ひっそりと群生

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【世界の始まりゴッコ】感想

【男性主人公全年齢】



2015年08月27日配信
夜のひつじ』様 ※リンク先公式HP(18禁)
世界の始まりゴッコ】(PC&iOS&Android) ※リンク先公式HP
以下感想です。








夢から醒めて
やりたいことをやろう。



『「綺麗なものが好きなんだ」

 繰り返し見る同じ夢がある。
 幼馴染の瀬野千羽弥、香崎あかりと夢を共有し、
 尋人は“彼女”の意図に気付く。

 夢と現実を渡り歩き、
 やがて辿り着いた幼いあの日の遊びの延長。

 「見かけだけの心ない勇者さま。さあ――
  この世界の半分の清浄を私と分かちあおうか」

 ルールは、イノセントであるかどうかだ。』
(公式より引用)



夜のひつじさん作品12作品目プレイ。
プレイ時間は約3時間15分くらい。
ED4つ。


夜のひつじさんの全年齢ノベルゲームは『孤独に効く百合』(※リンク先感想)以来。
iOSAndroid版からPCには初のはず。
フリゲとしての公開は初。


あらすじ通り主人公の尋人は幼馴染の少女二人とファンタジックな夢を共有していて。
夢の中では現実の記憶が無く一つの物語をなぞるかのように話が進みます。
何故3人は同じ夢を見るのか?
現実と夢を繰り返して行く中、夢の中で襲い来る紫の少女の正体と現実で起こった出来事、そして夢の物語の真実。
全てが明らかになっていき、夢は終わりを迎える。
「感傷現実ジュブナイルノベル」のジャンル通り、幼い頃を忘れたくない傷付いた人間の心を描いた少年少女の物語でした。


千羽弥寄りの選択肢を選ぶと、千羽弥ED。
あかり寄りの選択肢を選ぶと、あかりED。
物語寄りの選択肢を選ぶと、別ED。
更に一番最初の選択肢によって、物語寄りのルートラストにED分岐が追加されます。



『システム、演出』
Artemis Engine製。
iOSAndroid版からのPC化なので仕方ないですが、ちょっと使い辛かったです。
ボイスが最初の一行にあると自動再生ですが、その後はクリックでのみ再生。
他の場所をクリックすると次のページに行く上に履歴が無いので飛ばしてしまった時かなり困りました。
履歴は欲しかったです。


『音楽』
madetakeさんの曲が良すぎます!
特にタイトル画面で流れる曲が最高で。
この曲だけは公式から落とせるので無限ループしています。
音楽鑑賞モード無し。
サントラも他は発売していたり発売予定な中、本作は無いです。
発売or全曲公開して欲しい。
声は全員お上手、主人公の演技も尋人のどこか鼻に付く感じが合っていました。
千羽弥とあかりの演技も好みです。
沢村さんの田○ゆ○りさんを彷彿とさせる可愛らしくも気丈な声も。
るくさんの宥め系なお声も良く。
というかるくさん、別の同サークル様で別名義で出てたりしません?
耳が悪いので断言は出来ないのですが、なんかこう…聞いたことあるような?
気のせいかもしれませんが…


『絵』
ギャルゲ的萌えに頼らない絵柄で良かったです。
イラストレーターさんが絵本を描いているとあり納得しました。
本作の設定もあり、絵本的な絵柄が非常に合っていました。


『物語』
文章は夜のひつじさんにしては結構スピーディーな印象。
他作のようにゆったりと二人の時間を積み上げていくタイプではなく、物語の進行が最優先で進むタイプの作風だったのでこの速さには納得しました。
慣れるまでに少しかかりましたが慣れてからは読みやすかったです。
話は…結構どこに触れてもネタバレになるので下記に語りますが、夢の真相や紫の少女の真相は分かりやすかったです。
本作は真相が分かった上で、「この夢にどう終止符を打つか」「じゃあ彼女達とどう向き合うか」というお話で。
4つそれぞれEDがありますが、どのEDも基本どれも前向きで全年齢作品としては良かったと思います。
個人的にはやっぱり物語のルートに進む特殊EDが好きでした。


『好みのポイント』
皆、根本的には良い奴だなーと思います。
皆、繊細で、まさに思春期の少年少女。
色々と捻くれているように見えても一人は嫌だし、上手くはいっていないし。
そういう思春期特有の繊細さが全員から溢れていました。
皆それぞれで悩んでいる、少年少女モノでジュブナイルでした。





以下ネタバレ含めての感想です





公式にも居ないし完全にネタバレなので祐の項目はコチラに。
本作は自殺未遂をして眠っている祐という少女が3人の幼馴染を夢で繋いでいたというもの。
過去、主人公と作り上げた絵本の世界へ夢の中で連れて行き、絵本の物語を進めていたという真相でした。
真相に関しては結構予想していた通り。


本作は上記でも語りましたが、二人が出会い徐々に近付く…というような近付いていく心理描写よりも物語が進むという方向に振り切った作風で。
正直、今まで夜のひつじさんに感じていた繊細で深く潜っていくような心理描写は無かったので、「読みたかった物が読めた!」という感じではありませんでした。
主人公の心理よりも物語進行型なのは全年齢作としては正しいのかもですが…ちょっと残念。


主人公含め3人の幼馴染達が夢からの脱出のため祐と向き合う…というお話なのですが、本作は登場人物の状況がイマイチ描写されていなくて。
4人の過去の幼馴染時代も描かれないし、4人の家庭環境もしっかりとは描かれません。
夜のひつじさんはあまり過去を描かず、プレイヤーが「察する」くらいに描く手法を取られる方なので、今作もそんな感じだったのですが、これ、「二人の世界系」や「徐々に二人が近付くお話」だととても効果的になるのに対し、複数重要人物が居る上でこの表現をされると、「よく事情が分からない人物が何人も居る」で終わってしまうのであまり合わないなーとは思いました。
重要人物が複数居るタイプだと、4人には4人それぞれの悩みと4人が仲の良かった時代をしっかりと描いた方が感情移入出来るなと。
特に本作は「二人の世界系」で「二人が幸せならOK!!」というタイプでは無く、3人が祐に向き合い、祐の夢から脱出するお話だったので、3人の繋がりというか、幼少期とか…そういう部分も描かれて欲しかったです。
始終、昔は仲が良かったのがなんとなく察せられる4人の夢が繋がって、なんとなく家族や才能の事で傷付いていると思われる祐が作り出した夢からの脱出の為に3人が向き合う…というお話になってしまっていて。
まぁ…なんというか、傷付いている祐を救う話でありながらも祐の事が二の次に見えてしまいました。
一番は夢からの脱出!みたいな…


主人公の祐への向き合い方もですね。
「大人になれば家族を原因に出来なくなる」ってそんな、お前…
正直家庭環境は人間の人格を一番形作るものだと思っているので、それは流石に…な気持ちに。
議員の娘の時点で色々とお察しなのに絵の才能まで父親の評価の為に使われるとか、そんな家庭地獄でしょう…思春期に死にたくもなる。
確かに主人公の言葉は正論です、正論ですが、家庭環境のゴタゴタを知らない人間の正論だな、と。
主人公の家庭環境が全く描かれないのもあり、綺麗な所からただ物申すだけの人になってたのが。
他作のように所々から家族との折り合いの悪さや、今まで恵まれていなかった家庭環境を「察せられる」ような描写も無かったので、主人公は普通の環境に育ってて祐に正論をぶつけているように見えて。
他作では主人公側もあまり恵まれてなくて、ヒロインの孤独に寄り添う…というような描写が多かったので、祐の事に寄り添う気は無く見える所が「ぐあーっ!!!」となりました。
確かに最後飛び降りた祐を受け止めるけどさー、けどさー…それは最終的に夢からの開放の為であって。
正直夢が無かったら祐のお見舞いにも行かなかったじゃないですか…
そういう部分がこう…祐と本心から向き合った人居たか?みたいな。
確かに、祐が巻き込んだ物語なので「最終的に全部自分の為」それも正しく同時に思春期っぽさがあり。
祐の家庭環境の地獄に真の意味で寄り添う事は無く祐を覚醒めさせて…その後の家庭環境、親との確執に対してのケアは?という部分が非常に不明瞭な所も若さがあって非常に有りだと思いますが、他作の「孤独な人間の寄り添い」の作風が好きだっただけに本作は心からの「寄り添い」を感じられず。
このサークル様に求めていた物とは違うな…となりました。


新しい作風開拓としては非常に良いのですが、彼らの過去、幼少期をもう少し細やかに見たかったです。
千羽弥のキスも結構今までの流れだと唐突に感じて。
友人にしか見えていなかったので「恋愛フラグどこで立った!!?」みたいな気持ちに。
彼らにはどのEDでも最後まで友人としてフラットに居て欲しかったです。


このサークル様では中々に見られない複数重要人物系の全年齢青春物だったので、そういう新しい作風が見れたのは良かったです。
でもやっぱり好みはいつもの「二人の世界」だなーと強く思いました。
たまに他の味も楽しみたいですが、結局はいつもの味に戻ってしまう…そんな風に思いました。