基本は怪異物でホラーな雰囲気や要素があるのですが、ボーイミーツガール物として凄く完成されていたと思います。





以下ネタバレ含めての感想です





正直、ラストかなり賛否が分かれるとは思うのですが、個人的に最後が………な所も含めて最高でした!
だって昭和後期とか平成初期ってこういうの多かったじゃないですか!
若干モヤモヤした終わり方というか、両手を広げてハッピーエンド!大団円!と言えない終わり方というか…
こう…終わり方のモヤモヤの点で昔のホラー系作品の空気を思い出して最高でした!
大団円大好きなタイプなのですが、この作風だったらモヤッとしてても全然OKです、というかそういうのも含めて"レトロ"だと思います。
モヤッとする仕方も理不尽なモヤッとではなく、納得出来るタイプだったのもまた良く…そうですよね、あの時点で死んだのだから蘇生はおかしいですし、彼女があそこまで特別な存在なら、あぁいう感じで現実に干渉してきてもおかしくないですからね。


終わり方もですが、作中のボーイミーツガールもまた最高で…
陽子と清十郎の最初は嫌い合っていた中で芽生えていく友情や、雨宮の最後の華子への想いを貫くシーン。
かすみの瓶底眼鏡で実はイケメンの風貌をしている上で頭脳派で皆を頭脳で引っ張っていくという盛りに盛った所(個人的にキャラクターではかすみが一番好きです)。
前園さんは…とにかく後半が凄く、愛美は後半登場なので若干印象薄めですがおまけシナリオで色々と彼女の良い所が補完されていたり。
個性的な彼ら彼女らの掛け合い、攻防戦、友情がとにかく最高でした!
特にラストの華子が登場するシーンはとにかく熱く!
それはちょっと都合が…と思わなくも無いですが、そういう部分も今まで幽霊が出ていたという設定で無問題にしていた所と、とにかく熱量で押し切った所が逆に最高で!!
「二人揃えば最強」をまさに具現化したシーンで鳥肌モノでした!!


ラスト、人として向き合いちゃんと間違いを言葉で伝えた所が最高…なのですがその後のオチがまさに昔のホラー物の終わりらしく…
大団円好き!大団円じゃないと認めない!過激派!!な方には正直オススメはし辛いのですが、あのオチを含めて好きなので、やっぱり賛否は分かれそうですが自分はとても好きです。


どこまでもレトロに全振りした作品で、どこまでも個性に溢れた作品でした。
作者様曰く続編…というか「一年前の超常現象研究部のお話」を制作予定らしく。
このモヤっとした終わり方が好きではありますが、愛美の件でも決着を着けたり愛美の掘り下げも欲しいので続編楽しみにしています!
(しかし改めて見ると…最後に追加される起動画面はifの可能性でしょうがエッグいなぁと思いました。)