ひっそりと群生

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【Re:Bus】感想

【女性主人公15禁】



2021年08月31日配信
『竹関工房』様
Re:Bus】(PC&ブラウザ)(15禁) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








秋の夜長に、ぐるぐる巡って。



『帰りの電車で眠りに落ちてしまったOLのヨルちゃん。
 目が覚めると彼女は、知らない町にたどり着いていた。
 終電は既に終わってしまった様子。
 唯一動いていたバスに乗った彼女は、 行く先で様々な人と出会う。
 大切なものを見つける、長い夜のものがたり。』
(公式より引用)



プレイ時間は約2時間30分くらい。
分岐有り、繰り返しプレイ必須。
攻略は製作者さまのツイッターにて『ヒントレベル:低』『ヒントレベル:中』『ヒントレベル:高』(※リンク先公式)のパターン有り。


見知らぬ町。
真夜中に動く不思議なバスに乗って。
個性的な人達が待ち構える環状線のバス停を。
始発時間の朝まで巡り廻る。
羅列しただけで設定の「強さ」をヒシヒシと感じる上、設定に負けないほどUIデザインが作り込まれ、音楽も良く。
「極上の雰囲気ゲー」を地で行きながら、一周のプレイ時間も短く飽きさせない、そんな極上の作品。


本作の目的は「様々なバス停に降りる」「様々な人と出会い会話する」「様々なアイテムを手に入れ使う」という3つから成り立っているのですが、高難易度という事も無く詰まっても公式にヒントがあり、更には一周が短いのでミスってもリカバリーが効きやすいという神仕様。
面倒な要素で雰囲気が決して崩れる事は無く、始終「真夜中の不思議な町の冒険と奇人変人達との出会い」を楽しむ事が出来ました。
あらすじの「大切なものを見つける」という言葉通り、周回を重ねる事で見えてくるものが沢山あって…
不思議な町のバス停、アイテム、人々、会話、全てに出会った時、「見つかるもの」は何か。
ヨルが辿り着く先には何があるのか。
物語としての要素もとても楽しく、隙が無い作品でした。



『システム、演出』
ティラノ製。
基本性能有り。
会話画面と画面の表示方法、環状線路線図などなど、一般的に見かけるノベルゲームではまず見かけない見た目がとにかく独特でセンスを感じました。
アイテムの使用箇所も使う場所に来たら自動で使われるので面倒事が無いのと、読み込めば誰に何を使うかが自ずと分かるので高難易度過ぎないのも吉。
周回を繰り返せば確実にゴールに辿り着ける難易度が丁度良かったです。
ただ、メッセージ速度が何度速度3にしても2に戻る事と、周回の中で最初の文章と必ず最初に向かう[大学病院]のバス停までのイベントを最初からスキップ出来なかった所は少し繰り返しプレイで面倒さがありました。
バスに乗り込むエフェクトも周回では飛ばせないのは少し辛く、スキップも既読未読判定が無いのも若干不便。
もっとザックザク自由行動までの序盤や既読を飛ばせたらプレイ効率が上がったと思います。
あと、とても全体的に作りが良かったので、クリア後にEDロールの余韻が欲しかったです。


『音楽』
静かで、でもどこかちょっとした怖さと隠れた何かがありそうで。
真夜中にピッタリな曲が多かったです。
誰も居なさそう夜の町でガサっと音がしてビックリしたり。
選択時にちょっとレトリックな効果音が使われていたり。
SEなども世界観に合った音で効果的に使われていました。


『絵』
白黒でドットのファミコン時代のレトロゲーを思い出させるグラフィックが最高。
背景もまたカクカクドットドットしていて。
作風の味を引き出すとても良い絵柄でした。
登場人物達の描き分けも絶妙で、見た目も全員見事に個性的。
特にドクターととある場所の選択肢で出会えるとあるキャラの絵のインパクトが凄く。
表情も豊かで見ていて始終楽しかったです。


『物語』
下りたバス停の先々でヨルが出会った人物と語り合ったり、何事かに巻き込まれたり、静かな場所で自分を見つめて思いに耽ったり。
出会う人物によってはハイテンションな会話が楽しかったり、もしくはゆったりと一緒に夜を楽しんだり。
ちょっとだけ相手の事に触れたり、でも全部には触れられなかったり。
偶然の出会いらしい付かず離れずの距離感が心地良く、相手を知れたような知れなかったような…そんな絶妙な関係で終わりました。
会話の中や一人で考えている時にヨルが自分の事を振り返りますが、どことなく記憶に曖昧な部分があったり。
ちょっと暗くなりそうな題材がありますが、ヨルも町の人々も皆善人で変に落ち込み過ぎる事も無く。
長いようで短い真夜中の中で相手を知り、自分を知っていく流れがとても自然で良かったです。


『好みのポイント』
上記でも語りましたが、見知らぬ町、バス、出会う個性的な人々…こんなの最高に決まってるじゃないですか!!
ふとした時にバスに乗って軽く旅をするのが好きだったり、誰も居ない夜の町が好きだったり。
そういうのが大好きな人には絶対に刺さります、間違い無いです。
物語も奇人変人達との会話と各人の奇行が楽しく、ヨルの「大切なもの」の謎も解明され爽やかに終わり。
意味なくグルグルとバス停を回るだけでも楽しかったので、最高の空気と雰囲気を浴びながらプレイ出来ました。





以下ネタバレ含めての感想です





ネタバレ項目に書くのもアレですが、最初に攻略を見てもちょっと難しいと思った所があったので「ここを注意すればプレイしやすい」というのを箇条書きに。


・クリア条件的に「バス停三回停車」や「アイテム回収」のバッジを集めるのを優先すると楽。
・アイテムは一周で全部揃うが一周で全部使い切る事は出来ない。
・バス停のキャラは約一名除き固定であり、時間帯によって変わる事は無く、行った回数で会話が変化する。
・時間制限(4時過ぎくらいまで)があるが、一つのアイテム攻略以外はさほど時間を気にしなくても攻略可。
・アイテムは一人につき一個のみ使用、余った二個は「場所」で使用。
・アイテムは基本会話を読めば使う相手を把握出来るが、「花」と「怪しい粉」のみ使用キャラの難易度が高いので、他アイテムを使ってから虱潰しが良い(自分は駅のヒントを読んでも分かりませんでした…すいません…)。
・「ヒントレベル:高」にある「全てのバス停について」というのは「周回プレイして全てのバス停を周る」という意味、一周で全部周る事は不可能。
・公式の画像でネタバレになっていますが隠しキャラが居て、そのキャラに会う事もクリア条件。


この辺りを知っているとクリアしやすいです。
「ヒントレベル:高」の「全てのバス停について」の部分で「一周では不可能じゃね!!?」となったので…


さて、ネタバレの感想を言っていきますと、「Re:Bus」というタイトル、プレイ中は「何度もバスに乗る」という意味や「繰り返しプレイ」の「Re:Bus」だと思っていたのですが…ですが…
バッジ(実績)を回収出来るだけ回収し、全キャラに会った後に開放される「逆回り」モードになって「なるほど!!?」と膝を打ちました。
そういえば飲兵衛のレナが「逆回りのバスは過去に向かっている」という都市伝説を語ってましたね。
確かにあの話を聞いて「逆回りがある?」と予想はしていましたが、本当にあるとは…
しかも上手いなぁと思ったのは、各バス停の全パターンを見て[天神池]でのミコの登場パターンは掴めていて、ドクターの「煙草」がミコにかかってるとは思っていたのですが「どうやっても時間が足りないよなぁ…」と思っていたので、まさかの「逆回り」で初めて時間が足りると気付いた時には、「やられた!!」でした。
この世界自体も特殊な世界ではあると思うのですが、ミコに関しては時間が戻らない限りアイテムを渡しようが無いんですね。
それまでカミに出会って居なかった為、「逆回り」モードを出せておらず。
ずっと「煙草…誰だ…頭良い子ってあったしセイか?」とセイにも特攻してました。
公式の紹介画像でカミの存在がモロバレしてるのに隠しキャラに気付かない自分も自分なのですが、[朧神社]の二回目の選択肢は二度目に出すと増えるというのも気付かないですよ!!
カミを出現させるまでに結構かかり最後には攻略を見ましたが、カミが出た事で「逆回り」が発動する…みたいな流れになったので作りの上手さを逆に噛み締める形になりました。


「逆回り」をする事で、「煙草」をミコに渡す事で開放される最後の物語「Reverse」も今までのヨルの言動で???と感じた部分をしっかりと補完していて。
所々自信が無いというか、曖昧というか、過去に靄が掛かっているような語りをしていたので何かあるとは思っては居ましたが。
なるほど、ミコを失った事で「辛い事を忘れてしまう」ようになっていたヨルの心が日常生活でとうとう持たなくなった時、ミコの意思でこのバス世界に引き込まれ、ミコを探すと同時に思い出し「忘れる」という壊れた心を修正する物語だったと。
序盤の文章の「普通に働くヨルちゃん」みたいな文章も、その「普通のOLの労働」がきっと彼女の心に負担をかけていたのだなぁと思うと幼少期とはいえ、ヨルの中でミコの存在がとてつもなく大きかったのだと感じ。
更には幼少期の「ヨルが大変な事になったら私が助ける」という言葉通りミコがしっかりヨルが壊れかけた時に助けてくれる図がもう…友情モノとして熱いです。
ミコは「忘れて欲しくない」とは言っていましたが、ヨルが心の平穏の為に忘れた事は別に怒ってなさそうで。
むしろ忘れる事でヨルの心の平穏が保たれるなら全然良かったのに、忘れるという行為そのものがどんどんヨルの負担になっていた事に嘆いているというのが…
途中の「辛い事だけど思い出す?」の選択肢もヨル自信の最後の問いかけでもあると同時に、ミコからの「私の事を思い出すのは辛い事でもあるけれど大丈夫?」という最終確認にも見えて。
本当は問答無用で思い出して欲しいだろうに、それでもちゃんとヨルに確認を取るミコが本当に良い子で優しくて、だからこそ忘れてしまった「大切なもの(ミコ)」がどれほど大事だったかを痛感しました。


思い出した事で今までのヨルの違和感や矛盾もしっかりと解明され、しっかりと現実に戻ったヨル。
ヨルとミコの話は解決するのに対し、出会った人達はホワッとなんとなく察せられる程度で終わったのが気になる部分でもあり、でも好きな部分でもあり。
あの町は本当にあるのか、異世界だったのか、それは分かりませんが、様々な人達の後悔や色々な感情が残留している町なのだろうなぁと。
過去に少し関わっていたドクターだけ他の人物達と違いほんの少し強めに関わるのもまた因果っぽくて好きです。
出会いが濃い人達だったので気にならないと言えば嘘になりますが、あくまでもミコ以外は「たまたま出会ってすれ違った人達」というのを貫いていたのが「停留所」をモチーフにした作品にとても合っていたとも思います。
停留所で出会う人というのは、きっと、そういう人。
ふとした時の偶然の出会いや真夜中の空気、バスでの環状線の停留所巡り、そして昔に置き忘れて来た友情の為に「逆回り」を始める記憶と時間。
それら全てが「Re:Bus」という言葉に絡まり、最高のバス停巡りが出来ました。
ふらっと夜の町を歩いたり、知らないバスに乗り込んだりしたくなる、そんな作品でした。





…余談ですが、ドクター、某念能力使う漫画の某キャラクターに似てて、そのキャラ推しの人と語り合いました(笑)
あの容姿で医者はめっちゃ思い出します、話的にも良いポジションですし、ズルかったです。