ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【マヨイヒツジの果樹園】感想

【男性向け全年齢】



2014年10月09日発売
Namaage』様 ※リンク先公式HP
マヨイヒツジの果樹園】(PC) ※リンク先DLsite.com
以下感想です。








短めの物語ですが、様々な要素が入り質量はミッチリ、けれどミッチリしつつも色は透明。そこに色を想像するかで大きく好みが分かれる…そんな物語。



『「幸福は義務です――なら、その権利は?」
 孤島にポツネンとたたずむ小さな女学園。
 その学園の新任教師として赴任してきた山田一郎は、
 同時期に入学をしてきた美貌の少女「キャセロール」の担当教師となる。

 小さなエデン。
 そうあるべくして創られた箱庭の学園で過ごす、
 退屈だけれど幸せな日々。

 ――しかし、
 学園にはある「秘密」があった。』
(公式より引用)


閉ざされている孤島の女子校。
とても綺麗な島の中で女の子達とフワフワとした生活を送っていきます。


話としては体感時間で短い印象を抱きました。
ですが、世界観や一部のキャラクターが好みで「もっと見たい」と思いつつ、しかし、この題材で無駄に長く引き伸ばさなかったのは良かったです。


最初は(意味深)(意味深)(意味深)みたいな会話が続くので少しイラッとしましたが、その(意味深)部分もサクっと真相に近づけて。
結構難しく、引き伸ばしそうになりそうな題材ですがサクサクとテンポよく行ったのは良かったと思いました。


同時に、引き伸ばさなかった事が良いと思いつつも、色んな物を一気に詰め込んだ印象も…
一部キャラは好きですが、他の一部のキャラは生かしきれてないと感じたり。
あと、個人的にある一点でとても好みでしたが、その一点に置いて主人公の向き不向きはありそうだとは感じました。


そしてBGMが全曲オリジナルのようですがとても良い!凄く良いです!!
OPの『パラノイア』も世界観に合っている上で、曲調が大変好みなのもありましたが、BGMも一曲一曲が丁寧で良かったです!!
OP曲のタイトルにもなっていて、キャッチフレーズからも察せられますがTRPGパラノイアから来てる所があったり…


…OPとあらすじから察せられるように、フワッとしつつも実はピリッと胡椒が聞いてる系の世界観。
色々と詰め込み過ぎててピッチリとしている、その上でしっかりと語られていない、ボカシている印象もありますが、作中では語られない空白部分を考察や空想で補うのが好きなのでとても楽しめましたし、フワフワした物語がジリジリと暗い色に変わっていくのは大変好みでした。



『システム、演出』
吉里吉里操作。
基本選択肢毎にセーブすれば問題ないですが、もし最初からスキッププレイする場合、アイキャッチで若干引っかかりました。
立ち絵に擬音文字が入るのが面白かったです。
選択肢は…マツリさん的に見るなら必要性はある感じはします。
でも、選択前にセーブ取れば全部いけるのでそこまで重要性は無いです。
あと、ムービーは凄く良かったです!


『音楽』
歌唱曲:1曲
BGM:13曲
オリジナル曲
OPとても好きです!フル欲しいくらいに好きです!!
フル出ないかな…
BGMも良く、
「雨上がりのプロムナード」「モーニングペーパー」「F.G」
辺りが凄く好きです。
SEは違和感なく、丁寧だったと思います。
オリジナル曲が凄く合っていたと思います。


『絵』
オリジナル。
枚数は少ないですが、必要箇所はありました。
あと少ないですがとても綺麗でした。
背景は写真背景。
一部イラスト背景なので若干気になりましたが、どれも綺麗でした。
立ち絵もオリジナル。
表情がコロコロと変わります。
動きは少なめですが、飽きませんでした。
頭の輪っかが赤くなる所など凝ってると思います。
可愛いイラストに反しての世界観ハード系でギャップは良かったと思います。
閉鎖された舞台が好きなので島のあの雰囲気好きです。


『物語』
会話が最初は(意味深)で続くのですが、文章は個人的に状況を把握しやすく読みやすかったです。
好きな題材てんこ盛りですが、どうしても詰め込みすぎた感が否めません。
詰め込んで、でも空白部分もあるので、考察好きが惹かれるタイプだとは思います。
結構短いので、物語には引き込まれる前に終わっていたとなる所もあるかも。
世界観に合わないと大分辛いと思います。
笑いに関しては萌え方向にもなるので雰囲気を味わえるか、世界観の面白さに関しては様々な要素がギュッと濃縮された上で、透明の色をした作品に色の想像を出来るかだと思います。
好きなキャラと、ポジション的に重要性と活躍的に思うキャラが凄く分かれます。
マツリさんや一郎はとても好きですが、オロスゼスターや粱先生や辻先生の立ち位置での好みは凄く迷ったり…
粱先生の弟の話や、オロスゼスターの罪についてもう少し掘り下げが欲しかったです。


『好みのポイント』
マツリさんの機械なのに人間の情が芽生えてしまった部分と、一郎の人間なのに機械よりも合理的に判断し行動出来てしまうモンスター感が好きでした。
こういうチグハグな男女…好きです…恋愛にはならなそうですが。
ルートは無いけども…いえ無いからこそ、一郎×マツリさんの二人が居ただけで、機械よりも機械な人間×そんな人間よりも人間らしい機械の男女カップルが居ただけで本当に満足しています!
有難う!ただ有難う!!





以下ネタバレ含めての感想です





一郎の方から見ると実は「主人公がサイコ野郎のディストピア物語」になるとは思います。
そしてそこがおそらく主人公で合わないと思う一部分です。


ただ、この物語、マツリの方から見ると印象が大分変わるな~と思いました。
この物語、予想や妄想、想像を組み込んで見ると神様であるマツリの嫉妬物語かもしれないと。


ケルビムとして既に一郎に入れ込んでいたのか、それとも姉の彩が罪を犯した際に一郎を知ったのかはわかりません。
ですが、マツリが主人公の姉の彩が犯した罪(自分へのアクセス)に漬け込み主人公を手中に収めようとする話だと思いました。


一郎、実は作中で一番、マツリよりも人間じゃないと思います。
何をするにも自分を最優先出来る。
咄嗟の判断で他を瞬間的に犠牲に出来るタイプ。
どんな状況でも自分を完全優先した効率の最優先計算というのは、もうほぼ機械と対して変わらない一郎。
彼の唯一の人間性はその行動の後に自己嫌悪はしっかりする所…


彼の効率最優先の計算部分で言えば、マツリからして一郎は下手に感情(というバグ)を抱えてしまった自分より大変な存在じゃないか?とか思ったのかもしれないと。
作中でも「神は人が自分と近かったから恐れた」とあったので。
そのマツリの恐怖は=興味で、興味=好意になったのではないかと思いました。


ミンサールートで何故撃たれるのか?何故ミンサールートだと助からないのかは、その好意の部分だと思います。
ミンサーは姉…彩と違い恋愛ルートだと思います(彩も姉弟という紙一枚でギリギリ男女ではないくらいですが)
マツリからしたらミンサーとのキスもおそらく見ているし、多分相当面白くはないかと…
なので、抜け出そうとした罪を一応建前にし、好きな一郎を取られるくらいなら殺そう…的ルートだとかと感じました。


彩ルートで助かったのは『姉』というギリギリ紙一枚の壁があるのと、自分のバグを指摘されて、その恋愛感情に自覚したからなんだろうと。
あと、単純に彩は人への危害的な犯罪者ではないので…


他のヒロインの救済は?とも思いました。
ですが、この作品からしか見ていないから救済を考える訳で、彼女達は犯罪者です。
彼女達から被害を受けた遺族からしたら救済は無くて良かったかなとは思っています。
遺族からしたら下手に死刑よりも、幸福を知らせての死刑の方が普通に死刑よりも多少は…と思うので。
むしろそういう方法で死刑を下しても遺族からしたら許さないのが当たり前だと思う以上、彩以外の子が下手に救われなかったのは良かったと思っています。



『各キャラとそのルート感想』


山田一郎】
おそらく作中で一番のモンスター。
自己保身のためならばなんでもする。
友人だって売る、姉だって売る、でもクズと自覚はしている。
機械仕掛けの神であるマツリさんよりも合理的に、何事よりもまず自分の保身を計算できて行動できると思いますよ彼。
だからこそ、マツリさんは上記の予想のように人間の彼に執着してしまったのかなと。

最後のほぼ唯一の人間性であるクズの自覚は本心からか…
それともそれすらも人間社会で生きやすくする為の保身からか…
いやぁ…結構好きなタイプで底の見えない男だと思ってます。


【キャセロール】
作中で上手く立ち回れなかったなと思うキャラその①。

subversion:1 (国家転覆罪)
Lese-majesty:1 (不敬罪、大逆罪)

山田彩お姉ちゃん。
彼女の活躍って本編前と本編後しか無いのでなんとも…
立ち回りというよりも立ち位置の方が重要ですね。
一郎の楔でもあり枷でもあり、おそらくそのどちらでもない。
彼女が居ることにより命の保証がされてるけど、別にそういう保証が無ければ一郎は出ていったと思うと…
裏切られたりなんとも可哀想な人です…貴女の弟コワイヨ…


【マツリ】
神様、一郎のメル友。
そして(自分の中で紛れもない)ヒロイン。
正直、マヨイヒツジは、
機械仕掛けの神様が感情を持ってしまう」
お話だと思うので、それを考えるとヒロインです。
分岐って感情に気付くか気付かないかだと思うんですよね…
ミンサーと一郎を撃ち抜き、一郎への想いに気付かないまま神で居続けるEDと、一郎への想いに気付いてしまい、二人を逃がすED。
機械が恋愛感情で嫉妬に狂うとか大好きな上で、彼女の物語なのに彼女のEDが無いってのがまた個人的にツボを突く突く。
こういうヒロイン、居たって良いと思いますよ本当に…
キャラ性が他キャラは印象がそんなにないですが、本当に一郎とマツリさんで引き上げている感が凄くあります!


【ミンサー】
とんでも犯罪歴の子。

Homicide:13 (殺人)
Corpse crime damage:17 (死体損壊)
Injury crime:5 (傷害罪)

死体破損はカニバリズム
記憶を失ったことに関しては確かにやり切れない思いはありますが、遺族を考えるとどっちのルートでもこうなるのは仕方無さを感じます。

ルートはあるけども、彼女のルートはマツリさんの嫉妬で受け取ってしまい。
そう受け取ると彼女よりもマツリさんが輝いてしまい個人ではなんとも…


【ピーラー】
みんなのトラウマ。

Clone manufacturing crime:1 (クローン製造罪)

とありますが、彼女の罪は作中で姦淫罪だとされています。
で、ここから推測なのですが、それを踏まえて、ピーラーの外見的特徴が、
「浅黒い肌」
と、わざわざ描写されてる所から見て、ピーラーひょっとしてイスラム教圏の子なのではないかと。
当然イスラム教ではそのような仕事は死罪。
粱さん…中国圏の人が居る事から見てあの島は各国の法に触れた子が集められてると推測しました。

殺人だけでなく、各宗教のタブーに触れて死罪扱いになってる子も居るかと。
聖書の引用がかなり出て来ますし。

しかし何故「クローン製造罪」なのか。
この部分も予測ですが、この世界は機械じかけの神に支配されている世界。
おそらくですが、人間の出産なども完全に神が支配しているのでは?
なので、神が予定していなかった姦淫(子を孕む事柄)=出産=クローン製造、となり機械側から見た人間の出産=クローン製造罪ではないかと予測しました。

…と考えると日本人の感覚で見ればピーラー本当に可哀想な子ですね。
ミンサー辺りはその罪なら死刑で当然の感覚ですが。
日本人の感覚では「親がクズで体を売るしか生きる道が無かった」って本当に単に境遇が不幸だっただけで…
もちろんそういう宗教の国、そういう思想からしたら重罪ですが、上記の国による法によって当然刑罰は分かれていると考えると最後の叫びもあって、本当に「生まれる場所が違っていれば」と思わざるをえませんでした。


【オロスゼスター】
作中で上手く立ち回れなかったなと思うキャラその②。

Suicide crime:1 (自殺罪)
Assisted suicide crime:2,787 (自殺幇助罪)
Lese-majesty:1 (不敬罪、大逆罪)

とあるので集団自殺援助系や…宗教系?
自殺サークルや自殺サイトの管理人の可能性もあるかも。

記憶が消される所といい、一人だけ主人公とあまり接点が無い所といい、かなり扱いが不遇です…緑髪眼鏡っ娘の宿命か…


【粱海】
作中で上手く立ち回れなかったなと思うキャラその③。
なんというか弟君が可愛そうだな~と。
あとルートによってはミンサーも主人公に奪われるし…
良い人が本当に報われなかった気持ちがあります。


【辻洋一】
作中で上手く立ち回れなかったなと思うキャラその④。
言い回しからおそらく彼にも生徒と恋愛関係、肉体関係を持って痛い目を見たんだろうな~とは察せられます。
助言役、だけど一郎達の境遇が特殊なのであまり助言に成ってないですね…



最後に。
TRPGパラノイアの印象も感じましたが、世にも奇○な物語の「懲役30日」という作品もふと思い出して…
他の所のレビューでも同じ印象の方が居てなんとなく納得。
そういう思い出す作品が細かい要素が濃縮度を上げているなと思っていました。