【男性向け18禁】
2000年09月08日発売
『Key』※リンク先公式HP
【AIR】(PC)(18禁) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。
投稿が時季外れになりそうな予感がしていますが、2000年の名作、「AIR」に。
プレイ時間は約7時間30分くらい。
7でもインストール可。
ディスレス起動可。
7ではBGMがループしませんが、『inmm.dll』を導入すればBGMループ可能。
Standard Editionでは無く、初代をプレイ。
履歴は相変わらずの無し。
『AIR』は京アニ版のアニメから入りPS2版をプレイしているので、話に関しては全部知っておりほぼ再プレイのようなものになりますが、プレイ自体は今作の季節通り8月の半ば、夏の真っ只中にプレイ出来たので、とても良い体験が出来たと思います。
今作は一言で言うならまさに"夏"。
"夏"の概念、"夏"の具現化と言っても過言ではない作品。
背景、色彩、音楽、SE、全てを包む空気感、そのどれもに"夏"が内包されています。
今なお、「夏のエロゲーは?」とエロゲユーザーに聞いても確実にTOP10には…下手したら普通にTOP5にすら入るポテンシャルを持っているかと。
新しいコンシューマ機器が発売される度に毎回コンシューマ版が移植されている所にも強さを感じます。
しかし、そんな風に数々の移植を果たし、エロゲ、ギャルゲーの看板作品!というような面構えをしていますが、正直話に関してはかなり王道から逸れたアクロバティックな話だなと再確認。
序盤は王道っぽく始まりながらもルート後半でメインヒロインが死の危機を迎え、主人公の不思議な力により生還、主人公は消え、物語は過去へ。
過去が明かされるもかなり抽象的な表現が多く、数々の疑問を残しながら再び現代へ。
時間が戻り、視点がカラスへと変わり、主人公の行動を俯瞰するような形で一周目と同じようで違う展開を迎えながら、再びヒロインが死の危機を迎え主人公が消え、主人公の不思議な力によりヒロインが生還、主人公が消えたその後をカラスの視点で追い続ける…という。
ヒロインが最後に死ぬ展開の作品は多々あれど、主人公も消えてフェードアウトし別の存在…動物の視点で物語を追っていき、最後は完全にヒロインと母の物語になるというのは後にも先にも『AIR』くらいなものなのでは?
エロゲ、ギャルゲの"顔"!スタンダード!みたいな立ち位置になってますが、全っ然王道から逸れに逸れてます。
更には過去編のSUMMERで出てくる『翼人』の使命や、何故最後、観鈴が死ななければならないのか?などは正直本編だけではかなり?となる部分が多く…
しっかりと語らずに断片的な要素だけユーザーに伝えてユーザー側に考察を委ねる所や、『星の記憶』などの抽象的だけどなんかこう、格好良くて映えるみたいな要素の…こう…黙して語らない、語っていない部分に90年代後半のサブカルでの流行り的なのをビシビシと感じるので、設定などはキッチリ語られる方が好きな人や、曖昧に語られて雰囲気だけでイイ感じに引っ張っていくような作品が合わない人にはとことん向かない作品だなとは感じます。TVアニメ版、PS2版に触れてもなお、「『翼人』の使命って何よ?」「観鈴が神無の生まれ変わりなのは分かるし、『呪い』っぽいのに掛かってたのは分かるけど、その『呪い』って何だったのよ?」「ほんで、観鈴は『呪い』のどういう影響で死ぬのよ?」などの部分は分からないまま今まで居たのですが、今回PC版に触れて、考察、解説サイトを回る事でようやく色々な真相を知る事が出来たのですが、そういう「本編で語られない部分に重要事項が詰まってる」ようなのが苦手なタイプとしては「素直に手放しで全部褒める事は出来ないな…」とは感じました。
あと、個人的な好みとしてやっぱりヒロインには最後、生きてて欲しいと願うので、そこは好みの問題で。
それでも、そういう曖昧な設定があり、ヒロインが死ぬというラストを迎えながらも90年代後半の仄暗く生ぬる~い独特の湿った空気を帯びず、暖かく爽やかなラストにしたのは凄いなと感じました。
抽象的だったり、死などが絡むとどうしても暗くなりがちな中、エンディングにあの爽快な空気感を引き出したのはKeyならではの作風で他は中々に真似出来ないと思います。
実質、物語を追うのは3周目のようなものですが、観鈴が車椅子から立ち上がりゴールするあの一連の流れではどうしても瞳が潤んだのでその辺りはもう、完敗です。
Keyの演出力はやっぱり天下一品だと思います。
あと、今作、主人公を旅人にして学生にしていなかった点も良かったと思います。
『ONE ~輝く季節へ~』や『Kanon』など、Key作品初期は傍若無人系主人公が多く、今作も結構そのタイプの主人公なのですが、学生ではなく成人している旅人の世捨て人にした事で、傍若無人な振る舞いが受け入れやすくなっています。
色々と世間知らずな行動を取っても「まぁ、旅人で学校にも行ってなかったみたいだし…」と納得出来る形にしたのは大変良く、そういう振る舞いが主人公のキャラ付に一役買っていました。
Key作品の移植の中で、本作だけ主人公に声が付いていて主人公というよりも『国崎往人』という強いキャラクターにしたのは後半『AIR』編で俯瞰視点で見られる側に立つ事もあり、非常に効果的なキャラ付けになっていたと思います。
今もなお、『AIR』が人気なのは、『国崎往人』の人気もありそうですし、エロゲ主人公で印象に残ったキャラの上位に今もなお居続けていると思います。
絵は古き良きいたる絵。
最近だと大分現代っぽい絵柄で受け入れやすい絵になっていますが、この頃はやっぱり癖が強いです。
ただ、この癖の強さこそがいたる絵!!だとも思うので最近の流行りに落ち着いた感じは万人受けはすると思いつつも寂しさを感じます。
エロは…原作でしか無いこの表現を見たいが為に原作をプレイしたのですが…うん、あってないようなものです。
どのエロも数クリックで終わります。
まぁ、Keyらしいといえばらしいです。
エロが重要な作品では無いので…だからこそ、コンシューマしやすく、沢山移植されてるとは思います。
ヒロインと主人公の関係性的にも特に重要では無く、エロが無くても成立する…言うならば友愛、親愛に近い関係性なので、そういう所もまた、エロゲとして異端だなーと。
個人的に、恋愛よりも友愛、親愛が描かれる男女はとっても好みなので、この関係性はめちゃくちゃ好きだったりします。
音楽は…全曲良いとしか…
流石、MIDI全盛期、同人アレンジ全盛期に曲が量産されまくっただけあります。
OPの『鳥の詩』はエロゲ知らない人でも知ってるレベルの名曲。
『鳥の詩』もとても大好きなのですが、ゲームをプレイしているとEDの『Farewell song』が好きだったりしました。
『鳥の詩』は宿命の切なさなのに対し、『Farewell song』は全て終わった後の爽快感のようなものを感じて。
「全てが終わったんだなぁ」と余韻に浸れるのは『Farewell song』でした。
BGMは…やっぱり『夏影』がダントツで好きです。
あまりにも"夏"、"郷愁"、"眩しさ"を詰め込んだ曲すぎます。
"夏"を音で感じる曲過ぎて、頭一つ飛び抜けています。
プレイ順は
佳乃→美凪→観鈴→SUMMER→AIR
の順で攻略
『霧島佳乃 ルート』
『AIR』の中で一番印象に残りにくいキャラだと思われるので、ちょと不憫。
佳乃ルートは佳乃よりも、『翼人』の『羽』を拾い、『羽』に狂わされた人の物語の方が重要だと思うので、佳乃自身の話が薄くなりがちなのがネックかなと。
ルート最後の方の過去の夏祭りの空気とか、佳乃と母親の会話とか、雰囲気は好きなんですけどね…
あと、お姉さんが冷静に見えてめちゃくちゃやらかす人なので印象に残る人でした。
『遠野美凪 ルート』
美凪とみちるの姉妹のお話はグッとキますが、もう少し美凪と母の話を見せて欲しかった…というのが本音。
美凪の母の出番がそんなに無いので、二人が日頃どんな風に生活していたのかが謎なのと、精神を患っているのは理解しつつ交流が無さ過ぎて、結局「お母さんの事、良く分からなかったな…」となりました。
あと、このルートだけ分岐があり、片方が美凪と町から逃げ出すエロ有りルート、片方はみちるとの別れと出会いが描かれたみちるルートになっており、正史がエロ無しな方なのには驚きました。
エロゲなのにエロ無しの方が正規ルートとか、そういうの大好きなのでこのルート分岐にはテンション上がりました。
あとは、やっぱり、みちるとの別れのシーンは印象的で記憶に残り続けています。
…ただ、正直、佳乃と美凪に関しては物語の中心では無く、縁取りを…骨組みではなく肉付け的な部分なので、『AIR』全体で見て強く印象に残るかというと…やっぱり圧倒的に観鈴の物語だと思います。
『神尾観鈴 ルート』
アニメ版を見ていた時に、ラストに「えええええ!!?」となったルート。
ここで終わって次が過去編なので、「え、いや、観鈴は?観鈴はどうなったの!!?」と気が気じゃありませんでした。
SUMMER編やある程度の状況を把握していないと謎に体調が悪くなっていって謎に弱っていって謎に死にかける上、主人公も消えるので、かなり後半置いてけぼりだった記憶。
…まぁ、真相を知ったり考察見たり、全てを把握した今見ても、唐突感は拭えませんが…
それでも、その全ての唐突感が唯一無二だなとも感じます。
『SUMMER ルート』
過去編、観鈴の前世、『呪い』の始まり。
柳也、神無、裏葉の疑似家族の空気がかなり好きです。
エロゲでありつつもヒロインの神無と柳也が恋愛的に結ばれるシーンが無いのがまた…
そういうシーンが無いのに柳也が神無を本当に大事に思っているのが伝わるのがまた…
たった一人の少女を救う為、子孫を残し続ける…
柳也と裏葉に愛は確かにありつつも、恋愛というよりも親愛の方が強く、二人とも神無を本当に大事にしているからこそ今の世では神無を救う事は出来ない、だからこそ未来に託すというような形で子を残す姿がエロゲの中でも独特なエロの方向性だと思います。
Keyの中ではかなり濃い目のエロなのですが、「エロい」というよりも「手を組む!」というような空気で…男女カプというよりも、男女バディ好きに刺さりそうなエロだと思います。
神無に降り掛かった『呪い』に関しては、考察サイトを見ないと理解出来なかったので、もう少し分かりやすく書いて欲しかった気持ちもありますが…
あまり語りすぎると「語らずの美」が崩れるとも思うので中々に難しいなーと。
断片的な要素から空白を構築していくのが苦手なので、空気感は好きですが「これってどういうことなの??」となった部分が多々あった所もありました。
『AIR ルート』
最終ルート。
視点がカラスのそらになり、過去に遡り、観鈴ルートの前半を俯瞰視点で眺め、後半を見届けるルート。
アニメ版でカラスの視点になり、「いや、この構成、原作のゲーム版ではどういう作りになってるの???」と気になったのがゲーム版の『AIR』をプレイしたきっかけでした。
ゲーム版をプレイしてアニメ版を思い返すと…完全にゲームをアニメにトレースしてたのが分かり驚愕。
ノベルゲームってあそこまで完璧にアニメに出来るんですね…流石、主要スタッフの殆どがゲーム版をプレイしてアニメ版を作っただけあります。
12話に収まった事といい、後にも先にもこれだけ綺麗な別メディア化は中々に無いかと。
主人公交代…というか往人の魂が人ではない他の動物…カラスに転生し、やり直すというのは、観鈴の呪いが「人と触れ合えない」なので良く出来たと思います。
確かに、そらに対しては癇癪を起こしてないんですよね、人じゃないから。
そうやって本当に何も隣に居ないという孤独からは開放された観鈴。
彼女は『翼人』の記憶を最後まで見続け、命を終えますが…この辺りが考察を読むまで分かっていませんでした…
観鈴の『呪い』は「人と触れ合えない」ことと「神無の魂が空に縛られていて悪夢を見続け苦しんでいる」ことの二重にあって、『呪い』自体は主人公の最後の力によって消えたのですが、観鈴が継承し続ける『翼人』の記憶は『呪い』とは全く別物で、『翼人』の記憶は人の身で見続けると負荷がかかり、最後の記憶を見るとどうあがいても死んでしまうんですね…
なるほど、『呪い』とは全く別物になるため、解除する事が出来ない、と。
一応、主人公の最後の能力開放によって『呪い』の解除と寿命を少しだけ伸ばし、今までの転生では中途半端にしか継承出来なかった『翼人』の記憶を完全に継承出来るようにしたため、観鈴の代で全ての記憶が人の身で継承し終わり、次の転生に『翼人』の記憶は引き継がれなくなった…というのを考察サイトでお見かけしました。
…そして、最後の子供達が次の主人公と観鈴の転生先…かも?というのも見かけました(同じ時系列に主人公と観鈴が居るのが謎ですが、その点に関してはそらと主人公が同じ時系列に居るので、それと同じなの…かも?)。
色々と「そういう事だったのか」と思いつつ、「いや、でも、こんなの、考察見ないと分かんないよ!!?」と作品内での謎は作品内で全部語られるのが好き派の自分は地団駄を踏んでいます。
あと、やっぱり、観鈴は観鈴の代で生きて幸せになって欲しさがありました…
やっぱりさ…あんなに苦しい思いをして継承して…でも死んじゃうってのはさ…受け入れがたいです…
幸せに海で遊ぶ観鈴と晴子さん、そして往人さんを見たかったよ…
雰囲気はもう最高ですし、音楽、背景、演出、独自性などは何もかもが神がかっていますが、好みの部分とそうじゃない部分が綺麗に分かれる作品だなーと感じました。
それでも、全て、綺麗に、"夏"の空気と胸にジワリを響くモノで薙ぎ倒していくので、凄まじい作品だとは思います。
間違いなく名作で、同時に快作です。
当たり前のように移植されまくって、次代に続いていっていますが、今作はエロゲ、ギャルゲの中ではかなりの異端児です。
そんな異端児が普通に受け入れられているのは…改めて考えると不思議だなーと思わざるを得ませんが、そういう疑問を全て掻っ攫っていく作品力があるのだと思います。
同年代に発売された『sense off』も概念の具現化の極致でしたが、『AIR』も同じように概念の具現化の極致だと思います。
こんな快作が同時期に発売された2000年は…凄い時代だったとしみじみ感じました。
※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:いちの部屋 様
【http://www5d.biglobe.ne.jp/iaia/top.htm】
AIR ページ
【http://www5d.biglobe.ne.jp/iaia/ih/ari/ai.htm】