ひっそりと群生

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【一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう】感想

【男性主人公全年齢】



2015年11月12日発売
ウォーターフェニックス』※リンク先公式HP
一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう】(PC) ※リンク先DMM.com
以下感想です。








青年と少女、終わった世界二人の旅路


『ある日高校生の鏡夜が目覚めると、世界は様変わりしていた。
 体は動かず、建物は寂れ、荒地が続く。
 通りがかった少女によると、世界は滅んだという。
 信じたくない鏡夜は、他の生物を探すため、少女と共に廃虚を旅する。

 ――しかし。少女には『使命』があった。

 人間の罪を償うために、彼女は死に続けなければならない。
 何回も、何十回も、何百回も、何千回も。何万回も。息絶えては生き返る。
 苦痛しか知らない彼女を見ているうちに、幸せを教えたいと鏡夜は思う。

 滅んだ世界で2人きり。
 死に続ける少女と、生きるための旅をする。』
(公式より引用)


選択肢無しの一本道です。


世界は何故滅んだのか、少女は何故死ななければならないのか、自分は何者なのか、そして何処に向かうのか…
滅んだ世界の中、旅をし、青年は自分の真実を探し、少女は人が犯した罪を償い続ける…


公式の説明文や絵が語るように、とにかく世界観ゲー、ひたすらに世界観ゲー、そして素晴らしい世界観ゲーでした。
勿論、世界観が一番の引き所ですが、単に世界観だけでなく話も纏まりがあり、謎も少しづつ解明されていきます。


最初は死んで生き返る姿を見て恐怖し、化物と少女を呼ぶ。
しかし少女が死ぬ理由を知り、境遇に憐れみ。
共に旅をする中で寄り添いたい、理解したいと願い出す鏡也。
そんな二人の少しづつ近づいて行く距離が丁寧に描かれていました。


「神様」「人類の罪」「償い」など宗教的な説教臭さが一部あるので苦手な方は苦手かと思われます。
そして世界観に最初に引き込まれれば即最後まで好み一直線でしょうが、最初に合わなければ最後まで合わないでしょう。


ですが、退廃した世界、旅をする、青年と少女、ほぼ二人だけで構築される世界…
この辺りが好きなら間違いは無いと思います。



『システム、演出』
選択肢無し、分岐無しなので既読スキップや未読スキップは有るには有りますが必要なく、読み進めには問題ありませんでした。
ただ、履歴が少し面倒でした。
履歴表示が少し遅めなのと、マウスロールで履歴表示ですが、戻るだけで履歴の中でマウスロールを下げる事が出来ず…
履歴表示時にマウスロールを下げたら即ゲーム本編に戻るので、上から徐々に見返す事が出来ず、履歴をあまりじっくり見ることが出来ませんでした。
世界観的にじっくり読み返したい時もあったので残念です…
特に凝った演出はないですが、一枚絵が細かく何枚もあり飽きませんでした。
でもラストのスタッフロールの書体は少し凝って欲しかったです…
素敵な世界観なだけに地味にダサかった…
ノベルとして履歴以外綺麗に纏まっていました。
未読スキップ、既読スキップはコンフィグからですが、一本道の短編の上では問題なかったです。
そしてセーブもそんなに苦がなく充実していました。


『音楽』
全12曲。
BGM鑑賞モード有り。
綺麗ですが単品だとアッサリ目の曲です。
世界観もあるのでとても退廃的です。
「生命の輝き」と「旅路の果てに」が好きです。
SEはアサギリの痛いシーンの音が妙に痛かったです…
ボイスはアサギリの声の「淡々」→「感情豊か」の変化が本当に良かったです。
あととにかく声がかわいらしく、アサギリに「きょーや」と呼ばれたくなりました。
BGMは一個一個ではそうでもないですが、作品の雰囲気には凄く合っていたと思います。


『絵』
一枚絵は差分無しでは全56枚。
CG鑑賞モード有り。
淡く儚い絵柄で綺麗で好みです。
背景は差分無しでは全24枚。
CG鑑賞モード有り。
荒廃した世界、廃墟。
そういうのが好きなのでたまりませんでした。
あと美しいので鑑賞モードにあるのも有り難いです。
立ち絵の絵柄が好みなのですが、一枚絵と微妙に差を感じたりしました。
雰囲気は素晴らしいです。
雰囲気ゲーが好きな人はこの絵の雰囲気だけで引き込まれると思います。


『物語』
難しい言葉もなく、スラスラと読みやすかったです。
構成はタイトルの通り、
「行く」「逝く」「生く」
を上手く構成していました。
後半一部無理があるように感じる展開。
謎が一部残りますが…そこは脳内補完、考察対象でしょうか。
二人がずっと旅を続けるので、そういう雰囲気が好きな人は問題ないとは思います。
ただ、二人のみで会話と旅で進むので淡々としてると取る人も居そうだなぁと思います。
あと一部宗教的な説教臭さがあるので合わない方も居るかと思います。
ただひたすらに二人のやり取りが可愛らしかったです。
キャラクターは、ほぼ主人公の鏡也と少女アサギリのみ。
ですがこの世界観だと正しいです。
二人共しっかりと役目をこなしていたと思います。


『好みのポイント』
世界観がとにかく好みです!!
荒廃した世界、廃墟、世界に二人だけ、青年と少女…
もう好みが詰まっていたような作品でした…
一部宗教臭い説教臭さもありますが、この世界観と主題なら合わない訳ではないのでそんなに気にはなりませんでした。
説教臭さがあってもこの雰囲気なら私は大満足です。





以下ネタバレ含めての感想です





「戦争」「人類の罪」など重苦しく人を選ぶ裏設定はありつつも世界観で綺麗に纏めていたと思います。


最後の生命の死の体験が終わった…でもまだ神の啓示は無い…
その流れで「あぁ…まさか…」と本当に嫌な予感が走り、そしてその通りに進む進む…

「アサギリが死ぬのは戦争で死んだ全ての生命の死を死んだ場所で追体験する為」
「時計の太陽電池
「鏡也の寝入り方」
「途中の鏡也と同じ境遇の男の死に方」
「アサギリの身体の復活の真相」

等、振り返れば伏線がありましたね…その辺りがとても綺麗でした。


自分の中で世界観ゲーは、
「ずっとこの世界に浸りたい気持ちはあるけども長過ぎるとダレる」
な時間が3~5時間なのですが、見事3時間+に収まり伏線を回収し纏まる…そこだけで本当に評価が高いです
好きな世界観でも長ければ良いものではないので。


タイトルも、

『行きましょう』
自分で動けない鏡也がただ他の人間を探すためだけに。
孤独は嫌な為だけに。
死んでは生き返る化物のような少女と行く事を決める、
「朝」~「夕」の章。

『逝きましょう』
「アサギリの苦痛を共に経験したい」
「アサギリを知りたい」
「アサギリを一人で苦しめたくない」
など、どんどんアサギリに寄り添うようになる鏡也。
そしてアサギリに触れれば同じ死の追体験が出来ることを知り逝く事を決める、
「夕」~「夜」の章。

『生きましょう』
そして、触れることで共に死の追体験が出来る事を知られてしまい拒絶され…
しかし、アサギリの元に共に有りたい為に自分で身体を手に入れアサギリの元に向かい、共に世界の全てを周り、人類の罪を償うまで共に生く事を決める、
「夜」の章。

そして生きた先には…出会いがあれば別れもある…
「夜明け」の章。


『一緒に、いきましょう』


間違いなく、
「行き」「逝き」「生き」
の流れで正解であったと言えます。


…というか「夜」で終わったと思っていたんですよね正直。
「よっしゃ!終わった!ハッピーハッピー!!」
みたいなね…
「夜明け」が来た時に「あっ…」みたいな嫌な声出ましたね。
いや、流れ的には正しいんですが、人類棚に上げて、
「こんの神のド外道が!!」
とは思いました。


最後のあのシーンは解釈の仕方が多数ありそうですね…


・地球再生後に最後に見た「鏡也の死の追体験」…「自分と共に生きた幸福な記憶」に想いを馳せている
・地球再生後に何らかの形(人類の科学技術の発展の先)で鏡也が復活し再会
・…元も子もなく夢オチ


おおまかに分けると「別離」「再会」「夢オチ」のどれか。
でも私は二人は最後の「生きましょう」からの長い時間…
それこそ人では得られないほどの長い時間を共に出来ているので、再会の可能性は薄いと思います。
勿論「生きましょう」がタイトルの最後にも来るので文字通りの解釈の元、
「一緒に生きる」
為に再会したでも良いのですが…
科学技術の発展の先での再会でしたらまた人類は破滅に向かってそうで怖いですね…


でも、最後はひらがなの、
「いきましょう」
の通り、どの漢字を当て嵌めるも、あの演出だと人の数だけ答えがあっても良いような気がします。
再会でも、想い出の回想でも、夢オチでも…
そして同時にどの解釈も無く、答えも無くただ、綺麗な世界観のままで終わってもいいなぁと。
どの解釈でもアサギリに幸あらん事を。



『各キャラ感想』


【鏡也】
彼の方が人の姿をしておらず「脳だけの姿」というのは最初の、

「動けずにアサギリに抱え上げられる」
「飲まず食わずで何日でも平気」

辺から何となく予測はしていました。
この辺りはわりと驚かず「美女と野獣」のような「異種と人との絆」などの主題は大好きなのですんなり受け入れました。

「おはようの挨拶だけは欠かさない」

と約束したように施設で一人になっても、アサギリに置いて行かれ、一人になっても言い続けていた姿。
アサギリの身体の真実を知り、どうすればアサギリを救えるのか悩む姿。
アサギリを諦めず長い時間をかけて追いかける姿には人間の時には男気溢れた良い男だったんだろうな~と想像します。

しかし「脳」には気付きましたが途中の男を殺した方法、鏡也の眠る方法、鏡也の死ぬ為の方法。
最後の「生命全ての死に彼を含む」のは気付きませんでした。
二人が完全に分かり合ってからがあまりにも幸せそうで気付きたくなかっただけかもしれませんが…

そしてまさかあの身体(?)から手足が生えるとは思いませんでした。
あれって自前なんですね…
てっきり身体の部分だけ別製造で頭を乗せるのだとばかり…
その辺り鏡也がアサギリの事を思い、振り返り、自分の限界を越える熱い展開のはずですが、
「え!?生えるの!?身体生えるの!?」
みたいな気持ちになり、身体が生成され、アサギリの元に向かった時に、
「生えたんだ…」
と複雑な心境に陥りました。
そこだけが一点無理な展開に見えなくもなく…
でも、大事な誰かを思って身体の構造を書き換える展開とかは好きです。

彼の生前も中々に気になります…
鏡也が元々はどんな人間だったのかは、
「戦争前は高校生で、戦争中に父親と車に乗り逃げる際に戦火に巻き込まれた」
「巻き込まれた後に実験体となりあの姿になった」
「もしくは『仕事、仕事と忙しい』という職から父親が科学者で実験体に鏡也を使った(実験体としてか、息子として生き延びさせる為かは不明)」
と色々予測は立てますが、全て予想だけの範囲ですね…
そういう部分と何故多くの人間からアサギリが選ばれたのか、この辺りは謎です。
世界観ゲーなのでそこを予測、自己解釈するのも楽しみの一つだとは思いますが。


【アサギリ】
とにかく「きょーや」!
ひたすらに「きょーや」!!
「きょーや」の言い方が可愛すぎます!!
あまりもの可愛らしさに何度「きょーや」に成りたいと思ったか!!
(改めて考えると成りたくはないですがw)

声の初期の抑揚の無さから、物を知り徐々に温かみを得ていく所が凄く好きです。
苦しむ声も見どころ(…?)ではありますが、どんどん無機質から感情的に変わっていく声色も魅力です。

化物と呼ばれてもしっかりと話を聞き入れたり…
「使命」の為~など口車に乗せられても疑わずアッサリと受け入れたり…
ボーリングを楽しんだり…
太陽の根っこが気になったり…
お洋服を最初に教えたからずっと捨てられなかったり…
本当に可愛らしかった。
何よりもずっと敬語だったのがとにかく好みです。

一部、神様を信仰し過ぎている部分に宗教的な苦手意識がありました。
ですが生まれてからずっと寝たきりで何も出来ない存在の中、戦火に巻き込まれ死を迎えた際に、
「『使命』さえ全うすれば自由に動ける身体を与える…』
と言われたら…そりゃ信仰したくもなるよなと。

彼女の身体は非力で病弱であり死ぬ際に肉体ごと入れ替わっている。
『使命』を全うしない限り…死なない限り弱っていく。
だから死を体感しないと健康には成れず…
この設定により、生命最後の死(鏡也の死)を追体験するまで弱り続ける部分には、
「神のクソ野郎!!」
と叫ばざるを得ませんでした…
鏡也との「普通の生活ごっこ」の中でこの真相が分かるのが本当に残酷です。

施設での鏡也と離れたくないと願う部分。
鏡也と別れ、鏡也が追いつき、ワンピースなどの鏡也への想いを告げる部分。
そして最後の別れはとても切なかったです。

切なかったですが、最後に見た「生命最後の死(鏡也)の追体験」だけはアサギリとの幸福で満ち溢れていた。
「最後の死の追体験」には今までのような苦痛も、不幸も…何もなく、ただ幸福であったと、それだけは信じています。


【神】
なんとなくこの項目を。
『使命』だけ与えるだけ与えてその後音沙汰も無し。
そして全うすれば雨を降らせる辺りとても神様らしいな~と思ってます。

「死」に関する事は全てアサギリに与えていたのに「愛」に関する知識を与えていなかったのも、
「与えていない=必要ない」
だとは思いますが、アサギリは鏡也との出会いと旅の中で手に入れたでしょう。
「恋愛」「親愛」「友愛」
…どの「愛」かはカテゴライズしませんが、全てを含める「愛」で。

「楽しい事を知るからこそ苦しい時の辛さが分かる」
鏡也がアサギリに教えたように、
「愛を知るからこそ死が辛くなるも」
まさに知っているから辛くなる事で、
「死とは別離、愛する者と別れる事である」
という事と、
「最後はアサギリが楽になるためには鏡也が死ぬか、鏡也がアサギリを殺し続けるかしなければいけない」
も含み、鏡也との別れで人類の罪…「戦争で沢山の命を殺した罪」を贖罪させたのなら…
分かり合わず、ただの少女と脳のままで出会っていれば何も辛くは無かったというのに。
これを想定した上でアサギリに「愛」の情報を与えていなかったとしたら、全くとんでもない奴です。

私が二人の最後は「別離」であると解釈したのはこの部分があると思ったからです。
最後の、
「一緒に、いきましょう」
の部分で、ひょっとして、最後の最後で少しばかり二人に目を向けてくれたのかも…
とハッピーエンド至上主義としては思わなくもないですが、人では越えられない永遠のような永い時を共に出来たのだから…

「戦争」「神の罰」「人の罪」
という重苦しく人を選ぶ世界観があるように、
「愛する者との永遠の別れ」
という重苦しい主題があってもいいかなぁとは感じました。



自由だけれども『使命』ある限り、死なない限り肉体には苦痛の限界があるアサギリと、不自由だけれどもアサギリが『使命』を全うしない限り(太陽のある限り)は限界のない鏡也。
この二人の対比。
そして『使命』を全うすれば鏡也は死ぬが、アサギリはもう苦しまずに済む。
そんな二人の…
二人だけの世界で出会い、寄り添い合うようになり。
理解したいと願い、境界に踏み込み拒絶され。
それでも相手を想い、再び巡り合い。
最後の真実を知り、けれども尊重したいからこそお互い譲らない。
そんな最後の瞬間は本当に美しく…
「儚い絵柄と世界観」」
「二人だけの世界」
「種族を超えた絆」
そんな作品や主題好きにはたまらないゲームでした。
3時間弱の物語で纏まっており、短すぎず長すぎずとても好きです。
この世界観に浸れ、ゲームをプレイ出来て幸せでした。