ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【ルートダブル -Before Crime * After Days-】感想

【男性向け全年齢】



2012年09月28日発売
イエティ』※リンク先公式HP
ルートダブル -Before Crime * After Days-】(PC) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








最近ゲームのモチベが下がっているので名作と呼ばれている作品を挟みます。
というわけで、この感想がいつ投稿されるかは分かりませんが、2022年の10年前、2012年の名作と言われている「ルートダブル -Before Crime * After Days-」をプレイ。


プレイ時間は約32時間30分くらい。
ED、シーンタイトル、アルバム、ミュージック、全回収。
メッセージ既読数、シンセズ分岐数、未回収。
PC版初回プレイ、7でも起動可能、ディスクレス起動不可。
公式』にて修正ファイル有り。


さて、何から話そうかな…と語りだそうとするとまず「面白かった」という言葉しか出ません。
原子力研究所、漏れ出した放射線、閉じ込められる登場人物、施設内で見つかる殺された死体…密室物として掴みはまず抜群。
そしてその掴みに丁寧に特殊SF設定を絡めていき、キャラクター、ひいてはモブまでもしっかりと人間が描かれており、全員が己の正義を貫き信念を貫き、その想いが衝突してしまい辿り着いてしまった悲劇と、その強く熱い意思があるからこそ切り抜け勝ち取った未来のお話でした。
序盤で謎多くかなり大きめに広げた風呂敷を綺麗に丁寧に何一つ零す事無く綺麗に回収し切りました。
系譜としては「科学ADVシリーズ」や「infinityシリーズ」に近いと思います。
現実的に見える困難の中に特殊なSF設定が入り、序盤は脱出に見えるSF物。
ナチュラルに「テレパシー」が当たり前にある世界(作中用語ではBCと呼ばれる)なのでその辺りを受け入れられるかがキモかなと。
なので純粋な現実的脱出ADVが好きな人には受け入れ難いとは思われますが、上記で上げたシリーズをプレイして「好き!!」となった人はかなり受け入れやすく、好きな傾向の作品だと思います。


とにかくその作中設定のテレパシー能力「BC」が物語の根幹に関わりながらも決してただの装飾的な設定になっておらず。
至る所に「BC」の存在を張り巡らせ、満遍なく意味を持たせ、更には現代のリアル学問などを組み合わせて説明をされ、「BC」の存在を強固にさせていたのが本当に素晴らしく。
こういうのは詳しい人からしたら穴が見つかり気にされてしまうタイプでは確かにありそうですが、自分はまず前提の学問が分かっていないので現実の学問が説明されると「なるほど…」となりますし、「現実の学問と作中のなんちゃって設定を組み合わせ、真実と嘘を織り交ぜる事で作中のオリジナル設定に信憑性を持たせる」というのがハチャメチャに好きなので、「BC」の原理や設定が開示されて行く度にワクワクが止まりませんでした。
正統派SFがどういうものかは専門では無いので分かりませんが、SF(すこしふしぎ)は本当に好きです、可能性が無限大にあります。


そしてなにより上記で語ったように、風呂敷の畳み込み方が異常。
散りばめたモノを一つ一つ拾っていく事に命をかけていたと言っても過言では無かったです。
「伏線回収」というものに魅力を感じる人にはそれはもう嬉しいくらいにスッキリと回収してくれます。
マイフェイバリットゲームが「Ever17」「ファタモルガーナの館」、少ない読書量ですが好きな漫画が「鋼の錬金術師」で2019年に好きな作品で「彼方のアストラ」を上げているので分かる人にはお察しかと思われますが、この、「伏線回収に命をかけている」ような作品がそれはもう好きで好きで。
作者の魂や執念、妥協の出来なさを感じて本当に好きなんですよ…
ほぼ全ての出来事がしっかりと一つに繋がっていく後半はもう脱帽でした。
いや、まさか逃した犬のシリウスまで回収するとは思ってませんでした。


ただ伏線を回収しただけだとシステマチックになりがちな中、メインの登場人物9人全員の掘り下げを細かくしていったのもGOOD。
というか掘り下げる量が異常でGOODというかパーフェクトの領域。
全員の想いを知り、感情を知り、行動原理を知り、どうして今、この場所に辿り着いたのかも丁寧に描かれ。
9人…どころか立ち絵のある人物に関してはあまりにも丁寧に感情と立場が描かれて。
少しでも漏れがあると「この人物の事は分からん」となりそうなのに、全員に対して「全体を見ると"正しい"とは言えない部分はある、でも、ここではこの人物にとっての"正義"が間違いなくあり、この人物の立場ではそうするしかなかった」というのをまざまざと見せ付けられました。
終わった後、悲劇を振り返っても「コイツが悪い」とは言えないんですよね…「愚か」な人間を作らないように、ヘイトを向ける人間を作らないようなプレイヤーの感情の動かし方が絶妙でした。
立ち絵の無いモブですら信念があるのがズルい。
超心研やラボも元々は「BC」を使う「コミュニケーター」を救いたい気持ちで発足したのは間違い無く。
でも長い時間の中で歪みが生じ人体実験を始めて…でも研究でお金は必要だからそれがお金になるのなら救える大勢よりも一人の犠牲を選ぶのも人道的にはいけない事だと理解しつつも効率的に考えると分かってしまいますし。
金になるから政府が秘匿するのもまた人間の在り方ですし。
超科局も正しさを執行する側でありながらも政府が関わっているラボに介入する事は難しく。
行動を起こした時に丁度最悪が訪れ出遅れてしまったのも分かりますし。
テロリスト「Q」も確かに最後には作中の「一番悪」を背負い、間違いなくテロそのものは良くない事ではありますが、「BC」を恐れて「BC」を持たない人間を守りたい、「特殊な力が怖い」という人間的な感覚はとても理解出来ますし、過去の放火多発事件を自分たちの仲間に全て擦り付けられ怒りに燃えるのも分かりますし。
そもそもあの腐敗した政府とラボに対してはもうテロしか方法が…というのも分かります。
登場人物全員が、全部の組織がそれぞれの「正義」を背負っており、その「正義」全てに納得が出来てしまうという。
肩入れするのは間違いなく9人のメイン登場人物達で彼らの生還ではありますが、全ての「正義」を否定する事は出来ないという凄まじさ。
この「間違っている人は居なかった」というのが作中の亘の「正しさは揺れ動く」という言葉そのもので、しっかり回収されていたのが上手く。
そして続く「でも揺れ動く中でも"人の命を助ける"という事だけは間違いなく"正しい"と言える」という言葉もまた彼らの今の行動原理とかかりながらも登場人物、登場組織にもかかっているという…
「命を救うヒーローになりたい」を全員が貫いた結果、起こった悲劇と閉じ込められた先でも「命を救うヒーローを貫いた」からこそ全員が勝ち取った生還で全体を通すととてもヒロイックで格好良い作品だったなぁと。
所々でカッコ良さがしっかりとあり、「漢らしいカッコ良さ」や「他人を守りたいカッコ良さ」が溢れていて伏線回収だけでは無く主題がしっかりとしていたのも素晴らしく。
更には「BC」により相手に心を送るだけでは無く相手の心を読む、更にはその先、相手と心を繋げて記憶の改ざんや感情操作をも出来てしまう「BC」の凄さと恐ろしさと、そして「脳を酷使するからこそ短命」という「コミュニケーター」の悲劇的な運命までをも描き。
「心を繋げる」という事を物理的に描き、でも最後には「心を繋げても相手を本当に完全に理解する事は出来ない」「相手の記憶を引き継いでも決してその人には成れない」「でも、人は、本当に繋がる事が出来ないからこそ分かり合おうとする」そういう他者との境界すらも盛り込み主題にしていて。
この「誰も誰かの代わりには成れない」「不完全な生き物だから素晴らしい」「理解出来なくても分かり合おうとすることこそが大事」という主題は個人的にめちゃくちゃに好きな題材ので刺さって刺さって。
序盤は「BC」の本当の意味も分からず状況的に仕方なかったとはいえ、後半は徹底的に「人の記憶を消すというのは相手を殺す事と同義」を貫き、記憶修正では無く改ざんや消去をするとトゥルーではないEDに行く流れも主題に絡まり大変良かったです。


最後には「施設で行われていた実験は"意識を生み出す"実験」「何か重要な選択をする時に背中を押されて居たような気がした」辺りでノックアウトでした。
私は!プレイヤー介入型のゲームに!!弱いんです!!!
この辺りはシステムとの連動が上手いなーと素直に感心しました。
実は今年「選択肢が出ないタイプ」のノベルゲームを「蒼色輪廻」「古色迷宮輪舞曲」とプレイして来たのですが、初めて「選択肢が無い特殊分岐型」のゲームで当たりを引いたと思っています。
他2作ではぶっちゃけ「これ選択肢で良くない…?」となるような分岐方法だったり、「古色迷宮輪舞曲」のキーワードシステムも後半から意味が理解出来ましたが、キーワードの多さに疲弊しましたし、「特殊分岐型が選択肢と対して変わらん…」という事にガッカリしていました。
本作もシステムだけを見ると、「誰に同意するか」という物なので選択肢表示と変わらないと言えば変わらないのですが、ちゃんと「エニアグラム」という現実の用語を持ち出し、それを作中にも提示し、各キャラクターの本質を視覚化させ、Bルート主人公である夏彦が…そしてプレイヤーが「相手の本質の脳波に感情を合わせて同調している」という状況を生み出しその後の言動が変わるという手法を取っていて、システムを世界観と融合させていて「上手いな…」と素直に思いました。
選択肢無しのシステムはこれくらい世界観とシステムを連動させて欲しいです。
今までずっと一人称視点では無く徹底的に三人称で描かれていたのにもそれを知って納得でしたし、トゥルーEDのエピローグでは一人称視点で描かれ空に「エニアグラム」が浮かんでいたのにも納得でした、「エニアグラム」という物を用いて彼らの感情に介入させて頂いていたのが嬉しく思います。


大変楽しめたので色々褒めに褒めていますが、それでも難点が無い訳では無く。
一つはPCが移植版なだけあり挙動がいくつか良くないと感じた事。
特に演出方面は若干速度的に遅さがあり、BADの回収後の動きや暗転時などで「もっと早く動けば良いのに…」と何度か思いました。
ただ、この点に関しては他の元コンシューマ媒体からのPC移植と比べると非常に頑張っていたとは思います。
基本、ノベルゲームがコンシューマ媒体からのPC移植すると凄まじく使いにくい挙動になるので、その中ではわりと有りな方。
…「カオチャ」のPC移植を思い出すと本当に全然良い方です、はい……
システムの「エニアグラム」も攻略を見ると4と7に合わせるのが殆どの為、数値の幅は無いなと思いました。
ただ、攻略を見なければかなり悩みながら選ぶ楽しさがあると思うのでそこは問題は無いとは思います。
あとは最初にAルート(渡瀬ルート)とBルート(夏彦ルート)を選べますが、圧倒的にAルートからが良い事。
Aルートはずっと非常事態、常に選択を迫られ緊張の糸が緩まない為、寝ずに一気にプレイしましたが、Bルートからはどうしてもダレが発生しました。
これもまた他のノベルゲームに比べると全然スムーズなのですが、なにぶんAルートの緊迫感が凄まじく比較すると…という感じです。
Bルートはかなり「BC」についての説明と夏彦達の日常パートなので、Aルートの危機感とは真逆なんですよね。
まぁ、全体を見るとBルートの日常やましろや悠里との交流、サリュとの出会い、夏彦の置かれている状況などはとても重要なので削る事は不可能なのですが、疾走感はかなり薄いです。
日常系が好きだったり作中の特殊設定が現実の学問と合わさり説明がされる説明パートが好きな人には楽しいですが、常に非常事態!が好きな人はBルートで飽きるかなと。
特に「脱出モノ」としてジャンルが表に出ているので、そのジャンルに惹かれた人にはBルートは鬼門かと。
あとは純粋な「脱出モノ」として入った人にとっては「BC」関連の設定に「SFかよ!!」となり思ってたのと違う現象が起きそうだなとも思いました。
自分はなんちゃってSFや「BC」の説明大好きだったので好きだったのですが…その辺りはかなり好みに分かれると思います。
あと、Dルートの他キャラの深層に潜る「RAM」で何度も同じシーンを見せられるのはダレる人はダレそう。
ただ、この「RAM」は読んだ所はスキップ出来るのでそこに気付けばかなりストレスは軽減されると思います。
何度も同じシーンを見せられるので細かい所に素早く気付き、「ここ、伏線だからな!!」が強調されるのが嫌なタイプの人には「もう分かってるから!!」となる所もありそうだなーと。
ただ、この点に関しては気付かない人は本当に何度も言わないと気付かないので、繰り返す事は重要だと思ってます(特に商業作品では)。
あと特に「伏線回収」という言葉に心が踊らない人や、この作品は人間の善意が強い光属性の作品なので、「人間の邪悪さによって事が拗れていく」みたいな闇属性が好きな人には合わないだろうなとは思いました。
後半は完全に好みの問題なので、そこさえ合えば…という気持ち。


絵は情報によるとメインはみけおうさん。
昔は「ま~まれぇど」、今は「Princess Sugar」で原画をされていらっしゃるみたいです。
未プレイですが「みらろま」のOP好きでした。
特に好みの絵柄という訳では無いですが、みけおうさんは渡瀬と夏彦も担当されていらっしゃるらしく。
個人的に男性陣の立ち絵の方が好みでした。
夏彦に関してはメガネ男子主人公が居る!という気持ちで百億満点。
あとはロリキャラ描きの方っぽいですが風見など等身高く目元がキツめの女性が好み。
サブでおおたかさんは凪沙や9年前の夏彦の立ち絵などが好み。
子供の絵が好きでした。
宇喜多さんのみわだぺん。さんが担当。
宇喜多のオッサンは最後の方まで真意が分からない人だったので、序盤での挙動やAルート後半の狂気顔がハチャメチャに怖かったです。
キャラの洋服の汚れや背景の細かさ、炎などのエフェクトは流石の密室脱出モノ。
この辺りはテキストに綺麗に反映されているので違和感無く見れました、密室脱出モノで背景の適応度が高いと大変嬉しいです。


音楽はOP、ED、共に良曲。
どちらも歌詞がクリア後に聞くとモロにネタバレなのがSF系作品で流石です。
OP「Double Bible」の疾走感とムービーとの融合。
「わかたれたルートが導いた邂逅…」「重なったルートは答をくれますか?」
「誰の悲しみを 空は選ぶの?」「その時に生まれた感情が」
この辺りはクリアすると「あぁ…」となります。
ED「Rondo Carrousel」もまた最高で。
「二叉路の旅路を選ぶことの罪」「パンドラの匣の底、希望を解き放て」
「あの空に飛び立った、希望を追いかけて」
OPもEDもですがプレイヤーが「空」や「希望」と呼ばれてるんですね…
"正義"によってラボに"悪意"が解き放たれたけれど"希望"な残された(生まれた)とか…なんか胸アツですね、こういうのに弱いです。
BGMも機械的なのが多く閉鎖空間に合っていました。
「LABO Security Lv.2」「LABO Security Lv.3」とかめちゃくちゃ「Ever17」の風味を感じたので狙ってるのかなーとは思います。
特に「The Brave Decision」はプレイヤー全員の耳に残っているのでは?
ここぞ!というシーンで流れますしとても良い曲なので、このゲームを語る時に必ず出そう。
サントラがXboxの初回特典のみというのがどうしても解せませんが…
単品販売無しとか、箱持ってないけど特典目当てでゲーム買うかもです。
声は主人公含めフルボイス。
主人公になるとボイスが無くなるという事も無く良かったです。
まぁ三人称で進みますし、プレイヤーのコンセプトが分かると主人公からも声が発せてないとおかしいので正しい選択かと。
渡瀬役の新垣さんはキャラクターもありカッコ良さの権化でしたね。
記憶を失った後の正義の化身のような演技も、記憶が戻ってから苦悩する演技もどちらも良く。
特に内に秘めた物が行動を阻害している時の演技が好きでした。
夏彦役の市来さんはTHE・少年主人公という感じ。
一般的な学生主人公らしさと、一生懸命大事な人を守る!というような正統派主人公らしさがとても出ていたと思います。
風見役の佐藤さんは結構明るく元気なキャラでお聞きした事が多かったので大人の有能お姉さん役もお上手でビックリ。
個人的にはこちらの落ち着いた声色が好きです。
洵役の友永さんは…こう、色々な所でお聞きしていますが、狂気に入ってからのガナリは流石。
ドスの効いた声が本当に映える方です。
恵那役の豊口さんは序盤の嫌な女っぽさから後半の頼れる女の切り替えが上手い。
後半の方が恵那の本質なのですが、「演技の中での演技」が絶妙に上手かったです。
宇喜多役の大川さんは、もう、声が良いですね、ズルいお声です。
頼れる強い大人の声をお聞きしてた事が多かったので、ちょっと小心者な所が入ったような演技が新鮮でした。
悠里役の名塚さんはもう超ヒロイン、守ってあげたくなる感が凄いです。
儚く消えそうで、でもブレない芯がある演技がお上手でした。
ましろ役の今井さんもまた正統派幼馴染。
快活で裏表無く、主人公を支えていて、でも繊細、そんな女の子の演技が好きでした。
サリュ役の真堂さんはとても良い無表情系ロリボイス。
サリュもまた研究で感情を把握出来ない障害を背負っていたのですが、淡々としながらも一生懸命人を知りたいとグイグイ来る感じが言葉からもとても感じました。
天川博士役の大原さんは、流石のセクシーボイス。
このロリっ子な見た目をしているお母さんから大原さんのお声が出るのがギャップで痺れそうです。
亘役の大原さんも真っ直ぐで居なくなっても忘れられない名言の数々を残し、その話し方がとても良く。
凪沙役の清水さんは、「RAM」で各キャラクターの話し方がそのまま出る演技をされるのですが、全員凪沙の声のままで話し方がモロに変わっており、どこにも自我が無いというのを演技で示されていて素晴らしかったです。
しかし…スタッフを見てかなりエロゲスタッフがいらっしゃるなーと思っていましたが友永さんや清水さんがいらっしゃった辺りで色々と察しました。
場合によっては18禁可も可能にしてた…とか?
でも、今作はそういうのが全く無く明確に誰かと結ばれる「恋愛」に進まないのが素晴らしいと思っているので、全年齢のSF脱出ADVを貫き、18禁化の逆移植をしなかったのはとても良かったと思っています。



プレイ順は
Aルート→Bルート→Cルート→Dルート(Cルート以降固定)
の順で攻略
以下各ルートの感想と各キャラの感想



<Aルート>
記憶喪失から始まる為、プレイヤーと「知らない」という状態を共有出来るので初手推奨。
でもその中で、序盤の夏彦との戦闘と曖昧な記憶をプレイヤーは知っている為、「他も怪しいけど一番主人公が怪しいよな…」と元の主人公に対して違和感を覚え続けて。
それでも記憶を失ってからの主人公には間違いなく善意しか無く、レスキュー隊としての矜持で動き続け、記憶を失う前はテロリストでも記憶を失った後の主人公は間違いなくまっ更なヒーローそのものであるという構図はとても上手かったです。
GOODに行っても脱出出来ずに終わるので、謎が謎のまま終わり次に続く引きはとても引き込まれました。


『笠鷺 渡瀬』
夏彦が精神的には脆くても隠し事は無い光の方の主人公なら渡瀬は精神的に強くても隠し事の多い闇の主人公だと思っています。
苦悩の人であり、それでも街と政府によって歪められた「コミュニケーター」と「被験者」を想い、「助けたい」と思える人。
亘の事があり、間違いなく復讐でも生きては居ますが、それ以上に「人体実験を辞めさせたい」という正義の方が勝っているあたり彼も強い正義の人。
だからこそ「ラボ」の方も「コミュニケーター」を人道的に生かす気はないが同時に「Q」も「コミュニケーター」を良い意味で捉える気は無い、亘の死の元凶も「Q」にあるというのを知ったトゥルーラストではちゃんと主人公側に付いてくれるのが良いなと。
「Q」に入った以上そこに"正しさ"があるのなら「Q」に属するしかない、一度入ったら"正しい"限り貫き通すのが渡瀬なので、「コミュニケーター」を善意で捉える組織では無い、亘の死の元凶は「ラボ」では無い、渡瀬の"正しさ"はそこには無いというのを知らしめないといけないんですよね。
全体的に「記憶を失っても培った肉体は裏切らない」という「筋肉は裏切らない」を地で行く人で、ちゃんと行動の面ではパワーを発揮してくれるので、「格好良い人」だなーと思ってます。
「漢」という意味で彼に惚れ込むプレイヤーが多そう、男性人気が高そうだなと感じた主人公でした。


『橘 風見』
渡瀬の嫁(嘘偽り無く)。
序盤めちゃくちゃ有能な人、冷静で有能な女性スキーにはたまらないのでは?
でも、脆さもあって、妹の件が絡むとそこだけは脆くて…そこに庇護したくなるような可憐さがあって魅力的でした。
彼女にだけは被検体Nからの"悪意"の植え付けは全く無いとは言いませんが、薄いんですよね。
だって、彼女が抱いているのは「純粋に凪沙の死によって知ってしまったラボへの憎悪」なので、被検体Nというよりも凪沙に関わり、そして彼女の信念に関わるという。
だからこそ凪沙の記憶を消さないまま説得するしか無いという最も難しい「RAM」になっていました。
いやぁ、でも、序盤で有能だった人が後半でラスボス的ポジションになるの…胸アツじゃないですか?
しかも別に最初から仕掛け人という訳でなく、今回の件で真相を知ってラスボスポジになるというのが…こういう構図もまた上手いなーと唸りました。


『守部 洵』
渡瀬とフラグが立つかと思ったら妹のフラグを立てた人。
ギャルゲーじゃないので恋愛物では無いのですが、上手い具合に渡瀬と恋愛では無い関係性を築いてて良いポジションだと感心。
Aルートで狂い初めて「なんでや!!?」になりましたが、しっかりと理由があり解決したのがとても良かった。
"悪意"に染まるのが早かったので精神面で脆いのかなーと思いましたが、むしろ過去を見ると風見を支えていたり、爆発事故に巻き込まれても凪沙を想ったり、かなり勇敢な人。
凪沙との想い出もあるからこそ被検体Nの"悪意"に呑まれやすかったのだろうなとは思ってます。
あと、なんだかんだ風見と違い「コミュニケーター」では無いので…防衛も難しそう。
渡瀬の事は好きだろうけど、風見の事を知ってるので永遠に引っ掻き回す妹ポジを獲得して行きそうなのが良いですね。
議員のお父さんの件も大変だろうけど…まぁしっかりと独り立ちしてるので大丈夫だと思ってます。


『椿山 恵那』
Aルートの前半後半でかなり印象が変わる人。
序盤は嫌な女ですが、真相を知り「一般人として振る舞わないと」という事を知ってると序盤は演技マシマシだったのがよく分かります。
確かに一般人ならこの状況下だとあぁいう態度になる、完全に「俺は部屋に帰るぞ!!」キャラでした。
ただ、彼女の真相を知るととても有能な人物であり、後半はもう唯一信頼出来る人レベルに変わるという、恐ろしいお方。
Bルートからプレイしてたら「先生、確かに隠し事はしてそうだけどあんなに生徒想いなのにこんなに嫌な人だったか?」というギャップにもなりそう…そこでもわりと彼女のどちらが本質か?という謎の部分にも繋がりそうで、いいキャラしてるなーと思います。
夏彦達が幼少期に逃した犬のシリウスも拾っていて回収してくれますし、最後には彼女が引き継いだ権力が渡瀬達に情状酌量の余地を与えていますし。
改めて見ると一番政治的に有能な気がします…先生本当に良いキャラです。


『宇喜多 佳司』
メインの9人の中では薄いイメージがあるのは美少女の多い閉鎖空間系作品に出る男キャラの宿命な気がします。
それでも、彼の過去を遡ると彼もまた正義の人で…というか科学者にしては人道に溢れ過ぎていてある意味では「ラボ」で浮いていたのだろうなと。
宇喜多さんが人間としては圧倒的に"正しい"けれど、科学者の倫理として見た場合はその限りでは無い。
商人やスポーツ選手でもですが、「その分野ではその限りではない倫理」みたいなのがあって、科学者もそういうのがあって。
本当は許される事では無いのにそれがまかり通る分野に居て…だからこそ人体実験を認められず反旗を翻そうとする中で「Q」に目を付けられるという。
善意を狙われた人なのでとても可哀想な人ではあります。
ラスト、渡瀬と同じように少しでも法の何かを受けるかなーと思ってましたがわりとお咎めが少ないのは明確な実行犯では無いからか…
渡瀬よりも刑は軽そうですが、オッサンだけあんまりお咎めが描かれなかった所だけは少し気になりました。


『琴乃 悠里』
Aルートではさほどでも無いですが、Bルートから始めると「なんで!!?」になる子かと。
Aルートでは逃げ惑う厄介な…でも渡瀬を恐れている被害者なので、場をかき乱しますが、真相を知ると「そら逃げるわ」となるのでやむ無し。
ラストで彼女を巡り対立しますが、渡瀬にとっては「ラボ」の中で記憶を失い足場を失いかけている自分の"正義の心"を証明してくれていたような子なので、恋愛とは全く違いますが大事な子であり守りたい相手ではありそう。
記憶を失いアンバランスな渡瀬に対し、彼女が「守られる」という位置に居たからバランスが取れていたと思うので精神面での渡瀬の恩人なのかなーと思ってます。



<Bルート>
Aルートからプレイするとダレる、それは間違い無いのですが、それはAルートの怒涛の流れが凄すぎるだけで、Bルート単品で見るとわりと有りというか。
ギャルゲ的に見ると日常がかなりスムーズで好きでした。
BルートからプレイするとAルートの渡瀬の行動を見てると絶対に「どの面下げて…」となると思うので、そういう違いが面白いなと。
Aルートにおいて何故彼らが「ラボ」に居るのか?渡瀬と敵対しているのか?の真相開示にもなっていました。
そしてここでサブタイトルの「Before Crime After Days」の英文の頭文字がそれぞれルート順になっている事にも気付きました。
時系列で見るとB→C→A→Dですね、なるほどなぁ。
夏彦の回想をしながら現代に戻ってまた回想に戻るという構図なので、同じ場面を何度も見るのが若干ダレるポイントではありますが、あれは悠里の「BC」により繰り返す事で夏彦の現実での仲間達との関係を強固にしている為、必要な事ではあるんですよね。
そして「BC」での繰り返しでの過去回想だからこそ、プレイヤーが施設内での過去回想により「エニアグラム」で介入出来るポイントでもあるので、ダレではありますが、省く事は出来ない演出になっていたと思います。


『天川 夏彦』
渡瀬がちょっと超人なのと男性的カッコ良さを持ってるので語られるのが少なそうですが、夏彦もまた良主人公だと思ってます。
というか学生主人公としてはかなり良い主人公かと。
悠里の件で精神面が脆そうに見えますが、それは悠里の「BC」が関わった結果ですし、なんだかんだ行動原理も理解出来、ピンチの時には女の子を守る度量を見せてくれるので良い男だなーと。
戦闘面でサリュに劣り守られてる部分で頼り無さを感じますが、サリュの精神面を持ち上げるのは夏彦ですし。
結構気を使ってますし、過去の悠里とましろの関係と、現代でのサリュとの交流の仕方を見てるとモテるのもなんとなく分かります。
わりと今作はどちらの主人公も「ココが駄目だ!!」となるマイナスポイントが無かったのが良かったです、学生主人公だと結構ダメポイントが多くなりがちなのでそういう点が無いのが純粋に嬉しい。
「ここは…?」となりそうな部分にもしっかりと理由があったのが作りの巧みさを感じました。
トゥルーで「誰も選べない」と言った夏彦にはある種の男らしさを感じました。
うん、分かるよ、3人共魅力的だもんな、選べないって…その決断は正しい。


『琴乃 悠里』
慈愛、9年間精神面で支え続けた少女。
彼女が妄想であるという真相は想像はしていましたが、Bルートのラストでは納得と同時に「え?じゃあAルートは???」と新しい謎が湧くので本当に上手い構成。
「ラボ」は二度も生者を死者として扱ってるので本当に最悪だとは思いますが、「悠里が生きている」という真実は大団円大好き人間としてはとても嬉しい流れでした。
悠里といいましろといい、過去回想がとても良いのと二人の幼馴染に支えられている所とかもう、素晴らしい幼馴染ゲーでした。
悠里もましろも選べないって…
幼馴染スキーには絶対に本作をプレイして頂きたいです。
主人公の2歳年上ですが、幼く見えるのは幽閉されていたからか…太陽の下を歩けないと幼くもなりそうだなと少し辛くなりました。


『鳥羽 ましろ
献身、9年間夏彦を現実的に支え続け、守り続け、夏彦の為に「BC」を磨き続けた少女。
悠里と合わせて本当に今作は幼馴染ゲーです。
過去回想がとにかく丁寧で、男友達のような関係から女の子として成長して行く姿がとても可愛い。
悠里の事が大好きで、でも恋のライバルで複雑な感情があって…そういう女の情念がありつつも、でも悠里が大好き!という感情の方が勝る所に彼女の"正義"を感じます。
明るく、裏表が無く、元気で、健気。
登場はBルートとDルート中盤からですが、彼女の明るさがBルートでとても支えになっていまいした。


『三ノ宮・ルイーズ・優衣(サリュ)』
サリュかわ!!
上記二名の幼馴染には若干立ち位置が弱いですが、最後に夏彦に告白した唯一のヒロイン(?)なので一種の強さがありました。
ぶっちゃけ見た目とか属性では一番好きです。
金髪ロリっ子、無表情系、激強(物理)とか属性盛り込み過ぎですね。
フリフリが似合いそうなフランス人形みたいな容姿の女の子が格闘がめちゃくちゃに強いとか癖なのでとても刺さりました。
被検体Aの写真を見た辺りから彼女の真相は色々察しては居ましたが…被検体Nの記憶コピーとして運用されて来たから脳の負担によって空気を読んだり人の心を察する能力が薄いという、「無表情ヒロイン」にも意味を持たせていたのには脱帽。
今作はどんな事にも意味を持たせる作りになっていてそういうのが好きな自分にはたまらんです。
可愛く、儚く、強いヒロインでとても大好きでした。


『天川 美夜子』
ヒロイン枠では無いですがこちらに。
最初出た時見た目のロリっぷりが強く、ロリっ子!!?と思いましたがめちゃくちゃにお母さんしてました。
諸悪の根源側には居ますが、最初は科学者として冷徹でありながらも夏彦を産んだ事で価値観が変わり「ラボ」のやり方に嫌気が指し始めた所でケースNが発令し夏彦達の適性度がSに跳ね上がり適性度が上がるほど短命になる「コミュニケーター」の実験をしなければ夏彦の命に関わる為実験をやめる事が出来なくなったという。
彼女もまた時と場合が悪かった側に居たなと。
でも、「"意識"を生み出す実験」にワクワクしていたり科学者気質がある所がやっぱり天才側の人だなーと感じました。
まぁ、あの実験があった事でプレイヤーが召喚されたとも思うので、良かったとは思います。
彼女もまた今後の街の為にお咎めが軽減されているみたいなので、今度は正しく「BC」の実験をして夏彦や悠里の寿命を伸ばして欲しいです、そこだけは解決していないので。



<Cルート>
A、Bのルートを見た事でそれぞれの事情を把握した上で、今度は夏彦の「BC」の視点を使いAルートを辿るというもの。
ルートの中で一番短いのですが、Aルートでの疑問はほぼ全て回収していき爽快感がありました。
ただ、凪沙の死に関しては大体の事情は掴めますが、メインキャラで凪沙を撃った人とその現場を目撃した人が居ない為、「情報」として処理されているのが残念。
凪沙がどのようなラストを迎えたのかは知りたいと思う所ではありました。



<Dルート>
ここまで来ると過去の開示と伏線回収のターンなので特に語る事は無いのですが、回収していく流れのスッキリっぷりはお見事。
途中に出てくる作中の本のタイトル「Before Crime After Days」が単にネタで終わらずラストにしっかりと「犯罪前とその後で世間の流れや人の価値観など何もかもが変わる」としっかりと作中作として引用されたり。
「RAM」もダレは確かにあるものの「RAM」のシーンタイトルがサリュがSF小説だったりましろが漫画だったり「各キャラクターが好きな物」のタイトルが引用されているのに気付いた時に「確かに深層心理だ」と思ったり。
重要な場面で何度も「エニアグラム」を選択させられるのが「彼らの物語に介入している」感が強くあり楽しく。
GOODのEDも「誰に優先的に共感したか」が反映され誰かが犠牲になる結末ではありましたが、「選択」の納得感があり。
脱出後のラストの渡瀬の方に共感するか、夏彦の方に共感するか、どちらにも共感するかの分かれ道もまた「選択」が強く出ていてかなり燃えました。
全員を大事に想う「エニアグラム」を描くトゥルーが圧倒的大団円のEDではありますが、AのEDもBのEDも捨てがたいです。
Aエンドの今度は悠里の記憶の方を夏彦の時のように消し、悠里を守り夏彦が渡瀬元に向かうEDは「今度は夏彦が大事な女の子の悠里を守る」という犠牲的でありながらも立場が反転した救済でとてもヒロイックであり、同時に渡瀬と夏彦の野郎同士が睨み合いながらも同じ道を歩むというこう…腐った心を刺激され。
Bエンドの渡瀬の心を再び消すという「人の心を消す」という罪を夏彦は再び背負いながらも、その行動は記憶を消す前の渡瀬もまた納得し、「記憶を失う事」を自らの罰と課し受け入れ、野郎二人が罪と罰を背負いながらも悠里を守るという、こちらもまた「一人の少女の為」に行動する野郎二人がヒロイックで。
どちらも「エニアグラム」で選んだ通りの結末が用意されていて非常に良かったです。
夏彦も渡瀬も悠里を「Q」に送る事を想定していないのが良いですね、まさに「ヒロインを守る"漢"!!」でした。
大団円のトゥルーEDはプレイヤーが皆を大事に大事に思った結果が反映されていて大満足。
渡瀬のヒロインは圧倒的に風見ですが、夏彦が「ヒロインを選べない」となっても本作が恋愛物では無いので何一つ問題無く、「今後どうなるんだろうなー」と想像の余地が沢山あるニヤニヤ出来るEDを迎えたのも個人的に「誰とくっつくか分からない関係のまま終わる」が好きなので最高の終わり方で。
キャラクターの今後を想像させつつ、最後に見上げた空で「エニアグラム」が光っている演出はED曲の「空」と「希望」の歌詞にかかりグッと来ました。



「"正義"は立場によって変わる、けれど"人の命を救う事は"揺るぎなく"正しい事"である」「どんなに人の心を繋ぐ技術や能力が発達しても完全に相手を理解する事は出来ない」「人は分かり合えない中ででも分かり合う努力をし近付く事が出来る」この辺りの圧倒的光の思想を貫き続けた作品でした。
Aルート主人公の渡瀬、Bルート主人公の夏彦、それぞれに主人公が居ますが、この二人は根本的に相容れない性格をしていて最後まで「なんかムカつく奴」と思い合っていたのもまた「分かり合えない相手は居る」という部分にかかっていて最高なんですよね。
お互い「ムカつく奴、でも能力は本物だし脱出の為にお前は必要だ」「分かり合えない、でも、「ラボ」も「Q」も自分の"正しさ"すらも間違っているのならお前の事は認めてやる」となり、最後の最後まで「凄いけどムカつく奴」同士なのが下手に仲良しになる主人公同士よりとても「人間」らしく好ましかったです。
エピローグ後に凪沙の墓で渡瀬と夏彦は会うと思うのですが、「やっぱムカつく」と思い睨み合いながらも周りの7人に「やれやれ」と思われてて欲しいです。


長時間かかるタイプの作品は「こんだけ時間をかけたのに…」となるか「時間分のものが得られた!」となるかの二択なのですが、今回は間違いなく後者でした。
やって良かった、プレイ後に十分な満足感を得られた、そんな作品でした。
10年前の名作ではありますが、今回触れる事が出来て本当に良かったです。
多分、CD欲しさにXboxも買うだろうなと確信しているほど楽しめました。
後に調べて「infinityシリーズ」にいらっしゃった中澤さんが原案、企画、監督、プロデューサーで大変納得。
中澤さんと打越さんはKID解体後も「infinity」の魂を引き連れて各方面でゲームを作り定期的に高評価を受けているようで系譜が途絶えておらず安心しました。
また、こういうワクワク出来るSF作品にまた沢山触れたいなーと心から思いました、本当に楽しかったです!!



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:誠也の部屋 様
https://seiya-saiga.com/
 ルートダブル -Before Crime * After Days- ページ
https://seiya-saiga.com/game/yeti/rootdouble_pc.html