ひっそりと群生

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【恋妻くずし】感想

【男性向け18禁】



2012年04月12日発売
夜のひつじ』様 ※リンク先公式HP(18禁)
恋妻くずし】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








あの日あの時、雨に濡れた彼に話しかけた瞬間がきっと間違いだった。
グイグイと日常を侵食され、戻れない所まで来てしまい、そして自ら堕ちていく。



『ついこの間までは夫以外の男の人の感触なんて知らなかったのに。

 愛されて育ってきて愛されて夫婦になって。
 きっと私はしあわせな子どものままだった。
 ――それがいけなかったんです。

 膝にあたる冷たい床の感触と、
 手に持ったものの熱い弾力。

 耐え切れずに私が顔を背けようとすると、
 彼はニヤニヤと笑いながら私の頭を押さえつけた。

 数日で慣れてしまった、手のなかのそれがぐっと大きく膨らんだ気配に備え、
 私は命令通りに舌をつきだしていた――。』
(公式より引用)



孤独に効く百合』『親友が美少女になって帰ってきた。』(※リンク先感想)から続き夜のひつじさん作品プレイ。
こちらは再プレイになります。


プレイ時間は2時間ほど。
EDは2つ。
自己主張強い選択肢を選べば寝取られない(とはいっても素股まではする)幸福(?)なEDへ。
自己主張少ない選択肢や寝取り男を構う選択肢を選べば寝取られED(正史)へ行きます。
エロとしてはフェラとか露出とか腹ボテとか完備。


最初にプレイした時のきっかけはとある方の「寝取れられのお手本のようなゲームです!」だったと思います。
なんか邪悪な会話してたな…
夜のひつじさんはそこそこプレイしてて、信頼ある方がそこまでおっしゃるなら…とプレイしましたが…
本当に、構成はまさに王道!と言わんばかりの作品でした。
旦那の仕事の忙しさによって距離が出来ている夫婦、雨の日に隣の家の不良少年が濡れて居る事を心配してハンカチとタオルを貸す妻。
不良少年はそんな妻に興味を抱きグイグイと距離をつめていき。
そんな中、旦那は過労で入院してしまい、不良少年の行動は日に日に過激になっていく…
「仕事により出来てしまった夫婦の溝に寝取り男が割って入ってくる」という話の流れで言えば本当にお手本もお手本のような作品。

しかし、そこに夜のひつじさんの表現力が重なる事で単なるNTRゲーで終わらなかった所が印象的でした。
いや、まぁ、ジャンルはNTRですし、読む人が読めば「普通じゃん(むしろNTRではインパクト少ない方)」で終わるとも思うかもですが。
それでも、女性視点の中で主人公のみなと…女性の心の揺れ動き方の描写があまりにもお上手で。
汚れたものから遠ざけられてきた、綺麗な環境で育った人間というのが定期的に描かれる事により彼女の世間知らずさや人間関係の構築の不得手さがリアルで現実味を増して。
「消極的で他人との距離を測るのが苦手な女性主人公」が目の前に実際居るかのように心理描写が巧みで。
寝取られ物で大事な「堕ちていく過程」もその細かく丁寧な女性視点で人間の弱い所や辛い所を見透かす様に畳み掛け抉って来ます。
みなとさんが実際に存在して堕ちていくかのように。


やっぱり夜のひつじさんの文章は大好きだと再確認すると共にダークな方面、闇ひつじが最高に好きだと思いました。
「NRT物で初心者向けってありますか?」と聞かれたら真っ先にこの作品をオススメしたい、そんな作品でした。
(そういう質問される方は自ら調べて辿り着きそうなジャンルだとも思いますが(笑))



『システム、演出』
吉里吉里製。
本編中不便に思う所は無し。
設定でボイスとSEが一緒の音量なのが気になったくらい。
と言ってもSEあまり無いので大丈夫です。
ただ、おまけの前日談と後日談では履歴が出せなかった所が若干不便でした。
短いお話なので影響はないですが、履歴出せたら便利だなとは思いました。


『音楽』
夜のひつじさん初ボイス。
女性主人公の「みなと」のみ声有り。
通常演技は普通なのですが、エロシーン、嬌声演技はお上手だったのでエロゲとしては大変有りだと思います。
曲は全曲本当に良い曲ばかり。
でも、病室で寝取り男に尻を触られるシーンの曲は良い曲なのですがコミカルでなぜか笑ってしまいました。
最後の最後で切り替わる曲…最近「光芒」というタイトルの曲だと知ったのですが、そちら本当に良い曲で。
最後の展開、文章、そして音楽が一つに交わったあの瞬間の空気は本当に素晴らしかったです。


『絵』
可もなく不可もなく。
ただ、男性の立ち絵が出た時に若干違和感があるくらい。
個人的には前作、前前作の絵柄が好みでした。
欲しい時に欲しいCGはあります。


『物語』
基本女性視点。
たまに旦那の視点が挟まります。
構成はTHE・王道、初心者向けNTR
構成は王道の中で心理描写がとても夜のひつじ節。
夜のひつじ節は、この丁寧な文章にハマったら他の作品の文章では満足できなくなる人も居そうだと思うのと、NTR物好きな方がこの文章でハマったら他の純愛系の夜のひつじ作品にも触れるのではないか?と思えるほどの吸引力があると思います。


『好みのポイント』
どのシーンも文章が大変良きなのですが…やっぱりラストです。
最後の最後、あのシーンの流れと切り替わった音楽、そして最後の文章は一生忘れません。
王道な流れ、お手本のような流れでも人の心を惹き付け上手に書ける方は違うなぁと思いました。





以下ネタバレ含めての感想です





ネタバレとか殆ど無く、「話しかけてしまった寝取り男に寝取られ、自ら求めるようになってしまう」というお話なのですが、所々の描写が一つ一つ綺麗で。
寝取られ要素も大変良きなのですが、個人的にはそれ以上に「汚れを知らない人間から見えていた綺麗な世界が染まっていく」感覚がたまらなかったです。


主人公みなとは自分が「綺麗に育てられた」「世間をあまり知らない」というのを自覚していて、そしておそらく働いた事も無く、そんな風に要領が悪い自分に苦悩していて、旦那もそういうみなとに癒やされる可愛いと思いながらもまぁ…容量が悪いなと見下している部分はあるんですよね…そして旦那の両親もみなとをそういう風に思っている。
外を知らず狭い世界の中、みなとは自分の価値が揺らいでいて、そして仕事が忙しい旦那と距離が出来て夜の行為も疎かになって。
そういう性的な価値観も揺らぐ中で性欲や寂しさだけは溜まっていって…こりゃあ寝取り男の付け入る隙が空き放題だなと。
寝取り男はおそらく男親のみで家庭環境は良くなくそういう環境でチャラチャラしていてだからこそ上辺だけは上手くセフレも多く軽い人間関係だけは簡単にこなしてしまうほど器用で。
そんな彼だけどみなとのように純真無垢、自然培養な女性だけは周りにおらず。
出会ってしまった事で綺麗なものを自分の物にしたい、汚してしまいたいという欲が出来てジワジワと関係が縮められていく…


この、主人公みなとの世界は狭く孤独で、でも汚れを知らないという描き方が本当に丁寧で。
オナニーですら罪悪感を持って行うのが本当に純粋で。
一人での行為は夫を用いないといけない…みたいな感覚を持っていたり。
寝取り男からの痴漢行為を思い出して一人でしてしまい罪悪感を感じたり。
後者はまぁ…そら罪悪感芽生えるなと思いますが前者は本当に…
一人でしていて果てる際に「自分が離れていく感覚」に罪悪感を持っている辺りに、「あ、みなとはきっと妄想や二次元的な刺激で果てた事は無いんだろうな…」というのを察して、彼女の「綺麗に育てられた」という部分を強く感じました。
そんな彼女が痴漢や露出などで変態的な性癖を植え付けられていく。
これがフィクションででも最初から性癖であったなら彼女はこんな事にはなっていなかったんだろうなと思いますが、まっ更な中、何も知らないみなとが現実で性癖を植え付けられていくのは…うん、たまらんですね。
電車での露出素股シーンがかなり彼女の心のターニングポイントだと思っているのですが、あそこで今までタブーだった、考えても居なかった…もしかしたら知りもしなかった性癖を植え付けられ(もしくは発掘され)、自分の性癖を自覚してしまい身体が感じてしまうのは凄まじくエロかったです。
女性が感じ入る描写が上手すぎる…女性視点はこういうのが大変エロく良いなと思いました。


旦那も旦那でみなとの事を可愛いと思いつつも心の奥底で「仕事はきっと出来ない」「容量が悪い」など若干下に見ている部分があり。
そんな風に下に見ながらみなとの変化には、寝取られている事には気付かない愚鈍さがまさに寝取られ役に相応しいなとも思いました。
可愛そうではありますし、嫁姑問題からなんとかみなとを守ろうとはしている世間的に言うなら「良い旦那」ではありますが…妻の心の機敏は感じ取れない愚鈍な人ではあります。
あと、この手の寝取られ物の最大の原因は「夫婦両者間で悩みを話せる程の関係を築けて居なかった事」が基本的に最大の原因でもあるので、仕事の忙しい時期や入院が重なったとはいえ、「話すべきことが話せない夫婦」だったのだろうなとは思いました。
まぁ基本、みなとが自分で抱え込むタイプで人間関係が下手な部類なのでそういうのを含めて「容量が悪い」とは思いますが…そういう「上手に生きられない人間」を描くのがやっぱり夜のひつじさん上手いな―とも感じたり。


やっぱり何を書いても全ては「夜のひつじさんの文章最高!」に行き着いてしまいます。
読んでてスッと入ってきて「好きだな―」と素直に思う文章です。
どの文章も好きですが、


『ドアが開くと一瞬、雨の後の湿っぽい空気が部屋に流れ込む。
 生ぬるいその空気が部屋の湿度と混ざるのを感じつつ私は大きく息をついた。』

『もうとっくに取り返しのつかないところまで来ている。
 だけどこれからさらに、もっと、取り返しのつかないところまで行ってしまう。
 強烈な予感と高揚。』

『もうどこにも逃げられない。
 どうにもならない。
 あとはタイミングが遅いか早いかだけの問題で。
 きっと私は――。』

『喉の奥を締めつける狂おしさが私に意味のない声をあげさせる。
 そう、いっそこのまま狂って、何もかもなくしてしまいたかった。
 全部忘れてなかったことにして、どろどろに溶けて消えて――死んでしまいたい。』

『最低の裏切り。最低の自分。どうしようもない。
 ただ諾々と流されてきて、自分の弱さを言い訳にして。
 今こうされていることも、今までされてきたことも等しく裏切りには違いない。
 でもこの行為の後戻りのできなさにより強い背徳を感じるのは、私は結局今までの行為に――。
 まだ"戻れる"なんて考えていた。
 それもまたひどい裏切りだ。
 どこからが本当の不貞なのか、その選別をしている自分の打算がただただ醜いと思った。』

『自分を自分でなくしてしまう、その瞬間を受け容れて――。
 私は終わっていく。』


辺りの表現は最高に好きです。
エロシーンの文章ではありますが、基本的に「弱さ」を持った人間に対して凄く突き詰めてくる文章だと思っています。
みなとのように自分の「弱さ」や「人間としての不出来さ」を常に思っている人間からしたらこの辺りの文章は大変辛い物になると思います。
そして、やっぱり上記でも書きましたがラスト、音楽が切り替わった後の、


『全身を震わせながら私はその感覚に自ら浸っていく。
 官能のなかに自分を溶かして消す。
 それはまさしく至福の瞬間だった。
 そのとき私は確かにいなくなっていた。』

『その数秒が過ぎ去って、自分が戻ってくる。
 何ともいえない不快感。
 お腹の奥で熱くねばったものがとぐろを巻いている感触。』

『私は――。
 かつての私をそこから追い出した。』


の流れもう最高で最高で…
今作は「自分が居る」という事や「自分が居る場所は旦那と必死に寄り添う所(逆を言えば自分の居場所の為に旦那に寄り添う)」という姿が強く何度も表現されますが、「常に自分の居場所や立ち位置が旦那が居る事でしか分からなかった、存在出来なかったみなとが、旦那以外の他人との快楽によって自分の居場所を失う、自分を見失っていく」そんな姿が鮮明に描かれていて。
クリア後のおまけのタイトルも「私がいない場所」なのが何かに寄り添わないと立っていられない「弱い人間」に対して本当にどこまでも残酷に突き刺さってきて…
後日談もなんだかんだで寝取り男の方も孤独な人間である事が示唆されていて。
やっぱり「孤独」や「弱い人間」の描写が最高だなと感じ。
あまり性癖に刺さらないエロシーンは深く読むタイプではないのですが夜のひつじさんの文章は流し読みする事は全く出来ず。
このラストの流れを一生忘れないですし、NTR物が大丈夫な方には絶対にこの作品に触れて欲しいと強く感じた瞬間でした。


いや、もう、本当に、こんな拙い感想では語れません。
どうにか自分の気持ちを何らかの形にしておきたいので文章にして書き留めていますが…自分の使っている日本語とは次元が違うのだと深く唸るほどに素晴らしいシーンでした。
「堕ちる」とはまさにこの事だ!と言わんばかりのあの流れ…NTRが大丈夫で日本語が読める全人類に体感して欲しいです。


今回、再プレイで真っ白真っ皿な感想は中々に書けないのが残念なのですが、再プレイででも例え拙い文章でも自分の「このシーンが最高!」「ここの文章が好き!」を綴れて良かったです。
次に夜のひつじ作品に触れるとしたら未プレイの「義妹ホールと妹ホールド」に触れたいと思います!