ひっそりと群生

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【幼馴染の心が読めたらどうするか?】感想

【男性向け18禁】



2014年08月17日発売
夜のひつじ』様 ※リンク先公式HP(18禁)
幼馴染の心が読めたらどうするか?】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








読めるからこそ出来る行動もあれば、読めるからこそ出てくる新しい悩みもある。
全てを知る事が正解ではない。



『恋する女の子の気持ち、ぜんぶ見えます。

 久しぶりに再会した幼馴染・杞沙(きさ)。
 何を話せばいいのか俺にはさっぱりわからない。
 だけど突然、彼女の思考が読めるようになった!

 なんか杞沙は俺のことが好きらしい。
 そして……エッチもしてみたいらしい。

 相手の気持ちが読めるから
 恋愛は超イージーモード。

 したいこともされたいことも全部わかる。
 この恋に失敗はありえない! ……よな?
 だだ漏れデレパシーADV!』
(公式より引用)



夜のひつじさん作品9作品目プレイ。
こちらは再プレイになります。
プレイ時間はゆっくり読んで約4時間くらい。
3つのパートがあり、最初のパートにはGOODとBAD分岐有り。


本作、夜のひつじさん作品の初プレイ作品でした。
プレイ当時はふーんと流し読みしていましたが…
再プレイをして、自分がいかに当時文章を読んでいなかったかを痛感。
素晴らしい、元々、本サークル様の文章は素晴らしいのですが、今作になってその凄さに磨きがかかっていました。
スクショを忘れがちな中、夜のひつじさん作品は読んでて好きだなぁと感じた文章ではなるべくスクショを撮るように心がけていますが、今作は今までのスクショを軽く超える量を撮りました。
分単位で「これは…」と思った文章が流れてくるのです。
後半はもう唸る部分ばかりで…
正直、この感想を読まれていらっしゃる方が居て、本作未プレイの方がいらっしゃったら、3~4時間ほど時間を下さい!その時間で本作を読んで下さい!!とお願いしたいほど。
自分の拙い語彙力よりも本作に触れて欲しいと強く思います。
ですが、これは、感想。
自分の言葉がいかに拙いかを痛感しながらも思った事を書いていかないと意味がないので、日本語の不出来さを恨みながら書いていこうと思います…



『システム、演出』
吉里吉里製。
安心安全設計。
場面転換演出もクリックでサクサク飛ばせるの、毎度思いますが凄く有り難いです。


『音楽』
今作からwaniwaveさんが参加。
昨今では夜のひつじさん作品でmadetakeさんとご一緒に参加されてるという印象なのですが、どの曲も反発し合う事は無く、最初の参加の今作から全曲に渡りとても良い曲でした。
クレジットが無いのでまだどの曲をどちらが作られたのか分からないのですが…10作目まで行ったらキリが良いのでサントラを買います。
声は杞沙の方も初参加かな?
表に出ているクールな面もですが、心を読んだ時の慌てっぷりが最高に可愛かったです。


『絵』
切世さんは初夜のひつじさん作品参加らしいです。
立ち絵、CG共に良く、ヒロインの杞沙立ち絵は無表情に見えて実は色々と考えているという部分が出ていてとてもかわいらしかったです。
そして何よりも本作では杞沙視点があるのですが、その際に出てくる主人公の立ち絵も違和感無く。
男女どちらも違和感無くお上手で、主人公が心を読んだりして慌てている表情などは杞沙が見てて可愛いと思うように同じく大変初々しかったです。


『物語』
今作は、ひょんな頭の怪我から幼馴染の心を読めるようになった主人公の物語。
主人公は赤いハートマークが出る任意の箇所で幼馴染の心を読むかどうかの選択を迫られます。
幼馴染はあまり感情が表に出るタイプではなく、そして過去の確執もあり主人公はどう行動すれば正しいのか分からない状況。
「人の心を読む」これだけ相手の願う行動を簡単に取れる能力も無いと、幼馴染の心を読んで行くのですが…
確かに、読んだ事で幼馴染が願う行動を沢山取れますし、スムーズな行動を取る事は出来ます。
本作が他の方の作品だったら「読める!楽勝!ヌルゲー!大正解!!」になっていた事でしょう。
しかしそこは本サークル様、そうは問屋がおろしません。
読める事で楽になる箇所も確かに存在しますが、読んでしまった事で新たに発生する悩みまで徹底的に描かれます。
人は、新たな事を知った時に、更に別の問題に直面する…
そのような人間のままならなさがとことん描かれていました。
心を読んだ上で、知った上で取れるようになった行動。
でも、その行動が絶対に間違いなく正しいとは限らない。
「幼馴染の心が読めるようになった!」ではなく「幼馴染の心が読めたらどうするか?」このタイトルからもセンスを感じます。
「どうするか?」結局、知る事は出来ても、その後の行動を選択するのは自分なのだと、そして正しい選択が出来るとは限らないという事を痛感させられる物語でした。
…悩むという事は大事な事ですね。


『好みのポイント』
最初のパートのラストで判明するとある真相から、そして次のパートで実際に分かる事。
そして、エロが無いと描けないけれどエロゲでは殆ど見かけなかったとある事柄を、表現するのには絶対に難しい中でここまで描ききった事に感服致しました。
いや…本当に、エロゲでよくあの表現を描かれた…もっとエロゲであぁいう表現を見たいけど…書ける人少ないんだろうなぁ…





以下ネタバレ含めての感想です





さて、ネタバレ込みなので思うがままに書こうかなと。
もうここまで読んでる人は既プレイの人でしょう。
未プレイの方は3~4時間、下さい!そして本作を体感して下さい!!(2回目)


本作は、主人公が幼馴染の心を任意の状況で読めるのと同じく、幼馴染も主人公に自分の粘液(唾液や精液など)の接触がある事で数分間感覚の共有が出来るという隠された真相がありました。
2つ目のパートから幼馴染の視点で最初のパートを見る事になるのですが、面白かったのは主人公は最後の最後まで幼馴染の方の能力には気付けなかったし、本当に重要な部分は読めて居なかった所です。
心を読めたからといって、それが全ての感情ではなく、本当に大切な部分は決して触れる事は出来ない。
全ての心を読むとBADに行くの、「心を読む」という内容の作品でかなりチャレンジャーというか意地悪というか捻くれてるというか…でも、それが最も大事な事なんだなぁと。
「全てを知る」という事のリスク。
セックスをする前に幼馴染の真相に気付いてしまい、幼馴染も主人公も間違いなく相手を想っているのに、知ってしまったからこそ出てくる恐怖と疑惑。
別に浮気したとか別の人間の事を考えていたとか、そういうのでは無くても発生する「どうしてここまで都合よく…」という不穏感。
いやぁ…こういう所の描き方が…上手い、上手すぎます。
人間は何もかも上手く行かないのも辛いけど、何もかも上手く行き過ぎるのも不安になる、不憫な生き物。
だからこそ、「知る事」のリスクと、「読めたらどうするか?」という読んだ上で発生する責任。
その両方を「心を読める」というこんな都合の良さそうな地盤で描ききった本作はある種の快作だと思います。
萌えゲーらしく都合良くあっても良かったはずなのに…その都合には決して乗らず萌とはある種の正反対を貫いた本作、夜のひつじさんらしいです。


今作ではしきりに「迷う」「悩む」姿が描かれます。
知る事への悩み、セックスをする事への悩み。
いや、もう、この部分が好きで好きで。
「セックスとはある種の暴力である」「セックスとは献身である」
この部分に触れて描かれるエロゲー萌えゲーでは殆ど見かけないんですよ。
陵辱ゲーではこの部分が顕著というか…セックスを暴力として書いているからある意味でジャンルとして正しいです。
でも、萌えゲーでは殆ど描かれない事で…
だって、この部分に触れて書いたら多分「気持ちよく無い」んですよ、エロとして。
多分凄まじく「不快」な方の印象が勝ってエロとして気持ちよく楽しめない。
でも、夜のひつじさんは違った、書き切ったんですよ…エロとして!!
技量だと思います、スルスルと入ってくる文章で「ある種の暴力を受け止められる、許容出来るほどの関係」「献身」…それら含めて「愛」であるというのを描ききっていました…これは…夜のひつじ教の聖書なのでは?と思うほど。


『――俺なんかに処女を捧げて、俺なんかとセックスして、それでもまだ"すき"だなんて思えるのか?』
『女の子にとって、あんな行為はひどいことじゃないのか?ひどい行為だとして、俺が相手だと許せるのか?』


セックスを「ひどい行為」として形容する萌えゲー…殆ど見かけないですね。
前作の「姉ビッチ」でもヒロインから主人公への愛着描写がありましたが、今作はヒロイン視点が入る事で更にヒロインが主人公に対して可愛いと感じる描写の描き方も洗練され。
「恋妻」でも思いましたが女性心理の描き方が上手すぎて。
ヒロインの杞沙がセックスで感じるというよりも主人公と感覚を共有して主人公に自分が想ってもらえてる、自分を心配し、どこまでも迷う感情そのものに感じている姿とか…女性が書いたのか?と思うような描写で。


『私はきっと――また陶酔に負ける。』
『このまま私たちがおかしな場所に再びはまり込まないように導いてくれるのは、私がさっきずたずたにした彼の良心だけだ。』
『願う。願うしかない。』
『――ごめんなさい』


『人に想われることがこんなに心地いいことだなんて。
 良心以上の良心を、きっと人は愛と呼ぶのだろう。』


『ごめんね。ごめんね。こんなに美味しいものをいただいてしまって。この感情はこの瞬間だけに終わってしまうものではないだろうけど、この瞬間だけで終わってしまったとしても、永遠に私の心に残り続け、私はそれを他の誰かに伝えたいとすら思うだろう。』


この辺りとか唸りを上げる事しか出来ません。
ライターのpororiさんが女性向けティーンで小説を書かれるの…凄く分かります。


『こんな当たり前の確認さえ忘れてしまったら、俺はもう怪物と一緒じゃないか。』


心が読めたからスムーズな行動を、相手が考えている行動を取る事は出来る。
でも、それと言葉で一度相手にちゃんと確認を取る事は別。
人は本来言葉でのみ意思疎通が可能な生き物であり、本来100%を知る事は不可能な生き物である。
だから、ちゃんと、言葉で確認を取らないといけない。
「当たり前」の事、けれど彼らの状況では難しくなってしまった事。
それでもちゃんと「当たり前」を貫く姿が主人公の誠実さを際立たせ。
そして…そんな彼らでも、心が繋がっても100%を知る事は不可能であるという事を突きつけられ。


最初に心と感覚が繋がってしまった。
普通の人が辿り着けない領域まで繋がってセックスをして快感を得てしまった。
相手と言葉を交わさなくても相手の快楽が分かる状態で繋がってしまった。
だからこそ、普通に戻るのが難しく、感覚を一つ失うのは恐ろしく、一度一つになった物を切り離す事は難しく。
普通じゃないスタートを切ってしまった二人が普通の地点に戻ってくるお話で。
最後は結局言葉で確認し合う事しか出来なくて。
それでも確認していく中で、幼少期の、
「あの時、何も言えず、お互い泣いて、そして笑った」
という別れの時を思い出し。
どこから好きだったのかは確かに分からない、けれど、昔の出来事から同じ後悔で結ばれていて。
後悔と別れ、最初から…言葉で伝える以上に感情で繋がっていたという所に辿り着き、最後に別れの時と同じく涙と笑顔で繋がる…
流れの美しさに思わずこちらも涙しそうになりました。


別に喧嘩して別れて、再び付き合う…というような流れでは全く無く、負の方面での感情の流れは殆ど無いというのに、一度普通ではありえない所まで交わったものが離れ、別離し、そして再び正しく別の人間として再出発するという流れが、他では見かけない「よりを戻す」構図になっていて大変斬新でした。
今後も見かけないんじゃないかな…再プレイでの気付きですが、本当に、凄い作品を読んだと思っています。


結局、何を書いても自分の語彙力では追いつけないのですが、これが自分の感想だと諦めてネットの片隅に置いておきます。
全てを知る事が良い事で、正解に近づく…そんな事は無いし、全てを知る事は決して出来ない、そんな風に思う1作でした。
未プレイの人は3~4時間かけて絶対にプレイして下さい!絶対にだ!!(3回目)



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:エロゲー廃人速報改 様
http://erogehaijin.com/
 幼馴染の心が読めたらどうするか? ページ
http://erogehaijin.com/archives/1993701.html#more