ひっそりと群生

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【ハルカの国 大正星霜編】感想

【女性主人公全年齢】



2020年11月06日発売
スタジオ・おま~じゅ』様 ※リンク先公式HP
ハルカの国 大正星霜編】(PC) ※リンク先BOOTH
以下感想です。








年月は流れる。
私達は三人だった、三人で生きていた。



『時は巡り、近代化のすすむ大正。
 ユキカゼは東京神田の片辺にいた。
 かつての同業オトラと、新たに仲間へ加わったクリとの三人、人間達に紛れ暮らす。

 「やっとう狐は過去のこと。今では生活狐がいるだけさ」
 時代の主流からは離れ、小さな居場所を見つけ暮らす三人。
 そんな日々にも、やがて時代の影は伸びる。

 時代は移ろい、世は変わる。
 それでも人々は春を夢見て、何度も冬を越える。
 越冬歌はいつの時代も響き続ける。』
(公式より引用)



プレイ時間は約8時間15分くらい。
選択肢は無し。
ハルカの国 明治決別編』(※リンク先感想)プレイ後推奨。


国シリーズは4作目。
「ハルカの国」の第三話になります。
前作「決別編」後の物語。


蒸気の時代、西洋の思想と横文字が出てくる時代。
銃の時代が訪れ、剣の時代は終わりを迎える。
あの明治の日々の後、ハルカと別れたユキカゼ。
彼女との別れはユキカゼの「心」と「生き方」を大きく変える。
かつての向こう見ずなユキカゼは居なくなっていた。


時代は過ぎる、確実に過ぎる。
明治初期、昔はいがみ合っていたおトラとは再会後落ち着いた関係を築き、そして新しく狸の新参の化けクリも加わり三人は共に人間の仕事を手伝い生計を立てながら人情溢れる江戸…東京の下町で肩を寄せ合い生活していた。
鉄道が敷かれ、駅が出来、巨大なビルディングというものが立ち並ぶようになる。
人が自然に負けていた時代はとうの昔にどこかに行ったような世の中。
明治のように自然の力と戦う事の無い人間の時代が来ていた。
国は確実に変わって行く。
化けが身を置ける国は、化けの生きる国はどうなるのか?
化けの国は残されているのか?
そんな目まぐるしくも変わる時代の波に流されないように化けの三人は必死に人の世で生きる。
今の生活に必死で、必死で…
必死な中ででも暖かな生活。


ユキカゼの中でハルカの存在は決して消える事は無く。
けれど、彼女に挑み向かっていくユキカゼはここには居らず。
新しい時代の中、ただ、暖かく三人の日々は過ぎて行った、過ぎて行っていた――。



『システム、演出』などは「越冬編」とほぼ同じなので省略。


『音楽』
前作全前作と同じ曲もありますが、一番驚いたのは一部クラシック曲が入っていた事でした。
明治編では無かったので。
大正に入り文化も洋の文化も入って来る中で音楽もしっかりと影響があり、時代の流れを感じました。


『絵』
一枚絵が今までは浮世絵のような手法だったのが水彩画というか色鉛筆画というか若干洋の塗りというか…
絵柄に詳しくないので的確に語れないのですが確実に手法が変わっていて、和だけでなく洋も出ていました。
今回は大正の背景もオリジナルが多く、建築物からもこだわりを感じ、絵柄でも時代の流れが描かれて。
立ち絵も変わらずの多さと細やかさ。
今回からスーツなども出てきて装飾関係でも洋を感じました。
どの立ち絵も本当に好きなのですが…個人的にはおトラの立ち絵の表情が好きです。
とても好きです。


『物語』
カンパニー、デモクラシー、アンパン。
様々な所で横文字が出て来て、文化の方面でも新たな時代を迎え。
それでも明治が完全に消える事は無く、地方の文化や下町、そして祭りは変わらず和があり続け。
まさに洋が新たに入ってきた激動の時代。
景気が良いように見えて苦しむ人は苦しみ、良い事は常に続く事は無く。
変わり続ける日本がとても描かれていました。
大正物が好きな人はこの空気だけで幸せになれると思います。


『好みのポイント』
一代だけの化け、血の繋がりも何も無い化けが三人。
三人一緒に暮らす姿が本当に良くて良くて。
町の人達も皆本当に優しくて。
国は、お上はとても厳しい世界。
そんな中でも自分の手の届く範囲の優しさは本物で。
義理と人情、下町の住人の他者への想いが皆優しく本当に良かったです。





以下ネタバレ含めての感想です





「越冬編」での二人を知っていると、おトラとユキカゼが行動を共にしているのにまず驚き。
あれだけ最初に顔を合わせればいがみ合いな二人が生活を共にして生きている所にユキカゼの四十年の歳月を感じました。
丸くなり、歳を重ねた。
ハルカ様との別れの際に失ってしまった目標もあり、そして、剣が古い物になってしまった時代もあり。
達観し、許容が広くなったユキカゼ。
けれど、その落ち着いた姿や伸ばした髪からどこかハルカ様を感じて。
彼女の中では負けて置いていかれた事が諦めになっているけれど、ハルカ様の影響は絶対にあって。
彼女がクリに何かを語り教える姿から非常にハルカ様の影を感じました。


「星霜編」から出てくるクリはどこか幼く人に頼ってばかりで、自分が決めた事は絶対に変えず、土台はスカスカの目標だけを語り。
非常に猪突猛進で…その猪突猛進さが昔のユキカゼのようで。
そんな彼女をユキカゼは優しく、おトラは現実を突き付けながら見守る姿が姉妹のようで。
最初は甘い考えで理想論ばかり語るクリ、けれどおトラに「ほどけ」が訪れてしまう。
「ほどけ」…人間で言う痴呆。
全てを忘れてしまうおトラ。
そんなおトラを見て、いつまでも妹分では居られないとおトラの面倒を見るようになり、カンパニの為に奮闘し、でも、その理想はやっぱり理想論で。
どんなに最高のうどんを作っても、クリは自分の故郷を捨てさせた人間が嫌いで。
人間を理解していない以上、最高の物を作ったとしても受け入れられるわけは無く。
国は嫌いで、人間が嫌いで。
でも、自分の周りの人々は皆良い人で。
じゃあ「自分が嫌いな人間」とは一体誰なのか?
この国を作り上げた人間の中に、自分の好きな人達も関わっている。
じゃあ、国が全て嫌いなのか?
私達は国というものに押しつぶされそうに生きている。
自分の周りの人間は良い人なのに、自分の見えない所で自分を押しつぶそうとする人間が嫌いで嫌いで。
でも、それは化けだけでなく、人間も一緒で。
それでも社会の中、人間の作ったカンパニを使って生きるなら人間の事を知らないといけない。
神社でのユキカゼのクリへの説教は本当にその通りで。
社会で生きるなら人を知るしか無くて。
人を知る事を目標に掲げ成長していくクリ
前回はハルカ様に説教されていたユキカゼが今回はクリに説教する側に周り、ハルカ様のように見守り続ける姿に、影響は残り続けるのだなぁと実感しました。


クリが自分のうどんにトラユキと名付けた時には感無量で。
クリのうどんは成功し独り立ち出来るほどの力を付ける。
けれど、時代は揺れ動き、経済も揺れ動き、三人は三人のままでは生活が難しくなり。
クリはしっかりとカンパニの為に独り立ちし、ユキカゼはほどけたおトラを抱えて東京を出発する。
しかし、おトラのほどけがおそらく痴呆の人間が一瞬だけ記憶が元に戻るように一瞬だけ解け、彼女が汽車から出ていき。
おトラはユキカゼに出会うまでは生活狐でその日暮らしを続けていた。
けれど、ユキカゼと再会した事で姉さん狐に戻り、また生き方を取り戻していた、おトラはユキカゼに救われていた…
最初におトラと出会った場面が流れおトラがユキカゼに「やっとう狐!」と言った辺りでもう…駄目でした。
三作目ともなればある程度覚悟して「耐えてやる!」と思いながら読んでいたのですが、耐えられませんでした、無理でした、画面が滲み見えなくなりました。


周りの人々は優しく、人情深く。
けれど、国やお上は厳しく…
どの時代もそういう生き辛さがあり、そんな中で化けの彼女達は人間とは違う方面から政府に振り回され人間に振り回され生きている。
それでも人を知る、出会った人には情を抱き。
小さき人間の大きな成長に驚き。
長い生の中で数々の人に出会い生きていく。
一度は向き合った「生きる理由」そして時代が進めば進むほど時代遅れになっていく「剣」。
彼女の心にある「国」は「剣」はどうなっていくのか。
そして、ハルカの居場所を知ったユキカゼ。
天狗の国にて、彼女の「生き方」に多大な影響を与えたハルカとの再会はかなうのか…


この感想を書いているのは2021年の1月半ばなのですが、また再びCFの第二回が行われるようです。
一回目で参加していましたが、これだけの物語、また絶対に支援させて頂きます!
ユキカゼとハルカの物語がどうなって行くのか。
次の時代の波に緊張しつつ楽しみにしています!!