ひっそりと群生

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【翠の海 -midori no umi-】感想

【男性向け18禁】



MANYOさんの担当されたゲームをクリアしていく企画49弾。



2011年10月28日発売
Cabbit』※リンク先公式HP(18禁)
翠の海 -midori no umi-】(PC)(18禁) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








プレイ時間は約11時間45分くらい。
7でもインストール、起動可。
ディスレス起動可。


SkyFish姉妹ブランドCabbitの処女作。
シナリオ、キャラデザが全員女性で女性社員が多いという男性向けではあまり見かけないブランドらしいです。
御厨さんの作品は「はるとま2」と「コイ×ミツ ~千葉静玖とサボテンの手紙~」の2作をプレイ済み。
情報サイトによると完全個人でのシナリオは今作が初担当との事。


物語は記憶を失い深い森に囲まれ湖がある館に来た主人公がヒロイン達と交流しヒロインの過去や館の謎に触れて行くというもの。
作中で人は確かにお亡くなりになりますが、「犯人を探す」というよりもヒロイン達との交流の方が重要視されるのでミステリー系の一種ではありますがフーダニットでは無い感じ。
ミステリーに分類するならホワイダニットミステリーになると思います。
誰も主人公を傷付ける人は居らず皆が優しく接してくれて衣食住にも困らない、そんな「楽園」のような館。
しかし、失った過去を求めたり、誰かに危害を加えたり、「楽園」を疑おうとしたならその「楽園」は一変する。
まさに「幸福は義務です」を地で行く物語で「ユートピアでありディストピア」を美しい世界観で作り上げていました。
社会的に存在を許されず弱者になった子供達が規律を作り秩序を作り「楽園」を作り上げる。
そんな歪であり、時には倫理に背きながらも「弱いからこそ痛みも知っていて心根は優しい」子供達の深層心理は美しく。
血生臭いシーンが続く事がありますが、どこかで美しさを感じる不思議な存在感のあるゲームでした。
記憶も立場も外の世界の全てを失った主人公が「楽園」で拠り所、従属先、依存先、もしくは護る相手…そういう物を探す話でもあり。
どのルートでも「自分の一番」だと決めた存在には準じ、従い、愛する者、愛する場所の為に「愛を貫く」主人公の姿はとても美しく。
「愛を貫く」姿がこの世界観にとても合っていて。
世界観、登場キャラクター達の思想、主人公の生き様。
醜く見える時がありながらも、その醜さが美しさを引き立たせる要素になっていて、世界観、空気感が濁っている部分がありながらも「澄んでいる」と言える作風でした。


ただ、館の存在があまりにも「美し過ぎる」故に、館の真相…「館は現実世界から地続きの場所にあり日本のどこかにある樹海の奥に人工的に建てられた場所」というのにはちょっとガッカリ感があったというか。
もうちょっと「生と死の間」みたいな幻想要素を期待していたので期待は裏切られた感じです。
ただ、これは個人的なガッカリであり、「結局「楽園」は何一つ「楽園」じゃないんだよ」という意味で現実世界からの地続きだとは思っているので、そういう「幻想をぶち壊す」という意味ではとても納得しています。
プレイヤーが幻想を抱いていた部分を破壊している世界設定だとも思っているので、その点は「予想や期待を裏切られた事」が上手いなぁと。
上手いと思いつつも、「何らかの事情で表に出せなくなったお金持ちの子息を社会的に行方不明にした後に監禁している場所」という現実世界からの地続きになった事で、館内で館の平穏の為にみちるや紡がバリバリ不適合者を殺しますが、「流石に金持ちの存在がバックに付いていて法が立ち入れない場所と言えど、人が死ぬのを見て見ぬ振りは出来ないのでは…?」とは思ってしまいました。
現実世界からの地続きの弊害というか流石にこれだけの人が死んでいるといくら無法地帯という設定でも「法が…」とは思ってしまい。
普通にどこかの山の中なのでちょっと金の力でも無理が生じるかと。
これが孤島とかならまだ納得出来たので、クローズドサークルくらいに「出入り口が一本の橋しか無いような崖に囲まれた場所」くらいの閉鎖空間は欲しかったなと思っています。
その点以外はキャラのバックボーンや境遇から来る心理状態、各ルートの流れなど納得出来る作りになっており、世界観の良い良作というタイプの作品でした。


絵はさえきさんとゆき恵さん。
女性原画家らしく下着の表現が華やかでとても良かったのと、エロシーンでいつの間にかブラが無くなる事無く脱がしかけになるとブラも残っているのに拘りを感じました。
いつの間にかブラが無くなっているのに違和感を覚えるタイプなので、ちゃんと脱がしかけ状態でブラも残っているのがとても好きです。
絵柄ではゆき恵さんが好みですが、デザインは沙羅が好み。
沙羅のゴスロリ服の袖を口に当てて顔を隠す立ち絵は反則級に可愛いです。


音楽は全曲MANYOさん。
OPの「翼を持たない少女」は館の不思議を出しつつ不穏さと美しさを音で表現し、サビでMANYO節を発揮するのが流石です。
EDの「永遠の楽園(とわのらくえん)」は個人的「曲だけ聞かせたらエロゲソングと分からない曲」として5本の指に入ると思っています。
OPも素晴らしいですが、EDが今作は超絶に好みで。
バラードを聞く事は少ないのですがこの曲は予約特典のサントラを本ゲームを買う前に手に入れてからずっと聞いていました。
「楽園」から抜け出したEDとしても、「楽園」に留まったEDとしてもどちらでも納得できる歌詞が流石marieさんだなぁと。
BGMはどの曲も最高、予約特典のサントラは買って損は無いです。
「わがまま」「夢見た明日へ」が好きです。
「あなたを想うから」と「あなたをゆるさない」の曲の対比も凄く良く、作中でバイオリンを弾く表現がある通りバイオリン曲が多いのが特徴的だと思いました。
声はみちる役の羽高さんは「姫さまっ、お手やわらかに!」の名取さんでお聞きした事がありましたが、ハッチャケ役だったので今作で落ち着いた女性の雰囲気が良いなと思ったり。
落ち着いているけれどどこか底が見えず時々恐ろしい…そんな演技が良かったです。
知紗役の小倉さんは知紗の時々言葉遣いが悪くなる時の言い回しがとても良く。
小倉さんは罵倒系キャラを最初に聞いたので口悪い言葉を言ってる時の演技がたまらないなと思いました。
空音、陸乃役の鈴谷さんは同じ言葉を話す双子役でしたが、おそらく聞いてると同じ言葉でも二回収録してるように聞こえました。
陸乃が空音の言葉を真似しているとあるように、一度空音で収録した声に合わせて陸乃として声を重ねている感じ。
後半から完全に台詞が分かれますが、もしこの収録方法が合っていたら本当にお疲れ様ですという気持ちです。
灰奈役の今谷(桃也)さんははわわ系少女でしたが、所々でトラウマが蘇った時の慟哭が素晴らしく。
感情の爆発をされたら上手いなぁと感じました。
沙羅役の手塚さんは声質が単純に好みで好みで…
途中「声が可愛くないから」みたいな台詞がありますが、「ちゃうねん、手塚さんのお声は格好良さがある所が最高なんですよ!!」と強い気持ちで沙羅の言葉を否定していました。
可愛いだけでは辿り着けない所にいらっしゃる格好良いお声でとても好きです!凛々しい演技も好きです!!
紡役の金田さんはアホっぽい演技からアホだけじゃない演技まで流石の幅広さ。
個人的にはエピローグで成長した紡の声がロリっ子からしっかりと大人になり、演じ分けされてて紡の成長を垣間見れたのが良かったです。
あとは…ちょっと特殊な立ち位置のヒロインですが、真希奈役の霧島さんが拓真と一人二役で。
少年声と少女声で全く違い凄かったのと同時に、死亡率100%だな…と思ってしまいました。
少年声で言うと優希役の陵陵さんも好きでした、出演作は少ないらしいですが、少年声好きなので良い感じの低さでとても好みでした。
今作は少年声を女性声優さんが多くされているので聞いていて耳が幸せでした。



プレイ順は
シナリオ1(END2:生かされ→END4:逃走→END3:殺人鬼→END1:青い鳥のため→END10:永遠の楽園→END14:必要な人間)
シナリオ2(END5:狂気の中で→END6:瞬く星の下→END11:赤い塔→END12:幸せのため)
シナリオ3(END7:護るべき者の隣で→END8:解けない魔法→END9:幸せの茨道→END13:永遠の幸せ)
シナリオ4(END15:踏み出した道→END16:翼広げて)
の順で攻略
シナリオ2のEDを見る為にはシナリオ1のどれかのEDを見る、シナリオ3のEDを見る為にはシナリオ2のどれかのEDを見る、シナリオ4のEDを見る為にはシナリオ3のどれかのEDを見るという手順が必要になります。


<シナリオ1>
「シナリオ1」で攻略可能なキャラは知紗のBAD、みちるのNORMAL。
例え攻略可能でもこの段階ではヒロインのバックボーンは何一つ分からない為、「エロシーンがあって結ばれるけど結局何一つ分からない」という状態になるのがエロゲならではの表現で面白かったです。


『END2:生かされ』
「厨房に持ち込まれる食料の秘密」を知ろうとした事でサクッと殺されるED。
ED的には一番開始から近いです。
いろはと話しているのがみちると思われるので、おそらく殺したのは紡かなと。


『END4:逃走』
知紗BAD。
館の謎も知紗のバックボーンも何も分からないけれど知紗の「館を出たい」という願いを聞き入れ共に抜け出すED。
結局抜け出せず餓死するのですが…
このルートでのエロシーンが「もう死ぬから」と投げやりな感じがあって一種のエロゲっぽさがあって好きでした。
エロで虚無を描くの好きです。


『END3:殺人鬼』
拓真の死体を見つけてしまい、双子抜きで教会に近付き過ぎ死亡ED。
こちらのルートはおそらくみちるが犯人かなと。


『END1:青い鳥のため』
記憶をある程度取り戻すが周りを拒絶しみちるに正面から殺されるED。
このEDでみちると主人公の過去が示唆されるので関係生が序盤で垣間見えるのが良かったです。


『END10:永遠の楽園』
みちるノーマルED。
みちるの事は何一つ分からないけれど「楽園」を受け入れみちると過ごし続けるED。
実はED曲のタイトルと同じEDタイトルなんですよね…
同タイトルである事が「過去も真相も何一つ分からないけど物語の正史です」という風にも受け取れるのが面白かったです。


『END14:必要な人間』
知紗と勉強し数学の才能を開花させるED。
何らかの才能が開花し、世間で明らかに必要な人間だと判断されると館を出される辺りがシステマチックだなと。
館は社会的に必要無い人間は押し込めるけれど社会的に必要な人間は追い出すのですね…
館に教室や音楽室、図書室があるのはそういう才能開花の為かと納得しました。


<シナリオ2>
「シナリオ2」から攻略可能なキャラは空音&陸乃と真希奈。
「真希奈」は真希奈死亡EDのみ。


『END5:狂気の中で』
この手の作風なので「主人公が狂うEDあるでしょう」と思ってたらあったのでニッコリ。
全てを受け入れられず狂気の世界に囚われ館を全滅させる主人公…ぶっちゃけ一番ヤバくなる素質はあるとは思います。


『END6:瞬く星の下』
空音&陸乃ルート。
大企業瑠璃垣家の令嬢だった空音と陸乃。
陸乃は真っ直ぐ素直で空音は捻くれながらも良い子で。
いつでもニコイチとして扱われていた双子だけれどある時、空音は自分よりも良い子だと思っている陸乃と比べられる事を恐れる。
自分は陸乃と同じでは無く空音として扱われたいと思った空音は反抗を重ねるが、どんなに反抗しても陸乃は声をかけて来て。
良い子であり続ける陸乃に比べられ続けた空音は自己を見失い心を閉ざした事で家から追い出され館へと連れて来られる。
陸乃は空音を一人にしたくないからと付いてきた少女で、沙羅は双子の護衛の女性だった。
最初は陸乃の優しさに惹かれるが、母親に死んだ兄の名前を呼ばれ続けて来た主人公は陸乃と比べられる事で心を閉ざした空音に同情し、双子を選べないほどに好きになってしまう。
優しさと同情、別の感情で双子を好きになる過程が綺麗に描かれ主人公の恋愛感情をスムーズに受け取れた所が丁寧だったと思います。
結局、空音も陸乃もどちらも良い子でお互いの事を思いやるがあまりすれ違っていて。
陸乃は空音と同じ物を見たい、一緒に苦痛を分かち合いたい。
空音は陸乃と比べられたく無い、離れて別の人間になりたい。
お互いがお互いを大事なのだけれど、願いは同一では無い所が人間らしいなと。
そんな二人の間に主人公が入る事で「主人公を通して相手と一緒に居たい」という願いに消化させたのがとても良かったです。
同じ人間を好きになるとややこしくなる恋愛物が多いですが、同じ人間を好きになるからこそ願いが同一化されるという流れになり、三角関係にならなかった所が上手く。
主人公が共に居る事で空音とも一緒に居れるようになった陸乃。
主人公が陸乃とは違うと自分を認めてくれたから救われた空音。
3人の関係がとても良い救済になっていました。
だからこそエロは3Pなのですが、ただ、エロの方面で申し上げたいとしたら、一回目のエロの後、ルート後半で空音か陸乃を選びそれぞれの2回目エロを見れる構成なのですが、一回目のエロの時に挿入の際に選択肢が欲しかったです!
これ、3Pでは毎回言ってるのですが、3Pエロの際は初挿入を選ばせて欲しく。
その分岐で2回目エロの分岐で良いじゃないですか…初挿入は空音固定なので、こう…プレイヤーに選ぶ余地が欲しかったなーと思います。
その点以外は三角関係で面倒くさい流れにならず綺麗に収まり良かったです。
あと、双子ルートではありますが、このルートで姿を表す沙羅が双子大好きで格好良く見えてめちゃくちゃ萌えキャラだったので色々と掻っ攫ったような気がします。


『END11:赤い塔』
知紗のバックボーンに触れずに館の中で友人として仲良くなってしまったルート。
知紗は「館から出たい」という確固たる信念があるので、知紗の事を知らなかったり、誰とも関係を築かず5章まで行き、人では無く館に準じる形になるともう手遅れになるんですよね…
「館から出ない主人公は要らない」「館に準じる主人公は要らない」「でも、大切だから一緒に居たい」と判断され、主人公もろとも燃やされます。
決して相容れない、けれど一緒に居たい。
そんな相反する想いを抱えて主人公もろとも館を燃やす知紗。
バックボーンを知らない=中途半端に関わる事なのでBADなのは分かりますが、行動派は恐ろしいです。


『END12:幸せのため』
真希奈ルート。
本作で異端なキャラクターはおそらく真希奈です。
真希奈には生きて一緒に添い遂げるルートはどのルートでもありません。
理由は明白で、彼女は「痛み受ける事を知っている弱者」でありながら、「自分が受けた苦しみは他の人には与えないようにする」という「自分がされて嫌な事を他の人にもしない」という行動を取る事が出来ないからです。
彼女は「自分は弱者だから」と「弱者」を盾に「自分は悪くない」と自己を正当化します。
結果、社会的に不必要だと判断された人達の中で更に社会不適合者になります。
ようは作中で唯一コミュニケーションを取らないキャラクターなんですよね。
そして、上記で語ったように本作は「主人公が拠り所、依存先、護る相手」を探す物語で、真希奈が登場する5章の時点で主人公は他のヒロインを護る対象にしているか、もしくは館の「楽園」そのものを依存先にしています。
真希奈は主人公に話しかけられ続ける事で唯一主人公にだけ心を開きますが、主人公から真希奈への矢印は5章の交流だけでは向きません。
なので、「楽園」を壊すかのように振る舞う真希奈は主人公と結ばれても、「楽園」を重視した主人公に殺されてしまうという。
かなり不遇な子ではありますが、彼女の「何をしても自由な「楽園」で何で過去の話をしてはいけないの?」というのはかなり本質を射抜いているとは思っています。
攻撃的ではありますが「幸福は義務です」に真正面から唯一歯向かうキャラであり、ある種の「正しさ」を背負っている子だなと。
でも、「傷ついて集まった人達が集った館」では「攻撃的」である事は罪なので、死ぬ道しか無いという。
ミステリー物で言うなら「こんな場所に居られるか!俺は部屋に帰るぜ!!」系のお約束を与えられた、そんな不遇なキャラクターだと思いました。


<シナリオ3>
「シナリオ3」から攻略可能なキャラは沙羅と灰奈と紡と真希奈のアナザー。


『END7:護るべき者の隣で』
沙羅ルート。
沙羅は空音&陸乃のボディガードの為、他ヒロインのようなキツイ境遇は無いのですが、双子の事を本当に心から大事にし、親愛で守っている所に好感が持てたり。
あとは、喪服のような黒いゴスロリで未亡人のような美しいお姉さんで百戦錬磨そうな外見なのに中身は人見知りで挙動不審で口下手なだけで男性経験全く無しという大変可愛らしく見た目と中身のギャップがたまらないキャラでした。
見た目とか言動はキャラの中では一番好きです、ギャップ最高。
エロシーンで「女性のボディガードはそういう目に合う事が多い職なので護衛術を身に付けている」という理由があり合意でも主人公に無意識に手を出してしまう為、「攻撃しないように縛ってくれ!」という流れは笑いました、そして縛りプレイがエロい。
おそらく作中で一番強く、みちるも紡も手を出せない人なので、彼女を味方に引き入れると一気に攻撃力防御力が上がります。
双子との交流しつつも沙羅との交流を重要視する感じなのですが、「自分と一緒に居るのはお嬢様方が好きだからだ」と思ってる沙羅が大変可愛かったです。
悪意も無く純粋にお嬢様達大好きで、一度信頼関係になると徹底して味方してくれるので、とても善のキャラなのと、何を言っても結局「可愛い」になってしまうキャラなので、色々と"強い"キャラだなと思います。


『END8:解けない魔法』
灰奈ルート。
途中で館に疑問を抱いた際に、灰奈を受け入れると灰奈に救われ、灰奈の為に生きる事になります。
良い所のお嬢様で母が居らず父も仕事で家政婦に預けられながら育てられた灰奈。
家政婦は大人しい灰奈にストレス発散で虐待を行うようになる。
家政婦との暮らしの中で何もしてもらえず掃除をする事で居場所を得てきた灰奈は学校でも虐められるようになり、父にも捨てられ館に捨てられる。
「シナリオ3」は作中でガードが硬い方のヒロインのルートなのですが、灰奈もまたその一人。
キッチンに入れるように館の事情を知りつつ「楽園」に準じています。
そんな灰奈の心を開いていくのがこのルート。
色々と加虐心をそそられる灰奈ですが、途中のお風呂場のシーンで痣だらけの身体を主人公に見られるシーンはドキドキしました。
あぁいう痛々しいの、性癖です、大好き。
虐待は受けても性的虐待じゃ無かった辺りが救いにも取れたり、ダークな話ではありつつも白パケのエロゲらしさがあったり。
エロシーンでの裸のCGでも痣がしっかり反映されていて痣の性的持ちとしては大満足。
ラストは館では無く主人公に心を寄せるようになり、陸乃の手を借り館を脱出し、陸乃の家で働くので館脱出EDになります。
空音は館に残りますが…空音の願いは主人公と交流を持たない以上、陸乃と離れる事なので、彼女の願いも一応では叶ったのかなと思っています。


『END9:幸せの茨道』
紡ルート。
途中で館に疑問を抱いた際に、紡を受け入れると紡に救われ、紡の為に生きる事になります。
紡は灰奈とは違い主人公には決して準じる事は無く、館の「楽園」の維持の為にを崩す事は無いです。
というよりも、館の平穏を守ってくれているみちるに準じている所があります。
みちるの規則を守り、みちると共に不適合者を殺している少女。
なので、彼女の為に生きる=紡と一緒に手を汚すという道に進みます。
他ルートのように脱出はせず、傍から見ると幸福には見えませんが、主人公と紡の二人は閉じた世界でも「楽園」を守り生きて行くので一種のメリーバッドエンド感があり個人的には好きです。
「二人だけで閉じた世界」などが好きなので、こういうEDが刺さりました。
紡は彼女の両親から捨てられ外の世界には戻りたいと思っていないという境遇もですが、今まで沢山の人を殺しているので館の中でしか生きて行けないという流れも納得でした。
紡には館で生きる道しか無いよなぁと。
境遇とメリバが絡まった良いEDだったと思います。


『END13:永遠の幸せ』
真希奈アナザーED。
「END12」後に到達可能。
異端者である真希奈が更に異端を見せつけるED。
基本本作はルート分岐後は一方通行なのに対し、このルートの真希奈は「END12」の記憶を持っています。
ループ物では無いのですが、このルートだけループしているという設定。
作中でも出てきましたが、真希奈は「デウス・エクス・マキナ」の要素を持ったキャラだなと。
世界観破壊者というかトリックスターというか。
基本根底の性格は良い子ばかりのキャラの中に唯一居る無自覚の邪悪というか。
そういう作品外部からの意図を感じるキャラでした。


<シナリオ4>
「シナリオ4」から攻略可能なキャラは知紗とみちるのGOOD。
最終シナリオでようやく序盤の二人のGOODが見れるのが面白い構成。


『END15:踏み出した道』
知紗ルート。
ここでようやく今まで明かされなかった知紗のバックボーンが明らかに。
父と母と普通の家庭ではありながらもあまり折り合いが良くなかった知紗。
ネットで出会った嵯峨山という大富豪のお爺さんと友人関係になるが、嵯峨山氏が無くなった後に養女として引き取られ遺産相続人になってしまう。
莫大な遺産が手に入ってしまった知紗は嵯峨山一族の逆恨みや暗殺から逃れるために館に来ていたというもの。
知紗ルートでは主人公と親密になり、館の住人と家族のような関係になる事で、「家族に恨まれるとはどういう気持だったのか」と今まで遺産相続人にした嵯峨山氏に抱いていた不満を払拭して行きます。
ただ、このルート、「実は遺産相続人というのは嵯峨山氏が知紗に家族を想う気持ちを知って欲しく3年間の契約で吐いた嘘のような状態だった」というのが真相になり、遺産を破棄どころか相続権を持ってなかったという事になります。
なんというか、この真相、他の知紗ルートの結末を知っていると「最初から言っておけよ」なんですよね。
おかげで命の危機にさらされるどころかガチで死にますし…嵯峨山氏、知紗が家族を感じられず孤独だったのを何とかしたかったのは分かりますが、死んでしまっては元も子もないだろうと。
知紗の館に居る理由がぶっちゃけ無いも同然だったので、知紗ももう少しちゃんと調べておけと思ったり、知紗が他の子の過去を暴き心にも無い事を言うシーンを改めて見ると「いや、知紗の理由の方がそんなに無いんだが…」となってしまうのがなんとも。
正直、知紗の家は何とか修正可能なのに対し、知紗の家よりも主人公の家の方が前途多難そうなので、知紗には主人公と主人公の両親をしっかりと取り持って欲しいとは思いました。


『END16:翼広げて』
みちるルート。
来栖という社内内部争いが凄まじい企業一族の娘。
内部の争いで他の家族が殺された事になっており、彼女も行方不明扱いとして館に捨てられた。
来栖家は昔の争いで雪島という家に救われている。
雪島は主人公の家であり、実は幼少期にパーティーで主人公と一度会った事があるという幼馴染。
幼少期には主人公は兄の名前を名乗っていたので、みちるは主人公の事を名前だけでは判別出来なかった。
彼女のルートは彼女を救う為に今まで一切出て来なかった主人公の両親…来栖を救った父親と交渉する話の展開になります。
館を出る為に館に来るいろはと交渉したり、かなり精力的に主人公が動くのと、真希奈は救えませんがそれ以外のキャラクターは全員救済されるので実質のトゥルーED。
ただ、最初はただの捨てられる場所で「地獄」だった館を「楽園」に変える為に規則を作ったり不適合者を殺すようにしていたみちるですが、なんだかんだ理由があったとしても、みちるも紡と同じく人を殺めている立場なので、「館から出る」という綺麗なだけのED一つだったのが腑に落ちない所はありました。
これが殺人未遂で殺されようとした人達がみちるを責めてないとかならみちるも救われても納得するのですが、もう手を下していて何人も殺しているのに「許される」というのは流石に…死んで行った人達に顔向けが出来ないとは思ったり。
「生きなくちゃ」の結論になるのは良いとしても「罪は罪として法で裁かれる」方がまだ納得出来ました。
主人公と仲良く暮らすだけってのはどうなのかなぁ…みたいな。
一応「「楽園」の管理者を全うする」というEDが序盤にはありますが、全てを知った上でもその選択を選ぶEDも欲しかったです。
このルートの知紗は色々な情報からハブられているのですが、反旗を翻さなかったのは疑問に思ったり。
結構他ルートだと「絶対に館から出る」という意思が強すぎてやらかしたので、途中で知紗が最後にでも何かするかな~と思いましたが特にそんな事は無く。
言葉で説得して納得するので結構拍子抜けした所はあります。
あとは、結局主人公の両親や親関係でお咎めは無いんだな…と。
自分は毒やクソ親が本当に駄目なので、そういう親が社会的に何らかの制裁が無くのうのうと生きてるのが合わず。
いろはさんは「こういう施設は世界中にある」とは言いますが、それが世間に知れ渡り痛い目を見るみたいな展開があっても良かったのでは?と思います。
諸悪の根源に全く業が返らない所がどうしても合わなかったです。
全員(みちるを殺そうとしたので自業自得の真希奈以外)救われてハッピーなEDではありますが、世界全体で見るとモヤッともするEDでした。
まだ紡の「世界に二人きり」で社会から切り離されたEDの方が好みでした。



色々と個人的にモヤッとする箇所はありつつも、「居場所を手に入れる」という主題を貫き、透明感の溢れる世界で纏められた良世界観ゲーミステリーだったと思います。
Cabbitの処女作ですが、処女作でこれは確かに凄かったです。
CabbitはMANYOさんが全作参加されていらっしゃるので2作目の「キミへ贈る、ソラの花」をまたプレイしたいと思います。
音楽に関しては「永遠の楽園(とわのらくえん)」があるだけで神オブ神なので、満足度がとても高いです。
ED飛ばせるのにほぼ飛ばさず毎回聞いていました。
「キミへ贈る、ソラの花」もサントラは持っていて主題歌をずっと聞いていたので、主題歌の歌詞がどう繋がって行くのかを楽しみにしたいと思っています。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:愚者の館(アーカイブ) 様
http://sagaoz.net/foolmaker/
 翠の海 -midori no umi- ページ
http://sagaoz.net/foolmaker/game/m/midorinoumi.html