ひっそりと群生

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【死月妖花~四月八日~】感想

【女性主人公全年齢】



2019年04月02日配信
『New++』様
死月妖花~四月八日~】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








土地に歴史有り、人に歴史有り。
全ての時代と全ての登場人物達に、カンパイ!!



『2020年四月、桜が舞う季節――。
 ある町で見るも無残な、真っ赤な死体が発見される。
 テレビやネット、SNSはその話題で持ちきり。
 なぜなら、このような事件が、過去に何度も起きていたからだ。
 メディアの向こうでの出来事だったはずが、彼女たちのすぐそばで『何か』がうごめいていた。』
(公式より引用)



選択肢はありますが基本一本道。
EDまでのプレイ時間は約61時間30分くらい。


…冗談でもなく61時間30分くらいです。
一日平均約4時間プレイで18日かかりました。
間違いなく最近…どころか5年以内でプレイしたノベルゲームの中で一番時間をかけています。
フリーノベルゲームとしてはありえないほどに膨大なシナリオ量だと思います。
RPGやステータス管理で時間がかかるのは分かります、それはレベル上げやステ振り、探索など話が進まない部分ででも時間を掛けてやる要素が多いからです。
けれどノベルゲームは違います、読む以上必ず物語が進むのです。
常に何らかの物語が動き続けている、そんなゲームとしてはプレイヤーが読む以上物語が進み続ける媒体な中で、このプレイ時間は本当に異様に感じ取れる事でしょう。
しかし、しかしこの膨大な時間を使いプレイしても、つまらないと感じる事は全くありませんでした。
むしろ、まだ読める!まだ進める!と時間が許す限り先に進めたくなる、そんな怪作、化物作…


物語はとある町で四月八日に起こる殺人事件、それに巻き込まれていく主人公達、という事件物としてはよく見かける始まり。
けれど、これはミステリーではありません。
最初に案内役の人物から「謎は解かなくて大丈夫です、彼女達の幸福な結末を見届けて下さい」と言われるように、「犯人は誰なのか?」「どうしてこんな事が起こったのか?」「動機は?」などを探るものでは無く、彼女達の幸福な最後を探す為に様々な結末を見届け、そしてその過程で恐ろしい事が巻き起こるホラー、サスペンス物になります。


…が、そこは人間、犯人は気になりますし、事件が起こった原因は気になりますし、真相が気になるものです。
ミステリーとは言い難い事が沢山巻き起こります、常識の範囲内では考えられない現象が沢山巻き起こります。
しかし、本作は、その全てに歴史的に、宗教的に、科学的に、生物学的に、そして数々の登場人物の性格や心情的に意味があり、驚くほど美しく綺麗に纏め上げられていました。
全ての事柄が理論的に証明されていくタイプが好きな人にとっては至高の快感を味わえるかと。
現実的な要素での探偵系殺人事件やミステリーでは無いのですが、「謎は解かなくても良い」と言われながらもプレイヤーとして当然気になる「謎」はしっかりと全て解明されていく、間違いなく謎解き物ではありました。


膨大なシナリオ量であり、時間を多大に使う作品ではありますが、今までプレイしてきたノベルゲームでは見た事のないくらいに配慮された数々のシステムで全く疲れや息切れを感じる事無く完走する事が出来ました。
作中資料は調べれば調べるほど深くに潜って行けるWikipediaのような作り込み。
「これをここまで作り込むか?」というようなお遊び要素での作り込みが尋常じゃない作品が昔のフリーノベルゲームで多々ありましたが、あの時代の作り込みが帰って来たかのよう…
勿論、これは物語自体が面白いからこそ出来るものではありますが、それに付属する形で間違いなく完璧なシステムでした。


………私は、この膨大な物語に対して本当に感想を書いて良いものか、実はとてつもなく迷っています。
この巨大な物語に対し、私の書く感想は塵も同然だと思うからです。
それくらいに凄い物語でした、感想を書くことすら小さく感じ躊躇ってしまうほど凄まじい物語でした。
けれど、書くと決めた事なので書いて行こうと思うのと、ネットの片隅ででもこの作品が好きな人が居るという主張としてここに感想を置いておきます。


間違いなくフリーノベルゲーム史に残る作品であると同時に今までのフリーノベルゲームの常識を変えてしまうほどの力を持った作品だと思います。
今後も語り継がれる事でしょう。
60時間近くかかるゲームなので、ある意味では時間富豪に許されたような作品で、時間的に全ての人にプレイして!!と強く言える作品では無いのですが、重厚な物語の為なら時間を惜しまない!というタイプの方には間違いなくオススメ出来る一作でした。
フリーノベルゲームでここまでの作品が発表されたのと同じ時代に生きる事が出来、本当に嬉しいです。
間違いなく楽しい一時でした、濃厚な時間を有難うございます!!



『システム、演出』
LiveMaker製。
システム、完璧。
動きは流石のLiveMaker、もたつく所無し。
LiveMakerの機能を余す所なく使いましたとの説明がある通り、システム面、UI面で間違いなくLiveMakerの機能が最大限に使われた作品だと思います。
LiveMakerのシステムでの機能を全力で使ったお手本のような作品。
止まる所は無い上に、ロード中もロード画面が凝っていたので全然飽きませんでした。
一部エラーぽいのを吐く箇所が数ヵ所ありましたが、あれは演出なのかな?とりあえずOK選べば全然進んだので問題無いです。
本作はLiveMakerの基本性能がカスタマイズされた上で揃っているので完璧な上で、上部に独自の文字数カウントシステムがありました。
これは、各パート毎に全文字数が分かった上で読んだ文字数がカウントされて行くというもの。
現在全文字数の何文字読んだかが把握でき、パーセントとしても表示されているので自分がどれだけ進んだかが直ぐに把握出来ます。
この文字数カウントは非表示にも出来るのですが、文字数カウントだけでなく、文字表示画面の下方には進行バーというものがあり、読み進める毎にバーが左から右へ進むので文字数カウントだけでなく映像視覚方面でも進行が分かるという優れもの。
この進んだ文字数が分かる事と、進行率がバーで分かるのが非常に有り難く。
モチベーション維持に大変貢献していたと思います。
人によっては全◯章などもネタバレ!と言う方もいらっしゃいますが、自分は章の数は把握出来た方が嬉しいのでこのシステムは大変喜ばしく。
正直、長ければ長いほどある程度の最後が見えてないと辛い所があって、こういう風に視覚的にある程度のゴールが見えてるのが大変有り難かったです。
各パートも約1万文字以内に終わるように細かく区切られていて、「今日はここまで!」など非常に指標にしやすく。
更に各キャラクターにはパーソナルカラーが設定されており、キャラ毎の台詞で色分けされているのが当然の作りに加え、二人称にもその二人称に当てはまるキャラの色でカラーリングされるという神仕様。
…どれだけ手の凝った作りなんですか…?
あまりにも痒い所に手が届き過ぎるシステムだった為、他のゲームがプレイし辛く感じそうです。
文字数カウントと進行バーシステムは全ノベルゲームで導入して欲しいくらいの一品でした。
そして、本編だけでなく、辞典の要素や作中資料などの要素も完璧。
辞典は作中人物の名前を忘れがちなので非常に有り難い上に、読み終えたパートで登場人物がどのような事を行ったのかも随時更新されていくので、途中からプレイしても把握しやすく。
作中資料は正直ここまで作り込むか!!?というレベルでの作り込み。
作中で起こった事件も分かりやすくまとめてあり…プレイヤーを混乱させない配慮が素晴らし過ぎました。
このシステムに成れると他のゲームがry
とにかく、ユーザーフレンドリー過ぎるシステムで、快適操作、快適プレイでした。


『音楽』
素材曲かな?
どの曲も使い所が良く、更に音楽鑑賞モードもありどこまでも親切設計でした。
作風もありホラー的な曲が多いのですが、単にホラーな曲と一括出来ず様々なバリエーションがあるのが音楽鑑賞を聞いてて面白かったです。
曲もですが、グチャとかベチャとかスプラッタ的な効果音が的確で非常に場を盛り上げていたと思います。


『絵』
基本はかまい◯ちの夜のように影絵で進行。
影絵は素材らしいのですが、影絵の動きからキャラ付けをされたとおっしゃられている通り、それぞれのキャラにピッタリ動きが合っていました。
それに加えて作中で重要になる少女達にはオリジナルの見た目も用意されていて。
影絵にする事でこの膨大なシナリオで表情差分を付けずにコストカットしたのは上手い!と思う部分でもあり、数カ所で見れるキャラの外見で彼女達の姿をなんとなく把握しつつ、影絵になる事で表情をプレイヤーが想像出来る部分もあって、コストカットの部分と想像させる部分で二重の意味で上手さがありました。
そして、上記でも書きましたが作中資料の作り込みがハンパじゃないです。
作中舞台の町や村の地図だけでなく、作中に出てきた手紙や広告、果ては新聞や住民票や死亡診断書の作り込みが凄まじく。
この世界の町が、村が実際にあるのでは?と疑いたくなるほどの作中資料の作り込みに脱帽。
辞典や資料を眺めるだけでも飽きさせない作り込みでした。


『物語』
文章が非常に読みやすかったです。
下手に凝る事無く、凄くストンと入ってきてサクサクと読みやすく。
3時間くらいの物語なら凝った文章も有りだと思いますが、今作のような超大長編になると凝った文章は息切れをしやすくなると思うので、非常にシンプルで分かりやすくスッと頭に入ってくる文で大変良かったと思います。
…と軽く言いましたが、これだけ読みやすく頭に入って来やすい文章を書くのもまた頭が良い人じゃないと書けないと思います。
凝った文体や突き刺さる表現とはまた違う方向性の頭の良さを感じました。
自分はノベルゲームで視点の変更があった際に、唐突に何の前触れも無く視点が切り替わるのが実は結構苦手で…
この表現はよくある事なのですが、「あれ?視点が変わった??」と途中で気付く事が多々あってせめて何らかの演出を挟んで欲しいと思っているのですが、今作はほぼ必ず最初に提示された視点のキャラから外れる事無く、視点が切り替わる際も必ず演出が入り、本当にプレイヤーに優しい仕様でした。
更に1パートが短く、1万文字内で収まっていて、1パートが5~10分で終われるという作りも非常に上手く。
これだけ膨大な話ながらも息切れを起こす事無く全力で最後まで駆け抜けられて。
システムもですが、これだけの物語で相当に配慮された文体と切り所と演出、そしてどのパートでも必ず盛り上げて来るその手腕にただひたすらにアッパレ。
話の巧みさもですが、登場人物の心情も全員それぞれにブレる事の無い行動原理があり芯がありポリシーがあり、全員の行動に納得がいき。
知れば知るほど全員に悪い所もある、けれども良い所もある、と全て庇護は出来ない中ででもその人間性や人間味に同情し頷いてしまいました。
魅力的な物語に魅力的なキャラクターに魅力的な構成に魅力的なシステム。
更に不思議な現象や不思議な行動のどれもこれも綺麗に回収し、謎を殆ど残さずに完結して、本当にお見事でした。


『好みのポイント』
不可思議な状況が多々起こりますが、その現象が起こる根底や原因の作り方が非常に上手でした。
歴史や宗教、科学や生物や医学を上手く絡め、バックボーン、土台の作り込みを丁寧に行い、数々の怪奇現象に説得力…納得させるパワーが溢れていました。
自分は基本的にミステリーや謎解きの要素で非科学的過ぎる現象を挙げられると「それは流石に…」となるタイプなのですが、本作はそういうタイプの自分ですら納得させるほど土台作りが完璧で。
苦手な要素すらも納得させるその作り込み、勝ち負けでは無いのですが、負けました、完敗です。
最初はなんでこんな事に…と思ってしまうような流ればかりですが、一度知って振り返るとどの流れでもキャラクターの心情や状況を考えると全てに納得出来る事ばかりで。
話の構成の鮮やかさ、とても好きです。
話は全てに好み!好き!!と言ってしまうのですが…
キャラとしての好みは五島になります。
五島絵梨奈という少女の好奇心と推理力と洞察力と話術と友を想う心。
全てが素晴らしかったです。
「小さな探偵」とあるようにまさに探偵役。
彼女のブレインがなければ間違いなく物語は回らず、全てに勝つ事は出来ませんでした。
死月妖花の敢闘賞を捧げたいです。
あと、作品の根本的な事情により女性キャラが主軸になるので百合力(ヂカラ)が高い作品になっていました。
大変、百合っぽさが、美味しかったです!!





以下ネタバレ含めての感想です





ゴールまでの長さは分かっているのに長い、どこまでも長い、まるで42.195キロのようなゲームでした。
けれど給水所の配置が完璧故に決して疲れる事は無く。
そして裏ルートに実況モード…どこまで作り込まれるのか。
今までの全ルートでキャラ解説やるとか頭おかしい(褒め言葉)ですよ、マジで。
本編だけでも様々な要素から「頭良い人が作ってる」とは思っていましたが、最早「頭良いを通り越した何かの人が作ってる」になってしまってます、まさに鬼才の領域。


あまりの作り込みに何を語っても最高だった!に行き着きます!
今、プレイ後に即この感想を書いていますが正直最高だった以外に言葉が浮かびません!
あまりにも良すぎた物に触れると言葉を失いますね…でも何か書かなければ。
ネタバレ含めての領域なので、ネタバレ込みでバンバン書きます。


44.8%………それはプレイヤーを唸らせる狂気の数字…
最後の声編までは33時間、ボスラッシュでは47時間30分、そして永劫回帰編では61時間30分ほど経過していました。
いやー、分かってました、とあるお方のプレイ時間が88時間の時点で、達成率100%になった時に自分のプレイ時間が33時間で「いや、まだ終わらんでしょう…」とは思ってました。
…が、まさか達成率が50%以下に減るとは思っていませんでした!!
減るとは思ってたけどまさか50%切るとは思わないじゃないですか…
そして、とあるお方が仰ってたように、まさにボスラッシュが始まります。
文字数見て「ヒエッ」となりますが、ボスラッシュは一つ2時間半くらいで終わるので、まぁ倒せなくは全然無いくらいの難易度なのがまさにボスラッシュっぽくて最高でした(ノベルゲームで倒すとは?)。
本作は本当に様々な所で驚きの連続で新鮮な驚きを多々味わわせてくれました。


上記でもシステムや世界観の土台の作り込みなど様々な要素が好きで褒めちぎっていますが、個人的に本作がとても好き!と感じたのは死月妖花を中心にファンタジーではありますがSFと伝奇どちらのジャンルでも楽しめるという所でした。
様々な文献で科学的に生物学的に死月妖花という生体の証明を重ね、死月妖花が生き残る為に人類を滅ぼそうとする人類VS古来から続く菌類の生物的戦いのSF。
様々な文献で歴史を絡め、時代の中で死月妖花が巻き起こす沢山の逸話・奇談の伝奇。
自分はSF的に物語を追っていたので、伝奇として追っていたという方のご意見を見て、「なるほど…」と。
こんな風に沢山のジャンルで見る事が出来る。
本当に凄い作品だと思います。


ラストも、大団円!だけで終わらず、ちゃんと立木三日さんの正体が分かった上で彼女を世界に返すEDがあって。
切ないですが、あれで…良いんですよね。
確かにあれしか無いです。
あのルートの春花はなつみの居ない道しかない。
寂しいですが、凄くしっくりくる終わりでした。
…自分は別離のEDが好きなので、まぁ好きです、あぁいうED。
しかも「可能性」の中では全員が死月妖花を倒して大団円EDの可能性も、春花が幸せな春花に統合され他の世界に逃げるEDの可能性も、春花がなつみを取り込んで死月妖花に屈する病み百合EDの可能性も秘めているという事が分かり、「数々の可能性の中の一つ」としてこの別離のEDがある所が最高だなと。
この世界観なら確かに数々の可能性を秘めてるし、どの可能性も間違いじゃない事が分かります。
バッドもグッドもメリバもビターも備わってるという欲張りセットEDでした!!


ただ一点だけ、自分の頭が追い付いていないかも知れないのですが謎に思う部分があって…
最後の最後に登場する長い黒髪の少女(?)、彼女だけが謎でした。
菌糸がただあの見た目を形作ってるだけなのか、それとも何らかの誰かが居るのか。
いや、私が頭悪いから察せてないだけかもしれないのですが。
「長い黒髪の少女の姿」で「春花の事が嫌い」なんですよね?誰だろう?
プレイヤーも見ていたので平行世界的概念があるなら平行世界の中の他の誰かか?
死月妖花はエデンの桜編でチャートのある世界にノイズとして干渉してきたので(立木三日さんの外見グロビビらせで)少なくとも平行世界に干渉出来る存在だとは思うのですが。
だとしたら真・明徴編「跳梁跋扈」の春花かなつみとか?それが平行世界…次元を越えて実は死月妖花だったという説もありえたり。
少なくともプレイヤーにある程度干渉出来る時点で平行世界や次元を越えられる可能性も。
…まぁ深読みのし過ぎで実は私が単純に見落としまくってて、めちゃくちゃ近い所に正解が転がってるかもですが。
最後の最後でちょっとだけ謎が残ったので、今まで綺麗に回収していた分少し気になりました。


あまりにも好み過ぎて、超久しぶりに印象に残ってるキャラ別感想書きます!!


【各キャラ感想】


『古郡なつみ』
THE・主人公。
キミが主人公だ!
キャラ的に目立つ要素は少ないですが間違いなく主人公でした。
そのいざという時に発揮される精神力に、許しの姿勢は主人公にしか出来ない芸当だと。
強さと優しさを兼ね備え、皆を光へ導く姿はとても好きでした。
体型でのハッチャケぷっりや、実況モードでのハッチャケっぷりもとても好きです。


『新村春花』
もう一人の主人公であり、悲劇方面での主人公。
現実に耐えきれず逃げ込んだ先、プレイヤーに出会う案内役。
なつみから春花への気持ちも相当ですが、彼女からなつみへの気持ちはもう…
色々と好きを通り越した何かになってしまってるのが最高ですね。
「跳梁跋扈」の闇落ち百合EDは素晴らしかったです。
無数の世界の中、あの可能性も兼ね備えてるのが最高。
雑談などでは恋の話や彼氏の話をしたり異性愛者っぽい所が描かれていますが…
本編を見ると正直、3人娘の間に割り込める男、居ないな…と思ってしまうのが本当に。
ルートによってはなつみと一緒に暮らしますが、なつみとの間に割り込める男、絶対に現れない気がします。
EDロールが流れるEDではなつみの死を受け入れ生きていく姿が強くもまた儚くて。
あのEDに辿り着く為の選択肢は正直「ここまで正論言えるほど自分は人間出来てない…」とか思ってしまいました。
なので、幸福な世界の春花と統合して現実から逃げるEDもまた有りだと思います。
様々な可能性を秘めたキャラクターでした。
沢山見守ったのでどのEDでも幸せになって欲しいです。


『五島絵梨奈』
マイベストキャラ!
というか、おそらく、もしかしたら死月妖花の中で一番人気がありそうだなーと思います。
とにかくブレイン、とにかく中心。
正直、五島が居ないと話が物理的にも推理的にも進みません。
なつみと春花と違い、第三者的な立ち位置ですが、だからこそ出来る事が多くて。
天才少女という肩書?設定?も遺憾なく発揮され、最も本能のまま知識欲のまま突き進みながらも思慮深く真相に一番近付くキャラでした。
五島が居なかったら絶対に死月妖花に勝てなかった、というか辿り着けなかったと思います。
本当に一番頭を使った、頑張った、破産覚悟でパフェとか奢ってあげたい。
「乙女の聖戦~本能~」や「春花が逃亡したED」では一人になってしまうのが本当に心苦しいですが。
うん………コアリクイ五島、可愛いです。


『新村美冬』
元凶その①。
彼女がこんな行動を起こさなければ…
と思いつつも、彼女の人生を見て、性格を見るとまぁ理解は出来てしまいます。
「極端な性格」というのは実況モードで作者さんからも突っ込まれていますが、極端さを持つと実際にあぁいう思考になってしまうのでちょっと分かってしまうというか、辛くなった際の抱え込み方が自分に近かったので非常に嫌な方で親近感がありました。
不幸に不幸が重なった時、周りが幸福そうに見える。
幸福な人が側に居ると「何で自分だけ」と思ってしまう
自分はこんだけ不幸なんだから幸福な貴方がこれだけしてよ!と思ってしまう。
ぐわー、悪い面が突き付けられてるようなキャラでした。
思う事は自由なので、そう思うのは有りだと思います、思うまでなら凄くネガティブに親近感があります。
…が、問題なのは彼女は行動に起こしてしまった所、流石にそうなっては庇護出来ません。
呪殺編、明徴編では親友に人を殺させ、親友の旦那を殺し、最早取り返しのつかない所まで来ているので、この2編に関しては救いは無いでしょう、きっと。
なつみがあの場に居た事で回避し、良心を取り戻し正しい道に進む。
最初に辿る呪殺編と明徴編では彼女の行動によって既にBAD確定な所が面白いなと思いました。


『新村栄一郎』
元凶その②。
この夫婦は…と思ってしまうと同時に、過去の出会いやネガティブな考え方があまりにもリアルで親近感や同情もしてしまうのが作りが上手いなとつくづく思います。
やった事は確かに問題しか無いのですが、過去や思考が丁寧に描写されるので突き放して見る事も出来ないという。
大事な人を救いたかっただけ、しかし、何年も封じ込まれていた死月妖花のドローガを解き放ってしまう。
まぁ、未来を見る限り、この時代で死月妖花を打ち倒していないといつかどこかの時代で必ず復活したと思うので、時の針を進めただけだとも思いますが、元凶ではあります。
ただ、この夫婦、非常にネガティブな思想とそれによって寄り添う所が心に突き刺さるので、夫婦萌え持ちとしては非常に好きです!彼も救うルートがあるのかな…と思いましたが。
流石にあの地点から変わると全ての運命が変わるので彼は生きる事は出来ないのですね、そこは少し悲しいかも。


『小郡茜&小郡良二』
この二人は一緒に。
呪殺編、明徴編と死月編で大きく異なる運命を辿る夫婦。
呪殺編と明徴編に関しては…もう、やった罪が罪なのでこちらも庇護出来ないかなー
いくら親友の頼みとはいえ、犯罪には加担してはいけないですよ、小郡夫妻。
良二さんの死体は本作屈指のG画像だと思います。
まぁシーンもあってGではありますがどこか悲しさの方が強いですが。


『五島桃子』
こんのツンデレシスコン姉め!!!
五島を疎みながらも作中随所から「いや、貴女、五島の事好きでしょ?」が滲み出ているキャラ。
その想いの強さは「キオク×復讐×腫瘍」で遺憾なく発揮されました。
お姉ちゃんによる復讐劇。
途中復讐を躊躇った時には「桃子!それで良いのか!!お前の復讐心はそんだけのもんだったのか桃子!!!」という気持ちになりましたが、でも夏菜はある意味無関係だからなぁ…
茅萱はギリ関わってますが。
サクラも薬の件は知らなかった側で、婆ちゃんも知らなかった側で。
とりあえず幸太郎はいらん事したなと。
いくら娘の為とはいえ…無いでしょう、自分で実験せぇよ、と。
自分の娘の為に美冬が解決策を求めていたとはいえ無関係な美冬に薬送ったのは外道だと思います。
そういう意味では幸太郎→美冬→五島→桃子と巡り巡って桃子が村を崩壊させて村に全部返って来たのは因果応報かと。
リファレンスで地味にヤの付く自営業の方に身体を売ったような描写があって…
今作はグロ描写は多いですが下ネタはありつつもエグい性的描写は少ない中で屈指のエグさがありました。
桃子お姉ちゃん、五島の視点からは男遊びしてるように見えてたけど、おそらく作中の様々な要素から察するに高校の時の彼氏以外男性経験無いと思ってて、しかもその彼氏ともプラトニックっぽく。
そんな彼女が五島の、妹の復讐の為にヤの付く自営業の方に身体を開くの…最高過ぎません?
大事な人や自分の大きな目的の為に純潔捨てて身体さえ使う女性好きなんですよ、こんなんたまらんです。
その大事な人が「妹」とか「同性」ってのがもう…更にたまらんです。
マジ姉妹百合過ぎて。
「キオク×復讐×腫瘍」は報われないけど大変良きでした。


『伊勢大二郎』
ロリでコンな刑事。
本編では村に行く流れになるとそんなに出番が…という方ですが、ボツシナリオ「Birthday Trap!」でやられました!
好みにクリティカルヒットでした!
いせかな(伊勢×夏菜)最高でしょう!!
それまで三人娘の百合最高だなーとプレイヤー側が仄かに百合を感じるくらいのカプ要素だったのに、ここに来てハッキリと分かりやすい恋愛要素が来た上にカプ厨大歓喜の展開で。
伊勢さんは本編では五島とのカプかなーと思ってましたが、正直全編終わると本編では村に行く展開になると伊勢さんの活躍は少ないですし、五島は本編見るともうなつみと春花以上に大事になる男とか居ないでしょとなりますし(というか3人娘の間に男が割り込める要素無さ過ぎる…)、伊勢さんと五島はコンビだなーと思ってた中でこの大爆撃ですよ!
伊勢さん、キャラ的に好みなのでボツでも活躍するシナリオあって良かったし、最高の活躍でした。
もう、ロリコン刑事の伊勢さん大勝利じゃないですか、本編の時点で伊勢さんが30で夏菜が11で19歳差でしょう。
夏菜が16なら伊勢さん35で…マジで大勝利過ぎる。
その上ロリコンとかそういうの抜きで運命的というか大事な人になる展開目白押しで。
正規ED後にカプ厨めった刺しの展開が来るとは思わないじゃないですか!
「春花となつみのカプ良いけど、公式で描かれてるカプというよりはプレイヤーが感じる運命的な二人だしなー、あと五島含めて3人娘が好き」くらいにカプ的には受け取ってた自分にクリティカルヒットでした。
最後の最後でやりよるわ、恐ろしい。
2年後絶対に結婚するじゃん!結婚するじゃん!
死月妖花は活動確定でしょうが、プレイヤーパワーで絶対にこのルートの桜の繁殖は阻止したいです(笑)


『新村茅萱』
残念美人姉妹の姉の方。
途中で彼女の台詞は「ん………」という吃音?から始まる事に気付きました。
呪殺編と明徴編を外れた上で、彼女が美冬に過去の事を話すか話さないかで死月編かエデンの桜編かに分かれます。
正直、死月編で彼女が出た際に、「呪殺編も明徴編も詫言編も終わってこんな後半に出た新キャラ、感情移入出来るかなぁ」と不安に思ったいましたが、全く大丈夫でした。
むしろ、死月編は前座も前座でした。
エデンの桜編で3人娘と一緒に彼女の視点も絡まり4人の行動が一つに繋がって行く姿は見ていてとても楽しかったです。
お酒で沢山失敗かましていますが、いつかその美貌で素敵な彼氏を作って欲しいです。
まぁお酒もですがセーブが効くとはいえ大食いも絡まるので…
ん………素敵な男性現れると良いですね…


『新村夏菜
残念美人姉妹の妹の方。
初経が始まってないが故に発狂が始まる事無く、彼女の血が武器になるという流れは本当に胸熱でした。
色々な道を辿りますが復讐心はありながらも基本は純粋なのでちゃんと話し合えば聞いてくれるし、「メガミゴロシミナゴロシ」では一人で葛藤していた少女。
五島とはどのルートでも仲良くなり、死月編で彼女が皆を守り通し死ぬEDでは凄まじい疑似姉妹愛が溢れていて最高でした。
ボツシナリオ「Birthday Trap!」では唯一危険予知によって五島に敵意剥き出しになり「この人とはどんな事があっても仲良くなれない!」と思ってる所が地味に面白かったです、他ルートだとハチャメチャに仲の良い疑似姉妹なんだよなぁ。
「Birthday Trap!」での伊勢刑事との関係がとんでもなく至高で至高で。
伊勢刑事という可能性がある分、茅萱よりも男性運はありそうだなと思いました(笑)


『新村エリカ』
エリリン!エリリン俺だ!!実況してくれ!!!
オー◯リー・ヘ◯バーンのエリリン。
彼女が引き継いだ言伝が死月妖花を打ち倒す重要な役割を担っていたり。
彼女が動き出した瞬間から「物語が大きく動くぞ!」と肌で感じ取れたり。
ある意味ではギリギリまで動かない動けない方ですが、動き出した瞬間に大魔女の貫禄を発揮していたと思います。
エデンの桜編以外では心労が祟りお亡くなりになりますが、まぁ全てが解決しないと彼女の安寧は訪れないので仕方ないかなと。
お婆ちゃんの怪談話もまさかの伏線で。
過去の話である村の掟で殺そうとした相手がまさかの今まで資料で名前だけは見てきた篠崎さんで、最後の桔梗リファレンスを見た時には驚きました。
時代は繋がっているんですね。
どこにも無駄な時代は無く、人の歴史で死月妖花を倒したのだとつくづく感じました。


『新村幸太郎&新村サクラ』
この二人も一緒に。
幸太郎に関しては全ての元凶半という気持ち。
サクラが死んだルートではサクラの想いに浸け込まれ、人間側で加担するので。
でも、気持ちも分かってしまいますし、裏ルートを見ると全てを非難する事も出来なくて。
彼もまた好きな人に会いたかっただけなんだなぁと。
サクラに関しては悲劇の人という印象。
呪殺編と明徴編では生きているのですが、大団円を迎えるエデンの桜編では死んでいるので、彼女が生きているルートはどう足掻いても死月妖花が繁殖する未来しか無いんですね。
サクラも幸福になって欲しかったですが、サクラと栄一郎には生での救済が無い所が最初の感染者という感じがして、リアルだなぁと思います。


『糸姫』
死月妖花に知識を与えてしまった者。
途中まで彼女が死月妖花かな?と思っていたので上手くミスリードに騙されました。
悪い事は間違いなく悪い事で、でも、だったら彼女はどうすれば良かったのか、と。
非力な彼女がボロボロになり皆に向かい、囲われる姿は当事者ではないプレイヤーからしたら可哀想に見えて。
あの流れは上手過ぎました。
五島も当事者ではないから第三者の目線で見れて「ちゃんと話を聞きましょう、その為に今の時代には裁判があります」というような台詞には非常に頷きました。
五島はどこまでも中立で、そしてなつみはどこまでも主人公で。
なつみは目立つ要素は確かに少ないですが、全てを許せる「主人公」なんですよね。
糸姫も、これでただのサイコだったらただの菌類に魂を売った激ヤバクソ野郎ですが、でも彼女の過去も事細かに描かれてしまってるからメチャクチャに同情してしまい。
好きな人に旅立たれ、10年の約束を交わした後直ぐに山賊に襲われそうになって、追い詰められて死んで。
時代もありますが、14、15くらいの少女だったらもし好きな人ともう一度会える可能性があると言われたら死月妖花の甘言?誘惑?に負けてしまうのも分かります。
最後はなつみに受け入れてもらい、死月妖花と共に消え。
800年の数奇な運命に幕を閉じ、そして現世でもしかしたら転校生の彼女に転生を果たしていて。
今度こそ好きな人と幸せになって欲しいです。


『死月妖花』
一瞬糸姫がラスボスか!!?と思いましたが死月妖花は菌類で知性の無い存在だったのに安心しました。
個人的に本作はあくまでも人類VS古来から存在する菌類の種の戦いであってほしかったので、種を賭けた戦いとか大好きなので。
とは言いますが、最後の最後で謎が多い部分を多々見せつけましたね。
あの長髪の黒髪の少女の姿は何なのか?本当に知性が無いのか?探している父と母とは誰なのか?
どこまでも人間には理解できない人類外の生命体で、人間が住み着く以前から長い年月この惑星に居続けた存在だとは思うので、人間が全てを理解しようとするのは野暮というものだとは思いますが、彼女(?)の正体が公式で明らかになるのも楽しみにしています!
それともリファレンスや今までの話を辿れば予想が付くのでしょうか?また探してみようと思います。



まさしく土地に歴史有り、人に歴史有り。
平安、安土桃山、江戸、全ての時代、全ての人々はは必ず繋がりを持っているという人類の種の存続を賭けたスペクタクル作品でした。
今後この作品を超える時間を持つフリーノベルゲームに出会えると思えません。
間違いなくフリーノベルゲーム史に残る一作でした!
触れられて良かったです!本当に有り難うございました!!





最後に。
ネタバレの項目なので、ちょっと他作を絡めて話しますが、本作は同人ゲームで有名な某作品と根幹が近い…というかリスペクトされているのかもと感じた所があります。
村があり、謎の病のような現象があり、疑心暗鬼があり、殺人事件があり。
自分も当時その某作に触れて無印と解答編をプレイしました。
間違いなく楽しかった要素も大きかったです。
けれども、これはきっとどこででも言われている事ですが、その某作は最後の展開で唐突にファンタジー要素を入れ込んで来ました。
正直、某作の売り出し方は「ミステリー」「推理」として売り出していたような所があり。
当時、真剣に純粋に謎を解いていた身からしたら、それはもう、正直悪い意味で裏切られたような気持ちになりました。
そんな後出しジャンケンのようにファンタジー設定を出して、今提示されている材料では絶対に真相に辿り着けない、推理ではどうしようもない要素が真相に絡まるなんて…と本当にガッカリでした。
最初から「正解率」という言葉を出して売らないで欲しかった…と思います。
その某作も相当な時間がかかる作品で、沢山の時間を掛けたのに悪い意味で裏切られたその流れに今までの時間を返して欲しいと思ったほど。
それくらい唐突に神が現れ、謎の病が現れ、平行世界が現れました。
正直今でも、その某作は凄いと思う要素がありながらもどうしても許せない所に位置しています。
それくらい自分は頑張って提示されている材料で推理をしていたので…


そして、本作の話に戻りますが、本当はその作品で感じた負の側面を見事に払拭してくれました。
まず、ミステリーとして存在させず、謎解きは目的ではないと言いホラーサスペンスとして世に出している所。
これが上手い、最初のジャンルによって印象は大きく変わります。
ミステリー→実はファンタジー含むホラーサスペンスだったという流れだとジャンルが違い「はぁ?」となりますが、ホラーサスペンスと最初から銘打っておけば、謎解きの要素でファンタジーが入っても許せる気持ちになる不思議。
最初のジャンル区分って大事だなと強く思いました。
神のような存在も、謎の薬や殺人衝動の病のような現象も、更には死体が動くという荒唐無稽な現象ですらも全てが納得のいく形で提示される。
正直驚きました。
謎解き要素がある作品で「死体が動く」なんて、自分からしたら絶対に納得のいかない要素です。
けれど、本作は「古来から存在する菌糸が人を乗っ取っている」と実際に存在する様々な寄生虫の資料を上げ懇切丁寧に納得出来る土台を組み上げていました。
そう、全ての荒唐無稽に見える現象にリアルな資料をぶつける事でファンタジーから学問に変えていました。
もうここまでされると否定する気にはなりません。
人間は万能では無い。
「もしかしたらそんな事もあるかもしれない」と納得し、SFとして捉えていました。
神のような存在に見えた死月妖花も、危険予知も、ドローガの作用も、殺人衝動も、全てに細かく資料が用意されていました。
全てをそれっぽくでも科学的に説明していくその姿勢、本当に脱帽です、アッパレです、参りました。
人は、作品の何らかの展開に「許せないポイント」というのを持っている事が多いと思います。
自分だって持っています。
けれど、本作はそんな「許せないポイント」ですら納得させられました、完敗です。


当時、某作で感じていた違和感…「ファンタジーにするにしてももっと丁寧に土台を作って欲しかった」という納得出来ない気持ち。
近い題材で近い流れを組みながらもこうも違う心象を与えるのか、と本当に驚きました。
本作は本作で全く違う物なので、某作に対する印象が覆るという事はありませんが、「ここまで徹底的に作り込めば誰かのダメだと思う要素も覆す事が出来る」という底力を見せて頂きました。


本当に、素晴らしい物を見せて頂きました、再度お礼を言わせて下さい。
約61時間30分、本作に掛けた全ての時間を全く無駄に感じませんでした!
悪い意味で裏切られたと思う事が全く無かったです!
プレイできて幸せでした!本当に有り難うございました!!
オマケ部分の実況モードも随時更新予定っぽいですが、更新される度にプレイさせて頂きます!
今後の更新楽しみにしています!!