ひっそりと群生

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【死線間の友人】感想

【男性主人公全年齢】



2019年02月12日配信
疑似集団X』様 ※リンク先公式HP
死線間の友人】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








どんなに特殊な物事に憧れても、どんなに特殊な物事にしがみついても、私達は現実の中で生きていくしかない。



『思春期に入ると無作為に陥れられる「死線」。
 そんな世界に紛れ込んだ、二つの視点から繰り広げられる『死線世界』の小さな物語。』
(公式より引用)



「死線」という世界…感覚…モノが存在し、そこに入ってしまうと人間は生きては行けない。
しかし、主人公、金本義人は「死線」を超えた事のある存在であった。
そんな彼の前に友人が「死線」に入ってしまった少女、高室つるが現れる。
彼女は「死線」を知る為に、理解する為に金本に関わっていくのだが…


正直、下記でも記しますが、システム周りはビックリするくらいに悪いです。
けれど、それでも、このツールで表現したかった事、演出は伝わりました。
システム周りが悪いとイライラしてしまう私が、イライラよりも話や演出に魅了されて行きました。
このようなゲームには巡り合う事は中々に無いとはっきり言える、そんなゲームです。
確実にクセが強いです、人を選びます、動作の遅さから駄目な人は即シャットダウンしてしまうでしょう。
それでも、私にとっては確実に惹き付けられる何かがゲームの中に存在していました。


このゲームの世界を漂い、揉まれ、彷徨って…
終わってみれば…なんて独特で、個性的な雰囲気を持つ難解な世界観だったのだろうと唸ります。
世界観に関してはきっと、自分の理解力のせいで正直何一つ理解できていません。
「死線」の事も何一つ分かっていないでしょう。
最初に設定を聞いた時は、「厨二的な物か?」と正直思ってしまいました。
今となってはそんな言葉はとても当てはまらず、きっとどんな言葉にも当て嵌まらない物語なのだと理解…は出来なくとも納得出来ます。
地に足が着いた感覚がない世界で、けれど、それでも芯を大きく貫く物、終わった後に心の中に確かに一つ残る物がありました。


起動画面にある白く漂うフワフワとしたモノの中で一本しっかりと生えている木のように…
曖昧で独特でどこか危うい世界の中で、それでも一本しっかりと地面から伸びている主張がある。
間違いなく奇作、怪作の領域にあり、一度触れてみないと全く掴める事は出来ないと感じる作品で、沢山の人類の中に必ず居る私のように今作が好きな人に届いて欲しいと感じる一作でした。
(若干ホラーの要素もあるので苦手な方はご注意をですが…)



一応補足として、おそらく途中の見た目が恐ろしい人が出てくる際の現象や、中間を超えた辺りの学校の階段で起こる現象は故意に行われた物だと個人的に感じました。
演出の一部だと思うので、プレイされて戸惑われた方に「おそらく異常は無いです」とお伝えしておきます。



『システム、演出』
正直に申します、上記で語りました通り、システム周りは斬新でありながらも動きは良くはありません。
起動の遅さ、セーブロードの遅さ、一番困ったのはスキップ関係でした。
デフォルトで全スキップなので、最初に既読のみスキップに変更した方が絶対に良いです。
スキップボタンとCtrlキーでスキップ開始出来ますが、スキップを開始するとマウスでは解除できません。
なので、どんなにクリックしても進み続けます。
解除方法はもう一度スキップボタンを押すかCtrlキーを押すかで解除。
ただ、この解除もあまり効きが良いとは言えず、解除の為に推してもワンテンポ遅れて止まります。
希望の箇所で止めたい場合は、止めたいシーンの少し手前で解除し、そのシーンまでは自力でクリックして進めるがオススメです。
Light.vnというツールに触れたのは初めてな気がします。
吉里吉里などでも作れそうな中、このツールにこだわられたのはきっと、上記でも書きましたとある2箇所の演出の為かなと思っています。
(吉里吉里でも作れそうではありますが)
その演出は中々に見ないタイプで…理解出来ないと焦りますね……
演出としては恐怖を煽られ好きでしたが、ゲームフォルダにあるメモ帳などで警告があっても良いかな?とも思いました。


『音楽』
素材曲。
良い選曲だと思います。
特にピアノの曲を使用する時が好きでした。


『絵』
個性的な絵柄だと思います。
個人的には女性陣の横顔が好きでした。
目パチ機能がありますが…いまだかつてあのような目を表現する為に目パチ機能を使ったゲームを見た事がありませんでした…
ただ、目がアニメーションになっただけであんなに恐ろしい物なのですね。
凄まじい表現力だなとおもいました。


『物語』
上記でも言った通り「死線」に関しては理解出来ていないです。
ただ、なんとなく感じ取れた雰囲気だけはあります。
きっと現実に「死線」があったら私も「死線」を求める側の人間なのだろうなと思いました。
文章は途中で一人称と三人称が入り乱れる所は気になりましたが、読みやすい方だと思います。
特にそれぞれが自分の感情にケリをつける所は凄く好きでした。


『好みのポイント』
「自分の今居る現実を生きる」
暗めな設定で、若干ホラー要素もあり、どこか闇属性なお話ですが、そんな前向きな所を感じて好きでした。
難解な世界観で様々な事柄はとても難しいのですが、主題だと感じる部分がはっきりしてる所が凄く好きです。
あと、雨宮さんが好きです!
彼女が気持ちに決着を付ける所は名シーンだと思っています!!





以下ネタバレ含めての感想です





「死線」とは何だったのか。
作中であった説明では「可世界」が我々が今生きている世界。
「不可世界」が理論が存在せず、法則、規則の概念が失われている不安定で無秩序な世界で人は住めない。
そしてその「不可世界」に精神的影響を受けてしまった人間が辿る状態が「死線」。
普通の人間は絶えられず死んでしまうけれど、ごく僅かに「死線」を超えられる人間が居る。
「死線」とは極限座標の影響を受けた人類の危機管理能力による急速的な身体変化、または進化。
…というのが作中でありました。
正直、正しくは絶対に理解出来ていません。
ただ、超個人的解釈をするならば患者の中で共有認識される物がある精神の病…統◯失調症みたいなものかなと感じました。
そして、それは病ではなく進化の一種である。
こちらの世界とはまた違う、一般では理解出来ない所に精神があり、それが共有認識される。
精神の病とは違い、完全に現実世界でも何らかの不可思議な影響力がある。
その状態から帰ってきたのが主人公であり、彼はその影響で死んでも再生出来る自分の成る木を作る事が出来た。
正直、その状態自体は「不可思議な物、事」というような認識をしています。
でも、理解出来ない事がある意味で正しいのかな?とも思っています。
理解出来てしまう事は、きっと「死線」を理解してしまう事だから。
だから、私は理解出来ない側なのだろうなと。


…ただ、なんとなく、なんとなくなのですが分かる部分が一つだけあります。
それは、「普通じゃない特殊な状態に憧れてしまう」という事。
作中で金本君は「死線」を超えた影響から特殊な力により死んでも新しい自分が生まれる状態にありました。
高室さんは友人を助ける事を建前にして、「死線」を理解したい、知りたいと思っていました。
私はなんとなく高室さんの気持ちが分かってしまいました。
友人に対して利己的な自分、分からない物は怖い自分、死自体は怖くなくても死ぬ過程は怖い自分…知らない事は怖くて、だから「死線」を知りたい気持ち。
そして金本君の感じていた友人に対してのネバネバしたものもなんとなくですが分かります。
なんとも言えない関係、その中に身を置くのなら一歩離れた場所に居られるなら居たい、そして「死線」を超え特殊な位置に居られるから居続ける。
二人共、あちら側に行きたい、あちら側のままで居たくて、こちら側…「普通」では居たくないのだろうなと。


そうですよね、特殊な側があって、それに縋って世間から離れられるなら離れたいですよね…
そんなある意味では特殊な物に憧れる、縋る二人が結局は現実でしか生きれない事を、現実の中の良い所に気付き現実と向き合う物語…なのかな?とも感じました。
ゾンビくんの真実も、もう一人の金本君の真実も、正直私の頭では追い付いていません。
けれど、金本君と高室さんは間違いなく現実に向き合った、その部分だけは分かります。
その部分だけしか理解出来ない頭で申し訳ないのですが、その部分が凄くこの独特な作品の芯にしっかりと埋まり一本大きく木のように立っている感じがして私はとても好きでした。


あと、やっぱり、雨宮さんが好きです!
結ばれる事は無かったけれど、彼女の気持ちの伝え方や諦め方がとてもサッパリとしているのにどこか暖かく。
あの、二人の何も起こらないただ眠るだけのベッドシーンが凄く好きでした。
人の気持ちの切り替えの部分の雰囲気の魅せ方が上手いなと本当に思いました。


構造考察は本当に苦手で、この世界がどのような構造になっていたのか…?
などの事を上手く語る事は出来ません。
世界に影響がある共有認識される精神の病…くらいしか私には言葉が思い付きません。
私の拙い言葉では言い表す事の出来ない、まさに奇作、怪作、摩訶不思議で。
けれど心の奥底で、「現実を生きなければ、現実と向き合わなければいけない」と強く感じる物語でした。



最後に、新田さんの登場は…忘れる事は無いでしょう…
久しぶりにゲームで「ヒッ…」と声が漏れました。
新田さんがこの状態なら金本君も…とも思いましたがラストで当たりましたね…
最後の「これから」の時の高室さんは普通なのですが…まだ「死線」前なのでしょうか?
それとも「現実と向き合う」事を知ったから「死線」を超えても平気なのでしょうか…?
その辺りは想像する事しか出来ませんが、「現実と向き合う」事を知った高室さんは「死線」を超えても普通の状態で居る事を願います。
金本君も元に戻っている事も。
そして、二人で今度は救う側に、雨宮さんを助けて欲しいです。