ひっそりと群生

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【嘘つきナレットの優しい暗殺者】感想

【男性向け18禁】



2011年07月24日発売
雨傘日傘事務所』様 ※リンク先公式HP(18禁)
嘘つきナレットの優しい暗殺者】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








二人の過酷な人生は悲劇的で、けれど、二人だったからこそ喜劇的な人生だった。
そんな、彼と彼女の人生の一幕。



『暗殺者よ 私はお前に呪いをかけた
 呪いはお前の耳から全ての真実を奪うだろう
 心しろ 今日より後
 お前は虚偽をのみ耳にして生きるのだ
 けれどもし お前がもしか
 虚偽に満ちたお前の世界でなお
 たとい一片にも真実を見つけることができたなら
 そのときは
 もとより真実を必要としないお前に
 私を殺してくれたお前に
 この呪いは私からの贈り物

 街全体を二重の隔壁が囲うハイランド南端の城塞街アイロンウッド。
 そこに貴族付きの絵師として暮らす暗殺者スティラ・クーに最近、知り合いが増えました。
 2ヵ月後、城塞で開かれる夜会に隣国ニフルヘイムから招待された眼鏡の騎士と、
 そのパートナーとして彼に同行した古都衣装の麗人。
 彼らに振り回される日々がスティラの酒量を順調に増やします。
 そして今日は土曜日。
 貴族サングリアの元へ嫁いだ幼馴染のナレットが
 今週もスティラの世話を焼きに帰ってきます。

 アイロンウッドの街に織り成す暗殺者と騎士、魔女と麗人の4名4色、
 それぞれの立場と彼らが一緒だった日々を丁寧に綴りました。
 城塞街のお屋敷にゆっくりと過ぎる彼らの時間を、楽しく眺めていただければと思います。』
(公式より引用)



雨傘日傘事務所作品のノベルゲーム14作目である「嘘つきナレットの優しい暗殺者」をプレイ。
プレイ時間は約5時間15分くらい。
分岐は無し。
霊刀キザクラ』(※リンク先感想)はプレイ推奨。


複雑な出生と、その出生故に街に縛られて生きているスティラとナレットの二人。
二人は生き延びる為、いつか街の外に二人で出る為、貴族達や出生に関わった組織の思惑に巻き込まれながらも上からの命令を聞き入れて暮らしていました。
何よりもお互いが大事な二人は、互いを守る為にどんなに汚く見える行為でも受け入れて行きます。
いつか、二人で、外の世界を見る為に。
そんな中、「霊刀キザクラ」の主人公、ラベンダードラゴンとキザクラと出会い…


今回は「霊刀キザクラ」の二人をサブに置き、他作で何度も名前が出てきた「白教会」を背景に物語が進んで行きます。
貴族、「白教会」、王族、魔女。
様々な事柄がスティラとナレットの前に立ちはだかります。
でも、きっと、二人なら大丈夫。
そう確信出来る程に強く結ばれた二人。
姉弟のような、恋人のような、家族のような、でも決して言葉では測れない関係。
そんな二人が強く逞しく、巨大な組織を翻し、生き抜く。
決して引き裂けない関係を持つ二人が広い世界へ駆け出すお話でした。



『システム、演出』
吉里吉里製。
読む際に必要なシステムは全部揃っています。
実は本作の後半の戦闘シーンは某動画サイトに上がっている「【嘘つきナレット】スティラVSラベンダードラゴン【雨傘日傘事務所】」という動画で見た事があり。
雨傘日傘さんのお名前は存じて居ましたが、演出は知らずにサークル名を調べて辿り着いた動画を見て度肝を抜かれたのが本作でした。
最初に見た時の衝撃は忘れません。
ノベルゲームの、静止画での戦闘の完成形と言っても過言ではありませんでした。
あの動画を見て、絶対に本作をプレイしなくては!
でも、サークル様の話題を見ていると過去作から追わないと自分の理解力では理解出来無さそう。
最初から追いたい!
そう思いサークル様追いを始めてようやく本作まで辿り着きました。
動画でも圧巻の戦闘でしたが、自分のテンポでクリックし、文字を読みあの演出を体感出来、その素晴らしさに感無量です。
雨傘日傘さんの戦闘描写の歴史も一緒に追う事が出来、サークル様追いをして本当に良かったと心から思いました。
間違いなく静止画を動かす戦闘シーンの完成形です。
回を重ねる毎に進化していく戦闘描写、今回も楽しませて頂きました。


『音楽』
「Lopera de lassassin ~暗殺者のための歌劇~ inst」のカッコ良さよ。
暗転からの音楽が始まり、城の影が現れ、周りの空間や人間が描写されてからの戦闘の流れにマッチし過ぎていて、動画で見た事があっても実際のプレイで震えました。
「永遠の肖像」のスティラとナレットの勝ち確感も最高。
ただ、「散華綺想伝」が流れるOPムービーですが、これが本編プレイ中に流れなかった事は残念でした。
タイトル画面のムービーの項目からでないと見れないんですね。
OPが本編のどこで流れるかワクワクしてたのでガッカリはしました。
声は、音質はやっぱり同人的でもうちょっとという感じ。
ただ、後半の戦闘の声での戦闘シーン、あれは凄い、あの演出は商業でもあまり見かけせん、痺れました。
「ヴィザルの日記」でコルク役をされた一さんですが、今作ではスティラ役で。
いやぁ、上手いです、とにかく一さんの少年声たまらんです。
だからこそ今作は和姦が多かったのでエロ中のスティラのボイスも少し欲しいなーと思ったり。
エロシーンで男性キャラの声が入るの大好き教なので。
まぁ真相を知るとスティラの声が入らないのも伏線なのは分かりますが、分かりますが、やっぱりエロシーンで聞きたかったです!
キザクラさんとラベンダードラゴンはもう、声が変わって無くて安心しました。
「霊刀キザクラ」とても好きなので二人が掛け合いしてると幸せな気持ちになります。
さり気に中盤くらいからsinsayさんもいらっしゃり、凄く雨傘日傘メンバーでした。


『絵』
戦闘は上記で語ったように最早完成形。
今後これ以上の戦闘を見れるのか危ういです。
サークル様の別作では期待出来るかもですが、サークル様以外だと厳しいかも。
それくらい凄まじかったです。
立ち絵も絵の組み合わせで奥行きまで見せるのは相変わらず。
そして今回は更に立ち絵自体の枚数もいつもよりも多かったと思います。
通常会話シーンでつまらなさを感じさせない絵の使い方。
吉里吉里を限界まで使っているのを感じました。


『物語』
「ヴィザルの日記」からですがエロシーンがTIPS仕様に。
合間合間で入るエロも好きでしたが、こうやって本編とエロで分けるのは雨傘日傘さんの作風としては非常に有りだと思います。
物語にも集中出来るし、エロにも集中出来るしで、とても良い分け方だと。
そして「霊刀キザクラ」から選択肢無しの一本道になりましたが、これも自分は好きです。
分岐もゲーム的で良かったのですが、雨傘日傘さんは一本道で物語に没入出来る方が良いと思う作風なので、分岐無しはとても集中出来ました。


『好みのポイント』
スティラが強い、精神も、技術も、そして何より信念が。
「一人の人間の為に全てをかける」そんなキャラが好きなので彼の生き様は非常に刺さりました。
ナレットと生きて生き抜いて、そしてその先で最後はどんな形になっても本人の幸せを掴んで欲しいです。





以下ネタバレ含めての感想です





まず、言わせていただくと、「霊刀キザクラ」組!好きだー!!!
実は雨傘日傘さん作品の中で自分の心の琴線に一番引っかかったのが「霊刀キザクラ」で。
某動画で見た事もあり、二人が出る事は知っていましたが、「霊刀キザクラ」プレイ後に二人を見るともう、ニヤケます。
ラベンダードラゴンはキザクラさんのお父さんと呼ばれ、キザクラさんはラベンダードラゴンのお母さんと呼ばれ。
決して男女の関係ではなく、良きパートナーで。
でも、キザクラさんはラベンダードラゴンをどこか意識してて。
あー、男やもめと1000年の妖刀コンビ、好きだよー!
「恋人になりそうでならない二人」が大好きな身には二人の関係が染み渡ります。
ずっとチグハグ夫婦漫才してて欲しい。
二人が大好きなので、二人の登場から二人が画面に映る際には始終楽しかったです。
ラベンダードラゴンは相変わらず戦闘で格好良いし、キザクラさんはパートナーとして剣でしっかりサポートするし。
自分の理想の男女コンビ過ぎます、最高でした。


スティラとナレットの関係も好きです。
ただ、二人の関係は好きではあるのですが、ちょっと頑張る比重がスティラの方に偏り過ぎというか…
白教会の学院出身で暗殺者になる為に育てられたスティラとナレット。
二人は身体に毒虫を植え付けられ白教会から追い出されたとはいえ、管理下にはあります。
白教会と貴族の監視下に置かれ、解毒されないと生きていけない二人。
そんな中でスティラはナレットの毒虫を完全に解除する為に、信頼出来る貴族、レグリアにナレットを託す。
レグリアはナレットの毒虫を解除する事を条件に今まで想っていたナレットを貴族の正妻として娶る事に。
既に結ばれていたナレットをレグリアに渡すのはある意味のNTRになり。
スティラはそれでもナレットを救う為にレグリアにナレットを渡します。
白教会もスティラを動かす為にナレットは人質として扱っていて。
ナレットを救う為に数々の裏稼業をこなすスティラ。
確かに作中を見るとナレットはスティラの裏稼業を知らない側なので、何も出来ないのは当然なのですが、ちょっとスティラだけがナレットの為に動きまくってるというか。
ナレットも「スティラを助けたかった」と言っていますが、じゃあ具体的にナレットはスティラの為に何か行動を起こしたか?と思うとちょっと微妙だなーと。
レグリアの嫁になる事を受け入れた?でもこれは最終的にナレットの為ですし。
全体を見ると完全に「ナレットを守る為にスティラが奮闘する話」になってるんですよね。
いや、良いんです、ヒロインを守る主人公が居るお話、大好きです、古典少女漫画とか好きなので。
でもどうしてもヒロインもどこかで相手の主人公の為に同じ様に頑張る姿を見たいと言うか。
スティラの頑張りが7か8なら、ナレットの頑張りがどうしても3か2に見えてしまい。
ちょっとヒロインの活躍が少なく感じたのが今回残念ポイントだったなーと。
リィ・ルゥとかさ、アーベルとかさ、ヴィザルとかのヒロインの活躍が好きだったので、そこが無かったのがどうしても…
まぁ個人的な好みです、戦うヒロイン大好き教なので、ナレットが前線に出なかった(出られるようなキャラでは無かった)のがヒロインの燃焼感が足りなく感じました。
ただ、スティラとラベンダードラゴンが戦い、ナレットとキザクラさんが声で加勢するあのシーンは熱さが最高潮。
上記でも書きましたがボイスのみであの迫力を出すのは超絶技巧過ぎます。
商業でも見た事無いです、今後あの声を演出に盛り込んだ戦闘を他で拝める気がしません、唯一無二かと。


エロは今回はスティラとナレットの和姦ラブラブエッチが殆どで色んな意味で驚きました。
ひたすらに二人の逢瀬。
ナレットが他の人の元に嫁いだ設定があるので、レグリアとのエロの方が多いかと思いましたが、レグリアとのエロは一切エロシーンでは描写されず。
おそらく関係は持ってたとは思いますが、エロでは無いので他の人の元へ嫁いだNTR感は薄かったです。
後半で一回かな?レグリアの死後、引き継いだテオドールが他の貴族からの依頼でナレットを渡してナレットが抱かれるシーンが一回入ります。
一応NTRになるとは思いますが、スティラもナレットを生かす為に了承してるのとナレットも自分の立場を分かって了承してる+その後にスティラが来るので個人的にNTR感は薄めでした。
いつもの雨傘日傘さんの作風を見るとむしろプレイは軽い方なので(とは言っても他と比べるとハード)そんなに苦しさは無かったです。
最後には二人で大脱出!ですし。
(…とは言いつつも、ちゃんと乳首ピアスは実装されており、乳首ピアス大好きな自分はガッツポーズしました。)


ただ、大脱出!はするのですが、エピローグやスティラの毒虫の事などを見ると、二人が脱出後に一緒に暮らせるのは半年くらいが限度っぽいんですよね
あの瞬間はハッピーエンドだけど、その後を踏まえると不穏な気配。
ナレットが「嘘」の魔女の呪いを引き継いでいて、けれど、冒頭の文はナレットを殺すスティラに語りかけられているようにも感じ。
スティラは結局半年しか持たず、それならナレットはスティラが死ぬ前に自分を殺させる…という解釈で良いのでしょうか?
「二人が幸せならどんなEDでも幸せ」派でメリバ大好き、心中ED大変好きなのでそうだったら非常に大好きなEDですが、結構雨傘日傘さんの中でハードな最後を迎える二人だとは思います。
ヴィザルとコルクも結構ハードですが、この解釈で良いなら今回もまたハードだ…


今までちょくちょく出てきていた「白教会」の内情が少しだけ明かされ、やっぱりどう見ても良い所では無く。
魔女とナレットと王家の関係など、おそらく事情が入り組んでいて。
今作はいつも以上に難しい箇所が多かった気はします。
「白教会」部分とか、ラベンダードラゴンとか、過去作から始めて本当に良かったです。
やってなかったら理解が追い付いていなかったので。
スティラがダークエルフと戦った事があるのも重要になりそうな予感。
プレイして行けば行くほど世界が広がるのが凄いです。


次回は「ヴァージン・ロード」を予定。
次回は「西ニフルヘイム工房」として制作されており、若干趣が変わりそうですが、超絶技巧演出をまた拝めると嬉しいです。