ひっそりと群生

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【愛病世界Ⅴ 【全てが愛に至る-Euphoria-】】感想

【ツクール系全年齢】



2020年08月09日発売
東堂 前夜』様 ※リンク先公式HP
愛病世界Ⅴ 【全てが愛に至る-Euphoria-】】(PC) ※リンクBOOTH
以下感想です。
必然的に『ゼーメンシュ-Aftermath-』『実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-』『サイケデリック・ウーファー-Coloration-』『愛病世界-象牙の塔-』(※リンク先感想)のネタバレもしています。








生み出された一滴の毒は人を知った。
人を知り、愛を知った。
愛を守る為、最後に下す決断は――



『絶体絶命のヘーメラー。
 タイムリミットは12月24日。
 人間が持てる全てを賭けた最終実験の末に、
 哀病に関わってきた
 研究者たちが見た愛病世界の真相とは?』
(公式より引用)



オススメをして頂きプレイしました。
プレイ時間は約11時間くらい。
ゲームとして単品であり「前作品をプレイしていなくても楽しめるます」とありますが、「ゼーメンシュ-Aftermath-」「実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-」「サイケデリックウーファー-Coloration-」「愛病世界-象牙の塔-」クリア後にプレイしないと数々の展開で置いてけぼりをくらう可能性があるので「ゼーメンシュ-Aftermath-」「実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-」「サイケデリックウーファー-Coloration-」「愛病世界-象牙の塔-」の順にクリア後推奨です。


「愛病世界-象牙の塔-」のラストが引きに引いたので気になりクリア後速攻でプレイ。
象牙の塔」で世界と自分の真相に気付いた欺人。
彼は全ての真実を知り「ヘーメラー」と対立する道を選ぶ。


他の「狩人」勢力との対峙。
「ヘーメラー」への加勢と結束。
ヒュプノス」の危機と「人魚世界」の人物との邂逅。
そして明かされるのは欺人と同じ名を持つ豪傑の過去と始りの世界「1600年世界」の真相と結代との確執。
味方は敵に回り、敵は味方に回る。
これは、「愛病世界」最後の物語。


まるで「ゼーメンシュ」のようなワールドマップを周りながら。
「人魚世界」を思い出すかのように人々を巡り所定の位置を辿りながら。
世界の崩壊と欺人の思惑に触れて行きます。
世界の為、自分の大切な人の為、愛を守る為に彼が辿る結末は…



『システム、演出』
ツクール製、履歴は無し。
ツクールなので仕方ないですが履歴が欲しいと感じました。
今作からまさかの戦闘有り。
数カ所ですが、勝たないと進めないRPG戦闘です。
基本を押さえていれば勝てますが、一部海内操作の戦闘時に中回復をしないとどうにもならない状況でマウスでは本人を指定出来ませんでした。
戦闘時はキーボード推奨。
前作同様マウスでの操作が可能なのと、「ゼーメンシュ」のシステムに回帰した事に驚きました。
メインキャラの好感度システムにお土産システム。
ワールドマップ形式での移動に画廊でサブシナリオを見れる所など、懐かしさで溢れていました。
間違いなく「ゼーメンシュ」クリア後推奨です。
金銭面は安定のレポート報酬。
レポートを書けば書くほど報酬が上がるので15分くらい書き続ければ余裕で全員の好物を99個買えるくらいの手持ちになります。
マップの美しさは今まで通り、けれど、ワールドマップで「ゼーメンシュ」の懐かしさを損なわず、最終作で最初の作品のシステムを見せてくるという所がとても粋でした。
今まで「ワールドトラベル」は設定上の物で使用後に後の世界を巡るばかりだったので今作で「ワールドトラベル」が一つのシステムとして使えるようになっておりゲームとして「ワールドトラベル」を楽しめました。


『音楽』
クリア後にまだサントラ未発売なので曲名不明の状態なのですが、変わらず全曲素晴らしかったです。
特に過去の曲の旋律がアレンジして使われる為、シリーズを追ってきていると感慨深いものがあり。
暖かで懐かしい気持ちを感じる旋律の中に宇宙や海など、どこか大きなものがあるようにも感じ取れる曲が多かったです。
サントラが発売されたら絶対にご購入させて頂きます!


『絵』
毎回完全新規絵なのが凄い。
回を重ねる度にお上手で華やかになっている上、コロコロとポーズが変わり見ていて飽きません。
結代が敵では無くなった事により何度も彼との会話が見れますが、彼の椅子に座っている絵が可愛らしく好きでした。
そして絢爛達高校生組が!
後半の修行から帰還した後はもう、ズルいです。
絢爛はキャラとしてというよりも個人的な男性の好みとして好きなタイプだったのですが、後半の絵でやられました。
ED後にタイトル画面の絵柄が変わるのも初で。
あの絵は反則だと思います。


『物語』
欺人。
彼の生い立ちや境遇、彼の人生はあまりにも人から掛け離れ過ぎていて。
それでも彼は人を愛していて。
彼の選んだ道、選んだ結末はあまりにも重く切なく。
それでも世界が明るく進む姿に「正しかった」と言いたいです。


『好みのポイント』
今回大きく明らかになるのが豪傑と結代の過去なのですが。
いやぁ結代、良いですね。
全編通すと凄くヒロインだったと思います。
最後の最後まで見守り続けるし。
欺人と共に歩めるのは結代だけなのだと強く感じました。





以下ネタバレ含めての感想です





ラストに相応しく全ての勢力が一丸となって今までの中心人物の欺人に立ち向かうのがまさに最終作!という感じで大変滾ったのですが、個人的には豪傑の過去と結代の過去が響きました。
豪傑は実験の際に時間の流れない空間に置いてきてしまったセッカの事がずっとトラウマで。
完璧超人に見えていた欺人に対して同じ存在なのに自分はセッカを救えなかったと劣等感を持っていて。
けれど豪傑が欺人に劣等感を抱いていたのと同じように豪傑に劣等感を持ち逆恨みする人間も居て。
決して豪傑のせいでは無く誰かの逆恨みがセッカを巻き込んだ事実。
「人は誰しも羨ましいという気持ちを持っている。君もそう思われていた」
という才華の言葉があまりにも真実過ぎて。
自分の右目の時が進み失明する事を条件とした上で今度は正しく実験を成功させ、後楽とモコ、そしてセッカを救出した流れ。
そして、今まで欺人への劣等感溢れていた豪傑がよううやくセッカと再会する事で自信を得たのがとても良かったです。


結代はもうなんというか、ズルいです。
「ゼーメンシュ」から出ていた上で謎ばかりでしたので。
最終作で「今までの敵キャラが味方に回る」というだけでもズルいのに。
欺人との過去があまりにも劇的で。
本来は神を堕とした毒であった欺人。
神を堕とし神に成り変わったほどの地位に行ったのに。
他のどんな人間の死も気にせず見続けて来たのに。
結代の魔女裁判だけは見逃す事が出来なくて。
欺人があれだけの覚醒をし、殺戮を行ったのに結代だけは救ったのがもう。
生まれながらに異端な上、毒になり「1600年世界」の豪傑を食らい成り代わり更には神の地位まで行って。
そんな人では無かった欺人が「人間の感情」を知るトリガーになったのが結代で。
彼だけは救ったし、彼だけは常に敵対し続けたし、彼だけはどんなに海の底で眠ろうとも目を覚ました時に隣に居るのだろうと思うと。
…やっぱり結代ヒロインかな?と。
途中まで女性か男性か分からなかったのですが作中で男性と言われていて。
男性だし欺人と対を成すのでしょうが人魚のマイが表ヒロインなら結代は裏のヒロインだと思っています。
欺人を止める為に泣きながら仲裁に入ったり、後半はもう可愛いが増していて。
見た目も可憐だしこんなに可愛いが増しちゃって、結代、やっぱり自分の中ではヒロインです。


さて、最終作に入り全体的に見て、好きだった所と合わなかった所(気になった所)が綺麗に分かれたと思った作品でした。


まず好きだった所。
絵やドット見た目関係やオリジナルの音楽の溢れ出る美で作られた世界観は本当に素晴らしい。
世界を歩き回るだけで楽しく、水の表現は類を見ない程に使い方がお上手でした。
サントラはまだフリーの前3部作の方を買っていませんが、絶対にご購入予定。
そして、数々の人間の背負っている物と、背負い続けてトラウマ化した際にそれを克服する時の流れがドラマチックで。
自分に向き合う、立ち向かう、そういう演出が非常に印象的でした。
その中でもやはり才華蓋世が抜きん出て格好良く。
欺人も唸らせるほどの異端児でありながらも自信満々に自分の道を突き進む姿はまさにサイケデリック
最後までブレない姿が逞しかったです。
マイのヒロイン力も良く。
「ゼーメンシュ」で悲劇を迎えた彼女は常に肉体として同化もしている中、欺人の心の中にも居続け。
「愛」を上手く知らなかった欺人は「ゼーメンシュ」で確固たる「愛」を知ったのだと思うと、マイの存在は「愛」を知り神の座を降り、大事な人達を守る事を決めた「人間になった」英雄欺人という存在には必要不可欠だった人で。
間違いなく欺人の運命を良い意味(「愛」を知るきっかけになった存在)でも悪い意味(不死になり彼を悩ませる存在)でも変えた…まさにファムファタールだったと思います。
結代の、始まりを知っている唯一の存在としてのライバルキャラで対の存在でありながらも、最も心配している友人としての絶妙な立ち位置も。
最初から最後まで欺人と共にするという裏ヒロイン的ポジションはまさにオムファタール。
欺人と結代の逃れられない運命も非常に好きです。
最後の「海の底で眠る」という結末も。
「ゼーメンシュ」の海に、始りの場所に戻るというのはとても心に響くので見ていてグッと来ました。
始まりから異端で、神の変わりに成り代わる者を作る思惑に巻き込まれ、力を手に入れ神を殺す毒になり。
人を超越し神に成り代わり、人ではない道に居たのに一人の存在により「人の感情」に触れてしまい完璧な神から墜落し。
人の世に降り立ったけれどその身は毒であり神を傷付ける異物で。
記憶を失い「愛」を知り、大切な人達を得て、世界を守りたいと奔走したけれど、世界を傷付けていたのは自分の存在だったという真相を知り、記憶を思い出し。
最後には世界を守る為に自分が眠り続ける道を選ぶ。
こういう「実は守る為に沢山奔走してきた主人公が世界の害悪」「世界を守る為に死ぬorほぼ永遠の別離を選ぶ」というのはオタクに効く、私に効く。
欺人の決断は完全に「人間」の決断で。
全ての人々から神のように崇められていた彼が辛い決断でも「人間」の決断を下す事が出来て良かったと思うのと同時に、あの決断で初めて完全に「人間」になれたのかな?とそんな風に思いました。


ここまでが好きだった所。
で、ここからが合わなかった所(気になった所)なのですが、まず、名前で眠るというのが結構アバウトに感じてしまいました。
魔術とか妖術とかでも「名」が大事だと言いますし凄く重要なのは分かりますが、「同じ音が入った名前」の基準が日本語形式だったのが結構気になったり。
作中でも漢字に必ず書き換えられるキャラが多く、英語名っぽかったのはウィステリアやハイネくらいで。
これ、西洋の発音とか中国系、アラビア系の複雑な発音ってどうなるのだろう?と常に思っていました。
日本語や日本人名の漢字(というか四文字熟語)を中心に描かれるので、最後に明かされるかと思っていましたが「何で日本語が中心だったのか?」という部分には言及が無く、そこも解明して欲しかったです。
途中であった「バベルの塔」の話になるのでしょうか?
「元々言語は一つだった」という部分。
その元々が「日本語」という設定なのでしょうか?
この辺りは考察や解説しているサイト様を探して行きたいと思います。
あと、キャラクターが後から登場し増えていく形式なので、非常に大所帯になり、小さなコミュニティでの話が好きなのでキャラがどんどん増える事に関してはあまり好みに合わなかったのと名前を覚えるのが苦手なので非常に大変でした。
キャラが増える事が多い作品なのもあり、後から出たキャラがあまり語られないままで終わったりとか(セッカとか「狩人」のキャラとか未踏とか空前とか海内自身とか)。
最初から居たキャラでもあまり描かれなかったりなどで、深堀りされるキャラとあまりされないキャラの差があったとは思います。
これに関してはサブイベントを全部開放出来て居ないのでサブイベントの発生が足りないだけかも。
サブイベントの発生条件が分からないのでこちらも攻略が書かれている場所を探そうと思います。
色々な真相が明らかになる場面でも「あれはこの事だったのか!!?」というような驚きが個人的には感じられず。
自分が鈍感で伏線に気付かなかっただけかもしれませんが、結構後から真相を出される事が多く見えたので真相が開示される度に驚くという事はあまり無かったです。
魔女とか出てきますし、もう少しオカルティックな部分での知識があればまた印象が変わったかも。
「ヘーメラー」内部が「ヘーメラー」に対してだけ特別意識で動くのが仲間意識があると思うのと同時に、ちょっと贔屓感もあったり。
これは作中で捕まっていた「ヒュプノス」が「どうせ自分達は名前の継承の為に殺される存在だった」という主張があったから良かったのですが、「ヘーメラー」外には利己的に殺す事も厭わず動くのに、仲間内に対しては甘過ぎて、その点がちょっと…
結局、天衣は「ヒュプノス」達の思いを本当に理解は出来なかったみたいな所がありますし。
自分達の仲間内でも世界の真相が眠る事なら継承している人は殺そう!という案が作中で一回でも出ればまぁ納得したのですが、自分達の仲間は…欺人に関しては必死に保身に回ったのでちょっと身内に甘過ぎない?と感じた部分が多々あり(まぁ欺人は殺せないので仕方ないですが…)。
「ヘーメラー」に巻き込まれた一般人はたまったもんじゃないと思うので、仲間とそれ以外の扱いの差がなぁとは思いました。


個人的な総評として。
絵や音楽から感じる世界観、雰囲気、キャラ、キャラが覚悟を決める盛り上がり、主人公とヒロインの関係や各カプ、欺人の最後の決断はとても好き。
設定やキャラクター毎の掘り下げ、「ヘーメラー」が絶対正義過ぎて仲間内とそれ以外の扱いに差を感じた部分は気になった。
こんな感じになりました。
毎話毎話で非常に美しいドット絵や盛り上がり箇所があるので、そこは非常に好きで、何度もキャラが奮い立つシーンは格好良くて涙ぐんだので魅せ方は非常に秀逸な作品でした。
この世界にのめり込む方がいらっしゃるのも分かる作品で、非常にパワーがある作品でした。
オススメ有難うございます。
英雄欺人という存在の英雄譚、神話を目撃できて良かったです。


…最後に未回収のサブイベント埋めたいです。
公式や有志の方が攻略をネット上に上げられる事を願っています。