ひっそりと群生

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【ウブな二人の恋愛事情】感想

【男性主人公全年齢】



2022年08月13日配布
『ふんわりスイカ』様
ウブな二人の恋愛事情】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








福の顔も般若の顔も表裏一体。



『「春川さんと、もっと楽しいじかんをこれからも過ごしたいんだ」

 ウブな二人が紡ぐ
 恋人になってからの物語』
(公式より引用)



プレイ時間は1時間30分くらい。
分岐有り、選択肢は一箇所。


主人公、冬越将人はクラス対抗リレーで春川美椎名と一緒に委員会に選ばれた事をきっかけに恋人としてお付き合いを始める。
手を繋ごうとしてももどかしく、デートをしてもぎこちなく。
一進一退のような二人の距離。
クラスメイトの濃いオカマでオネエな夏海ジェシカや他のクラスメイトになんとか後押しされながら、二人は恋人としての関係を歩んでいた。
しかし、二人は高校3年生。
二人の間に大学受験の試練が立ちはだかる。



『システム、演出』
ティラノ製。
基本性能有り。
ズームインズームアウトの演出や、キャラクター立ち絵を動かす演出がとても良かったです。
ただ、GOODの方のルートでは最後の方の一枚絵で画面スクロールがかかった際にスキップやクリックなどをしてしまうとその後メッセージウィンドウが出なくなり固まってしまいました。
最後の一枚絵が表示された際はメッセージウィンドウが出るまで操作はしない方が良いかと思います。


『音楽』
穏やかな曲が多く、ほのぼの恋愛モノの作風にとても合っていました。
ヒロインの美椎名と友人キャラのジェシカにボイスが付いているのですが、どちらもお上手で。
一昔前はフリゲや同人でのボイスは微妙なのが多くオフにしていたのですが、最近は聞いていて演技に全く違和感を感じなくなったので、ボイスを聞くのも楽しみにしています。
ジェシカのTHE・オネエキャラでノリが良く飄々としながらも主人公とヒロインをしっかりと見つめ的確な助言をくれる演技が絶妙で友人キャラとして聴き応え抜群でした。
ヒロインの美椎名に関してはもう…声質がズルい、ウィスパーボイス好きにはたまらない囁き具合と可愛らしさがあります。
とろけるようなお声で聞いていてニヤニヤしましたし、BADのルートではそのお声でギャップのある台詞を発せられます。
どちらの演技も最高でございました。
一点だけ、ボイスリピート機能が無いのが残念。
声や演技が良かったのでリピートが欲しかったです。


『絵』
美椎名とジェシカにのみ立ち絵あり。
特に美椎名はポーズ差分は無いのですが服の差分が多く、夏の制服、私服、水着、体操服、冬の制服とほぼ全てのシーンに対応した洋服差分があり、イベントや季節の違いを立ち絵で感じる事が出来ました。
表情分も多く、照れた顔やはにかむ美椎名の顔が可愛いです。
…が、個人的には激高した顔が好きです。


『物語』
ウブな二人がウブウブで恋愛を積み重ねていく姿にホッコリ。
ゆっくりと関係を構築して行きますが、時は止まってはくれず。
3年という節目の中、受験があり、「恋愛にうつつを抜かして良いのか?」と悩む姿など、恋愛があるからこそ急かされるように積み上がっていく不安の描き方がとてもお上手でした。


『好みのポイント』
ウブな二人のドキドキ感…と言いたいですが、個人的にBAD ENDラストでの美椎名との会話と最後の叫びです。
これがある事により、単なるウブな恋愛モノになっていませんでした。
追い詰められた時の人間の顔がありました。





以下ネタバレ含めての感想です





正直に申し上げますと、序盤やGOODのルートだけでは「普通の恋愛モノ」という印象でした。
普通の恋愛初心者のドギマギ恋愛モノ。
ですが、今作が真価を発揮するのはBADのルートだと思っています。


少しのすれ違いから始まりすれ違いによって学校で上手く会話に漕ぎ着ける事が出来ず。
携帯での連絡を試みるも電話が壊れ、連絡が困難となり。
なんとか時間を取ろうとしつつも予定は全く合わず。
この不運の重なりが妙にリアルで「あるある、重なる事…」と心が沈んでしまいました。


そして訪れる大学入試の日…まぁBADらしく主人公の方が自己採点で合格圏外の可能性が出てくるのですが、そこから先の美椎名の激高がとにかく凄かったです。
主人公に反論の隙を与えない怒涛の責め責め責めの言葉。
とにかく全てを主人公のせいにし、すれ違いや自分が不快になっている所まで他責していく態度。
いやね、主人公も悪かった所はあるよ、確かにある。
でもさ、美椎名の方も後半主人公が一生懸命話しかけようとした時に自分の負の感情を優先して無視を連発したじゃないですか…
そういう所を全部棚上げして主人公を追い詰め、最後には「こんなクズに時間を使った私が馬鹿だった」と言いながら去っていくその姿。
凄い…相手の言い分を全く聞かず自分の言い分だけを貫いて反論をさせず去っていく…まさに地雷女を絵に描いたような怒りの表現に圧倒されました。
美椎名の激高責めは有名な某エロゲーでの「問い詰め」に匹敵すると思います。


あの…あまりにも描写が上手いんですよ…「あー居るよね、こういう風に怒る女性…」と疲弊してしまうくらいにリアルなんですよ。
そんな彼女の姿を一番最初に通ったBADのEDで見せられたものだから、その後、ガッカリ感が半端では無く。
次は当然GOODの方を選んだのですが、美椎名との高感度が上がる度に「いや、でも、この子、人の意見聞かずに自分の言い分だけ通してキレ散らかすんだよな…」とBADの彼女が過り。
GOODでめでたく結ばれても「いや、でも、何かの拍子にああいうキレ方するので共同生活は厳しいのでは?」とGOODを手放しに喜べないほどにBADの威力が半端無かったです。
BAD→GOODで通ってエピローグを見ると「あのキレ方する美椎名がこんな家庭築けるのか?これは幻か妄想なのでは?」となり、GOOD→BADで通ると「美椎名こんなキレ方するのかよ…無理…ガッカリだわ…」になる気がして。
それくらいに美椎名の印象を書き換えるBADだと思います。
主人公に出会う前は自分をあまり出さなかった美椎名。
負の方面で自分を出し切っていたので、これもまた主人公の影響力かな?とも思いました…全く良い感情の出し方では無いですが…


たった一つのBADによりヒロインのプレイヤー好感度がリアルに下がるという…凄まじくパワーのある負の感情を見せて下さいました。
現実の喧嘩でこのような詰めをされた事のある人は「うわぁ…」となる事うけあいです。
GOODのシンプルな恋愛モノも良いのですが、BADがとても一見の価値がある作品でした。
各々のプレイヤーさんにBADのラストを見た後のヒロインの印象の変化を是非お聞きしたくなりました。