ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【書淫、或いは失われた夢の物語。】感想

【男性向け18禁】



2000年07月15日発売
『Force(解散)』
【書淫、或いは失われた夢の物語。】(PC)(18禁)
以下ネタバレ含めての感想です。








プレイ時間は約3時間くらい。
7でもインストール可。
ディスレス起動可。
修正ファイル有り、『作者様アーカイブ』にて入手可能(修正ファイルが配布可能なら本編もDL販売出来たら良いのに…(本音))。
夕香里ルートEDの「END U04B(07)」ではプレイ中最後の方で止まる箇所がありましたが「表示」の「描写演出」を切り替える事で先に進めました。


10作に一個は名作と呼ばれている作品を挟んでプレイしないと心が死ぬと学びました。
というわけで、この感想がいつ投稿されるかは分かりませんが、2022年の10作目は「書淫、或いは失われた夢の物語。」に。


様々な場所でべらぼうにプレミアになっており目ン玉飛び出るお値段になっている本作、「書淫、或いは失われた夢の物語。」。
今回なんとかプレイ出来たのでプレイさせて頂きました。
数年前はまだ10万内だったのに本当に…この世界はいつどこで高騰するかマジで分かりません、株かな?


内容はプレミアゲーらしくかなりクセが強めの作風、プレミアになるゲームというのは「当時の出荷数が少ない」「その上で一部の刺さる人には性癖の致命傷になるくらいに刺さる」というのがセオリーなので、本作もまた一般受けは難しい作風になっていました。
話は「周りを高い壁で囲まれ入り口が固く閉じられたとある洋装のホテルに主人公と立原 深紗、筑紫 夕香里、羽多野 日向、という3人の女性が閉じ込められ、なんとかホテルから脱出する方法を探す」といういわゆる脱出ゲーになると思います。
ただ、本作が独特なのは開始時に「書淫」「失われた夢の物語」に分かれており、閉じ込められた状況とヒロイン3名の容姿と名前は変わらないが、主人公と、主人公とヒロイン3人の関係性、そしてヒロインの境遇が全く違う二つの物語に分かれているという部分。
「書淫」は三人称視点、主人公がNという男性で「連続婦女暴行魔 x(エックス)」という裏の顔を持ち初対面の3人のヒロインを犯す為に雇われた犯罪者である事。
「失われた夢の物語」は一人称視点、主人公が明という男性で深紗とは最初から知人で夕香里、日向と出会い「冬になったら迎えに来ます」という言葉を信じながらホテルから共に脱出をしようとする普通の男性である事。
それぞれの話は単独で一部のEDは迎えられますが、全ての謎を解く為にはどちらの物語もクリアし、情報を開示していく必要があります。
「館に閉じ込められる」「ヒロインの危ういメンタル」「ホテル内で巻き起こる様々な怪奇現象」。
どこが現実でどこが夢か分からなくなるような描写に始終翻弄され、プレイヤーは一つの真実へと辿り着く事になります。


まぁ上記でネタバレ有りと書いているのと、今作がプレミア化している&もう様々な所にネタバレがある状態なので本作の真相から先に語ると、本作は「現実で彼女と共に雪山で遭難し、死の淵に居た時に彼女が自ら命を絶ち彼女の遺言で生きなければならず彼女を食べ(物理)精神が壊れてしまった男が見ていた二つの夢とその男の精神を治そうとする3人の看護師と医者の物語」となっています。
「書淫」は最後に彼女と肌を合わせていたトラウマからの主人公の性への嫌悪と残虐性、「失われた夢の物語」は常に待ち続ける不安や雪の世界から愛する人と脱出したかった望みなどが反映された世界みたいです。
真相的にはもうこの時代には「ダブル主人公のオムニバスが実は一つに!」や「主人公の空想物語」というのは出尽くしている感があるので、なんとなく予想の範囲内ではありましたし、最初にプレイヤーの実名を聞かれた部分で「ひょっとして実名をどこかで使われるのでは?」という構えがあり「驚き」の部分では衝撃は来なかったです。
しかし、2000年という時代を考えると間違いなく異端作であり奇作。
当時はきっと「なんだこれ…」であり売れなかったのを察し、今見ると「時代が早すぎた」のをヒシヒシと感じる怪作でした。
2010年以降とか、せめて2005年以降の作風ですねこれは。
いやぁ…THE・特異ゲー。
未プレイですがネタバレを踏みまくってる「さよならを教えて」や「Ever17」など、00年代前半はこういう「時代が早すぎた」変化球タイプのゲームがあるから発掘をやめられません!!
真相に関しての衝撃はさほど無くても、世界観…というか始終夢の中にいるような、どの話が現実か分からずフワッフワしている不安定な作風はとても良く、EDに辿り着いても辿り着いても先が見えず、「どこまで行っても物語の中」のような果ての見えない感覚を味わう事は出来ました。
システムも面白く、名前入力は現在では「この名前を使われそう…」と思いますが、当時「購入ユーザー名を入れて下さい」とか言われたら「なんかネットで反映されるのかな?」となり違和感無く実名が作中で出た時に驚けたと思いますし、プレイ中の選択肢で常に選択肢下に文字を直接入力可能な部分があり「常にプレイヤーが選択肢以外の言葉を入力できる」というシステムになっていて、「選択肢以外を入力しないと進めない」や「既に先を知っている状態だと本来辿るべき選択肢をすっ飛ばし自力入力でルートを出来る」そういうプレイヤーが入力可能ならではの作りになっていたところがとても面白かったです。
なので一応は自力クリアの方が達成感はあるタイプだと思います。
(自分は攻略をチラ見してED量の多さに「自分のプレイ技術では無理!」と判断し攻略を見てしまったので敗北者です。)
しかしこのシステムを使って起動後のトップ画面での自力入力で「作中に出る本の名前を入れると読める~」みたいな面白オマケもあって良かったのになとは思いました。
色々なサイトを見ましたが無さそうなのでそこは少し残念。


絵の担当の月永さんはForce以外には参加されておらず、原画担当は本作のみっぽいです。
絵柄は自分は好みのタイプ。
立ち絵の細さとか表情とか好みは分かれそうですが、こういうアンバランスさがある絵は好きです。
ただ、一枚絵はさほど。
日常系の一枚絵は好きですが、エロになるとあまりにも立ち絵と違いすぎて違和感がありました。
人間の絡み絵はそんなに…という感じ。
エロ自体も「書淫」の方は「性へのトラウマ」として必要ではありますが、陵辱でもかなりアッサリしていた印象。
「連続婦女暴行魔」としての設定がある「書淫」ですが、開始時からかなり常識的な思考やそれに伴う行動をしていたので「コイツ本当に犯罪者か??」となる箇所が多く、エロもさほどヒロインは本気で嫌がらない&そんなにニッチなプレイをしない(縛りすらしない)ので陵辱色はとても薄かったです。
真相を知ると「主人公の閉じ籠もった心の奥の物語」なので常識的な思想や陵辱で超酷いプレイにはならない辺りに主人公の善性を感じます。
これは「後悔」の物語なので、「エロは必要だけど薄い」になるのも納得ではありました。


音楽は可もなく不可もなく。
印象に強く残る曲は個人的にはあまり…
ただ、00年代のmidiっぽさから出る良さというのはありました。
こういう軽めの音からしか味わえない"良さ"というのはあります、好きです。


全ED見ましたが、各ヒロインのEDに辿り着いても「これ、本当に現実かな?」となるのはかなり雰囲気が良い作品だと思います。
一応ハッピーだとは思いますが…雪山の資料を見る限り「彼女」の事を深層心理から忘れる事なんて出来るのか?
確実に「彼女」の事を忘れないと絶対に主人公は幸せにはなれないのがヒシヒシと伝わって来ますし、「彼女」の事を忘れている主人公は果たして「物語」を見ず「現実」を見ているのか?
そういう一抹の不安がどのEDでも付き纏う、とても良い作品でした。



プレイ順はキャラED的には
深紗→日向→夕香里
の順で攻略
ED数が多いので各ヒロインについての感想



『立原深紗』
現実世界では主人公の看護師その①かな?
おそらく一番「彼女」に容姿や雰囲気が似ている女性。
深紗と現実で付き合う時に「彼女」の事って忘れられるのかな?と不安になります。
というか、深紗EDって「ひょっとして現実ちゃんと見てないんじゃ…」とも思う所があります。
どこまでも「彼女」の幻影を見続けてそう、怖い。
「彼女」は資料などを見ると幼少期からの記憶があるっぽいので雪山遭難時点では付き合ってますが、幼馴染系ヒロインっぽい所があります。
死んだ幼馴染の幻影に囚われる主人公…幼馴染ヒロイン好きとしてはたまらんですね、たまらん。
あまりにもリアルの「彼女」が強すぎて強すぎて。
どう足掻いても「彼女」の面影を重ねない事は不可能だろうなーと思うと、現実の立原さんに不憫さを感じたりしますが、幼馴染ヒロインで命の恩人とかつよつよの自乗なのでもう仕方ないだろうな、と思いながらEDを見つめてました。


『羽多野日向』
現実世界では主人公看護師その②かな?
キャラ的には一番好きです、特に「書淫」での「犯罪者を無邪気に慕う少女」という構図はこう…自分の好みに突き刺さります。
「失われた夢の物語」での日向や資料を見る限り、あまり現実の彼女は幸せでは無さそうな感じ。
とは言っても主人公の「物語」は主人公だけで完結しているはずなので、リアル日向の精神が「物語」内に入る事は無いとは思いますが…入ってるんですかね?
そこの所もかなり曖昧な感じでした、主人公の「物語」にリアル日向の精神も反映していたら、ぶっちゃけ「物語」内の方が幸せだろうなーとは思ってます。
「意識共有」とかはどうなんだろう、そういうSFの方面はあまり説明が無かったので不明な所があります。
キャラとしては好みなのですが、リアル日向として見ると深紗や夕香里に比べると立場が薄いなーと感じたり。
重要度では他二名よりも低めな所に不憫さを感じました。
実際パッケージも深紗と夕香里の二人なので…好きなキャラだったのでもう少しリアル日向が絡んでも良いなとも思いました。


『筑紫夕香里』
現実世界では主人公の担当医かな?
一番現実に帰還した感じがするのはこのルート。
まぁキャラ的には個人的には普通な感じ。
主人公が自分の「物語」を「物語」として書こうとし、そのタイトルをおそらく「書淫、或いは失われた夢の物語。」にしようとします。
タイトル回収するので気持ち良くはなるルートでした。
…が、EDでも夕香里が画家っぽい話が出てるので、「現実に帰ってるかコレ?」となるのもまた一興。
夕香里が画家なのは「物語」の中なので、結局主人公はどう足掻いても「現実」にしっかりと辿り着けない感じが中々にダーク。
世◯も◯妙な◯語大好きなので「頑張って頑張って、現実に辿り着いたのに…あれ?」となるようなこういうED好きでした



「死者に囚われる」みたいな作品が好きなので「彼女」に囚われ精神世界の「物語」に囚われた主人公モノとしてとても好きでした!
今回超プレミアゲーに触れられて大変楽しかったです!!
内容と市場でのお値段を考えると「富裕層のコレクションアイテム」になってる気がしなくもないですが、「2000年の奇作」「時代が早すぎた怪作」ではあると思ったので、「時代特有の珍しい物が好き」という人にはガッツリ刺さる作品だとは思いました。
いや、本当に、作者様がネットで観測出来る範囲にいらっしゃるっぽいので是非ともいつか版権などややこしいしがらみがなんとかなって、データ販売のこの時代にDL販売化される事を切に、切に願います。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
 参考攻略サイト様:愚者の館(アーカイブ) 様
http://sagaoz.net/foolmaker/
 書淫、或いは失われた夢の物語。 ページ
http://sagaoz.net/foolmaker/game/s/shoin.html