ひっそりと群生

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【Route17】感想

【男性主人公全年齢】



2022年06月18日配信
『鈴餅』様
Route17】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








君と歩く、君と話す、君を見つける、25号線。



『「この関係を終わらせてくれ」

 10年以上前に凄惨な交通事故があった25号線。
 その道で起こった、とある少年少女の長年に亘る物語。』
(公式より引用)



プレイ時間は約45分くらい。
分岐無し。


××10年1月17日。
少年、栄斗は25号線で灯菜という少女に出会う。
栄斗は灯菜と意気投合し、25号線の道を数ヵ月の間一緒に話しながら歩く。
それから毎年1月17日に栄斗は灯菜と25号線の道を歩く事に。
起こった事故、灯菜の真実。
それは一つの事柄へと結び付いて行く。



『システム、演出』
ティラノ製。
既読未読スキップ判定無し、メッセージ速度変更無し、セーブロード無し。
セーブロードが無い事で少し不便さがありましたが、作中時間のスピードが早いのとプレイ時間的に問題は無いかと思われます。
ただ、トップ画面から行ける「?」の要素は少し頭を使うので、気になった箇所でセーブが出来ると有り難いなとも感じました。


『音楽』
25号線の静かで二人しか居ないような物悲しさが音楽からとても感じました。
聴く頻度が高かったBGMの「亜麻色の髪の乙女」が25号線のカサついたような空気を盛り上げ。
そして、コミカルな会話の時にはアップテンポな曲調に切り替わり、二人の世界を盛り上げていたと思います。


『絵』
灯菜に立ち絵有り。
所々の重要な箇所で一枚絵が入ります。
栄斗がロングヘアだったので一瞬少女と見間違いましたが、少年でした。
灯菜の笑顔が眩く、赤い手袋が印象的で。
後半のとある立ち絵が恐ろしく、物語開始時の注意書きの意味を理解しました。
ラストの方、夕日の中佇む栄斗の絵が印象的で、「長い時間が終わった…」と一枚絵から感じる「物語の終わり」に感慨深くなりました。
背景も寂れたような長い長い道が印象的で、1月の草木が枯れた寂しい道の背景から冬の空気を感じました。


『物語』
灯菜と歩く25号線がとても静かで穏やかで、作中時間はスピーディーではありますが、二人が会話をしているシーンでは時間の流れが緩やかに感じるのと、話の流れが上手く、「長い時間が二人の間に流れている」というのを作中の空気から強く感じました。
所々で灯菜が居ない場所での栄斗と周りの人物の会話がとても不穏なので、その辺りから恐ろしげな空気を感じたり。
序盤の事故の件もあり、どこかで一気に物語の空気感が変わるのでは…?という不信感をプレイ中密かに懐き続ける事もあり、注意書き通り穏やかな二人の世界と一緒に弱ホラーの空気も感じながらプレイ出来ました。


『好みのポイント』
作品内にはとある仕掛けがあり、「?」の要素は灯菜とのとある話題でとある事を知ると即行けるようになるので、気付いた方によっては速攻で「?」要素の第一段階に進む事が出来るギミックがとても面白かったです。
ただ、第一段階には進めても第二段階は本編のラストまで行く必要があり…
必ず灯菜の話を最後まで聞く事であの「?」のロックが解除され、真相を知れる作りは灯菜の心の鍵のような物を感じ、上手いギミックだと思いました。





以下ネタバレ含めての感想です





灯菜の未練も救われ、栄斗のわだかまりも解消され、良かった、本当に良かった。
正直、灯菜の正体に関してはあらすじと序盤のノイズが走った事故の報告から察してはいましたが…
二人の関係性に関しては「Route8」に入るまで全く気付きませんでした。
そういえば栄斗が「父は母の年齢の二倍くらいある」と言ってましたもんね、ちゃんと伏線が張ってありましたし、所々で挿入される灯菜以外との会話、ずっと「灯菜との会話が夢で他が現実」くらいに思ってましたが、どちらも現実で両親との会話が灯菜の事を語らずも匂わせているような会話をしていてなるほどでした。


正直、ずっと遺体が見つかる事の無かった灯菜は色々と悪い方向の感情が渦巻いて悪霊になっていた所があると思います。
実際、「Route17」のEDでは恐ろしい姿で出現し、主人公が最初に見た灯菜は血まみれだったらしいので、かなり悪い地縛霊になりつつあったのかなと。
合言葉も「aho8baka17」で、8才で出会う主人公に対して「アホ」、17才の自分に対して「馬鹿」と言ってるような気がしますし、無意識に誰も自分の遺体を見つけてくれない事や、自分の事を忘れたかのように新しい子供を作っている両親、そして生まれた主人公にやり場のない恨みを持っていたのかなと。
ですが、栄斗との10年間の交流で心を解き解し、栄斗を知り、その恨みが薄れて行ったのではないかな?と思っています。
実際、最初に栄斗と出会ったのは血みどろの姿の為、栄斗を連れて行く気があったのかもしれません。
でも、栄斗が本当に良い子で優しい男の子だったから、灯菜は躊躇った、そんな気がしています。
そして良い子だったからこそ、もしかしたら自分の遺体を見つけてくれるのでは?と希望を抱いたのかなと。


10年という長い交流の中でそれぞれを知り、栄斗は灯菜の真実を知り。
最後には遺体を見つけ出し、彼女の無念を果たす。
互いに互いを知って行き、姉弟の無念を晴らす、良い姉弟モノでした。
正直、「Route17」での灯菜の姿が恐ろしかったり、本編でも所々でどこか不穏な空気が流れたり。
「Route8」でもギリギリまでその空気が残り続けるので、「どこかでホラーでヤバいどんでん返しが来るのでは…?」と構えていましたがそんな事は無く。
スッキリと気持ち良く終わる、死者の無念をしっかりと果たし灯菜を成仏させる事が出来たので、心の底から安心しました。
そういうプレイヤーが感じる不穏な空気の描き方がとても上手かったです。


少し気になった点は栄斗が灯菜の遺体をアッサリと見つけたので、「こんなに遺体が見つからない事ってあるのかな?」とは思いましたが…
見つからない時は本当に見つからないらしいのと、あれは栄斗だからこそ見つけられたんだろうなーとは思っています。
あと、序盤の無線(?)ニュース(?)では1997年の事故とありますが、父親の話では1998年となっているので、どちらが本当の年代かは気になりました。


ですが、作品の後味はとても爽やかで。
ラスト、栄斗が灯菜を見つけ、夕日の中、安心する顔がとても良く。
ラストの日琥もどことなく転生を感じ、灯菜の魂の可能性を感じさせるラストで。
ギミックに引っかかりましたが、仕掛けを探したり遊び心のある作品でした。


ちなみに、ギミックに関しては自分は最初に合言葉の「aho8baka17」を入力した上で気付かず。
BGMの「亜麻色の髪の乙女」かな?と打ち込み撃沈しました。
いや、よくよく考えれば「亜麻色の髪の乙女」は難しいので「簡単なのを弾ける」とは言いませんよね…
もっと灯菜が小声だった事とシステム的なギミックに気付くべきでした…
色々と頭を悩ませましたが楽しかったです。