ひっそりと群生

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【True Face】感想

【百合全年齢】



2018年12月30日発売
『またたび日和』様
True Face】(PC) ※リンク先DLsite.com
以下感想です。








人は、欲しい物を手に入れる為に嘘の仮面を被る。
仮面を被り続けた先、彼女が手に入れる物は…



『全国有数のお嬢様が集まる天谷女学院高校。
 その生徒会長選挙、予選にて不正行為が蔓延していることが発覚する。
 多くの候補者が失格となり、残ったのは天宮家の娘、天宮水希。無名の編入生、一条香奈。
 香奈を怪しむ水希であったが、相互監視を理由に二人はルームシェアをすることに。
 陰謀巡る選挙にて、二人の行きつく先は……。
 『大切な人にだけ見せる少女たちの素顔の物語』』
(公式より引用)



選択肢無し。
プレイ時間は約2時間30分くらい。


学院の生徒会長を巡る選挙という小さな出来事に見える中で、主人公の水希が何故そこまで選挙に執着をするのか、水希の抱えている物は何か。
そして、多くの失格者が居る中で残った香奈は何者なのか。
生徒会長になる事で得られる物とは?
それぞれの少女達が隠している真実や隠している過去…
少女達はお互いの隠している物を暴こうと様々な行動を取ります。
とある事情により絶対に生徒会長になる為に香奈を探る水希、目的や何を考えているのか全く分からない人畜無害そうな香奈、主の命令は絶対に遂行し水希の為に奔走する水希のメイドの志乃原。
時には妨害し、時には利害の一致の為に協力し…
果たして、生徒会長選挙の本戦に待つものは…


「True Face」のタイトル通り、それぞれの少女に裏の顔があり、真実の顔もあり。
物語が進むにつれて明かされていく真実や少女達の心情の変化、移り変わりがとても面白く。
それぞれの立場が分かるにつれて、少女達の関係性が見え、彼女たちの執着の理由が見える所がたまらなかったです。
関係性を知る事で唸りながら納得出来る百合物語でした。



『システム、演出』
Light.vn製。
読むために欲しいシステムは完備。
スキップ停止は安定のもう一度推しなのですが、一本道なのでそんなに不便に思う事は無かったです。


『音楽』
フリー素材からの選曲ですが、使い場所がとても良かったです。
基本的にお嬢様学校らしい優雅な曲で統一されていて、華やかさがあるのですが、盛り上がる箇所で流れる曲がたまらなく合っていて。
とあるキャラを出し抜いた時に曲も盛り上がり最高にスッキリとしました。


『絵』
美しい…
CG枚数は少な目ですが欲しい時に欲しい絵が入ります。
立ち絵はもう…凄く綺麗で…
水希、香奈、志乃原のみですが、彼女たちの表情が大変良く。
表向きに見せている顔に裏の顔、そして素の顔などなど、バリエーション豊かな様々な顔を見る事が出来ました。
特に水希のとある顔は大変恐ろしく…「狡猾」という言葉がここまで当てはまる顔も中々に無かったです。


『物語』
生徒会長選挙の話と最初はかなり規模の小さめな話だな…と思っていたのですが…
進むにつれて彼女達の人生を左右する大きな物事が関わっているという事実に突き当り。
水希が様々な物事を常に計算し続け仮面を被り続け、自分の全身全霊をかけてまで生徒会長になろうとする理由にはなるほど…と。
小さな物事に見えますが、彼女達にとっては絶対に負ける事が許されない戦いで。
その戦いの中でゆっくりと芽生えて行ったり、時には歪んで行く女性同士の関係が…関係性萌え持ちにはたまらなかったです。


『好みのポイント』
とにかく水希の狡猾さが凄い!
常に表情を作り、常に計算し、物事を何事も効率で捉える姿はまさに仮面の女。
有用だと知ると取り入れ、不要だと知ると速攻で切り捨て…
時には裏を読み自分の利益にも繋がると思うと香奈の味方側にも周り。
驚くくらいに計算で行動するので、そのシステマチックさに圧倒されました。
だからこそ、彼女が恐ろしくなったり、人の情を完全に切り捨てる姿にどこか歯がゆさも感じたり。
ある種のダークヒーローめいた部分に水希が墜落するとあるシーンにプレイヤーとしてどこか喜びを感じる部分もあり。
けれど、彼女の行動原理を知っていくと同時に応援もしたくなっていき…
そういうプレイヤーと主人公の感情の乖離と感情移入の距離感が凄まじく上手かったです。
水希が最後の最後まで物語の方向性として良い側で居るのか悪い側で居るのかが全く分からなかった所も魅力的で、そして香奈もその明るさや天然さは本当のものなのか、何を思って生徒会長になろうとしているのか敵なのに水希に懐くのかが分からず…
物語のラスト一歩手前まで仮面を被り続けるので、見ていてどう転ぶか分からない物語にハラハラドキドキさせられました。





以下ネタバレ含めての感想です





いやぁ…水希、カッコよかったなぁ…
間違いなく狡猾で計算で生きてる女性なのですが、そういう部分が最終的に全て格好良さに変わるくらいの信念を持っていて。
絶対に天宮の娘になる!という信念を曲げず、それ以外に道は無く、ただ突き進む姿は輝かしくて。
作中途中まで怖さの方が先に立って、中盤の志乃原の妨害により墜落した時は「こんだけ計算と人を駒としてしか見ないで生きてたらそうなるよ、ざまーみろ」みたいな気持ちになったのですが、後半から進むにつれて、真相が明らかになっていけば行くほど徐々に水希の事を気にかけるようになり。
天宮の側に付き物語はとしては悪役で終わるのか、香奈の方に付き物語としては善人で終わるのか最後の最後まで分からなかったのですが、最後にしっかりと天宮をもぎ取った上で香奈まで救う姿を見て、やっばいくらいに格好いい女性で、その格好良さに痺れました。


香奈も香奈で「この天然っぷりや人畜無害っぷり…どこまでが演技なんだ?」と思わせる部分が沢山あり。
結局は全て素の彼女だったわけですが、彼女の被った仮面にも疑心暗鬼を持つくらいに純粋無垢で良い感じに騙されました。
ずっと水希に言っていた「家族になりたい」も最後にあんな風に繋がって行くとは思わなくて…
孤児院の頃からの約束が最後、お互い天宮性になって叶う所は美しさが凄かったです。
元ライバルであり、元友人であり、そして家族になって…
古き良き時代の昔話のように、本作は完全に水希が王子様で囚われの姫である香奈を救う物語でした。
いやぁ…良い百合でした、王子様系女子とお姫様系女子は良いものだ。


志乃原さんも、「天宮に仕える者」間違っていませんでしたね…
途中裏切った時は「本家から何か言われたのか!!?」となりましたが…そりゃあ香奈に仕えるメイドだったら香奈の為に奔走するよなと。
彼女にもまた真実の顔があり、どこまでも主に仕え続けた最強のメイドさんだったと思います。


一点気になったのは、過去が途中で挟まれば良かったのですが最後の最後まで明かされないので、水希と香奈の二人の関係に唐突感が若干あり。
水希が物覚えが良いタイプなので余計に「過去に出会った少女の事は思い出さなかったのかな?」と思う所は少しありました。
もう少し要所要所で過去が挟まってれば二人の関係も段階を踏んですんなり受け入れたかなーという気持ちです。


それでも、最後まで何らかの仮面を被り続け、真実の顔を隠し続けた彼女達には感服致しました。
自分を隠し通すのはどれだけ難しい事か…
特に水希は幼少期から気高く。
負けない為、欲しい物の為に真実を隠し続け、そして、最後には生徒会長も天宮もそして香奈も、欲しい物全てを綺麗に手中に収め大勝利した水希はただただ美しかったです。