ひっそりと群生

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【君とサクラを】感想

【男性主人公全年齢】



2013年08月04日配信
水無月恵』様
君とサクラを】(PC) ※リンク先第5回 WOLF RPGエディターコンテスト
以下感想です。








ウディタでのノベルで若干フリーズなど機能方面でのモタつきはありますが、ウディコンにノベルで上位に食い込む程の話の出来は確か。
初めは何も分からず、ひたすらに病院内で翻弄されますが、最終的に全ての謎は綺麗に解決します。
謎に関して気付く人は早い段階で気付きそうだとは思いつつも、それでも、ラストが本当に良く…
ラストの見た時に「最後まで見届けて良かった」と感じました。



『記憶喪失の青年・一ノ宮宗助。
 ふと起きた、院内の不穏な空気……。
 死の予感……。
 病院からの脱出を目的とした一本筋のADVノベル。』
(公式より引用)



選択肢無しの一本道。
記憶喪失になった主人公、一ノ宮宗助が、彼女、美咲の献身的な毎日のお見舞い、催眠治療の名医、大門の治療によって記憶の回復に努めていく。
しかし、態度が悪く気に入らない看護師、麻耶が異様な行動を初めて…


というお話ですが、こちらの作品、最初の方では全く何が起こったのか分かりません。
最初はひたすら病院内の不穏な空気に振り回されて行きます。
全4章ですが、おそらく3章くらいまで分からない人は何一つ分からずに不穏な5日間を過ごしていく事になります。


しかし、感の良い方なら途中で気付かれそうな所を感じたり…
それと、ツールがウディタだと思いますが物凄く使いにくいです。
ウディタのノベルとしては使いやすいとは思いますが、途中でフリーズし易いのと、クリックが早すぎると同じ文章が二度表示されたり、フリーズしてしまった際に、今まで読んでいた所までなどは記録されず、その章の初めからになります。
正直、ノベル形式の物語上別にウディタじゃなくて良かったと思わざるを得ず…
おそらくウディコンに合わせた為にウディタでの制作だとは思いますが、吉里吉里NScripterだったらかなり化けそうだなと感じました。


それでも、沢山の謎が提示されつつも、しっかりと全ての謎を綺麗に回収していく所は凄いと感じ。
そして、ラストの一連の流れは本当に美しく…
とあるキャラに「あ、こういう立ち位置好きだなぁ」と感じたので、ラストのあの強さを見れただけでも大満足でした。



『システム、演出』
ウディタでノベルはコンテストを考慮しても使いにくかったです。
メッセージスピードや音量調整など、作られたのは凄いと思いますが、ここまでウディタで作れるのはやっぱり凄いとは思いますし、その高い技術を吉里吉里などで見たいという気持ち、凄くあります。
あと、「巧」視点では枠組みが緑になり読みやすかったのに、「ピカソ」視点では枠組みが赤にはならず戸惑いました。
演出は例のあのトリックは良かったと思います。
本当に何も推理してなかったので驚きました。
ただ、感が良い方は気付きそうです。
システムは、ウディタであのノベル用のコンフィグを入れたのは凄いとは思っています。


『音楽』
BGMは素材曲。
個別で印象深い曲はそんなに…
良く聞く感じでした。
ですが、雰囲気には凄く合っていました。
閉鎖した世界の中でがむしゃらに足掻く感じ好きです。


『絵』
一枚絵は少なめですが欲しい時に欲しい絵があったと思います。
でも、若干、立ち絵と違いが…
CGの方が可愛い絵柄です。
背景はオリジナル。
不穏な空気が凄く良く出てると感じました。
立ち絵は綺麗でしたが、上と同じく一枚絵と違いがあり、CGからみると若干リアルでした。
あと、立ち絵のポーズは変わらない為、看護師組がどんな危機的状況でもカルテを持ってたのは少し気になりました。
雰囲気は背景も人物も塗りが独特で、不気味な感じが出ていたと思います。
あの独特な暗い感じ、癖はありますが好きです。


『物語』
文章は読みやすいと思います。
途中の美咲の問題もちゃんと解説してくれます。
ただ、やっぱりシステムで足を引っ張ってはいました。
構成は、短編で最後が駆け足気味ですが良い構成だったと思います。
全ての謎が明らかになるのは本当に良かったです。
2章くらいまでは何一つ解決しないので、1章5日とはいえ、謎に謎が被さって、最後にどどんと種明かしの展開は好みが分かれると思います。
例のトリック、正直見かけたことはありますが、あの全部の謎回収は凄いです。
そして、キャラクターは佐倉さんに全てを捧げます。


『好みのポイント』
本当に、サクラの中で微笑む彼女と最後の、
「さようなら」
が印象深く、美しすぎました。
優奈がヒロインなのが悔しくもあり、けれども選ばれないヒロインだからこその魅力を彼女に感じていました。





以下ネタバレ含めての感想です





色々と褒めましたが思い当たる所がないわけでもないです。
システム以外の不満点では、キャラクター達が若干そこに配置されてるような印象を受けないわけでもなく。
特に記憶を思い出した「宗助」達の扱いが若干雑に感じたり、最後の展開が若干駆け足気味に感じたり。
お金持ちで今後を心配しなくてもいい、今後は大丈夫という所に都合の良さを感じずにはいられなかったり。
タイトルからも分かるように、とある1キャラを輝かせる為の物語だとも感じたり。
まぁだからこそ彼女が輝くんですよね…でも、そこは本当に輝いて好きだと思ったので大満足でした。


そう、どう考えても佐倉さんゲーです。
本当に有難うございます。


正直トリックに関しては本当にいくつか思いつく作品がありました。
同じような作品を1作、逆のタイプを1作でプレイしていると思います。
怒涛の伏線回収も全員が力を合わせる熱い大盛り上がりではあるけれども、他のを今まで見て来てしまったばかりに長さもありどうしても、
「長さがもう少しあれば」
と思ってしまったり…
あのトリックを純な気持ちで楽しめていなかった部分はあります。


それでも、ラストの佐倉さんが本当に美しかった…


「記憶を失ったら人は別人になってしまう」「でも、記憶を失ってもその人はその人だった」
という部分が上手く描かれて…
あぁ、彼女が出会った「宗助」は例え肉体があっても完全な「宗助」この世には居ないんだなぁ…とそんな風に思わされて…
彼女が居るからの部分もありますが、もう完全な「宗助」じゃないから諦めたであろうあの部分が本当に美しく美しく…
「私は一人でも生きていける、でもあの子には貴方が必要」
と、女性の格好良さを感じてただただ
「佐倉さん美しすぎる…カッコイイ…」
と呟いてました。
あの最後の展開で今年の好きな女性キャラ上位に君臨してしまうほどに。


同時に彼女はずっと病院に居て、身内も居ない中でどうやって今後を送るのかも考えたり。
生きてれば何とかなるとはいえ、「宗助」も居ない中でちょっと不安ではありますが…
まぁお金はありますし、彼女の強さで逞しく生きて欲しいなぁと思ったりしました。


きっと「青の章」では一緒に脱出しようとしても、元の「悠一」や「優奈」に負い目は感じてたんだろうなと思ったり。
彼女と約束した「宗助」とはサクラを見る事は叶わないし、佐倉さんと「悠一」は絶対に平行線のまま交わる事はないのだろうなぁと思うと、死んでしまった「宗助」に想いを寄せ、サクラが咲く世界で生きていく彼女に何とも言えない美しさを感じました。


「君とサクラを」
タイトル的に「宗助」が佐倉さんに対してした「君とサクラを」の約束かな?とも思いましたが、もう居ない「宗助」に対して佐倉さんが「君(宗助)とサクラを」と、ラストのサクラ中で思いを馳せている…
とも感じられて…もし、もう居ない君(宗助)に向けられた佐倉さんからの言葉だったら…
佐倉さんの儚さと、確かな強さを感じます。