ひっそりと群生

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【破落戸どものマリア】感想

【乙女全年齢】



2019年08月23日配信
ブラジリアン忍術』様 ※リンク先ノベルゲームコレクション作者様ページ
破落戸どものマリア】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








宗教と信仰と暴力と闘争と金と愛と死の世界へようこそ。



『花房マリアは極道を父親にもちながらもカタギのキリスト教徒として暮らしてきた女。
 しかし父の死を切っ掛けに生まれ故郷である貧困と暴力の町、蟻乃地区へ戻ることを決意する。

 そこで知りあったのはなんと父と敵対していた組である加賀爪組の組長、加賀爪義雄。
 おまけに義雄を洗脳してしまった為、素性を隠しながらバシタとして居着く羽目に……。
 危険を感じながらも父の死の真相を探るうちマリアは蟻乃地区に渦巻く闇に直面する。』
(公式より引用)



攻略キャラ4人、ED数は公式で4つとありますが、「何も起こらなかったED(badかな?)」があり実質辿り着くEDは5つあります。


暴力団員のオッサンとキ◯スト教のシスターが恋愛(?)をするというかなり異色な乙女ゲー(?)。
ノリとテンポが大変良く、シリアスで難しそうな話になりそうだと思ったらポンとテンポの良いギャグが挟まりグイグイと物語に引き込んで行きます。
サクサクと読めてしまい、普段長時間集中出来ないタイプの自分が1ルート丸々途中でゲームを逸れる事無くプレイ終了していました、凄い。


とにかく主人公、花房マリアが宗教以前に人たらしで肝が据わっていて。
どんどんと人を懐柔していき、そして彼女に懐柔された、懐柔されていた人間が彼女を巡って闘争を始める姿は乙女ゲー!!らしくもあり。
女の為に争う組など「ちょっと都合が良いのでは?」となりそうな中で、そこに「宗教に心酔したから」という理由が重なり違和感を見事ふっとばしていました。
恋愛…よりも「彼女に救われたから執着している」という部分が多々描かれ、エロいシーンになりそうだ…と思ったら即そのフラグはへし折られ、どこまでも宗教…カ◯リックの純血思想が大事にされていると感じました。
オッサン達もコミカルで、特に義雄さんが「マ~リアちゃ~ん!!」となる所は必見、何度も笑いました。
それでもコミカルな中、冒頭の注意書きのように暴力や流血表現はしっかりとあり。
作者様ご本人が言われていらっしゃるので言ってしまうと、後半でバッタバッタと人が死んでいきます。
生と死はしっかりと組の闘争物として描かれていて、前半で仲の良かったキャラが散っていく姿には大変気持ちをかき乱されました。

任侠、宗教と乙女ゲーとしてかなり異端な作品。
30代、処女、敬虔な信者、だけども父の敵討ちは忘れない肝が据わりまくった主人公や、血と暴力に塗れたオッサン攻略キャラクター達、スピーディーな展開で笑い有り、けれども容赦のない絶対的な死も有りな乙女ゲーが好きな方で、百合、BL要素が苦手では無い方には是非触れて欲しい作品でした。



『システム、演出』
ティラノ製、PCでプレイ。
基本性能自体は揃っているのですが、既読スキップと未読スキップの設定は反映されず未読スキップ状態になっていました。
後半分岐で中盤までかなり一度読んだ文章が重複するので、なるべく既読スキップは機能していて欲しかったです。
あと、漢字とひらがなの文字の大きさが若干違ったので読み辛さを感じたのと、選択肢でセーブ出来なかったのはノベルゲームとしては痛手でした。
それ以外は読んでいて不便さは無かったです。
シーン切り替えの途中で挟まる聖書の引用が良い味を出していました。


『音楽』
素材BGMの選択のセンスの良さに久しぶりに圧倒されました。
どの曲も最高なのですが、特にギャグシーンでかかるラテン系の曲はもう…シーンも相まって至高。
ラテン系の小気味よいリズムの中でオッサン(義雄さん)がバブる流れはもう大爆笑でした。
その他のBGMの選曲も良く…素材曲を知りたかったのでBGM鑑賞モード欲しかったです。


『絵』
絵は良し、ただ文章全画面表示なのであまり表情を見る余裕は無かったかも。
立ち絵が何種類かありますが、マリアがかなりの頻度で常に指差しポーズだったのが気になった…くらいかな。
あとは欲しいシーンに欲しいCGが挟まったと思います。
オッサンの立ち絵は大変良しでした、皆雄々しい。
ただ、CG鑑賞モードに入ってないCGもいくつかあったので、CG鑑賞モードには絵を全部入れて欲しいなとは思いました。


『物語』
基本マリア視点の所以外、途中途中で間を開けずに三人称視点が挟まった部分だけ急な視点切り替えに困惑しましたが、その部分を覗くと文章がとにかく読みやすかったです。
状況が複雑になっていてもサクサクと読めました。
登場人物が複雑化しそうになるとシーンの切り替えで相関図が出たのは大変有り難かったのと、基本がマリアを巡った物語だったので色んな事情は把握していなくても内容が即理解出来ます。
重要になったのは…薬の話くらいかな?
最終的にはマリアを中心に回るのでそんなに難しい事は無く。
オッサンがヒロインとそして各々の事情をかけて争う、乙女ゲーとしてとても有りだなと思いました。
ただ、やっぱりマリアがかなり度胸あって人を惹き込んでいくので、逞しすぎる乙女主人公が苦手だったり、主人公優遇系が苦手な人には若干合わなさがあるかなーとも感じました。


『好みのポイント』
飽きない、この部分が本当に素晴らしかったです。
常に何らかの状況が動いているので飽きて別の作業をする事がなく、久しぶりに物語に集中しました。
1ルート丸々集中したのは本当に久しぶりでした、このスピーディーさと文章力は凄いです。





以下ネタバレ含めての感想です





個人的オススメは「義雄END」→「ナオミED」→「ヒラトED」→「ガブリエルED」(CGは無いですが見たいなら間で「逃亡END」)。
「義雄END」が最も情報が開示されるので、様々な情報を知らないまま進みたいという方は「義雄END」ラスト推奨。
…と、ネタバレ項目なので書きましたが、本作はまず「攻略キャラが誰なのかすら予想が出来ない」ゲームなのでそこを楽しむのも良いとは思います。
選択肢が出始めてようやく攻略キャラの判断がついたくらいなので(笑)
基本は攻略したいキャラの名前を選べばOK、「ガブリエルED」のみ「ヒラトED」のラスト分岐になります。



「義雄END」
分かりやすくガブリエルと敵対するルートでした。
父の仇をしっかりと討てるのはこのルートかな。
信仰も当然していたのだけれど、別の執着もあったあたり正ヒロイン(?)してる気がします義雄さん。
物語が二転三転するのもこのルートの楽しかった所です。
そしておそらく全ルート中一番人が死にます、ほぼマリア以外の全キャラ死んだような…
情報も一番明らかになるのでこのルートを最初に持ってくるか最後に持ってくるかで総プレイする時の印象が変わりそう。
自分は最初にこのEDだったのですがバッタバッタと人が死んでいくので最初で良かったなと思いました。
まさかの攻略キャラの義雄も死んだので最初は「え!誰のルートにも入らなかったパターン!!?」と焦りましたが…こちらが「義雄END」みたいですね、なるほど、父の仇がある以上、彼とは決着を付けないといけないのか…
今作の「父の死の真相」という意味では唯一真相が明らかになるのでこのルートが正史な気がします。
ラストまさかの百合ENDの上に処女懐妊ENDで…宗教モチーフ的な意味で大変滾りました。
なるほど、アンナとはそういう関係だったのか…
攻略キャラそっちのけで百合ENDかますのでマリアの逞しさが一番出ていた気がします。
女性の教祖として蟻乃地区を引っ張っていく姿はとても良かったです。


「ナオミED」
主人公が人たらしなのはこの作品では当然として、ナオミさんも二番目に人たらしだと思ったり。
最後には対立するとはいえまさかのガブリエルとまで親密になるとは思いませんでした。
エロシーンに入るか!と思わせておいてナオミさんの男気優しさ大爆発したシーンは最高に笑いました。
最後には綺麗に収まる所に収まって、一番平和なEDだったと思います。


「ヒラトED」
カタギルート。
彼の素性は「義雄END」で既に知っていたので、分かっている分なるほど…という動きをされていました。
カタギなだけあって、マリアさんの背中の観音様などに対しての嫌悪感など所々で地雷を踏み抜いてくるのが極道と相反していてとても良かったです。
最後に彼を選ぶと彼も警察を止めて極道と警察の中間…一般市民になってくれた事に彼なりのマリアさんへのけじめを見た気がします。
この作品のコンセプトの極道からは外れてしまいますが、そういうルートがあるのも良いなと思ったり。
二番目に平和なEDだったと思います。


「ガブリエルED」
「ヒラトED」を最後にプレイしたので、ずっとガブリエルにはEDが無いのか?と思っていましたがしっかりとあって安心しました。
物語全てを引っ掻き回す役でマリアへの執着度No.1ですからね…ルートが無くても面白いですが、あって欲しかったので満足です。
ガブリエルEDは完全に組…どころかマフィアの幹部になるので完全に裏社会にどっぷり浸かるルートなのが面白いです、そこまでしないとガブリエルとは共に居られないんだなと。
表のメイン攻略キャラは義雄さんですが、裏攻略キャラはガブリエルで、義雄さんとガブリエルの間にはどんなに一度手を組んでも絶対に相容れない相性の悪さやマリアへの執着があるのが面白いなーと思いました。
ガブリエルのEDだけEDロールが流れないのも含めて特別感があって好きです。
おそらく肉体関係も無さそうだし…永遠に母と子に近い愛情でマフィアとして牛耳って欲しいなと思いました。



いやぁ…センスがあって格好良い物語でした。
商業ではあまり見かけない乙女ゲーム感が最高で…皆自分の信念や譲れない物がある所とかが強くあり、とにかくイカす物語でした。
恵まれてはいない世界だけどその世界の中で自分の領域を作り、足掻き藻掻き、自分の信念と執着する女の為に戦う、そんなバイオレンスな世界で生きる男の中にたった一人放り込まれても尚、強く逞しく強かに生きる主人公、まさに「強い女」の象徴のようなマリアの姿。
全員「強さ」に溢れた荒々しく猛々しい世界をとても楽しめた物語でした。