ひっそりと群生

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【真性終末症候群-World_end,eve-】感想

【男性主人公全年齢】



2019年04月13日配信
StarChasers』様 ※リンク先公式HP
真性終末症候群-World_end,eve-】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








主人公の選択により、正しく世界は終わっていく。



『ようこそ”世界へ”
 ――それは誰かの物語。
 誰かの目指した夢の果て。

 少年が居た。
 狂人とも聖人とも呼ばれるような少年だった。
 昔々、運命に巻き込まれた少年だった。
 昔々、運命に選ばれた少年だった。

 少年は生き残り――そして――』
(公式より引用)



主人公、睦月と幼馴染の少女、彼方や悪友の浅一、そして浅一が気にかける後輩の少女、有子。
睦月のクラスに転校してきた遥という少女。
5人の穏やかな日々はある日、白い少女に出会った事で一瞬にして世界もろとも消え去った…


そんな導入から始まるこちらの作品。
公式様の紹介文が少ない以上、最初はネタバレに触れないようには語って行こうと思いますが、かなりネタバレ抜きだと難しい物語ではありました。
この言葉を出して語って良いのか迷いましたが「あとがき」にて作者様から出ているのであえて出すならある意味「セカイ系」だと思います。
タイトルにもなっているように終末物であり、その終末にどう向かって行くかを描いた作品です。
「誰かの目指した夢の果て」、この世界をどうするか、主人公はこの世界とどう向き合うのか。
「創造主」や「救世主」「世界の終わり」などが好きな人にはたまらない作品だと思います。
あとは…「幼馴染」とか。


説明は難しいのですが、開始から数分で大きく物語が動き、切り所も良いのでサクサクと進むと思われます。
ここではあらすじ以上のネタバレに触れない以上、「終わる世界」「絶対に敵わなような圧倒的存在」「正しさを貫き立ち向かう主人公」…あとは細やかな演出などが好きな人には刺さる物語だと思われるので是非触れてみて下さい。



『システム、演出』
吉里吉里製。
操作性は完璧でした。
背景などの切り替えがとにかく上手く、シーンシーンで圧倒されました。
序盤から踏切のシーンで「これは…」と唸るほどの演出だったので素晴らしかったです。
切り所もよく、テンポよく小休止が入るので好きな時間に好きな分進められた所もとても良かったです。


『音楽』
素材の選曲も良いのですが、オリジナルのBGMもありそうで。
ED曲など良いな―と思い、良い曲が多いだけに音楽鑑賞モードが無かったのが残念でした。


『絵』
一回しか使用されない一枚絵の多さが凄くて…
立ち絵での会話部分もありますが、それ以上に一枚絵での表現が多種多様で驚きました。
背景もとても美しく、その時の為に用意された背景と文章が絡んだ時の表現などが上手で。
背景とキャラを溶け込ませた一枚絵イラストも多々登場し、絵での表現では飽きる事は全くありませんでした。


『物語』
文章は一人称、読み易さは普通。
かなり好き嫌い分かれるコンセプトだとは思いますが、このジャンルが好きな方は多いとは思います。
…何語ってもネタバレに直結するので本当に難しいです。
主人公、睦月の選択と、ヒロイン、彼方の健気さに震えよ!…と語っておきます。


『好みのポイント』
幼馴染の彼方が…本当に…
ネタバレ込みでの下記で語りますが大変好みのキャラクター造形と立ち位置でした。





以下ネタバレ含めての感想です





ある所に一人の天才科学者が居た、彼は全ての人が「幸福」ではない現実の世界は自分達の世界ではない正しく無い物とし、機械的に世界を一つ作ってしまう。
作られた世界は数多の宇宙を内包し、複数の世界に枝分かれするほどの巨大さを持っていた。
作られた世界には現実世界から数百人その世界に送られた「現実が耐え難かった人間」とAIであるNPCが「幸福である為」に存在していた。
天才科学者に協力していた女性はある日、科学者から子供を邪魔だと託された事で自分達の行動の危うさに気付く。
彼女は託された子供を育て上げ、そして、その世界に送り込んだ。
現実から送られた存在が一人でも「幸福」な世界に疑問を抱き抜け出すと世界は「幸福」ではなかったと判断され崩れる。
作られた世界をいつかその子供…睦月が壊してくれると信じて。


ようやくネタバレ込みで感想を書けます。
こちらは上位世界構造系の作品になっています。
某有名名探偵漫画の劇場版のコクーンみたいなものだと。
その上で主人公は世界の真実に気付き、世界を脱出する…という話なのですが、公式だとその点に全く触れずにあるのでネタバレとして扱う事にしました。
でも、わりと開始数分で白い少女が出てきて世界が崩壊を始め世界が一つ終わり移行するので、この構造には直ぐに気付く構成にはなっています。


しかし終わってみればこれは…とんでもなく彼方ゲーでした。
主人公、「狂人とも聖人」とも語られるように世界が作られた物だと知りこの世界のリセット方法を知ってからの決断の速さが半端ないんですよ。
まぁ世界を終わらせる為に送り込まれてるのでそれが正しい意志だとは思うのですが、作られた世界での家族や幼馴染の事を気に留めはするけれども迷ったり立ち止まったりする事はなく。
作者様にも言われていらっしゃいましたが人間味に欠けるある意味で正しく「救世主」で…主人公の視点でありながらも感情移入は大変難しい存在でした。


その分、NPCでAIで現実世界には居ない作られた存在の彼方の方がとても人間らしい感情をしていて。
作られた想い出でも睦月の事が本当に大事で…
要するに「白い少女」は協力していた女性科学者…丙先生を元にしたAIから世界をある程度操作出来る権利を奪っていつか睦月がこの世界の事に気付き「救世主」として世界から脱出するという世界(世界線?)に巡り合うまで数々の世界を崩壊させ減らしていた彼方…という事で良いんですよね?多分。
構造考察系が本当に苦手なので合っているかすこぶる微妙なのですが、つまり白い少女=彼方である事は間違いではなく。
そして彼方は世界を壊している…かのように見せかけて本当は間違った世界を減らしながら現実世界へ睦月がちゃんと向かい、現実ではない作られた「幸福」な世界が崩壊する世界線を必死に探してきた少女…なんですよね。
どこが始まりだったのかは分からないですが、丙先生の権利を奪った時から彼方の行動は始まっていて。
きっとそれはゲーム開始よりもずっと前、何百個もある世界を跨いだのかもしれなくて…
「主人公が正しく有る為に正しい行動を取る為に、例え自分の存在が最後に消えても悪役を貫き通すヒロイン」とか最高じゃないですか?
私、こういうヒロインに大変弱いんですよ…
睦月が世界から脱した後も、彼女なりに残った世界を解体、精算していたんだろうなぁとEDロールで見れるのがまた切なく…
「「救世主(ヒーロー)」には「悪役(ヒール)」が必要だからね」とあるように悪役を貫き世界ごと消えてしまうヒロイン。
主人公の事を想った上で役に徹する悪役系ヒロイン大好きなのでとても彼方に心を惹かれました。
EDロールで彼女とそして作られたものかもしれないけれども彼女の人生が描かれるのもきっと彼女が裏の主人公だからで…
あまりにも明確に覚悟が決まっている主人公よりも、悩み抜いて世界を跨ぎながらNPCなのに、世界は崩壊するのに、本来ならそれを知る術は無いのに主人公を見てきたからこそ世界の事に気付き。
主人公の正しい道の為に「悪役(自分)の存在が無いと睦月は鈍感で世界の事には気付かないから…」と悪役に徹した彼方の方に感情移入してしまう物語でした。


ただ、彼方があまりにも素敵なヒロインだったり浅一と有子がとても良い男女コンビで魅力的な脇役だった故に、遥の立ち位置が正直微妙だなとは思ってしまいました。
多分、遥は現実からの人間で最初の出会いでも察せられますがどこかで彼方の行動に気付き、彼女を救いたいと思った少女なのだと思います。
しかし、どうして彼方をあそこまで大事に想うのかの部分がおそらく彼方(白い少女)が過去に繰り返した部分に含まれていると思われる為、本編中では明らかにならず。
「彼方の事が何故かとても大好きで、NPCの彼女を消させない為に、この「幸福」な世界を享受する為に主人公を止めようとする存在」くらいにしか描かれて居なかったようにしか見えなかったのが個人的に残念でした。
主人公の睦月が気付いてからの物語で、作られた世界の記憶が植え付けられた睦月の自我が芽生える(ゲーム開始)からスタートして、その時からしかプレイヤーは見る事は出来ないのは分かりますが、もう少し遥と彼方の経緯も見たかったなと思いました。
あと、始まって速攻世界の謎が分かるので、もう少しキャラクター同士の交流があればキャラクター同士の関係に感情移入出来たなーとも思います。
サクサク進むのも良かったので、そこもまた難しい所ですが。


この世界の外、この世界が終わってからの現実での事は描かれないとおっしゃられているようにスパッと切るのは良い事だと思います。
(と言いつつ若干描かれた浅一&有子コンビは優遇されているなとも思ったり)
遥と彼方の過去は気になりますが、もしかしたらそれすらも作られた記憶かもしれず…
(遥は彼方にあれだけ執着した上で丙先生の権限の影響を受けたともあったので、数々の作られた世界の過去の中、二人の間に何かあったのだとは思いたいのですが)
どこまでが本当の記憶でどこまでが作られた記憶かも分からない世界だけれど、例え作られた記憶でも彼方の中で睦月は大好きな幼馴染で彼の為になら何でも出来る存在だったのだろうなと思うとそれだけでこの物語はNPCが、AIが創造主に勝った物語だと言えると思います。
創造主の真堂も、最後戦うか?と思わせてあっさりと「この世界も「幸福」では無かった」と引き下がる所が天才らしい引き際だと思ったり、現実の彼は既に亡くなっているのも…罪の所在が分からない曖昧さもまた「現実は理不尽な世界である」というのが貫かれていてとても良かったと思います。
(あと真堂の見た目が某論破ゲー2の黒幕に似てて大変好みです)


構造考察系がダメダメなので、「え…そこは違うんじゃ?」と言われたら頷くしかない部分が多々あるのですが、とにかく彼方の「悪役を演じるヒロイン」というポジションに大変好みを掴まれました。
分かってない部分やもう少し見たかった関係などはありますが、絵の細やかさ背景の美しさ、それを綺麗に見せる演出の巧みさ、細切れにはいる小休止と物語のテンポの良さなどとても高水準な作品でした。