ひっそりと群生

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【ゼーメンシュ-Aftermath-】感想

【ツクール系全年齢】



2017年11月07日配信
東堂 前夜』様 ※リンク先公式HP
ゼーメンシュ-Aftermath-】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








水と人魚と、そして愛の歌。



『三年前、とある海岸で人魚が発見された。
 第一発見者である主人公を主軸に、
 人魚の研究は秘密裏に進む。
 そんなある日、【人魚専門店】なるものが存在していることを
 聞きつけた主人公は、真偽を確かめに赴く。』
(公式より引用)



オススメをして頂きプレイしました。
プレイ時間は好感度などを気にしたら6時間30分くらい。


世界でも珍しい人魚博士である主人公、豪傑は大学の生徒の蘭万、海貴、そして高校生のモコの3人と一緒に暮らしていた。
ある日、誰も見た事の無いツノ無しの人魚、マイを人魚専門店の店主から引き取る。
そして主人公達4人と人魚、マイ、5人の生活が始まるのだが…


というのが一応のあらすじ。
ふりーむ!の公式紹介文にて「長編・SF・若干のグロ・バッドエンド」とあるように、結末は一つの上、後味で考えると大団円を迎える作品ではありません。
ですがとにかく主人公の豪傑を含め3人+1人(匹?)の生活がとてつもなく楽しかったです。
彼らにはそれぞれ一人では暮らせない事情があり、皆寄り添うように生活していて。
それぞれの過去が明かされていく度に主人公の家で皆で暮らす事がどれだけ大切なのかがひしひしと伝わり。
そんな中にイレギュラーな存在である人魚の少女が訪れた事で様々な出来事が訪れる。
人魚には無自覚に人を洗脳してしまう「人魚の歌」という特殊な能力も存在しており、そういう無自覚で強大な力を持つ異種族との交流なども進む度に描かれ、割り切れない思いや納得できない気持ちを抱えながらも、それでも人と人魚が上手く共存していく姿が描かれていました。


主人公の豪傑が聡明で魅力的な男性主人公で。
選択肢によって印象は変わるかもですが知識があり行動力があり冷静だけど優しさがある成人男性の魅力に溢れ4人が付いてくるカリスマもある研究者で見ていて前半は凄く気持ちが良い主人公でした。


人魚のマイが入って家族になった姿も良いのですが、主人公と他3人の既に構築されている信頼感もとても美しく。
彼らの暮らす家が人魚が暮らす事にも特化した形をしている為、水に囲まれており、水に囲まれた幻想的な家の中、彼らの疑似家族としての生活からとても静謐な空気が漂い、とても素晴らしい世界でした。


だからこそラストは物凄く唸りました…
彼らが幸せになる道が無いのか…と願ってもこの物語は一本道でしかあり得なく。
壊されていく日常にどこまでも世界自体の底意地の悪さを感じました。
彼らの日常に美しさを感じれば感じる程にダメージを受ける作品だと思います。
とても大きなダメージを受けましたが…それでも私は主人公のその後を信じたいです。



『システム、演出』
ツクール製、戦闘は無し。
通常の動きは遅めですが、shiftキーでダッシュ可能。
でも、世界観もあってあまりダッシュで移動はしませんでした。
美しい世界の中、ゆったりと歩くくらいで丁度良かったです。
金策もそんなに悩む事は無いのでシステムに不満は無いのですが、スコアを売る際にもう少し一気に売れたら良かったなとは思いました。
後から売ると連打が大変なのでスコアは手に入れたらこまめに売る事を推奨します。


『音楽』
曲がかなり良かったです。
オルゴール曲があまりにもパーフェクトでした。
水の世界観と会い過ぎです…美しい…
音楽がスッと止まると少しビックリもして…とても使い方が良かったです。


『絵』
まず、マップがとにかく美麗でした。
移動操作時のマップはどこも素晴らしく。
人魚を研究する為に存在する島らしく、どのマップにも水辺が配置されていて、まるで水の都のよう…
ヴェネツィアには行った事は無いのですが、マップにするとこんな感じなのかなーとマップを移動する度にワクワクしました。
特に主人公の家は本当に凄いです、是非一度見て頂きたい…自分は主人公の家に住みたいです。
ただ、移動操作時のマップが美しかった分、ノベルパートになると背景がフリー素材になり少し興が…
フリー素材なのは良いのですが、ちょっとマップからの落差が激しいと感じます。
イラストはオリジナル。
絵はとても綺麗です。
店主は一瞬女性かと見間違うほど見目麗しい見た目でした。


『物語』
人魚との交流…だと思っていましたが…そう来るとは…
後半の展開は個人的には予想外でした。
好きか嫌いかと聞かれると…前半の雰囲気があまりにも好き過ぎて後半の雰囲気は前半に比べると……には感じました。
ただこれは好みの問題なので、地雷を踏み抜かれたり、無し絶対無し!受け付けない!!みたいなタイプでは無いです。
ちょっと前半が好みすぎました…疑似家族最高!


『好みのポイント』
雰囲気がとにかく良かったです。
水に囲まれた街や家と言うだけでもうどっぷり世界観に浸れます。
普段はツクール系の移動は高速で動かすのですが家の内装などが良すぎてゆっくりと観光してしまいました。
この平和が続けば良いのに…と思いましたが、そうは問屋がおろさないのですね…
あの結末を……受け容れます。





以下ネタバレ含めての感想です





ネタバレなのでこちらに書きますが…まさかの平行世界移動系でした。
項目に「SF」とあったので、人魚の真相などがSF要素なのかな?と思っていましたがまさか!でした。
そうかぁ…そう来たかぁ…
逆に人魚の真相などはハッキリと今作では描かれ無いので若干モヤッとします。
今回オススメ頂いた際に、「同作者様の作品をこの順番で辿って下さい」とかなり念を押して言われたのですが納得しました。
今作、一応この世界は今作で終わるのですが単作で終わりそうに見えて全体像を見ると単作では終わりません。
作中後半に出てくる「アイ病」や「アイ病がかかる理由」などは全く明かされないのでこちらも若干モヤッとします。
つまり次回作をプレイしないといけない…と、そういう訳ですね、なるほど。


続きがフリーで2作、シェアで1作出ているのでそちらで解明があると信じてはいますが…
いやー前半の雰囲気があまりにも好き過ぎたという意味でちょっとモヤモヤしている部分は実際あります。
人魚の真相を解いていく物語…と思っていたのですが完全に後半人魚は「不老不死」の為の道具になったのが悲しく…
でも、それでもマイはそんな自分を納得しながら豪傑に身を捧げて、海貴も身を捧げて…2人は最後まで家族が大好きでそれぞれの想いを抱えて死んだ事を思うと…切ないです。
そして蘭万は眠ってしまって、豪傑は背負った命が多すぎてこの世界を去り…モコが、モコがあまりにもあんまりで…


後半個人的に納得出来ない部分が大きいのはやっぱりあまりにも彼らの疑似家族が良すぎたからなんだろうなと思ってます。
あの疑似家族の静謐な空気が「バッドエンド」の表記があっても壊れるのが辛く…
もう正直「アイ病」の「同じ名前の響き二文字」とかどういうことなの???という気持ちが強いです。
「同じ響き」は日本語でしか通じないはず…どういう基準なんだ…という気持ちや、そもそもが今作では「アイ病」の謎は解明しない事もあり、連作の中で謎の解明がしっかりと納得出来る形でされないと、ちょっとこのあまりにも美しい疑似家族を崩壊させた件を受け容れられそうに無いなと思ってます。


連作が残り3作あって、他を未プレイで今作では謎が解明されていない以上、今作での評価のみになってしまいますが前半とても好きな世界観で後半平行世界系というまさかの展開…という部分で気持ち的には半々な部分に疑似家族部分やマイや海貴の散り様、最後の最後で今までの生活の中から愛を知る描写などは最高でした!という気持ちです。
特に大事な人の肉体を食べる描写は…人間ではないとはいえとてもエグく、でも好きです。
食べる事にも重大な意味がありますし…
若干食べる前の調理のSEはシュールに感じて不謹慎にも笑ってしまいましたが。


好きとドウシテコウナッタ…?の板挟みな気持ちで大変心をかき乱される物語でした。
このまま大好きな疑似家族を壊されたままの気持ちではちょっと終われません。
あと単純に「アイ病」の真相が気になりますし…
オススメ頂いた流れの通り次は「実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-」をプレイして行こうと思います。


最後に、アルト◯リコで「ヒュプノス」ってあったな…と思ってましたが「ヒュム◯ス」でした。
全然違いました…「ヒュプノス」はギリシア語で「眠り」という意味らしいですね。
大変勉強になりました。