ひっそりと群生

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【ペンションおしぼり】感想

【三人称全年齢】



2019年08月07日配信
凡多工房』様 ※リンク先公式HP
ペンションおしぼり】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








奇天烈三人組のグルメ旅行…記?
個性と言う名の棍棒で殴られるような、そんな世界観。



『グルメ雑誌『お盛ンな魚っチン具』のネタを探しに北海道の串露へ取材旅行に訪れたスシたちは
 真夏でもがぶ飲みしたい程うまい醤油に出会った。さびしき町で醤油の秘密を探る旅奇行。』
(公式より引用)



えっと…なんなんですかコレは?
…ナンなんですかコレは???
一昔前のオタクの風貌を持つ主人公、スシはグルメ雑誌のネタを探すために皮肉屋で絵が趣味のツトアと元地元民でこの中では唯一の常識人(?)のスケと共に架空の北海道の串露を訪れる。
全ED回収2時間くらいの物語だったのですが…とにかく個性で溢れに溢れた作品でした。
開始早々の絵から何から異彩を放っているのですが、物語が進むにつれて独特のノリとテンションに巻き込まれていきました。
「なんなんだろうこれは…」と始終不思議な気持ちに包まれますが、それが全く悪い意味ではなく。
フリーゲームや個人制作とはこういう物語があるから面白い!を地で行く世界観で。
個性でぶん殴るとはまさにこの事、フリーゲームの独特な空気が好きな人にはたまらない作風だと思います。
「考えるな、彼らの旅行記を感じるんだ…」としか言葉では語れません。
とりあえず一度触れてみて、この世界独自の空気にどっぷりと浸って頂きたい、そんな作品でした。



『システム、演出』
ティラノ製。
基本性能は有り。
既読未読の判定がかなり細かく繰り返しプレイをスムーズに行う事が出来ました。
あと、そこそこノベルゲームをプレイしてきましたが、機能説明をメモ帳に記すのでは無く作中でして、作中内でセーブロードの説明を受けたノベルゲームは初めてでした。
作風も相まって初心者向けなのか玄人向けなのかがイマイチ分からない所が最高だなと思いました。


『音楽』
オリジナル…なのかな?
心に残るというよりも心の中をかき乱すような曲が多く。
どこか不安定になる音色に「この先何かが起こるのでは…?」と始終ドキドキしていました。
実際よくわからない展開が常に起こり続けているような作品なので、曲調、間違ってないと思います。


『絵』
個性、THE・個性。
決して下手ではないです…というかむしろ絶対上手いでしょう…
上手い人がわざとデフォルメ化して書いた絵だというのが伝わります。
背景も人物も全てオリジナル。
開始早々、絵に関してはいきなり個性の洗礼を受けるので、この絵で最初の衝撃を味わって下さい。
所々でぬるぬる動くアニメーションが更に個性的な世界観を際立たせて、大変ぬるっと楽しめました。


『物語』
全体を通すとグルメ旅行記なのですが…
所々で全くグルメと関係ないポイントが重要になって来て笑いました。
スシにとってはグルメ旅行ですが、ツトアとスケにとっては創作旅行なんだなーと思ったり。
強烈過ぎる串露の住人達との不思議なふれあい旅行でした。


『好みのポイント』
この他者が真似できない圧倒的雰囲気は本当に凄いです。
この独創的な空気を最初から最後まで貫けるのは個人制作の強みだと思っています。
良い話…かは分かりませんが、大変面白い世界観の作品に触れる事が出来、楽しかったです。





以下ネタバレ含めての感想です





ネタバレ…でも無いのですが、一言で言うなら本作はまさに宇宙でした。
漆喰のナン(本当に食べ物のナン)で出来た壁やインド式五段弁当箱という謎の物体。
ナンクッキーに彩夜ガニ…聞いた事も無い物が当たり前のように受け容れられ、頭の中の常識を次々とかち割って行きました。
彼ら3人がグルメ旅行をしている事や今行っている行動は分かる、けれど…どうしてこうなった???という展開が次々と降りかかります。
それがさも当然のように描かれるので、「あ…間違っているのは自分の常識かもしれない……」と自分の方を疑いそうにもなったり。
自分の世界の常識がふらつきながらも、いやいや、これはこの独特な世界の常識!と何度も現実に戻ってきました。
不思議な世界にトリップ出来るような…そんな作風で…本当に濃密な2時間を体験する事が出来ました。


EDはバッドも含めてかなりあるのですが、街中で2箇所ある掲示板にて現在辿ったEDを確認する事が出来ます。
EDはとりあえず全部回収しました。
ツトア画伯の絵だけはコンプリート出来なかったのですが…かなり条件が難しそうです。
多分選択肢後のSEが大きく関わっているとは思いますが…また探してみたいです。
一応ツトアのやる気は選択肢後に流れるSEでコップの中に小物を落としたような音が鳴ったら上がると考えて良いと思います。
SEが流れない道を辿るとBADの一つ、暗黒面に堕ちたツトアのBADに行けると思います。
それ以外は結構簡単なので大丈夫だと…END2は途中でノートパソコンを買わないといけません。
スシのグルメ旅行と思いきやツトアの絵のやる気がBADENDに関わってたりEND2はスケのゲーム制作が関わってたり…創作旅行だったなと思います(というかスシも記事を書くためなので創作ではある)。
三者三様の創作が出来たこの旅行は有意義な物…だったのでしょう…多分。
スシが落ちた醤油を食べたいとは思いませんが。
当て字や地名を代えていたりされてますがおそらく本作は北海道のアピールポイントが沢山詰め込まれていた作品だと思います。
地元愛を個性的な世界観で彩ったとても愛と不思議に溢れたお話でした。


最後に、スシが九州出身だったり自分の地元にも刺身醤油という文化があったりするので醤油が中心に描かれとても親近感が湧きました。
…スシが落ちた醤油を食べたいとは思いませんが……