ひっそりと群生

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【A martyr】感想

【男性向け18禁】



2010年10月13日発売
アバラヤ』様 ※リンク先公式HP
A martyr】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








人の死後に遺るのは功績や結果。
時代が進めば進むほど個人の善悪や人間性は語る者によって変わる。
その中で変わらないものはただ一つ。
彼は間違いなく救済の場を創り遺し、大勢の人を救った。



『時代は産業革命のさなか
 都市の急速な発達は、多くの社会問題を生んだ
 貧困層の拡大、疫病の多発、犯罪の増加
 スラムと化した街には、浮浪者たちが屯している

 男は理想に燃える若き司祭
 身寄りのない少女を引き取り、育てている
 私財を投げ打ち、懸命に働くも
 ついには資金繰りに窮し
 活動の停止を迫られた

 神への祈りが通じぬとも
 手を差し伸べる者がおらずとも
 愛する者を汚そうとも
 己の信仰を捨てようとも

 それでも、男は救済を望んだ』
(公式より引用)



ジャンルとしては施設経営、人身売買SLGです。


ゲームとしては、ただひたすら経営者として施設を保ち、女の子を招き入れ、養子や人身売買の依頼に合う素養が女の子に整えば養子に出し名声を稼いだり、金銭方面が欲しければ女の子を売って資金を稼いだりして、金銭を保ち名声を上げながら2年間の期限を過ごしていきます。
システムとしては数値管理系。
難易度としては苦手な自分が慣れればオマケ要素のある「1年以内に名声クリア」を達成出来たので低めだと思われます。
しかし難易度よりもやって来る女の子や雇う職員、養子や人身売買の依頼がかなりランダムなので運ゲーの要素が強いです。
どんなに頑張っても最初に来る女の子のステータスが低かったり、依頼が偏ると駄目な時は駄目になります。


エロに関しては全くもってエロくないというか…
人身売買要素が入る為に陵辱描写が一応ありますが主人公である経営者の司祭は陵辱行為を行いません。
というかそもそもゲーム内で司祭が言葉や地の文で何かを語る事はなく。
エロは人身売買後の依頼先で行われている描写が入るくらいです。


同じ立ち絵の女の子が何度も使い回されるので、売った女の子と同じ姿の女の子が次の月にまたポンとやって来て、その女の子を売ると同じエロシーン…みたいなのを繰り返す事も多いです。


そもそもこのゲーム、コマンドに女の子との交流などが無く、一緒に話したり、出かけたり、イベントだったりで交流が全く無いので愛着が数値以外で湧かず。
その上で立ち絵は使い回し、なので女の子を売買後に陵辱要素があっても、愛着も無い為にあまり可哀想と思うことがなく…
女の子は完全に商品扱いとして経営していく形になります。


このゲーム、言葉で語るととても面白そうには聞こえないと思います。
プロローグも起動画面での選択で見る形で、単純にゲームをするだけならスタートから即、数値管理を開始出来て、人によってはただ淡々と数値を管理してエンディングまで到達していくゲームにもなると思います。


運絡みの数値管理系の上、ゲームで語られない空白部分をプレイヤーが想像し補うタイプのゲームで、好みが確実に分かれるとは思いますが、逆にそこが個人的には面白く凄いなぁと思った部分でもありました。


交流をせず、女の子がどんな子だったのかは売買先の陵辱シーンの数セリフでようやく分かる程度。
ただ単純に女の子を物として扱い、その上で施設や名声だけを淡々と上げていく語らない司祭。
司祭が語られるのはエンディング後に周りの人間から、彼の資金関係と名声だけで判断された人間性が噂でのみ語られます。
エンディング時の施設のステータスによって周りの住人からようやく語られる司祭の物語。


司祭自身の考えや地の文が無い為、彼の人間性が金と名声の数値で周りから左右され、名声が低かったり、金のやりくり下手だと当然の如くラストの周りの人間からの評価ズタボロなのがとてもリアルで…


名声を上げ、施設を充実させた先に待っているもの、
『martyr』
宗教の殉教者、殉ずる人、殉難者、犠牲者、絶えずひどく悩む人、受難者。
自らの信仰のために命を失ったとみなされる者…


司祭である彼が信仰の為に失った「命」とは。
信仰の為に犠牲になったものは何だったのか。


大勢の人を救いたい、司祭はそう思った。
しかし人の世である以上、大勢を救う為には富も名声必要だった。
無から有は生み出せない。
そんな現実の中で救済の為に犠牲にしていく物語…
それがこの「A martyr」というゲームだと思いました。



『システム、演出』
数値管理系ですがサクサク動き、プレイは悩まなければ30分程度で1周出来ます。
ただ、選択後に確認は無い為、重要な時に失敗して押した時の衝撃は大きかったです。
確認が無いのがサクサクプレイには快適で、要は慎重に選べという事ですが、1年以内を目指している際には神経を使いました。
あと、プロローグやエンディングで文章はありますが、良い文章なのに履歴が無く残念でした。
特に変わった演出は無いですが、月代わりのモノクロ写真は時代感があって良かったです。
数値管理なのでどうしても選択は重要度が高めになります。
ですが、自分では管理できない女の子や職員の基本ステータス、依頼などがランダムなのが若干引っかかりました。
救済が根底にありながら人身売買の経営をしていく形が面白いなぁと。
運要素が大きいのが難点ですが、サクサク気ままに楽しめて、慣れればクリア自体は難しく無いのが良かったです。
エンディングがとても面白いので回想モードみたいなのが欲しいとも思いました。


『音楽』
素材曲で全8曲程度。
陵辱時のBGMが4曲。
数値管理の時は3曲から選択可能。
初期に設定されてる「司教様の日常」という曲があるのですが、この曲がゲームプレイ前から素材の方で好きで好きで…
曲数が少ないと思いつつもこの曲が入ってただけで大満足です。
好きな曲が入ってるだけだとそんなに思いませんでしたが、この作品の世界観と「司教様の日常」マッチし過ぎなんですよね…
似合いすぎて他のBGMに変えるのが躊躇われる程でした(自分が好きなだけだとも言いますが)。
場所が「教会」主人公は「司祭」というのも相まって、施設を経営し、女の子を売買するのが「日常」となっている感が。
穏やかで綺麗な曲で表向きは綺麗に見せ、裏の醜さをかき消している感じがとても好みでした。


『絵』
一枚絵は陵辱シーンでのみ。
射精での差分はありますが世界観で見るととても悲惨で良いですが、絵柄単品で見るとそんなに…
背景は通常数値管理画面では教会のみ。
月替りの時代の情勢が分かるような背景などは好みでした。
立ち絵は数人を使いまわしなので場合によっては施設にいる女の子全員が同じ女の子の絵柄になります。
雰囲気は個々で見るとそうでもないですが、統一された雰囲気は素晴らしく。
世界観とシチュエーションも相まってこの色々変わりつつもギリギリの世界の中、美しさと醜さのどちらに傾くか、ギリギリの瀬戸際で経営している感じが好きでした。


『物語』
文章は読みやすいです。
街の人間と、陵辱シーンで売買先の男と女の子くらいですが、それでも面白かったです。
ただ、読んでいるとクリックの反応によってポンと次の次くらいに文章が飛ぶ事があり…
エンディングなど良かった分、履歴も無いので文章を飛ばしてしまった際など残念でした。
時代軸や語られない「空白」の置き方が凄く上手だと感じました。
数値管理が好きで、物語の空白部分を考えるのが好きなら黙々と1年クリアや最短クリアを目指すと思います。
逆に駄目な人には本当に合わないとも思います。
数値管理、話さない司祭、文字があるのは初めと終わりだけ。
これだけの中でよく色々と考えさせられる綺麗な空白部分を作り、プレイヤーの想像で補わせようと考えたなぁと思いました。
キャラというのは殆ど無いですが、司祭の事を考えると…色々思う所があります。
あとは街の住人や司祭を語る人間性も色々見えてくる所が…
キャラクター自体は絵も無いのに凄い感じました。


『好みのポイント』
とにかくエンディングが良かったです。
あとは世界観など。
好きな曲を使ってたというのも大きいですが、その元々好きな曲の持ち味を壊さずにしっかりと合うように綺麗に使っていて、とても世界観、雰囲気と合っていて良かったです。





以下ネタバレ含めての感想です





まぁ、ネタバレも何も無いですが司祭関係で思った事をポツポツと書きつつ。
管理系ゲームなのでプレイ記録みたいな感じで。


プレイとしては数値管理ゲー苦手がモロに出て最初見事に資金難に。
初見だし、手応えわからないから仕方ないと思いつつ振り回されている感じで到達。
『無一文end』を迎え「粉屋」が語ります。
「粉屋」関係で調べると分かりますが独占事業や金銭方面で色々と嫌われている職業です。
この「粉屋」から語られる時点でそうとうこの「教会」も嫌われている…
というか堕ちたのだなぁと察しました。
「人が人を救うには金が必要なんですよ」
とお金の重要性を金銭関係で嫌われ、しかしその金銭で生きている「粉屋」から語られる所。
そして無一文でエンディングを迎える。
この辺りに、
「救うべき存在を最初に売ってでもまず、金銭は確保しなければならない」
そういう雰囲気が伺え、綺麗事じゃない世界が垣間見えて…
祈りではなんともならない世界をおそらく一番最初で辿り着きやすいエンディングで語るのが凄いなぁと感じました。


次に辿り着いたのが2年間で『名声未達成end』でした。
おそらく少女を売った先の「使用人」の語り、
「病死だって言われてますがどう考えても天罰でしょうよ 悪党には 悪党に相応しい最期ってもんがあるんです」
人身売買先の「使用人」にすらここまで言われるとは…
救いの為に金銭を望み、少女を与え金銭を貰った先でも悪党と言われる。
結局、名誉の無い、司祭を庇護する人間が居ない以上、本当の悪党からも好き放題言われる所のリアルさ。
そういうのを感じていました。
実際ステータス関係でもこのエンディングになった理由が、
「お金が無くなる事を恐れて、お金を余らせて施設の充実化や職員を雇わなかった」
からだったので余計にキました…
金が無いと経営は出来ない、しかし無くなるのを恐れて溜め込んで周りの視線を疎かにしても駄目で、誰かを本当に救いたいのなら、人の目や周りからの救いの手は必要である。
お金もギリギリで管理し、本当にギリギリの崖っぷちで頑張る姿勢がないと誰も見てくれない。
人が人を救うのは何と難しいのだろうと思い、次の周へ…


そしてようやく『2年以内に名声達成end』に辿りつけました。
これはおそらく施設の「売買されず育てられた大人になった少女」から語られます。
「神は居ない、しかし奇跡はある」
と語る彼女。
「司祭のような人が居ることが奇跡」
と語る彼女もまたその裏側を当然知らず…
奇跡がいかに苦労して作り上げられたのか、それを知るのはまた司祭のみで。
この「何も真実を知らないけれども、苦しい人間を救う」部分。
知らない人間に怒りが湧きつつも、しかし、司祭が目指したのは正にソコだったのだろうと考えると…
司祭の成した功績が後にしっかりと施設として残ったのを考えると司祭の願いは達成されたのだろうと感じました。
司祭のその後はかなり驚きましたが…
大勢を救いたいと願い叶える程の善の持ち主なら致し方無いとも思います。
大きな善を持ちながら善を叶えるためにならば悪に染まった司祭。
罪には罰を、司祭がした事を考えると当然の結果だとも思います。
しかし、そんな司祭を考えると色々と思う事があるので下記で。


個人的に一番難しかったのが『逮捕end』でした。
おそらく「街の住人」だと思いますが…
このエンディングえらく、
「罪人は 人を救ってはならないのですか?
 あの人の魂には 清く美しいものが確かに存在していたのに」
と持ち上げられます。
名声を上げてなくても女の子を沢山売れば辿りつけて、それと同時に売買すれば評判が下がる、評判が下がれば名声も落ちるシステムで、かなりの確率で名声も低い場合が多く…でも逮捕された先で街の住人は、
「司祭は素晴らしかった」
と語る、なんでしょうこの、
「死んだあの人、本当は良い人だったのよ、もっと早く言ってくれれば助けたのに…」
的なモヤモヤは…
そう思ってたなら早く救ってくれればいいのにというリアルさが凄いです。
死人に口なし、本当に好き放題言われてる感じがして…
こんな場所を救おうとしてるのかと思いつつも司祭なら、
「こんな場所だからこそ救わなければいけない」
と思うのだろうなと考えたら…司祭の人間性も何となく少し分かるエンディングだとも思いました。



最後に司祭の事を少し。
本当に自分で語らない主人公なので最後に語られる周りからの評価のみで成り立っている彼ですが公式で、
『男は理想に燃える若き司祭』
とあり、プロローグにて教会にやって来ます。
そして廃屋の教会で理想を語りますが、公式の通り、
『資金繰りに窮し活動の停止を迫られる』
事になり、そこからがゲームスタートです。


(時間軸的に「他で経営難に」→「ここで新境地ゲームスタート」かとも思いましたが
 それだと「活動停止を迫られている」には当てはまらないのでこの時間軸かと)


この開始の時点で、
『私財を投げ打ち、懸命に働いた』
後なんですよね…そう考えた時に、
「同じ絵の女の子がローテーションする」
部分を見ると…もう切羽詰って女の子の見分けはつかず。
商品としてローテーションする同じ姿にしか見えなかったのかなとも思ってしまいました。
勿論、ゲームシステム的に簡略化出来るからしているのが一番だとは思いますが、色々と深読み出来る作品だとも思いました。


『2年以内に名声達成end』

でようやく司祭の唯一人間性が分かる行動がありますが、
「服毒により自らの命を絶った
 薬量が足りず 苦しみのあまり 顔を何度も刃物で刺した痕跡があり 現場の様子は凄惨を究めた」
正規endでも死んでおり、自害しています。
色々と人の噂のみで語られる司祭ですが、これが唯一、人を介さずに分かる司祭の人間性だと思っています。
功績は大きいけど同時に裏側も大きい。
大勢の人を救う場を設けた、
「司祭のような人が居る事が奇跡」
そう言われつつも彼もまた善悪を知るただの人間で、自分で自分を許す事が出来なかったのだと思うと…
『martyr』の意味、信仰の犠牲者、自らの信仰のために命を失ったとみなされる者。
犠牲者の意味としては少女達かもしれませんが、人身売買を…綺麗事ではどうにも出来ない現実を受け入れてゲームが開始した瞬間に、使命に燃える司祭にとっては命と同義である司教としての誇りも失ったのだろうなとも思いました。
タイトルの意味は少女達や司祭の自害でもありますが、ゲーム中の司祭もまた生きながらにして『martyr』だったのかなと。
そう考えると司祭の自害は彼にとって生きながらの死からの開放にも見えて。
全く救われないけれども、司祭にとっては救済なのかもしれないとも感じました。


全く語らない、寡黙だからこそ勝手に語られる人間性
しかし、功績を成したからこそ司祭の強い信念を感じ…
私もこのゲームの中からしか伺えない中で、勝手だとは思いますが司祭の人間性を考え、司祭がどんな人間だったのかを想像したくなるような人物であるのは間違いないです。


色々と語られても司祭が成した功績はただそこに正しく有り続ける。
信仰と裏切り、救済と犠牲、善と悪の表裏一体感がとても良かったです。





最後に、

奴隷との生活→A martyr

とプレイ順したので、見放された奴隷とひたすらイチャイチャして可愛いがるゲームの次に今度は淡々と人身売買ゲーという流れになってしまい…
こう…人の売り買いの点では一緒なのに、世界観や境遇、背景、コンセプトが違うだけでこうも全く違う雰囲気になるんだなぁと。
当たり前ですが、人身売買要素の部分で色々と考えてしまい、不思議な気持ちに包まれてました…