ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【天使のいない12月】感想

【男性向け18禁】



なんとなくLeafのノベルゲーム作品を最初からプレイしたくなったので購入part16。



2003年09月26日発売
Leaf』※リンク先公式HP(18禁)
天使のいない12月】(PC)(18禁) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








完全に読み物なのに、リーフ・ビジュアルノベルシリーズでは無くなっていましたね。
完全な読み物としてシリーズ扱いするならば5作目になるはず。
シナリオは「こみっくパーティー」と同じ方、えらく毛色が変わったなぁ…
(でもこみパの鬱展開とか心理描写を思い出すと納得もします。)


まずシステム面は7でもインストール起動可能。
ディスクレス起動は不可。
プレイ時間は約6時間15分くらい。
一人2時間くらいで終わるので読みやすかったです。


いやぁ、Leafの作品を連続してプレイしてきましたが、「WHITE ALBUM」といい、リーフの冬のゲームは良い物だ。
明る気ではなくて、どこか灰色で、寂しさを抱えた人達が寄り添い合う…そんな作品で…
今作も、鬱…というかダウナー系のゲームの話題が上がると必ず上がるのでプレイしましたが、かなり好みのダウナー系作品でした。
本作の話題が上がると必ず言われるのが「主人公の思考が…」という部分なのですが、ある程度の覚悟をしていた所もあり、そんなに思っていたほどでもなく…というかむしろ、思春期特有の少年の思考の範囲内で不快感は殆ど無かったです。
自分が取るに足りない人間であるという事を自覚していて、世界を斜め上からは見ていて、確かに全く明るい思考の主人公では無いのですが、だからといって「世の中が面白くないから面白い事が起こって欲しい~」とか「周りで何か事件でも起これば面白いのに~」とか…そういう不謹慎になるような思考は持っていなくて。
周りの人間の不幸を望んでいる訳でもなく、家族の平穏をつまらないと思っている訳でもなく、人並みに常識は持っているタイプの主人公だったので思っていた以上に「普通の少年」という印象でした。
(そういう不謹慎な思考をして、いざ平穏が壊れた際に慌てふためく主人公に苛立ちを覚えてプレイを辞めたくなった事が一回あるのでその主人公よりは嫌悪感が無かったです…その主人公も一応後半で巻き返しましたが。)
死にたいと思ってても実際に死が迫ると慌てたり、暴力を怖がったり、傷付くのが怖いから傷付けるのに恐れたり。
普通の人間が恐れている事を普通に思える少年で…10代後半や20代前半に触れていたらムカつく主人公に見えたかもですが、今見ると「ハハ、初い奴め」くらいな普通の少年で安心しました。
(というか主人公よりもヒロインがヤバ目なのが多く感じたので主人公がわりかし普通にも見えました…)


話としては何にも成れず、何も成せず。
新たな関係が出来たような、でも、それは取るに足らない関係のような…そんな関係を女性達と築く物語でした。
「人生は死ぬまでの暇つぶし」「その暇つぶしを楽しく出来るのは楽しもうとした人間だけ」
これはその暇つぶしを楽しもうとはしなかった人達のお話。
漫画を読んだりアニメを見たりこんな風にゲームをプレイしたりして楽しんでいますが、一歩間違えれば自分も彼ら側に入っていたのだろうなと思ったり。
全員が「楽しい事」を何もせず、けれど孤独は嫌で何か繋がりを求めて。
でも心は見えないからせめて簡単に繋がれる肉体だけは繋がろうとして…結局何も繋がる事は出来なくて。
もっと適当に生きれば良いのに妥協出来なくて…
主人公もヒロインも恐ろしく繊細…というよりもド真面目だなと思いました。
「この関係はこうでならないといけない」とか「この言葉の関係ではこれは出来ない」とか、そういう定型文や常識的な言葉に縛られている感じ。
世の中はもっと適当で、言語化出来ない想いもあって、白か黒とハッキリしていることは殆ど無くて…もっと灰色の部分があって。
人はそれを割り切って生きているのだけれど、真面目な彼らにはそれが出来なくて。
この世界は、真面目な人間ほどに生きにくい構造をしていると痛感するお話でした。
真面目で、自分のとても大事な領域は持っていて、一人は嫌で、寄り添って身体を繋げてみて、でも自分の領域に入られるのは嫌で…
陽キャから見たら面倒な思考を持つ人達が面倒な恋愛をするという一言で片付けられそうだけれど、彼らにとってはそれが精一杯で。
…とにかく真面目な人間達が世間の常識的な関係に心をすり減らされる息が詰まりそうなお話でした、ダウナー系の金字塔と言われているのも納得でした。


絵は流石のLeaf
2003年とは思えない程に背景もキャラも綺麗です。
なかむらさんの絵も、みつみさんの絵も美麗。
制服が地味なのがエロゲにありがちな派手っ派手な制服と違い世界観にも合っていますし、なによりもこの現実的というか…ファンタジー色の一切無いダウナーな世界観に合っていました。


音楽も流石。
主題歌の「I hope so...」は聞いたことのある名曲です。
「憂鬱が始まる 長すぎる一日が」
月曜日に流すと相当テンションが下がる曲だと思います。
BGMもギター調の曲が哀愁を漂わせていて、冬の寂しさを感じさせる曲が多かったです。
声はLeaf初のフルボイス。
サブキャラ隅々にまで声があって、しかも皆さんお上手で良かったです。
ただフルボイスな分、主人公の名前変更は要らなかったかなと思いました…名前は端折られるので名前も呼んでほしかったです…


結婚して家庭があって子供が居て…そういうのが「当たり前」だと「常識」だという価値観が未だに根強くあるこの世界で、簡単に割り切って身体をあっさりと繋げられて、特に深く考えず「恋愛」と語れる人間がきっと大多数なのだと思う以上、彼らはきっと少数派で。
そんな真面目な彼らが出会ってしまった…
「心は繋がる事が出来るのか?」
これは人類が何千年かけても答えが出なかった問答で永遠に謎のまま、灰色のままだと思います。
そしてきっと、あまりにも真面目過ぎる彼らはEDの段階ではこの灰色の答えに納得するのは不可能だと思います。
だからあのビターなEDなのだろうなと。
彼らがこの後に別離の道を辿っても納得というか…
ラストに全てのヒロインで、
『それは永遠でなく
 真実でなく
 ただ、そこにあるだけの想い……。』
と締め括られるのに納得というか…多分分岐はしているけれど、ある意味で誰とも本当には触れ合えない全員一緒の物語なのだろうなと。
今のままではどの関係を取ってもきっとダメだし…心が繋がれるかは分からないけれど、心と身体はある意味で直結していて心を壊したら身体も壊れる以上、この精神のまま進んで行ってしまっては心だけでは無く身体の方も自滅してしまいそうで…
だから、彼らには生きて自分の精神と折り合い付けられるくらいの年齢まで生きて欲しいなと…身勝手ですが思ってしまいました。
いつか、何十年か経って、この日々を振り返った時に「若かったな」と思える日が来るほどに割り切れる精神を得ていると良いなと…そんな風に思いました。



プレイ順は攻略通り
透子→しのぶ→明日菜→雪緒→真帆
の順で攻略



『栗原透子 ルート』
なかむらさんの絵で「器量が悪い」というのは無理があろうかと思われます…
いや、まぁ、美少女ゲームなので絵でのブサイクは…とは思うけど、ギリマイナス点は眼鏡くらい?それも人によってはプラス得点ですし。
一応作中のキャラ付けで言うなら、器量が悪く容量が悪く頭が悪いというキャラ。
…でも正直本作のヒロインそれぞれが生真面目で不器用な中で、ぶっちゃけ透子はかなり自分を理解しているキャラだとは思ってます。
自分の頭の悪さを理解してて、それに引け目を感じている。
他ヒロインが自分の悪い所に胡座をかきまくっている中で、透子は自分の欠点を常に謝って生きている子で。
まぁ「自分は頭が悪いから…」というのを免罪符にしているというのも分かりますが、人間、完璧じゃない以上、どこかで何かの免罪符が無いと生きていけないさ…
特に、明日菜のルートで明日菜との関係に気付いていたり…なんだかんだ人の心の機敏には聡いというか…
(しのぶは気付かなかったけれど、明日菜との関係に気付いた以上、あれはしのぶだったから気付かないフリをしていた可能性が…)
色んな事に気付くけれど、気付いた後にどういう言動をすれば良いのか分からないタイプなんだろうなーと。
言葉遣いとか思考とかが幼いので頭が悪いと言われていますが、どちらかと言えば聡い上で容量が悪いタイプ。
自分の惨めさを感じて肉体関係だけでも喜んでくれた主人公に惹かれて行く…不憫だけど健気な子。
どのルートでも必ず絡みますが、他ルートだと結構割り切って去って行くのもまた聡いなとなんとなく思いました。
このルートのしのぶはマウント取りまくりの上で教育毒親の素質丸出しで腸が煮えくり返りそうでした…そら透子も疲れるわ…
メインヒロインなのもあるし、主人公にさえ求められていればある程度の安定感があるので、彼女のEDが一番無難というか…ハッピーな気はします。
作中一番「弱い」ヒロインでありながらも安定感は一番ありそうなのがなんとも皮肉な事で…
なんだかんだ主人公も他ルートに行っても絶対的に透子の事を気にかけてますし。
というか本当に悪い男だったら気にすらかけずヤリ捨て御免を普通にしそうなので、主人公もド真面目だなと思うのと同時に「愛とか恋とか好きという気持ちは無い」とか言いつつも、一人の人間にそこまで思考回路を割く時点でそれは…という所はあります。
「世◯はそれを愛と呼ぶんだぜ」を爆音でかけてやりてぇ…
やっぱりED後も普通に側で寄り添ってそうなのは透子EDだとは思いました。
(というか他ヒロインが高確率で別れそう…)


『榊しのぶ ルート』
2003年にリスカするヒロインのインパクト。
透子の教育ママをしていながら、透子のダメさによって己を支えていた子。
いや、彼女の境遇も辛いと思う、家の教育がきっと駄目なタイプ。
あまりにも潔癖過ぎて…絶対この子正しい性教育受けられてないよ…
初体験で「お父さん」と叫ぶシチュはエロかった。
でもさ、だからといって自分を確立する為に他人の弱さに漬け込むのはそれはもう性根腐ってるというか…
それが無自覚なのがまた…将来良い感じに毒親になりそう…
彼女も主人公と関係を持つ事で透子から主人公に依存する形になりますが…透子の場合は肉体関係を持つ事で好意を寄せてきたけれど、彼女の場合は好意は別で好意を表すと拒絶する所がどこまでも潔癖を突き進むと同時に透子との関係よりも痛々しく見えました。
主人公、なんだかんだ肉体関係だけで割り切れずに何らかの想いを寄せてしまう辺りにやっぱド真面目で…
でも、その想いは決して受け取らないしのぶもまたド真面目で…
なんかこのままズルっズルとある程度の年齢まで関係を続けていそうな二人だなとは思いました。
そして妊娠してからようやく二人の関係に名前を付けそう…


『麻生明日菜 ルート』
陽キャ演じる陰キャ大好き党なのとビッチ萌えとしては大変好きな境遇の人でした。
家庭にハブられ、援交で搾取され、今まで奪われる側だったから今度は自分が奪う側に回る…
性格悪いヒロインが大好き党としても大変刺さりました。
でも、性格悪いとは言っても彼女もまた真面目な人で。
とにかく「愛」を求めてるというか、彼女の求める「愛」さえ手に入れば過程などはどうでもいいというか。
ある意味で真っ直ぐな人だと思います…過程無視する所が拗れまくってるけど……
主人公が「愛」…かは分かりませんが、彼女に無視できない想いを抱いた時点で彼女の勝ち確な感じで…
ある意味で大勝利収めたようなヒロインで好きでした…「愛」が得られないと分かると速攻で別れそうですが。


須磨寺雪緒 ルート』
死にそう…EDで一応助かったけど、また数ヶ月、数年後に死に魅入られて死にそう。
壊れてるというよりも希死念慮が強いタイプ。
いや…なんというか…死に魅入られてる人間は無理ですよ、正直よっぽどの事が無いと助からないです。
死に魅入られている人として主人公も彼女には恐怖を覚えたり、妹の想い人だと知って妹となるべく距離を取らせようとしたり。
彼女が主人公からしたら規格外に死と隣り合わせ過ぎて「いつ死んでも良い」とか思ってた主人公のファッションメンヘラ感が浮き彫りになります。
彼女が死に魅入られた理由も愛犬が死に死を知り、自分の親しい人が先に死ぬ事に耐えられなくなる…というごく当たり前の経験があるので「それだけ!?」となりそうですが、死に魅入られる人間はどんな時でも魅入られます、きっかけは些細な事です。
彼女もまた真面目過ぎて道を踏み外してるなと…
一番将来が見えない子で…数年後お亡くなりになってそうです…でも希死念慮は仕方ないね。
それにしても肉体差し出すヒロイン多いなこのゲーム…まぁそれがメインなんだけど、皆ホイホイ差し出し過ぎ。


『葉月真帆 ルート』
寝取りルート…とは言いつつも、もうあの二人の関係は終わっていたのでそうとも言い切れないか。
功と真帆のカップル、「恋人とは肉体関係が無いと駄目なんですか!?」という主張も分からなくもないけれど、恋人に対して性的に嫌悪感を持っていた時点で相性は最悪だったとは思ってます。
「肉体関係が無いと愛は無いのか」そういう問答も分かるし世の中にはプラトニックで成り立ってるカップルもごまんと居る。
でも、片方が肉体関係を望んで片方が拒んで…それくらいでギクシャクする関係ならその関係はそれまででもあり。
それだけで関係が悪化するのならば、まさに真帆の言う「真実の愛」を持つカップルでは無く、相性が良いカップルでは無かったのだなと思います。
主人公とはあっさりと肉体関係結べちゃいますし。
二番手同士だから深く考えず肉体関係を持てる…わかる、その気持もまた分かる、一番目に全てを晒すのは怖いという気持ち。
やっぱり誰もかしこも真面目ばっかりが集まってしまったなぁと。
この二人が幸せになる道は二番手同士で諦めて一緒に居続けるか、一番手が現れて肉体関係を持たない事を了承しながら主人公と真帆が肉体関係を続ける事も了承するような…そんな奇跡的に運命的な人と巡り合う可能性が必要だなと思いました。
世の中には仮面夫婦も居るし、絶対無いとは言い切れない可能性なのでそういう相手に巡り会えると良いです。
皆の妹、安玖深音さんはデータ上では今作が初主演作らしく…伝説の始まりを聞けました。



全体的にエロゲとしてはクセが強い思考のキャラ達で構成された作品で、読んでて大変新鮮でした。
一人二人居るならまだしも全員ダウナー系という…あのメリバみたいなED、好きです。
しかし…今作は一度コンシューマ移植の話題が上がったとか…
初っ端からエロシーンで始まる上に、ヒロインとの関係は全員肉体関係が前提…むしろ肉体関係以上の見える形で恋仲になる関係は無く。
その上、抜きゲー並にセックスという単語を連発する本作が良く移植しようという話題になったものだな…とプレイして余計にビックリしました。
今作は完全にエロありきだと思います…


そういえばドラマCDで主人公のボイスが鈴木達央さんで凄く納得しました。
あぁね…うん…合いそう…
あと、主人公に明日菜に雪緒…メンタル弱いバイトばかり集まって、冬の忙しそうな時期に当日ドタキャンしまくるバイトに囲まれて…
ケーキ屋の店長はもっと文句言っても良いし、一番泣いても良いと思いました(経営者的な意味で)。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
 参考攻略サイト様:Enjoy Game Life 様
https://tryspace.net/
 天使のいない12月 ページ
https://tryspace.net/game/angel12/