ひっそりと群生

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【僕らは灰色から始めた】感想

【男性主人公全年齢】



2011年09月09日発売
山海豚厨房』様 ※リンク先公式ブログ
僕らは灰色から始めた】(PC) ※リンク先BOOTH
以下感想です。








「町は嫌い、けれども住む人は…そんなに嫌いでもない」という微妙な心情を丁寧に分かりやすく描いた作品。
「勉学での挫折」や「故郷への不満」を昔に感じたことがあったり…
むしろ現に今、感じている人にはとてもクるものがあるかもしれません。



『東大を卒業するも就職に失敗し、公認会計士浪人を続ける主人公・佐伯秋彦。
 彼はある出来事がきっかけで、東京から日本海側の地方都市に出戻りを余儀なくされる。
 不況の直撃で寂れきった田舎町で、彼は高校時代の悪友・境蓮望の妹である未来の家庭教師を引き受ける。
 秋彦と同じく故郷の町に失望した彼女は、自宅に引きこもって東大受験のための勉強を続けていたのだった――』
(公式より引用)



特典版でのプレイ。
選択肢無しの一本道。


「失敗や出戻りで、どうすればいいのか答えを模索し続けている現在」
と、
「先が決まった中、残りの学生生活を謳歌する学生時代の過去」
を交互に繰り返しながら進んでいきます。
とある一件で変わってしまった心境や状況、けれども町に居る友人は変わらずに受け入れてくれて。
「未来」と接しながらそして「望」を中心にどんどん、ゆっくりと、しかし、確実に前に進んでいく物語。


とても綺麗な構成で、好きではない町で悪い真っ黒な所もある、けれども良い人には囲まれて真っ白な部分もあって…
それが綺麗に混ざり合い絶妙な灰色の町だけれども、自分達の故郷はここにしかなく。
そこから始めたし、また、初めて行こうという主人公の、
「町自体は嫌い…けれどもここしかなくて、住んでいる人は好きでもある」
という故郷に対する複雑な心情を描ききっていたと思います。



『システム、演出』
NScripter製。
履歴はオプションにはなくマウスロールのみ。
あと、スキップもデフォルトでは無いので、Ctrlスキップになります。
最初の章選択で、選択の際にカーソルを合わせて色が変わったり、音が鳴ったりもしないので、ちゃんと選択されているか不安がありました。
変わった演出はなく。
ただ、現在と過去を交互に進む所や、望の件で1章ずつ解禁されていく引き込みは良かったです。


『音楽』
BGMは一曲一曲丁寧でした。
ただ、個人的に印象深い曲は無かったかなぁ…
あと、BGMはオリジナルみたいなので鑑賞モードなどは欲しかったです。
雰囲気には凄く合っていたと思います。
静かで明るく…でもどこか物悲しい曲は凄く灰色な感じが漂っていました。


『絵』
立ち絵も無いので若干少なめに感じました。
ただ、欲しい時に欲しい絵があったとは思います。
背景は写真背景。
ファミレスの時のハンバーグが出て、そして空になる背景など細かい所が好きです。
雰囲気は凄く出ていました。
主人公が町を好んでいないどんよりとした空気を背景からも感じました。


『物語』
文章は履歴の件を除けばクセもなく、文字も大きめでとても読みやすいです。
構成は綺麗だったと思います。
望みの一件で引き込んで行くのはとても良いと思います。
ただ、望みの一件は重要とは言え内容に反して引き伸ばし過ぎかと。
個人的にその望の真実が肩透かし感もありました。
当たり前の事が当たり前に描かれる。
この世界のどこにあってもおかしくないノンフィクションの雰囲気を描いたフィクションだと思います。
大きく笑う所も無いですが、静かにストンと入って来ました。
キャラクターは皆良いキャラです…良すぎる程に。
前向きなキャラばかりで町は灰色でも優しい世界だと思います。
そして現実に即してる分、科学部の部長さんが若干浮いていたなぁと思いました。


『好みの部分で思った所』
灰色の雰囲気出ていて、雰囲気の出し方などは好みですが、下記に書きますが現実に即した面での理解度や共感度で完全には楽しめなかったという意味で、
「凄いと思いつつ個人的に好みではないライン」
に入れておきます。
ですが間違いなく丁寧でしっかりとした構成の為、他の方にお勧めは出来ます。





以下ネタバレ含めての感想です





好みの部分でどうもピンと来なかったというのが素直な気持ちでした。
丁寧だと感じつつも、
「勉学での挫折」と「故郷への不満」
が軸になっており、物語の80%を占めるのでその部分を理解出来ないと世界に浸るのは難しかったです。


基本的にキャラが全員、今居る場所じゃなく前に進もう!前に進もう!
としているんですよね。
悪い言い方では意識が高い、良い言い方では向上心が高い。
「何か出来ることをしたい、しなければ!!」
みたいな…立ち止まることはそんなに悪い事かなぁと感じたり。
「別にゆっくりしても良いんじゃないかなぁ」
…と感じた部分が多かったです。
ですが、こう感じたのは自分が故郷への不満が無いからなんだろうなぁと。
彼らが居た「灰色に見える町」だったら嫌でも、
「こんな所でゆっくりしてられるか!?俺は進む!!」
になるのかもしれないと思いつつ、その焦りに理解は出来ませんでした。


「勉学の部分での悩み」はもっとです。
直ぐに離れたいとも思わず、不満もない場所にゆっくりと生活していて、トントン拍子に進んだ人間が簡単に理解できる部分ではないという意味で、
「意味が分からない理解出来ないという意味での共感できない」
というよりも、
「自分とは真逆過ぎて簡単に「分かるわぁ」…とは言えないなぁ」
という意味での共感の出来なさを感じていました。


あと、望の件の意味深な雰囲気は凄く引っ張り過ぎと感じ。
正直、彼女が何かを起こし、もう手が付けられない状態になってると思ってたんですよ。
でも真相は「そうか…」くらいな感じで、友人が汚職ででそこまで暗くならんでも…と。
暗くなるの分からなくもないですが、死んだ並のお通夜ムードでちょっと驚きました。
望が誰かを例のバイクで轢き殺してて刑務所に入ってるとかならまぁ分からなくもない雰囲気だったのですが、世間様には迷惑かけただろうけど、誰か死んだとかはなく生きてるんだから、ここまで暗くならんでも道はあるだろうと。
その生きてるからこそ道を作るのがラストなんだろうなとは思いつつも、引っ張り方が過剰だと感じたので。
それと完全にキャラクターが現実に即した濃さで、そこが良い所だと思いつつ…印象深いキャラが偏った感じがしました。


あと「非リア充サウンドノベル」とジャンルにありますが全然リア充してますね。
故郷に帰ったら迎えてくれる人が居る、友人が汚職で捕まって落ち込んで生活が変わるほどの仲間が居る。
それだけで十分リア充かと。


全体的に纏まってましたが、全てのキャラからこう…意識の高さ、向上心の高さを感じてしまい。
物語なのでフィクションなのは当然ですが、作風から現実のどこかだけど、自分とは真逆で相容れない世界や人達を覗いているようなそんな作品だったので、どうもイマイチ乗り切れませんでした。
ゆったり、日々を気ままに生きている人間には、
「東大に行きたいとか、故郷の盛り上げや復興とか凄すぎる人達だなぁ」
という気持ちです。


でも、この「勉強での焦り」と「故郷への不満」持ってる人は確実に多いと思うので、とても話は分かりやすく構成も綺麗なので万人受けし易い題材だと思います。