ひっそりと群生

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【さようなら、援交娘さん。】感想

【男性向け18禁】



2015年08月16日発売
夜のひつじ』様 ※リンク先公式HP(18禁)
さようなら、援交娘さん。】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








場所も、花も、そして花を見つけた側も何もかもが汚かった物語。



『汚してもいい子宮があります。

 売女に本気になることはない。
 ヤリ捨て便女扱いでかまわない。
 さようなら、
 童貞を捨てさせてくれた女の子。

 汚い世界に汚い花が咲いている。

 最初から壊れてたんだ。
 壊れたものを借りて、
 壊れたまま返しただけだ。

 陵辱アフターADV。』
(公式より引用)



夜のひつじさん作品13作品目プレイ。
こちらは再プレイになります。
プレイ時間はゆっくり読んで約3時間くらい。
分岐は最後に一箇所有り。


※この感想は過去に書いた物を再構築しました。



「人生をやめたい」
大学の飲み会後、主人公は酔った勢いで出会い系の18歳の女子校生に「二十分後に公園まで制服姿で来て」とメールを送る。
酔いと…興味本位、いたずらのつもりだった。
冗談半分、期待半分で公園の指定の場で寝入っていると体を揺り動かされ声を掛けられる。
目を覚ますと出合い系のメッセージ相手と言う制服姿の少女が居た。


タイトルで分かるように「援交」系の話です。
暗く重苦しいですが、ただ、援交感はあまり無かった気がします。
援交での関係で展開する話というよりも2人の境遇や価値観、在り方で心を穿つ系。
主人公の劣等感などの書き方が上手く。
一度でもそういう劣等感を感じた事のある人には頭を抱える話になりそうです。


「陵辱アフターADV」の名に相応しい。
ただひたすらに、出会いから正しくなかった二人の物語だと思いました。



『システム、演出』
吉里吉里製。
いつもの夜のひつじさんの最適仕様。
最後のタイトル画面の変化と最後の一箇所だけの選択肢が好きです。
…主人公らしいとは思います。


『音楽』
madetakeさんとwaniwaveさんのダブルコンビ。
どの曲も良く、特にタイトル画面の曲が流れる箇所が2箇所あるのですが、ヒロインに対して主人公がある種の諦めを向けるシーンで印象深かったです。
声は「純情セックスフレンド」で透様を演じられた涼貴さん。
透様の気怠げながらも巻き込める人を巻き込もうとする系の闇のボイスも良かったのですが揺子の人の顔色を伺いながらも全てを諦めている系の闇のボイスも最高でした。
どちらも闇なのですが、系統が違い。
非常に芸風豊かな方だと思います。


『絵』
「純情セックスフレンド」「妹「お姉ちゃんクソビッチなんで私にしませんか」」「好き好き大好き超管理してあげる」と同じくかんぴょうマスターさん。
どの体位もやはりお上手な上、汚いオッサンがお上手です。
援交系女子という事で透様や木乃花さんを思い出しましたが、彼女達とはまた違うベクトルのビッチ少女で。
透様のように割り切っておらず、木乃花さんのように楽しんでおらず。
不幸の中に身を置いていてビッチにならざるを得なかった少女らしく、どこか儚げで守ってあげたくなる空気がとても良かったです。
その中でも性が絡むと表情が変わりどこか見下す、というか男性を可愛い物として見るような、そんな表情になり人生の闇と経験豊富さが垣間見える所が好きでした。
通常の表情も素朴で素朴さの中のイヤらしさみたいなのがあり大変キました。


『物語』
文章は相変わらず最高。
時折入る主人公の分析や考えが人間の暗い部分を浮き彫りにしていて闇ひつじだ~と頭を抱えて。
思考や境遇が難しい二人なのに彼らに理解は出来なくても感情がグイグイと入ってきました。
二人の関係は面白いというか。
始まりから終わりまで分かった上での滑稽さというか、そういう物があり。
二人の誰の何にも成れず、魅力がないのが魅力的というか。
肉体関係しか無く空虚や無気力感を感じる二人が苦しくも良かったです。


『好みのポイント』
夜のひつじのダークサイドはやっぱり好みです。
どうしようもない二人がどうしようもなく葛藤する姿が他人事に見えつつも世界のどこかに居るかもしれない人にも見えて、とてもたまらなかったです。





以下ネタバレ含めての感想です





重くのしかかった何かがあるけれども、感想を言語化するのが難しい作品だなぁという気持ちです。
あえて言うならこの物語、主人公の地の文だからなのか「完全に悪」とは言わずとも揺子がただひたすらに悪に描かれている点が面白いなと。


「童貞主人公」と「非処女ヒロイン」の構図で揺子が非処女になった陰惨な理由、過去は一切気に留めて貰えず。
ヒロインの処女性だけを重要視するのが当然の価値観。
主人公は一切悪くない、揺子の方に圧倒的に悪が向かうように見える描写、文章…地の文はおそらく狙っているのでしょう。
とても「エロゲ的」で「地の文」…主人公視点だからこそ「コレが悪だ」と思わせる面白さを感じました。
「援交」を始めるキッカケを作ったのは…誰かをお金で買おうとしたのは主人公で。
基本的な自分を卑下する性格や駄目な部分はかなり近くて、結局は同じ穴のムジナなのに「処女性」や「穢れ」に関しては正論かましているのがまぁ面白い面白い。


揺子は援交をしています、数々の男性との性的接触があります。
そして、それをするほどの重苦しい過去がありました。
身体に快楽を教えこまれ、それが当然になり、金目当てではなく、快楽目当てでの援交を始める。
…まぁ共感は絶対出来ません、別にそれを受け入れろとはいいません。
「援交」で知り合ったからその線引をするのは当然です。
ですが揺子側で考えて思うのです。
彼女は「性的快楽の為」という前提はアレでも、それでも主人公に対して、主人公の童貞…自信の無い部分に最後まで尽くした。
自分の為が前提にあっても、偽善でも誰かの為に行動した姿はきっと本物でした。
もしこの出会いがこの主人公ではなかったらどうなっていただろうかと。


世の中には色んな人が居ます、こんなに重苦しい過去を持ちながらも受け入れて貰っている女性、受け入れている男性はゴマンと居ると思います。
確実に少なくても居ないとは言いません。
そして折角の物語ならその数少ない可能性を実現化も出来そうなのに。
私はこの物語、「折角の『物語』なのに主人公というハズレを引かされた揺子の物語」に感じました。
たった二択しかない男が主人公だった、それだけの物語。


特に揺子が自分の過去を語る前から彼女の過去を都合よく想像している所は「うわぁ」と感じました。
「童貞の都合の良い妄想乙」
みたいな気持ちになりました。
しかし、恐ろしい事にその想像は大体は当たります。
人間は最悪の状況を予測し、それを予測するからこそ予測後の行動を考えます。
ですが、当たったからといって寄り添う事も、何をするでもなく。
これだったら「苦しい過去」など無くて、ただ快楽の為に援交していますとなった方がまだマシだろうなと。
そもそも何もしてもらえないなら過去を打ち明けた意味って何だったのだろう、と。
私の中では揺子を「受け入れる」「受け入れられない」以前に主人公のダメっぷりもまた光っていたと思います。


面白かったのが童貞を捨てた瞬間に主人公の心境からの立場が一気に逆転していて。
今まで教えてもらう側でヘコヘコしていたのに、挿入した瞬間に揺子を醜い物、汚いもの、自分より下のものに感じてるんですよ。
そして童貞を失ってから何度も、「処女が良かった」「綺麗な女性を抱きたかった」「元カノは初めてだったのか」的な言葉が出てくるのです。
自己評価が低いくせに、しっかりと下のものは蔑む。
…この点で「あぁ、元彼女が別れた原因ってコレだろうな」みたいな気持ちになりました。
セックスを出来なかった事はきっかけでしか無く、彼の本質的な部分を見て嫌になったのか。
もしくは本当にセックス出来なかった部分に引いたのか。
前者でしたら元彼女さんは正しい判断でしょうし、後者だったらセックスでしか判断できない女を選んでいた事になります。
どちらにしても、自己評価が低い癖にプライドだけは一人前であり、人を見る目はないなぁという印象です。


自己評価が低いのですが多分彼、揺子のオジサンを見た時の感想を見るに、
「自分を貶して下にしてれば自分がポカした際に自分より強いものは許してくれる」
からこういう評価をしてるのであって、本当に自分を貶しているというよりは自分より強い物に襲われた際の赦しが欲しいのかなと。
だからこそ自分より下に見たものには相当な厳しさがある。
でも主人公にはまた妙な正義感か…もしくは性的に都合の良い存在を切り離したく無いのか完全に関係を割り切る事が出来ない。
だからこそ逃げる事も出来ない、いや、彼女の存在を消し逃げるという選択をする勇気もまた無い。
「オジサンから揺子を何とかする事」も「揺子の存在を完全に切り離し一切の連絡を断つ事」も「オジサンと会っている揺子と会い続ける事」も、他の無限の選択肢は彼には無かった。
突き放すか、共に堕ちるか。


本当にこんな女性に会った事はないので、出会ってしまった彼の行動を否定は出来ません。
ただ「物語の主人公」としてはえらく現実的で。
現実的だからこそ私は彼が悪いとは決して言いません。
彼の性格や在り方、出会いから見たら正しい選択だったと思います。


主人公は揺子の過去を肉便器だと割り切りながらも「可哀想」という気持ちはあります。
揺子も主人公を優しいと言いながらも「可哀想」だと思っています。
主人公も揺子も…どちらもお互い憐れみ、どちらもお互い可哀想だと思っています。
「可哀想」とは下の人間に向ける言葉だと、自分が優位だから言える言葉だと思います。
だからこそ、お互いを「可哀想」だと「自分より下」だと思っているからこそ。
まるで揺子に出会ったからこそダメな道に行ったように見えますが、本当はお互い「援交」をしている時点で同じような場所に居て、同じ場所の人間であるからこそ、彼らは持ち上がる事は無いでしょう。


というかひょっとしたら主人公の名前表記の部分がずっと「片瀬」ではなく「俺」表記なのは片瀬とプレイヤーの乖離を減らすためだったり。
恐らく多くのプレイヤー…というか単純に現実的に考えれば、「親の見栄から借金を背負い、母親の知り合いのオジサンに肩代わりされ、代償として処女を散らされ、肉欲面で調教され、援交で出会った女の子」。
そんな女性、普通に考えて重苦しく耐えられません。
まぁ受け入れられないでしょう、片瀬の選択は方法は異なれど限りなく正しく結ばれる確率は0とは言いませんが低いと思います。
物語的には悲惨ですが、現実でもしこんな状況があったら、この結末は限りなく現実的に近いかもしれない。
上記でも書きましたがこの物語は揺子が「物語での主人公」に出会う訳ではなく、「援交をする程度の現実の男」に出会ってしまった悲劇とも感じました。


…と、エロゲである以上批判されそうな肩を持って貰えない境遇、性的価値観を持つ揺子に肩入れした感想を書きつつも主人公が彼女自身を見ないのは当然です。
だって出会いが既に「援交」なのですから。
「お金で誰かを買える場所」で出会っているのですから。
受け入れる、受け入れないではなく、「金銭」と「肉体関係」で成り立つ場からの出会いに「気持ち」などあっても意味が無いのです。
そんな場で「気持ち」をお互いに探してしまった。


陵辱アフターADV。
既に汚れていた少女と汚れている場所で出会った青年の物語。
汚れた公共便所で汚物を溜め込んだ男が肉便器を見つけた物語。
例え花が咲いていても周りも、花自身も汚ければ…見る側も汚ければ何の美しさもない。
花なんか咲かない場所で、汚れた花と、花の価値を分からない人間出会ってしまった。
「大好きになれたかもしれない人、死ね。」
これは間違いなく出会った時、既に終わっていた話でした。


感想の言語化が難しかった作品でした。
思う所も人それぞれでしょう。
でもサブタイトルや作中の文章で分かる所や雰囲気から十人十色の様々な想い、感想が渦巻く作品だとは感じました。



夜のひつじさん作品では感想をいつも悩んで居ますが、今作は前に書いたこの感想を越える何かを自分の中から絞り出せるとは思えず、感想を再構築しました。
闇ひつじは今作以降あまりお見かけしないですね。
「墜落ロイヤル聖処女」くらい?
未プレイの為自分の感覚ではまだ分かりませんが、でもコチラも闇ひつじかは既プレイの方で二分化している印象。
またこういう深い闇を背負った作品をお読みしたい気持ちです。


次回は同日発売の「彼女、甘い彼女」を予定。
光と闇の差に目が眩みそうな程の凄さを感じつつ、再プレイになるのでまたじっくりと読んで行きたいと思います。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:Media Clip 様
https://www.mediaclip.jp/
 さようなら、援交娘さん。 ページ
https://www.mediaclip.jp/docs/game/2015/sayonara.html