ひっそりと群生

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【CARNIVAL】感想

【男性向け18禁】



2004年05月14日発売
『S.M.L(解散)』
CARNIVAL】(PC)(18禁) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








10作に一個は名作と呼ばれている作品を挟んでプレイしないと心が死ぬと2019年は学びました。
というわけで、この感想がいつ投稿されるかは分かりませんが、2020年の100作目は「CARNIVAL」に。
プレイ時間は約8時間30分くらい。
「CARNIVAL」編が約4時間30分、「MONTE-CRISTO」編が約1時間30分、「TRAUMEREI」編が約2時間30分くらいでした。
現物はプレミアが付いているのでFANZAにてDL販売で購入、7にも対応済み。


今作は「OPが凄いゲー」としてOPだけはなんとなく知ってるレベル。
アニメーションの動きの凄さと場面の見せ方のセンスが好きでした。
そして、瀬戸口さんの文章に触れるのは初でした。
数々の業界の方やゲーマーさんが「瀬戸口さんは凄い」と仰られて居たので「どれだけ凄いのかな?」と腕まくりして構えて居たのですが…うん…凄い、凄かった。
自分の語彙力なんか溶けるくらいに凄かったです。
まず、開始数行で風格を見せつけられ、恐れ慄きました。
『月の表面に小さな蛆が無数に湧いて、その蛆が月面に笑顔を形作っている』
『表面だけ笑みの形を作った、見下すような蔑むような腐敗した気持ちの悪い笑顔だね。笑顔って言っても、ちっとも朗らかでもなんでもない。ただ不快な笑顔。僕は、そうやって嗤う月を見ながら歩いていたんだ。』
…開始数行でからコレですよ。
別に難しい言葉を使っている訳でもなく、分かりやすい言葉で綴っているのに、その使い方がちょっと一線を画していて…
そしてこういう表現を全文に渡って余す所なく使われている。
あぁ…うん、これは、今作で瀬戸口さんの文章に触れて魅了されてしまったら、他のライターさんでは満足できない身体になるよなぁと納得してしまいました。
数々のプレイヤーさんや業界の方々が絶賛される理由が分かります、文章が唯一無二で…替えが効かないタイプの方だなと強く思いました。


本作の流れ自体は正直に言ってしまえば凄くシンプルなお話です、主人公が殺人現場に血だらけで遭遇し、自分が犯人なのか曖昧なまま記憶があやふやなまま逃避行をし、幼馴染の少女の家に匿われ、事件関係者を陵辱し、実は二重人格で幼馴染の少女と逃避行し、その後に同じ時系列がもう一人の人格の視点と幼馴染の少女の視点で語られる…という物。
真相に関してはある程度早い段階で気付く人には気付く構成になっています。
ただ、そのシンプルさが有り余るほどの文章力で描かれ、主人公ともう片方の裏人格、幼馴染の少女の心理描写を匠に描きながら各々の心象や過去を交えて固く肉付けされた上、様々な思想や他の文学を引用し装飾される事によりシンプルさを感じさせない作りになっていたのにはお見事、という気持ち。
とにかく文章力と心理描写と他文学の知識でグイグイと引っ張っていたと思います。
文章で物語を読むタイプの人にとっては、とんでもなく惹かれ、そして囚われる作家だというのは強く感じました。


…と、同時に、凄いと思いつつ、自分があまり囚われなかったのは、多分自分が文章よりも展開を重視して読む派だからだろうなーと。
他の感想でも書きましたが、読む人には文章の美しさで読む派と意外な展開を期待して読む派が大きく分けて居ると思っていて。
自分は色々と触れてきましたが、展開派だというのを自覚しています。
文章力よりも大きな展開に惹かれるタイプ。
で、今作は文章力>>>展開のタイプだと思っていて。
上記で語った通り、展開は物凄くシンプルなんですよ、二重人格物の殺人事件逃避行。
そこに過去や心理描写が加わる事で強靭な物語になっては居ますが、3人各々の視点で語られる群像劇としては「あっ!」と驚くような真相というのは正直あまり無く…
主人公の二重人格も早い段階で気付きますし、裏人格の主人公の起こした行動も表人格の出来事を見ればある程度把握出来ますし、幼馴染の過去も辛いですが予想の範囲内ではあり。
なので、展開派の自分としては予想してた通りの物が来た、という流れで。
群像劇で好みの「実はこのキャラはこういう風に思っていた…」みたいな部分で大どんでん返し!みたいなのは無く、ちょっと拍子抜けしたところはありました。
理紗視点の、明らかなヤバさを持った主人公よりも実はヤバいんじゃない?と言えるような考え方や価値観や主人公への想いは好きだったのですが…こういう部分を沢山見たかった自分としては、ちょっと少な目に感じたり。
あとは何よりも、理紗と…ギリ泉かな、それ以外のヒロインがあまりにも登場頻度が少なすぎて。
OP見てると全員華麗に出番があるように見える中で、完全に理紗ゲーで、他のヒロイン必要だったか?レベル。
他ヒロインの視点もあり、群像劇になるのかなーと思っていたら、他ヒロインほぼ陵辱要員で、なんか…こう…最初から固定ヒロインとして売り出していた方が良かったんじゃないかなーと…時代を考えると複数ヒロインにしないといけないのも分かりますが。
主人公の表人格と裏人格以外のもう一人、統合人格みたな存在も、重要そうに見えますが一瞬しか出てこなかったし…
妹とか婦警さんとかは、なんの為に居たんだろう…
主人公とヒロイン、過去が合わさる事で分かる二人の世界や相互救済、共依存としては凄く好きなのですが、キャラ厨としては他ヒロインが関わる事で事件の色々な面が見えてくるのか!?とか、他ヒロインの家庭環境も分かるのか?など期待していた中でそんなに無かったのでどうもノリ切れなかったというのが正直な感想です。
あとは主人公の狂ってる部分ではあるとは思うのですがガッスガス陵辱する(お前本当に童貞か?というくらいに初っ端ヒロインを犯す)&陵辱するわりには性欲は淡白なのでエロシーンでの盛り上がりはそんなに無かったなーという。
他の心理描写は凄いのですが、エロの描写はそんなに…という感じ。
まぁ、言ってしまえば自分の思っていた部分と外れた…というのが大きな理由ですが…うん、そこはまぁ仕方ない。
最後が逃避行EDなのも、そういうのは好きですが、なんかこう…この二人だと逃げ切れるか?とか思ってしまう所がなんとも。
逃避行EDにしては個人的にどこか余韻を感じなかった所もちょっと残念でした。
(あと、現実とはそんなものと理解しつつも理紗の父親に何もお咎め無しなのがどうも…納得出来なかったです…)
今後二人はどうなるのでしょう?そこは完全にプレイヤーに委ねられているのでしょうか…
よく聞くのは本作は小説があり、その小説を読む事で完結する…というのを聞きますが、その小説がプレミア化しているのが苦難の道で。
そういう他媒体と合わせて完結する系が個人的に苦手なので…うん…どうもなーという。
(もし、小説を拝読する機会があれば追記として感想を記載します。)


ですが、間違いなく瀬戸口さんが類稀な文章を書かれる方で、展開派の自分でも圧倒的凄さを感じる文章を書かれる方というのは分かり。
子供の親へどうしても抗えない、どんなに蔑まれても親を一番に考えてしまう大事に思ってしまう部分。
大人の卑怯さ、子供の犠牲、子供でありながらも誰よりも大人になってしまう精神など、心理的な部分はガツンとその文章で叩かれたような箇所が多々ありました。
確実に流し読みが出来ないタイプの文章で、表現力が凄すぎて読む時にパワーを使ったのですが、一度読み始めると止まらない文章だというのは納得しました。
文章派のコアなファンが居るのにも納得の文才をお持ちだったので、今回本作に触れて良かったです。


絵は好み、好き、本当に好きです。
川原さんの絵の作品に触れるのも初めてだったのですが、「Trample on Schatten!!」のサントラを購入した時に良い絵だなーと思ってて。
少年漫画的というか…動きに勢いがあってとても良きです。
女性も男性もお上手ですし。
絵柄としては凄くコミカルなのですが、本作はかなり暗い状況や展開があるので、絵柄で良い感じに緩和されていたと思います。
暗い状況ですが鬱では無く、爽やかに終わったのは間違いなく絵柄の功績が大きいと思います。


BGMは流石のElements Gardenmilktub
ロック調の曲、陵辱には合うなーと思うのと、シリアスの時の曲も全体的に良曲でした。
「人類皆兄妹」「トッテッポー」「夜の情景」辺りが好きです。
声は若干収録環境が悪いのかな?という方がいらっしゃいましたが(理紗など…2004年なら仕方ないかも)、演技の方面では問題なし。
というかおそらく本作あえて女性陣はアニメ声じゃない方を選んでるのかなーと感じました。
ナチュラルな演技というか…素の声というか、全体的にアニメ調な声色を作られてなかったのが作品に合っていてとても好きでした。
約一名どう足掻いてもアニメ声な方が居て…氷河さんなのですが、まぁあの方はもう仕方ない(笑)
あの方のイケボはもうどうしても二次元と切り離せないのでヒロインが現実的な声色だったのに対し、一人だけ二次元なのが逆に効果的でした。
その上で演技力は群を抜いて上手く…ある意味一人3役なのですが、全ての演技を完璧にこなされていたと思います。
主人公は氷河さんでなければ成り立たなかったとハッキリ言える程(若干ショタには無理があった気もしますが…)。
いや、本当に、主人公にも声有り大好き教として、氷河さんの配役有難うございます!!


いつもはルート別やヒロイン別に感想を書いていますが、今作は完全に理紗ゲーなのと、他ヒロインでは特に書く事が無くなるので無しで。
瀬戸口さんの処女作であり、様々な方が口にする名作に自分で触れる事が出来て良かったです。
この文章にはまた触れたい!と思わせられるパワーが間違いなくありました。
雑誌の付録で「SWAN SONG」の方も持っているので、コチラにもいつか触れたいと思います。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:愚者の館(アーカイブ) 様
http://sagaoz.net/foolmaker/
 CARNIVAL ページ
http://sagaoz.net/foolmaker/game/k/carnival.html