ひっそりと群生

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【――ッ違う!!!】感想

【男性向け全年齢】



2021年06月06日発売
スタジオ木曜日』様 ※リンク先公式HP
――ッ違う!!!】(PC) ※リンク先DLsite.com
以下感想です。








――ッ違う!!! なんだこのルート!!?
――ッ違う!!! 誰だお前!!?
――ッ違う!!! 選びたいヒロインの元へ行かせて!!



『木陽高校に通う男子生徒・湊 未来は、いつものように世話焼きで口うるさい幼馴染に起こされる。
 高嶺の花の優等生、ヤンデレ気味の後輩、暴走するオタクの先輩、机、鷹……
 ――様々な登場人物(?)によって自身の意思とは無関係に振り回される未来だが、
 なんやかんや喧騒に満ちたスクールライフを満喫していく。』
(公式より引用)



プレイ時間は約2時間30分くらい。
選択肢有り、メインED4つ。


ウィンドウメッセージが読める幼馴染、ハイライトを落とすとヤンデレ化する後輩、主人公を「主人公クン」と呼ぶオタクの先輩、正統派ヒロインのような文芸部の少女。
メタにメタを重ねた世界の中、新学期を迎えた主人公は数々の存在とフラグを立てて行く。
唐突に現れる存在に、動物に、無機物に、エンディングではシューティングをしたり。
主人公は果たして誰とどんなエンディングを迎えるのか?
そして驚きのエンディングの多さ、主人公は無事ヒロイン達とのエンディングに辿り着けるのか?…あれ?辿り着けなくない??
――ッ違う!!!はそういうお話。



『システム、演出』
Unity製。
ノベルゲームとしての必要な機能は完備。
ただ、起動の際や履歴表示、一部シーンでのヒロインの立ち絵読み込みで多くローディングが入るのでサクサクはしていませんでした。
目パチがあったり動き自体は良かったのですが、読み込みの遅さは残念です。
あと、エンディング数がかなり多いのでクリア後にエンディング回収一覧が欲しかったです。


『音楽』
BGMは日常に合った選曲。
Subエンディングの曲を何度も聞いたので妙に印象に残ってます。
クリア後に音楽鑑賞モードは欲しかったです。
BGMもですが本作はSEの使い方が上手く、所々で挟まるビシィッ!バシィッ!というような効果音が合いすぎていました。
個人的に序盤のお辞儀ゲームの際に一番正解のお辞儀に止めた時の歓声のSEが妙にツボに入りました。


『絵』
純粋な立ち絵枚数は多いのですが、オリジナルのイラストで登場するのはヒロイン4人と花子さん。
どの女の子達も可愛く、特に目の描き方が独特で惹き込まれそうな色彩でした。
先輩がヲタ話をする時のラリってる顔と、幼馴染の愛里が呆れてる時の顔が好きです。
CGは各ヒロイン一枚のみですが、効果的な場面で表示されたと思います。
ただ、本作は、影絵で登場するキャラが濃くて濃くて濃くて。
いきなり脈絡も無く登場する「お前誰だよ!!?」なキャラ達なのですが、そういうキャラが影絵な所に「誰!!?」感を強く引き立てていて面白かったです。


『物語』
初っ端からメタが開示されており、当然のように普通のギャルゲーとしては進みません。
背景に紛れ込む点滅する存在をクリックする事で立つフラグに数多の選択肢。
そしてそこに紛れ込む明らかに違和感のある選択肢。
物語は唐突に謎の方向に飛躍し、異世界にSFに魔法に突拍子の無い分岐をしてSubエンディングに向かいます。
ヒロインのエンディングよりも明らかに多いSubエンディングとフラグ数に翻弄されながらも、ヒロインの物語は恋愛物として存在しており、独特の作風になっていました。


『好みのポイント』
メタ要素ものですが、こういう謎分岐が多い作品は個人的にかなり好きなので、お祭りごった煮感が良かったです。
フリゲノベルゲーム初期の頃のような分岐多数とそこから派生する謎世界を堪能出来ました。





以下ネタバレ含めての感想です





全体を通すと、なんとカオスなゲームだったんだろうなと。
分岐を一つ狂わせると謎の世界観が構築されるのは本当にフリゲノベルゲーム初期の懐かしさ。
本筋と全く関係無い展開とそのテンションの高さに脳がバグりそうでした。


ただ、そういうごった煮カオスな側面を好きだとは思いつつも、メタゲーとしては一歩弱く。
更にはメタゲーであるのが加わった事でカオスゲーとしても全力でハッチャケられてない感もあり。
メタゲーってようするに「ここはゲームの世界で、ゲームの世界だからこそのヒロインの関係性が出来上がる」物だと思っていて。
そしてそのジャンルがギャルゲーだからこそ「ヒロイン達と真剣に恋愛で悩む」みたいな構図が出来上がると思っているのですが、本作はそこにカオスなエンディング分岐が加わった事で「恋愛(ヒロインとの関係性)にあまり真っ直ぐに向き合えない」雰囲気が出来上がっていた所がありました。
「メタゲーとして向き合おうとするとカオスゲーの側面が邪魔をし、カオスゲーとして向き合おうとするとメタの部分が邪魔をして来る」そんな感じ。
「ハイライトという視覚的な要素を持ってヤンデレが可視化されている後輩」「自分をギャルゲーのお助けキャラだと思っている攻略対象の先輩」「この世界がギャルゲーである事を知っている一周目では絶対に攻略できない幼馴染」、要素としてはとても発展出来る要素ですが、そこが彼女達のルートで強く深堀りされる事も無く、ルート分岐後に結構サクサク進みそのまま終わっていました。
むしろSubエンディングルートの方が異様に濃く、しかもSubなのに分岐後に結構長く続くので、「この逸れた物語をこんなに長く続ける意味は…?」みたいな気持ちに。
Subエンディングルートは各分岐もう少し短めで良かったと思います、ちょっと分岐後が長くてギャグにしてはダレました。
カオスゲーとしては見るとやっぱりフリゲのカオスに全振りしている数々の作品に一歩及ばない印象。


メタゲーとしても同様で、本作は「幼馴染がメタ世界である事を把握し、自分が攻略されない世界線を見続けていて、最終ルートでようやく結ばれる」という流れなのですが、「結局幼馴染は攻略出来てしまう」という構図になった事でメタになり切れずに普通のギャルゲーになっていたようにも感じ取れました。
ぶっちゃけ某超有名海外産のメタメタギャルゲーの方がメタに真剣に向き合っていたというか…
「自身の攻略ルートが無いからこそ足掻き、それでもやっぱりルートは無くエンディングは無い」みたいなのは強すぎたというか…
演出方面でも話の流れ、構図的にもメタ作品としてはあと一歩かなぁと。
まぁ、本作がカオスゲーの側面も持っているので、「これだけ他の存在と軽くエンディングを迎えるのに自分とのエンディングは本当に奇跡のような何周もした後の可能性でしかない」という絶望というか悲壮感というかそうのを幼馴染の愛里が感じるのも分かります。
実際、エンディングの最後を見るとSubルート全部攻略後前提っぽいエピローグになっているので、おそらくSub含めて全てのエンディングを見ないと愛里のエンディングには辿り着けないのでしょう。
なので、そういう悔しさ、腹立たしさは分かりますが、隠しルートでも無く正規のエンディングとして一応はちゃんと愛里エンディングには辿り着ける為、プレイヤー的には「普通にエンディング迎えられるじゃん」になってしまった所はありました。


途中の「正統派ヒロインに見えるもう一人の幼馴染の菫が実はイマジナリーフレンド」という流れも結構ガタガタな流れになっていたというか…
「攻略出来るように見えて実は存在していない攻略出来ない正統派ヒロイン」というのをメタ的に描きたかったのかな?と思いますが、そういう「正統派ヒロインに見えて攻略出来ないヒロイン」もまた他作でどうしても圧倒的強さを誇ったキャラが個人的に居た為、そこでもまた「もう少し!もう少し踏み込んで!!」という気持ちになりました。
その娘が消えた後に愛里が行うアフターケアも雑くてこう…なんだかなぁと。
まぁ、分かります、愛里からしたら「菫とはこんなにギャルゲー的展開を築けるのに…」と思うのも分かります。
でも、感動的に消えたような後に全然余韻の無いあの行動はどうなんだろうなぁと。
メタゲーなのでそこを雑にするのもまた「感動?これはメタだよ??」感があって良いとは思いますし、「正統派ヒロインを作品の装置として置く」というのもまたメタとしては良いのですが、カオスゲーとして途中で逸れに逸れるので、菫の存在が唐突に現れて唐突に消えて、物語の「装置」にもなり切れてないようにも思い、不憫さがありました。


不憫な姿を見たい…と言うととても性格が悪いのですが、もっと愛里の「攻略出来ない構図」が強くても良かったとは思います。
最終ルートでアッサリと攻略出来るので、愛里は「攻略出来ないヒロイン」よりも「最終ルートをしっかりと掻っ攫う正ヒロイン」になっていて、「なんだ、やっぱり愛里を攻略出来る愛里ゲーじゃん」になっていました。
プレイヤーにラスト開示されるエンディング到達数画面で愛里ルートを省いても良かったですし、何より、タイトル画面から行けるオマケモードがCG鑑賞しか無いので、エンディングの数的にもエンディング鑑賞モードを搭載し、そこで「???ルート」みたいな感じで愛里ルートを隠すみたいにしてプレイヤーに教えるでも全然良かったなーと。
演出方面や絵などはとても良く、ごった煮お祭りな空気は良かったのですが、メタゲーとしてもカオスゲーとしてももっと振り切って欲しかったなーとも思った作品でした。