ひっそりと群生

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【等間隔の黒い透明】感想

【男性向け18禁】



2015年06月09日発売
羊おじさん倶楽部』様 ※リンク先公式HP(18禁)
等間隔の黒い透明】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








映画のフィルムのコマとコマの間の黒い透明。
現実ではなく、その間しか見る事が出来ない男の黒い夢。



『――あなたには少女を一人、拷問の果てに殺していただきます――
 金と時間と孤独を持て余す梨沙子に買われていた『僕』。
 ある日、駱駝の頭をした男がそこに訪れてこう言った。
 『僕』は梨沙子に溺れ、変化を拒み続けた代償を払わなければならないらしい。
 死んだ『姉』を『僕』は壊れるほどに愛していた。
 けれど彼女はまだ地獄に堕ちていないみたいだ。
 駱駝のヒント。三本足の猫に導かれた先。
 そこには『僕』より先に梨沙子に捨てられた『少女』。
 悪い偶然はまだ終わらなくて、『僕』は殺すべき彼女に恋をする。

 そんな退廃する悪夢のような”恋”と”変化”をめぐる物語』
(公式より引用)



『システム、演出』
ツールは吉里吉里
起動画面のコンフィグとゲーム中のセーブロード関係がウィンドウ上方な所以外は読みやすいです。
他の基本操作はあります。
選択肢無しなのに「前の選択肢に戻る」が若干謎でしたが。
演出は駱駝の絵が歩く絵、最後の血糊は好きでした。


『音楽』
BGMはクラッシック曲9曲で選曲が好みでした。
特に「幸福」あたりはかかる場所もあり不安になります。
SEは猫の声や遠くで聞こえる電車の音などが良かったです。


『絵』
背景は写真加工。
全部写真なので統一感があったのと、同じ写真でもエフェクトの掛け方が違う背景が何枚もあり良かったです。
そしてとにかく始終嫌な空気。
特に森の中などは重苦しい雰囲気でした。


『物語』
文章的には読みやすさは普通です。
ですが現実と夢の狭間のような世界観なので一文づつ読んでも支離滅裂な場所があり、次の行では状況が意味不明になっていたりしました。
流し読みは難しかったです。
構成は謎が解けるような話では無いです。
最初から最後まで嫌な予感しかせず。
何となく最後の方向性は掴める話なので構成では普通で、引き込まれるよりも現実では一分間くらいで見ていた嫌な夢という感じでした。
そして、とにかく全員薄暗い雰囲気が漂っています。
生とは真逆の空気を纏った人達ばかりでした。


『好みのポイント』
青年少女が好きなのと、ラスト結婚式のシーンは好みです。





以下ネタバレ含めての感想です





背景、音楽のみ、選択肢無しの一本道。
自分は試用版をプレイしました。
DL販売版ですが、DL販売上の関係で表現が微妙に本来の表現したかった部分と異なるらしいです。
7箇所程表現が変わるらしく、公式にパッチがあるので気になる方は当てて下さい。


コンフィグに関してですが…起動画面の右にマウスを当てると、
「夢」「君」「性」「虐」「暴」「猫の絵」
が出て、
「夢」→開始
「君」→ロード
「性」→コンフィグ
「虐」→CGというか演出鑑賞…
「暴」→音楽鑑賞
「猫の絵」→終了
なのですが、コンフィグは分かりやすい方がいいかと思いました。
最初に文字のスピードなどの設定をしたいのに何を押したらコンフィグになるのか全く分かりませんでした。


物語は一言で言ってしまえば悪い夢の様な物語。
「悪夢」というよりも「趣味の悪い夢」。
主人公の行動での描写はまともに描かれてますが考え方や状況が何一つまともではありません。


ネタバレも何も無いかと思われますが、とりあえず悪夢の話だったと、ようは狂気のお話で最初から最後まで何が現実か何が夢か分からずに終わります。


駱駝、少女…この辺りは夢で、梨沙子の界隈は現実。
という仮定で、夢である二者についてつらつらと思った事を。


『少女は何者だったのか』
最後から分かりますが梨沙子の子供では無いです。
彼女の子供はドイツに居ることが明らかになります。
では、少女は?
おそらく少女は主人公の姉としての夢か何かだと。
最後の、

「どうして産まれたその時からどうして性的虐待なんてされながら
 なぜ姉に奴隷としてなんで這いつくばって舐めなければならなかったのだろう。」

とあるように実際は姉に対して欲望を抱きつつも憎悪も抱いていたような描写があります。
この少女は姉を慕うフリをしながらも実際は憎悪していた主人公の姉を辱めやすくする為の姿?

猫が街から居なくなるとも思えないのでそれも夢で、猫は姉が貶めていた過去の自分の比喩?


『駱駝』
梨沙子が娘と暮らす準備…「変化」をしようとしていたのを何となく察した主人公の嫉妬や悪意の部分?
無自覚に梨沙子の「変化」を察していた部分で、「変化」を引き留める為、駱駝として梨沙子の子を殺すことを命じた?
梨沙子の実子と少女が違ったのは主人公が梨沙子の子を知らなかったから?


ラストで結局はドイツで実子が死に梨沙子は「変化」する事が出来なくなり主人公に縋ります。
ですが、その時には実子=少女では無かった事実などで混乱し、一度でも「変化」しようとした梨沙子を受け止められず突き放します。
この時に、一度現実に回帰しようとしていましたが、生きていた姉の死という「地獄」を知ります。
梨沙子と別れた事により資金援助を受けられず仕事に専念しないといけない。
現実に目を向けないといけない状況になりますが、「地獄」や「少女」などもう色々と精神的に回帰は無理な状況だったのかなと。


そして完全に現実に回帰出来なくなった主人公が姉(の夢?)に食いつくされて終りを迎える。


「映画のフィルムのコマとコマの間には等間隔に何もない二十四分の一秒未満の黒い空白がある。
 生まれた時からその黒い透明は僕の瞼の裏に焼き付いていて、目を閉じる度にこの現実があまりにも粗雑で不確かで途切れがちなことを思い出す。」

現実であるコマを見ることが出来ず、その間の黒い空白…現実でない部分しか、
「等間隔の黒い透明」
しか見れない男の悪い夢の話なのかもしれないと思いました。


つらつらと思った事を書きましたが駱駝の辺り…
むしろ子供の頃から既に狂っている、夢を見ているような主人公なので何が正しいのかは分かりません。
そもそも主人公の家が跡形もなくなっていた所から、本当に姉が居たのか、屋敷があったのが真実かさえ分かりません。
主人公の過去すら夢なのかもしれいないのです。


はじまりの悪い夢がどこからだったのかすら分からないまま、悪い夢を見たまま、夢から覚めず終わる物語でした。


でも、主人公と少女の指輪を見つけた「結婚」の描写は、この作品中唯一の「救い」の場だと思いました。


折角18禁なので主人公の願い通り少女とのエロシーンは拝みたかったです。
無い事が正しく、あったら多少は精神的に主人公は救われていたのかもしれませんが…


あと、あらすじに恋と変化とありますが、変化は分かりますが恋の部分がいまいち掴み辛かったです。


正しい正解や明かされる真実などの要素は薄いのでコンセプト通り悪い夢にうなされたい方。
支離滅裂で暗く重く救いの無い、わけがわからなくなるようなお話を読みたい方。
短い時間で悪い夢を見たい方に向けられた作品だと思います。