ひっそりと群生

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【終末の過ごし方 DVD】感想

【男性向け18禁】



2003年04月24日発売
アボガドパワーズ(解散)』
終末の過ごし方 DVD】(PC)(18禁) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








プレイ時間は約1時間30分くらい。
7でもインストール可。
ディスレス起動不可。
修正ファイル有り、『アーカイブ』からDL可能。
オリジナル版は1999年発売ですが、起動に不安を感じたのでDVD版を購入。


オススメをして頂きプレイしました。
週末、全ての人類が滅びます。
隕石か、星の崩壊か、パンデミックか…どうして死滅するのか、死体は残るのか、フッと存在が消えるのか。
そういう情報は何一つ分からないままにメディアが無くなり個人ラジオ放送だけが響き、「週末に人類が滅びる」という事実だけが浸透し全人類が受け入れ最後の日まで生きていくお話。
オリジナルの発売日らしく終末思想で描かれ、諦めを背負いながらどこか気怠げに、けれど最後だからこそ今までの関係が壊れても失う物は無いからと新しい関係を求め、最後の瞬間はせめて納得がいくように好きな人の隣に居たいという気持ちを抱え生きていくキャラクター達が印象深かったです。


文章が独特で三人称視点と舞台の脚本と詩を足して3で割った様な文章。
主人公は知裕という少年でヒロインが6人居ますが、他に重久と多弘という2名の男性キャラおり、重久はヒロインの千絵子、多弘はヒロインの留希と結ばれ、2組の固定カプが居るので主人公が攻略出来るのは4人のみで主人公のみ分岐がある構成になります。
シーンごとにポンポンと場面が飛び、知裕、重久、多弘の話が切り替わるので若干忙しさがありますが、その忙しさが終末の焦りをどことなく感じたのと、忙しさの中ででもどこか諦めている気怠さもあり、話は忙しくても展開が早すぎて息切れを起こす事はありませんでした。


絵は青年向けの少年漫画的というか、ギャルゲーとかではあまり見かけないタイプ。
線が荒めでキャラクターが良い意味で野暮ったく、配色は水彩的で。
背景も手書き感があり、人物も背景もCGっぽさが一切無く手書き漫画的。
立ち絵はありますが、立ち絵表示よりも一枚絵で進行する部分が多く、主人公の顔もしっかりと描かれ舞台や映画のような表現で。
この絵柄が間違いなく世界観を引き立てていました。
この独特な空気を保てたのは8割くらい絵の力が大きいと思います。


音楽も終末らしく静かな曲が多いのですが、後半の方では格好良い曲ばかりが流れ。
特に「unseen tomorrow」「sadness decision」「last confession」の良さは異常。
ゲームは未プレイでしたが動画サイトでのBGM集などで聞いた事があり、ゲーム内で聞いて再度格好良さを痛感しました。
後半で格好良い曲が流れるのが「終末を受け入れた」感があってとても良かったです。
声は無し。
DVD-PG版には声があるらしく、wikiを見ると出演されてる方が良い方ばかりなのでいつか触れてみたくなりました。


一周目は1時間くらい、二周目から既読スキップを使うと15分くらいで終わるのと、重久と多弘には分岐が後半にしか無く、一度読むと周回で全部飛ばせるので、短さはありますが、90年代の商業だからこそ出来た短さで個人的には好きでした。
どこか同人的というか、フリゲ的というか、必要な物と好きな物を好きなだけ詰め込み無駄を省いた感じ。
90年代以降のエロゲは大作志向になって行っていたという話をお聞きした事があり、実際以降に見かける有名作は長編が多く見受けられるので、ギリギリのラインで超少人数で作り上げた好きな物を詰め込んだ商業ゲーに感じました。
自分が元々が同人やフリゲ側の人間なので、短さはさほど気にならないのと、好きな物作ってる空気が好きな為、読んでいて非常に楽しめました。
というか、本作はこれ以上長くなったら色々と空気感が崩壊すると思うので丁度いい長さだとは思います。
…まぁ当時のお値段を考えるとコスパ方面で良いとは中々に言えないのが商業の難しい所ですが。


数々の所で言われているとは思いますが、特に深い世界設定は無く雰囲気を楽しむ雰囲気ゲーで、今作もまた雰囲気ゲーの極致のような作品でした。
終末思想で覆われキミとボクの世界で完結するのでセカイ系の一つにもなるかも。
短く、雰囲気が良く、どこか気怠げな空気を楽しむ事が出来ました。



プレイ順は
香織→緑→いろは→歌奈
の順で攻略



『宮森香織 ルート』
主人公の元カノ。
でもお互いを知る前に分かれたので手すらも繋いだ事が無かったという。
本作のメインヒロインでパッケージやメインビジュアルにもなっている子。
他にもヒロインは居ますが、一番メインは世界の終わりになってようやく彼女と本当に向き合う事が出来、最後の最後でお互いを知り向き合う事が出来た…というのが話の大きなポイントだと思います。
最後を迎えないと向き合えない、分かり合えない、そんな人も居る。
人類は滅びますが、交わる事が難しかった平行線と理解し合えた事はとても大きな事だと思っています。


『敷島緑 ルート』
幼馴染。
最初から分かるくらいには主人公の事が好きなのが見え見え。
彼女との関係もまた終末がなければ動かなかっただろうなと。
妹のように思っていた幼馴染と短い中で近付いていく描写が良かったです。


『大村いろは ルート』
心臓に病を抱え、ペースメーカーを付けている少女。
ペースメーカーの電池の交換を拒否している。
そういう行動が終末と絡んで、「最後の最後は自分の肉体で心臓を動かしたい」という生き様になっていたのが好きでした。
身体は確かに弱いと思いますが、どことなく強さがあって良いなと。
彼女が主人公に対し「私が守るから」と言うのもまた、格好良さがあり。
「世界に対しても自分の肉体に対しても終わりが見えているからこそ強くなれる」そんな姿を体現していました。


『稲穂歌奈 ルート』
元気系後輩。
元気に振る舞いながらも終末は怖くて、でも終末は来ちゃうから仕方なくて。
でも先輩が居るから大丈夫!みたいな明るい中にある怖さとそれでも明るく頑張っていく姿が可愛かったです。
「実は闇寄りで心のなかではめちゃくちゃ鬱を抱えている」とかも特に無く、普通に明るい子だったのが好印象。
そういうキャラも好きですが、そういうキャラを描くと話が長くなりがちなので。
結構本作がダウナー寄りでダウナーキャラが多いので「怖いけど明るくやっていこう!」みたいな陽系キャラが居て清涼剤でした。


『大塚留希』
多弘と結ばれるキャラ。
保健室の先生で多弘を「少年」呼びする。
「少年」呼び系年上キャラ良いですよね…最高。
「7年付き合って分かれた恋人を引きずっている」という設定が昨今のエロゲでは中々に見かけない、というか許されないような設定で時代を感じました。
年上のお姉さんで元恋人持ちキャラとかもっと増えてもええんやで?
終末になってようやく多弘と新たな一歩を踏み出せる所が彼女の気怠げなキャラクター性と合わさり良かったです
「終わっちゃうけど、一歩は進めた」みたいなの、年を重ねるとその一歩の難しさが分かるので、一歩でも進めた姿に少しだけ羨ましさがありました。


『瑞沢千絵子』
重久と結ばれるキャラ。
オッサン×少女は至高。
正直本作で一番好きなカプでした。
人類滅亡前でも陸上で走り続ける千絵子を見つめ続ける重久。
おそらく重久が語る「兄は教師で想い合っていた教え子と自殺した」という話と千絵子のコーチで先生の男性と、千絵子の親から期待され自分を差し置いて親から愛を注がれていた姉には関係があるんだろうと思ってます。
重久の兄=コーチの先生、千絵子の姉=教え子なのではと。
そういう関係があった上で、どこに惚れたかは明確化されていませんが、そらく千絵子の孤高さや纏う空気に、そして陸上のホープとして活躍していた姿に惚れ込んでいて。
オッサンが終末に一人の少女に激重感情を向けまくっている構図がとにかく最高。
どんなに塩対応をしてもめげずにヘラヘラ付いてきて、パンが好きでずっと食べていて。
千絵子が「パン作って来てあげようか?」とか言うと飛び上がるくらいに喜んで、オッサン可愛いよオッサン。
一見軽そうな見た目や言動をしているのにエロシーンで「遊びで女を抱ける程に重久は器用ではない。」という一文が出て来てハゲ散らかしました。
マジで千絵子にゾッコンで、オッサン最高だよオッサン。
最後には先生貰って付けていた髪飾りを外し、髪を切り、過去と決別する姿がとても良かったです。
髪飾りを外した姿を見て嬉しそうに「似合ってる」と言う重久から「兄と決別した事」への安心や「他の男に囚われなくなった嬉しさ」という男性としての喜びをどことなく感じました。
多弘と重久には選択肢によってBADにあたるEDがありますが、BADも関係の破綻などは無く、「関係が進まないけれど終末、今の関係のままで終わりを迎える」ようなラストで悲壮感が無かった所が好きでした。



「良い雰囲気ゲーです!」とオススメして頂いた際にオススメして下さった方が仰られたのですが、本当にとても素晴らしい雰囲気ゲーでした。
一日の間に挟まる箇所で入るラジオが良い味出してたなーと。
シーンの切り替わりにラジオ放送を入れるという演出は他作でも見かけましたが世界観を引き立てます。
あと男性陣含めて約一名以外全員眼鏡キャラという驚異の眼鏡率95%。
絵柄とか雰囲気でスルーしそうでしたが、よほど眼鏡を推したくて作ったのかな?それとも眼鏡フェチが居る?と眼鏡に対する強い想いを感じました。


あと、なんとなく滅亡する理由などは描かれないなどの世界観を深く説明しない作風に最◯兵◯彼◯っぽさを感じたり。
調べたらコチラの方が先なので、どちらかと言えばあちらの方が後者ですが、絵柄やセカイ系的雰囲気など、あの作品を好きな方は本作も好きだろうなと思いました。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:愚者の館(アーカイブ) 様
http://sagaoz.net/foolmaker/
 終末の過ごし方 ページ
http://sagaoz.net/foolmaker/game/s/weekend.html