ひっそりと群生

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【はるまで、くるる。】感想

【男性向け18禁】



2012年04月27日発売
すみっこソフト(解散)』※リンク先公式HP(18禁)
はるまで、くるる。】(PC)(18禁) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








最近ゲームのモチベが下がっているので名作と呼ばれている作品を挟みます。
というわけで、この感想がいつ投稿されるかは分かりませんが、2012年の名作と言われている「はるまで、くるる。」をプレイ。


プレイ時間は約10時間くらい。
7でも起動可能、ディスクレス起動可。


本作は「悪夢と終末のハーレム」のキャッチコピー通り、「終末」で「ハーレム」モノになるのですが、「SFモノ」である事を知らなければキャッキャウフフでエロエロな女の子達とのハーレムから突然重厚なSF設定渦巻く世界観がお出しされる驚きの名作になると思います。
ですが、「SFモノ」である事を知っているとある程度予想通りの展開がお出しされある程度思い描いたラストがそのまま来る凡作になる、そんな印象を受ける作品でした。
流石に10年前の作品になる為、「本作がSFモノである」というネタバレは既に引っかかっており…そうなると自分が感じた感覚は後者になってしまったのがかなりの痛手だったと思います。
「SFモノ」となるともうループがある以上、「電脳世界系」か「超科学世界系」かのどちらかになり。
そうなるとどちらでもある程度の展開の予想が付いてしまって。
「はるくる」は「超科学世界系」で、科学的理論の数々は「面白い!!」と感じる要素がかなりあるのですが、その要素の出し方、開示の仕方があまり上手く無かったというか。
冬音ルート後半からかなり面白くなり、冬音の世界の真相に関する説明はめちゃくちゃ興味を惹かれるものだったにも関わらず、主人公が入れる下ネタの茶々の数々が説明シーンの場にあまりにもそぐわずにとても萎えてしまい。
「いや、黙って冬音の説明聞かせてくれよ」と何度も思いました。
そういう所々の下ネタの数々があまりにも合わなくて前半の日常会話はかなりゲンナリ
いや、渡辺さんの作品は一作目である「冬は幻の鏡」をプレイした際に、その下ネタは凄く良かったんですよ、ノリとテンションが大変良かったんですよ。
何が問題かって、多分、あのノリはむさ苦しくおちゃらけた野郎共が野郎のノリでやるから最高に楽しいのであって、見た目は品が良さそう美少女がやると一気に違う何かに変わるタイプだったんだなーと痛感。
あんまり言いたくはないですが、男性のキワドイお笑いネタを普段お笑いやるタイプじゃない女優さんがやると場の空気が真逆になるみたいな…そんな感じ。
主人公はまぁ有りでギリキャラ的に冬音までは面白かったのですが、他の女性陣がやると「いや…なんか、うん…」みたいな空気になった為、下ネタ連発するにしても「それをして面白いキャラ」をしっかりと作り上げてから連発した方が良かったのでは?と思いました。


そして、その流れで言いますが、本作は個人的にですが圧倒的にキャラクターが立ってない、面白くない、愛着が無かったです。
キャラ厨の自分が引っかかるキャラがほぼ無し。
それこそギリ冬音が良かったなー、くらいで他キャラの印象がビックリするほど薄々でした。
こう…舞台設定の上にキャラクターが乗っかってるような、SFをやりたいのは伝わったけど、SFだけで終わってしまってキャラが誰も響かなかった感じ。
舞台設定から作ってキャラを配置するのは大いに結構なのですが、その上でしっかりと観客側にキャラクターを、登場人物を強く意識させて感情移入させるような展開を持って来て頂きたかったのに本作はそういう流れがほぼ皆無の為、「世界構造が分かりました、危機が訪れました、危機が回避されました、皆元気に生き残りました、終」な空気で終わってしまったんですよ…
そういう言ってしまえば人形めいたキャラクター達が全員「俺は、私は、僕は、狂ってる」とか言い出して狂ってるアピールを欠かさずにするのに、各キャラクターの視点になっても狂ってる表現が上手く描かれていないため、「狂ってる」展開が訪れる度に若干の居心地の悪さ、厨ニ的痛々しさがあったのが辛く。
「冬がみ」では異端者の描き方がかなり良かったので、そこは本当にとても残念でした。
キャラクターが立ってたと思う冬音は彼女の立場が描かれる事により、読み手的にも「そりゃこういう状況だったらそうなっちゃうよなぁ…」と納得出来たので良かったのと、むしろ「狂ってる」表現が無かった静夏の方が絶対折れない強強鋼メンタルなので、「え、一番ヤバいのこの子じゃね?」な空気があり、異端者としての格が描かれていたと思います。
主人公と春海はもう少し静夏のメンタル強過ぎる狂気を見習おうな…
世界設定的にそういう「人形めいているからこそ彼女達が選ばれた」と言われればそれまでですが、その為に物語としてのキャラクター愛着性を捨てても良いか?と言われたらそれは違うと思うので。


そういう、「SF的世界設定、構造は面白そうである」「最初から全員攻略済みのハーレムルートから始まっている」「既にプレイヤーの知らない彼女達の秘密や物語での乗り越えるべき困難は主人公達の間だけでは解決済みから一周目スタート」「抜きゲーっぽいアホなノリの中に所々毒っぽい含みがある」という試み自体はとても面白いと感じたのですが、日常会話とSF世界の謎の開示の仕方、キャラクターの立たせ方は個人的に何一つ面白い部分に掠らなかったのと、今作はルートが固定なのですが、後半も後半の冬音ルートのラストに入ってようやく面白さを感じたのが本当に残念でした。
「冬がみ」がキャラ良し、群像劇でのキャラ毎に見えない部分の開示の仕方良し、常に面白い7日間と個人的に高評価だったので余計にガッカリ感が…
SFに関しても、SFに詳しくない自分のようなタイプに「面白そう!面白い!!」と強く感じさせるのでは無く、淡々と事実説明だけ行われるので「世界設定難しいな…ふーん…」くらいになったのも残念です。
「SFという事を知らず普通のエロゲのノリで初めて怒涛のエロシーンで抜きゲーと思いながら可愛い女の子達との日々を楽しんでいた所に徐々に不穏な影を感じ、ドカン!とSF設定を出され驚く!!」みたいなのが本作の理想の楽しみ方だなーとは感じました。
10年前の作品なので難しいと思いつつ、ライト寄りのハーレム抜きゲー的エロゲが好きな人がSF設定に驚かされる…そういう層が想定されていると思うので、今後新規の方にはそういう層にしっかりと届いて欲しいです。


絵は師走さんと笹井さん。
師走さんは「コイ×ミツ」で、笹井さんは「ナツメグ」や「ナギサの」でお見かけしていました。
ただ…好みの絵柄かと言われると……
個人的には笹井さんの絵柄が好みです。
ただ、好みからは離れますが、立ち絵を細かく動かしたり、表情をかなりの頻度で変化させていたりと、演出面はとても細やかで驚きました。
商業でもかなり凝っている方では?
スクリプトの方々、お疲れ様です…


音楽はSHIMさん、「冬がみ」でも担当されていらっしゃいました。
OP「春の陽」はどことなく今後何か不穏が待ち受けている感じが好きです。
ED「春に舞う想い」は大団円EDという感じ、春と桜が似合う曲です。
真理絵さんはなんとなく四季の中で春の曲が似合うような気がします。
BGMは「永遠(とわ)の春」と「地区内放送(童謡「春よ来い」より)」が印象に残っています。
「地区内放送」は嫌な感じと若干の重い空気を感じます。
声は静夏役の竹岡さんは…色々とお聞きしますがとてもヒロイン声だと思います。
品と可愛さが両立しているお声でとても合っていました。
ところで…「だわ」とよく語尾に付けていたのですが…これ何か理由があるんですかね…口癖??
春海役の芹園さんは「こいとれ」以来かも。
無邪気さがどことなくあり、でもしっかりと含みもあるような演技が好きです。
秋桜役のかわしまさんはやっぱり声質がズルいです。
かわしまさんのボクっ娘はズルいですよ…
推理っぽいターンの探偵らしい語りがとてもお上手でした。
冬音役の青葉さんは、本当に、こういう裏の事情全てを知っていながらも明るかったり余裕だったり、そういう風に振る舞う女性キャラが上手過ぎて震えます。
りんごりんのロリ声だったり大人びてたりのボイスでどこか全てを知りながら諦めているような語り口調が本当に大好きなんですよ…
もっと黒幕だったり真相を知っているタイプのキャラを沢山やって頂きたいです!
正直、声優さんに関してはパーフェクトでした、聞いていて皆さんお上手で、全く飽きがありませんでした。



プレイ順は
ハーレム→春海→BAD→ノーマル→秋桜→冬音→静夏→TRUE
の順固定



『ハーレム ルート』
初っ端から全員攻略済みで既にヒロインの問題を解決済みで怒涛のエロスタートという走り出しは正直面白かったです。
抜きゲーのノリでありながらもキャラクター達の精神面は「意味深、意味深、意味深」という表現が多様されるので掴み自体は良かったと思います。
「SFモノ」と知らない人はハーレムルート後の日付ループで度肝を抜かれるかと。
ただ、「意味深」の部分が各ルートで丁寧に描写されず、淡々と進んだのは本当に勿体なかったと思います。


『仁燈春海 ルート』
初手固定。
まぁ、なんというか、「殺人衝動があるヒロイン」というのは良いと思いますが、その衝動の書き方が上手さを感じず、良くないタイプの厨ニを見せられた感がありました。
もっとこう…上手く描きようがあったと思うというか、「冬がみ」でかなり上手なキャラクターの殺人衝動を描かれてたので、「なんで本作で発揮されないの!!」というガッカリが強かったです。
最終的に主人公も元からある「狂ってる」という設定を出して春海の説得をしますが、かなりアッサリ説得終了するので、「え、もっと、あるやん!?」という気持ちに。
春海の殺人衝動を理解…は出来なくてもこう、エンタメとして楽しめるようなドキドキとして描けて無かったのが非常に残念でした。


『BAD、ノーマル ルート』
普通にヒロイン攻略から逸れたルート。
選択肢での分岐がここまでで、その後、選択肢無しで固定で進むのは勢いがあって良いなと思いました。


『未木秋桜 ルート』
冬音の某シーン辺りは面白かったのですが、推理モノとしてはSFの方が強すぎて荒唐無稽っぷりに驚かされました。
SFとしては有りだけど、殺人事件としては無しでしょう…みたいな。
結局、冬音が真相に近い人物という事だけが分かり、その後、主人公が怪我して一気に時間がぶっ飛んだのにはもう、なんというか笑ってしまいました。
いや、そのぶっ飛ぶ時間でキャラクターの掘り下げ出来るだろ!!と。
秋桜ルートなのに冬音の事ばかり気になるので、秋桜が完全に蚊帳の外なのはどうかと思います。


『士蓮冬音 ルート』
一番面白い…というか冬音の境遇に共感したので面白さがあったルートでした。
永遠の観測者なんて地獄だろうなと、単純作業を気にしない病を持っていてもいつかは狂うだろうなと。
そういう「異端者だけれどもやっぱり人間で永遠には耐えられない」というような描写が好きなので、冬音の地下でのシーンはとても好きです…ただし下ネタでの割り込み以外は。
その後、観測者を主人公に譲り普通の少女になるのですが、その辺りからはわりと普通のギャルゲーだったのでそこもまた残念さが…
観測者としての孤独を持つ冬音の儚さが好きだったんだなーと感じました。


『和葉静夏 ルート』
最終ルート。
「聖女」と言われていて、作中では「あれが聖女?」みたいな反応をされますが、絶対に折れない鋼メンタルに絶対に後ろ向きにならない姿勢は聖女だと思います。
見た目やキャラ的に好きかと言われたら微妙ですが、彼女の聖女性にはかなり納得です。
主人公達が自分達で「自分は狂っている」というよりも、静夏の圧倒的光属性の方がある種の狂いがあるよなーと思ったり。
強すぎる精神はそれはまた「狂い」である…そういう女の子だったと思います。
なので、そういう部分をもっと見たかったのですが…彼女もまたサクッと終わったので残念。
静夏さんの強強メンタルで切り抜けた別ループも見たいなーと、作中にあったらもっと掘り下げられただろうなーと思いました。



全体的に、各ルートで時間が飛び飛びになりますが「この飛んでる部分でもっと掘り下げ出来ただろうに…」となった箇所が多かったです。
そのサクサク感が手軽でフランクな感じで良い所だとは思いつつ、もっとキャラクターを掘り下げて共感や愛着を持たせてくれればもっと個人的に評価が上がったのになーと思いました。
あと、そういえば作中で秋桜と冬音は本名が出ますが、静夏と春海の本名が無かったような…
そういう部分が気になったり。
SFの部分ももっとゆっくり小出ししてジワジワと開示して行ったり、SFとしての面白い!となる部分をSFに明るくなく詳しくない自分みたいなタイプにも「面白い!」と感じさせて頂けたらもっとハマったような設定が沢山あるなーと思いました。
評判が良い作品でしたが、個人的にもっとSFでのワクワクやキャラクターに対しての熱い気持ちを持たせてくれたら嬉しいなと感じた一作でした。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:誠也の部屋 様
https://seiya-saiga.com/
 はるまで、くるる。 ページ
https://seiya-saiga.com/game/sumikko/harukuru.html