ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【かみさまの棺】感想

【BL15禁】



2019年08月12日発売
cream△』様 ※リンク先公式HP
かみさまの棺】(PC)(15禁) ※リンク先DLsite.com(15禁)
以下感想です。








その棺に囚われているのか囚われたいのか開放されたいのか。



『ある日突然の隕石落下により地球は滅び、知花ミチルの日常は消え去ってしまう。

 …見知らぬ呼び声に目を覚ますと、
 目の前には口をきいたこともないクラスメイトの廻が一人。
 そして自分は今”謎の部屋”の中にいることを知る。

 これは 忘れていた記憶を
 少しずつ思い出す物語。

 悲しくて 残酷で
 美しくて 痛い
 最悪な恋の物語。』
(公式より引用)



あぁ、終わってみれば確かに、間違いなく「かみさまの棺」だったと。
BLで滅んだ世界にサイコにホラー。
この腐女子大好き3点セットに抗える人(主に腐女子)居ます?
いや、居ないはず(暴論)。
その上で絵も良し声も良しと来たら堕ちるしかないと思います。
滅んだ地球、謎の部屋の中、主人公のミチルと名前しか知らない託宣を受け神に指名されたと言う廻という少年の二人だけの世界が始まる…
とにかく世界観、雰囲気が素晴らしかったです。
滅んだ地球に謎の部屋しかなく、窓の外に広がる宇宙など、とても幻想的で…
少年二人だけが宇宙を漂う…まるで銀河◯道の夜の世界のようでした。
自分は銀◯鉄道の夜が大好きなのでとにかく銀河を漂う幻想世界に惚れ惚れしました。
そしてそんな幻想的な世界の中、徐々に明かされていく過去…
ミチルの忘れたかったもの、消してしまいたいもの、失いたくなかったものなどが徐々に鮮明に思い出されて行きます。
その先に幸福はあるのか…それは果たして幸福なのか…
サイコホラーとあるように美しい宇宙の中で描かれるのは狂気の過去。
イラスト、ボイス、雰囲気、全てがかなりの高クオリティで見ていて全く飽きる事のない洗練された物語でした。


ただ一点、一つだけ腐女子のカテゴライズに言及するならば、コチラおそらく「主人公総受け」となっておりますので苦手な方は回れ右だと思います。
これだけは強く言っておかないとと思いました。



『システム、演出』
ティラノ製。
ティラノの基本は揃っているのと、コンフィグの歯車アイコンは扉のアイコンになっていたり見栄えのカスタマイズがされていて良かったです。
ただ、ゲーム中コンフィグから環境設定に行けなかったのは辛かったです、ボイスの音量などをプレイ中に弄れず調整する際はタイトル画面に行ってからの変更になりました。
あと、選択肢でセーブが出来なかったのはノベルゲームとして大変厳しかったです。
選択肢でのセーブが不可なので、章毎にセーブを推奨します。
あと、履歴でボイスリピートモードが無いのが勿体ないくらいでした。
リピート沢山したかったです。


『音楽』
選曲よし、OPやEDも歌無しBGMですが格好良かったです。
そして何よりもボイスが良い!
同人のノベルゲームは男性向けだと18禁ではないとまだまだ上手とは言えない印象ですが、女性向けはかなり進んでる印象があります。
全員お上手でビックリしました。
最近は同人のボイスドラマが盛んだからかBLや乙女では同人やフリゲでのボイスはかなり良く…聞いてて上手で気持ち良かったです。
特に笑太郎役の佐野さんが個人的にとても好みの演技で…
自分が90年代後半~00年代超前半の声オタで最近の声優さんを覚えられないのと上手い下手では判断出来ないので好みでの判断になりますが、最近見たアニメの一部の若手の方よりも好みの演技をされていらっしゃいました。
普段はボイス飛ばして読むのですが、全員お上手で飛ばせず…間違って飛ばしてしまった時の残念感が半端なかったです。
ボイスリピートモードの実装を説に願います。
本当に、これからプレイされる方には是非ボイス有りでプレイして頂きたいです。


『絵』
立ち絵良し、一枚絵良し、背景良しで絵でのマイナスポイントは一切無かったです。
BLですがクセが少ないので男性でも触れやすい絵柄だと思います。
背景も色が無く白黒、もしくは宇宙的な模様で現実味が無いのが幻想的な世界に合っている表現でした。
そして何よりも狂気シーンでの「歯」の表現が凄まじかったです。
あまりホラー表現に驚かないのですがあれは怖い。
クセが無く、愛らしめな絵柄であの「歯」にはビビリ散らかしました…ちょっとした事なのですが、妙にリアルで狂気を感じて怖かったです。


『物語』
物語は三人称表記。
描かれる過去はどれも陰鬱で。
皆…皆なんとも言えない不気味さがあって、皆自分が大好きで、そしてワガママで。
振り回されたミチルは本当に幸福だったのか?と。
サイコホラーとあるようにとてもサイコで…救いの部分ではとても判断が難しいのですが…
でも、主人公のミチルがハッピーならハッピーなんだろうなと頷くしかないです。
その幸福は果たして彼自身の心からの幸福なのか、作られた幸福なのか…


『好みのポイント』
総合的に凄く高クオリティでした。
女性向けは毎回見てて絵が美しくて素敵です。
同人で初めてお見かけしたサークル様で同人では処女作で、「処女作でこのクオリティとは…」とビックリです。
HPを拝見するとフリーでは沢山作られていて納得しました。
そして上記でも書きましたが、声、本当に声が良いです。
同人基準で上の上、いくつかの商業にも引けを取らないレベルだと思います。
全体的に良い演技を聞けただけでもお腹いっぱいでした。





以下ネタバレ含めての感想です





まず最初にネタバレの項目なので言うのですが、「かみさまの棺」が征花(かみさま)の家(棺)そして、棺(家)にかみさま(征花)が眠っている(死体がある)という事なのは分かったのですが…
地球が滅びた隕石辺りの事がイマイチ分かってないです。
最初のプロローグ、笑太郎と普通に生活してからの地球滅亡なので、繋がりが分かっておらず…
あらすじでも地球滅亡とあるので、クリアすると「地球滅亡の下り、隕石の下りは何だったんだろう…」となる部分がありました。
ただ、ここに関してはプロローグの時点でミチルは既に狂っているので、平凡な日常を享受している(壊れてしまった心の中)からの隕石による地球滅亡(廻による征花の死)なのかな?と若干思いました。
隕石は廻で、地球(世界 or 神)は征花という事でしょうか?
そして征花を殺した廻は神を名乗る。
構造考察は死ぬほど苦手なので「かも」としか言えない所が申し訳ないです。
征花(世界 or 神)が死んで(ミチルの中で)滅んだ世界からスタートし、ミチルが現実を受け入れ滅んでいない世界を受け入れ外に出る…のが「共存」のエンドでエンディングロールが流れるので正史で良いのかな?と思っています。


うん…それにしても、周り酷い奴ばっかりだったなって…
完全にこの物語はミチルが巻き込まれ事故を起こされた物語で、全体を通すとミチルが不憫で不憫で。
特に「かみさま」の征花はもう本当に…救いようが無い気がします。
「誰も自分の近くに居なかった」ってそりゃこんなにワガママに好きな人に接してたら近寄らないよ!!と。
見た目は一番好きなんですけどね…征花。
「恋人」エンドでは最後に征花が生き返って話しかけてますが、あれはきっとミチルが完全に狂った上での妄想や幻覚なんだろうなと思っています。
ミチルが完全に狂った世界でミチルは「かみさま」だけを求めて、征花は幸せなんじゃないかなと…お亡くなりにはなっていますが。


笑太郎は正直、一番好きです。
まぁ彼も酷い事をしますが、秘めてた想いがある中で「誰かに先を越された!?」という戸惑いがあった上での暴走なのでまぁ分からなくもない。
性格もですが根の部分で陽キャを演じる陰キャ大好きなのと、中の方の演技が最高だった事で二重に好きです。
サブエピソードの2も笑太郎メインですし、お礼イラストも笑太郎ですし。
(お礼イラストの邪悪さにはビックリしましたが…左目を抉られてもミチルに付けられた傷なら嬉しいってか?)
…ただ、作中一番悲惨だとは思いますが。
最後ミチルに殺される悲惨さもですが、彼のED…
おそらく笑太郎の死を観測しない事で笑太郎の死を受け入れない道を選び、狂ったまま笑太郎の幻覚を見るのだと思いますが、その後にミチルを殴ったのはおそらく廻…ですよね…
現実を見つめないミチルは殺され、幻想の中で笑太郎と共に行く「友愛」。
他人の手にかかりいきなり死ぬのでハッピーエンドの中で一番悲惨だなと思いました(ハッピーエンドとは?)。


廻は…うん…「かみさまの棺」の中でやる事はバッドエンドの「界葬」や「友愛」は酷いと思いますが、過去で見ると一番マシな気がします。
唯一主人公に性的に手をかけてないし、征花の事に関しては不可抗力だし。
最初に合って一番怪しそうに見えるけど、全体の出来事を通すと一番マトモだった…みたいなタイプの立ち位置好きです。
まぁでも、一番(正史では)ミチルに危害を加えていないけど、一番手のひらの上でコロコロしていて自分の思い通りになったのは廻な気もします。
おそらく近寄れずクラスメイトでしか無かったけれど最初からミチルを好きだったのだろうなとは思いますし。
そんな中でミチルの親友と家庭教師(兄)が奇行に走り一番美味しい役回りを手に入れるわけで…
作中で唯一壊れていないミチルからの愛を享受したのは廻のみなので…本当に美味しい役回りだなと。
「共存」だとしっかりと法の裁きも受けて社会的に罪も精算してますし。


ミチルの恋愛に関しての怖いという感覚はコミュ障オタクの自分もなんとなくは理解出来るので、「無自覚の優しさは怖い」「自分に向けられる恋愛は怖い」という感情にはうんうんと頷いていました。
今作のエンディング、ハッピーエンドに「友愛」「恋人」「共存」はあっても「恋愛」が無いのが…ニクいなぁと思っています。
結局ミチルから「恋と愛」両方を、完全に心を許された人物は居なかったのだろうなぁと。
3人の中で「恋愛」を受け取れる可能性があるのが唯一生きている廻だけで…
そういう意味で「二人の今後がどうなっていくのか…?」という意味で「To Be Continued...」なのかな?とも思っています。
いや、もしかしたら本当に何かしらの続きがあるのかもしれませんが…
続くんですか?どうなんでしょう?


サブエピソードも1も2もどちらも補完として良く。
2のほのぼのもですが1の羽石コンビ、良いなと思いました。
つばさちゃん…OPで大きく出たので本編に関わる子なのかな?と思いましたが殆ど関わらず、「OPのあの娘は???」となっていた所にいきなりの爆撃でした。
OPでしかも曲のラストの方であんなに大きく出たら本編で関係あると思うじゃないですか!!?無かった事にも驚きでしたが、まぁうん…彼女もやらかしてましたね。
教師に、おそらくラストにほとり…ほとり、良いツンキャラ(デレはない)だったので年頃の少年らしく好きだったのですが、つばさちゃんによりラストお察しになってしまった所がビックリでした。
この街、死亡者多そう……


サブエピソード2に出てきた夏霧、次回作への布石か!!?と思いましたが、どうやら作者様のフリー作品「夕夏プールサイド」のキャラクターみたいですね、スターシステムでした。
(後から知りましたが、つばさちゃんも過去作かららしいですね)
でも実際どうなんでしょう。
「To Be Continued...」が「ミチルと廻の二人の今後がこれからも続く…」なのかゲーム的に次回作があるのか。
あるなら、楽しみにしています。


役者様の演技も相まって、良い感じにサイコ(狂い、病み、闇)ホラー(グロと驚きと怖い歯茎表現)ゲームでした。
同人ゲームとして出されて処女作でこのクオリティは本当に素晴らしかったです。
自作「powder gray」の方も購入済みですので間を開けてですが楽しませて頂きます!